ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜   作:nemu1116

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モヤモヤする展開


アキゾラ

朝の教室は、いつもより少しだけ静かだった。

 

笑い声も雑談もある。

けれどその中心にあるべき「光」が、ぽっかりと抜け落ちていた。

小野寺小咲の席は、朝からずっと空のまま。

先生からの話によれば、体調不良による欠席だった。

 

登校してきた楽がその席を一瞥するも、言葉には出さず、自分の席へと無言で腰を下ろす。

 

ペンを握ってもノートは進まず、黒板の文字も頭に入ってこない。

小咲の不在という現実だけが、目の奥に居座って離れなかった。

 

数時間が経ち、チャイムが昼休みを告げる。

 

楽は、誰にも何も言わず、屋上へと足を運んだ。

どこかでこの空気を吸っていないと、自分を保てない気がしていた。

屋上のフェンスに体を預け、楽はぼんやりと空を見上げていた。

 

鈍く、雲のない青。

 

風だけが、ゆっくりと頬を撫でていく。

けれどその優しさも、今の彼にはどこか虚ろで。

 

ふいに足音が近づく。

 

振り返らなくても、誰かはすぐにわかった。

独特のテンポと、背後に感じる熱量で、万里花と千棘だと。

 

万里花「……それで、結局、小野寺さんにはフラれてしまったのですか?」

 

問いかけた万里花の声は、普段の明るさとは異なる低い調子だった。

彼女なりに、真剣に向き合おうとしているのがわかる。

楽は目を伏せて、小さく頷いた。

 

楽「……ああ。ざまあねぇよな。屋上でフラれて、昨日空き地でまたフラれて……。はは、どんだけ嫌われてんだよ、俺……」

 

笑ってみせたつもりだった。

でもそれは、乾いた音を立てて地面に落ちた。誰にも届かない、空虚な笑いだった。

 

万里花「信じられませんわ……。あの、どこまでも楽様を一途に想っていた小野寺さんが、そこまで意固地になるなんて……」

 

千棘は黙っていた。

だが、やがて一歩踏み出して、楽の横顔を見つめた。

 

千棘「……ねえ、楽。まだ……小咲ちゃんのこと、好きなの?」

 

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風が、ふと止む。

まるでその質問に、空気すら固まったようだった。

楽はうっすらと目を閉じた。

その問いは、あまりにまっすぐで、あまりに痛かった。

けれど、答えは決まっていた。

 

楽「……当たり前だろ。むしろ、失って気づいたよ。俺、どれだけ小野寺のことが好きだったかって。小野寺と心が繋がってないだけで、こんなに……苦しいなんてな」

 

声は低く、淡々としていた。

けれど、その一語一句が、張りつめた糸のように研ぎ澄まされていた。

 

千棘は、黙ってその言葉を受け止めていた。

目を伏せ、唇をかすかに噛んだあと、そっと両腕を楽の背中に回す。

 

千棘「ごめんね、私のせいで。いつも……アンタに、助けられてばっかだったのに、また迷惑かけて。だから……こういう時くらい……返させてよ。偽物の恋人だけど……それでも、あたし、アンタの痛みくらいなら受け止められるから」

 

彼女の声は、まるでガラス細工のようだった。

強がりと優しさが混ざった、不器用でまっすぐな音。

 

楽「……ああ。ありがとな、千棘」

 

肩越しにそう呟いた楽の声は、少しだけ柔らかくなっていた。

その瞬間――

 

万里花「な、な、なっ……!!!!」

 

万里花が突然、甲高い声を上げた。

 

顔は真っ赤。

両腕をバタバタと振りながら、まるで寸劇のようにジタバタと足で地面を叩いている。

 

万里花「わ、わたくしの前で……! そんな堂々と抱きついて……っ!!」

 

怒鳴っているのか、泣いているのか分からないテンション。

 

楽(お前もいつもやってるだろ……ww)

 

万里花「わたくしだってっ!! 本当はこのチャンスに、つけ込みたい気持ちでいっぱいなんですの!! でもっ……でも……っ!! 弱ってる楽様を慰めて、口説き落とすのは……それは……小野寺さんに勝ったことにはなりませんのっ!!!」

 

叫びながら、拳を握る万里花の姿は、どこか愛おしいほど真剣だった。

楽は思わず、ふっと笑った。

 

楽「……橘。お前ってさ、ほんと正直者だな。そういうとこ、嫌いじゃねぇよ」

 

万里花「……っ! い、今の……は……プロポーズ……ですの……?」

 

楽「いや、全然違うけどなww でも、いつもお前に助けられてるよ。本当に感謝しかない」

 

万里花「ふぇぇ……そ、そんなこと言われましたらぁぁぁぁぁ/// い、い、い、いつの日か……必ず落として差し上げますわ……!!」

 

湯気を立てそうなほど顔を赤らめて、両手でほっぺを押さえる万里花。

それを見た千棘が、くすっと笑った。

でも、その笑顔はほんの少し、寂しげだった。

 

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空は、少しだけ秋の気配をまとい始めていた。

 

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