ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜   作:nemu1116

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そう、そもそもこの物語のキーは鍵(ダジャレじゃないですよ?)
鍵の影響で小咲が先に楽と付き合えたわけで


カーテン

夕方・小咲の部屋

 

夕暮れのオレンジがカーテンの隙間から差し込む中、小野寺小咲は自室のベッドにうずくまっていた。

乱れた髪、涙で赤く腫れた瞳。

クッションを抱え、ティッシュの山に囲まれて、その小さな肩が時折震えている。

 

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小咲「だめだぁ……もう、全然……」

 

声はかすれていた。

喉の奥で何度も言葉が詰まり、ただ弱い吐息のように空気へと消えていく。

 

小咲「気持ちの整理なんて……できないよ……。でも……わたし、決めたんだ……ちゃんと……」

 

そう口にしたものの、感情がついてこない。

決意したはずの言葉は、涙にかき消される。

スマホが枕元に転がっていた。

画面は消えていたが、小咲はちらりと見るたびに、わずかに手を伸ばしかけて、そして引っ込める。

その動作を何度繰り返したか、もう覚えていない。

 

小咲「……くるわけ、ないよね」

 

ぽつりと呟き、スマホを伏せるように手のひらで隠す。

 

小咲「わたしから、あんな風に……酷いこと言っちゃったし……」

 

その時だった。

机の上に置いていた“鍵”が、ふわりと淡く光りはじめた。

最初は気のせいかと思ったが、確かにそれは優しい光を放っていた。

 

小咲「最近はなかったのに。また光ってる……?」

 

驚きと戸惑いを押し殺し、小咲はそっと鍵に手を伸ばす。

そして、指先が触れた瞬間――

光が、ふっと彼女の胸へと吸い込まれていった。

小咲の意識が、ふと遠くへ引きずられていく。

まぶたを閉じていないのに、まるで夢の中に沈んでいくような不思議な感覚。

浮かび上がったのは、また、あの景色だった。

 

ーー天駒高原。

 

幼い頃に未来を誓った約束の場所。

けれど目の前に広がっているのは、明らかにあの時の光景ではない。

少しだけ成長した男女が、草原の中に立っている。

ひとりは、小咲。

もうひとりは、一条楽。

けれど、二人の表情は、どこか寂しげだった。

 

楽(映像の中)「小野寺のこと……ずっと、ずっと、大好きだった」

 

小咲(映像の中)「……うん」

 

ふたりの声は静かで、優しかった。

けれど、どこか“終わり”を予感させるような温度。

 

小咲(映像の中)「でも、今は……違うんだよね?」

 

楽(映像の中)「……うん」

 

小咲(映像の中)「……一条くんの中には、もう……別の誰かがいるんだね……?」

 

楽(映像の中)「……うん」

 

ーーその瞬間、小咲の心に冷たい風が吹いた。

 

自分の声。自分の問い。自分の涙。

でも、それはどこか遠い、自分じゃない“もうひとりの自分”が言っていた。

 

そして、現実へ。

 

小咲「こ、これ……は……」

 

はっとして手を離す。

鍵の光はもう消えていた。

さっきまでの光景も、もう見えない。

けれど、胸の中に残った感覚は、はっきりとした“痛み”だった。

 

小咲「未来……? それとも、別の世界……?」

 

かすかに震える指先で鍵を握りしめ、小咲は呟く。

 

小咲「わたしが、告白して……フラれて……それを、鍵が……見せてきたの……? 今? なんのために……?」

 

不安、焦り、孤独ーーあらゆる感情が入り混じっていく。

 

小咲「もう、やめてよ……余計につらいよぉ……」

 

その時だった。

 

ピロン♪

 

スマホが震えた。

スマホの画面に浮かぶ「一条楽」の文字に、小咲の胸が大きく波打った。

さっきまで何度も、何十回も見つめていたはずの画面。

なのに、今この瞬間だけは、現実味がまるで違った。

 

小咲「……え? 一条くん?」

 

思わずこぼれた呟き。

震える指で、そっと通話をスライドする。

 

小咲「……もしもし?」

 

電話越しの声は、思ったよりも落ち着いていて、でもどこか必死な響きを帯びていた。

 

楽(電話越し)「小野寺……電話出てくれて、ありがとう。俺……どうしても、もう一度、ちゃんと話したくて」

 

その言葉に、小咲は少しだけ目を伏せる。

手に力が入った。けれど、それでも声は優しかった。

 

小咲「……そっか。優しいんだね、一条くんは」

 

皮肉でも、責めるつもりでもなかった。ただ、それが今の正直な気持ちだった。

 

すると、電話の向こうで少しだけ間が空いて――

 

楽「会えるかな。今、小野寺の家の前にいるんだ」

 

その一言に、息が止まりかける。

 

思わず視線が窓の方へ向く。

カーテンをそっと開けたその先、楽が小さく見上げていた。

 

小咲「……うん。わかった」

 

電話を切り、震える手でスマホを胸元に抱きしめる。

そのまま、机の上に置かれていた鍵を、そっと手に取った。

ぎゅっと握りしめるその鍵は、もう何も語らなかった。

それでも、小咲の中にあった“何か”が、確かに背中を押していた。

 

小咲(……ちゃんと、自分の気持ちに向き合わなきゃ)

 

ふらつく足取りで、ゆっくりと立ち上がる。

ティッシュの山を避けながら、小咲は扉に手をかけた。

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