ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜   作:nemu1116

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それぞれの想いを胸に、3人は天駒高原へ。


カナラズ

翌日、土曜日の午前中

 

和菓子屋「おのでら」前ーー

 

朝の光がまだ柔らかさを残す時間帯。

白い暖簾が風に揺れる和菓子屋「おのでら」の前に、楽は立っていた。

表情はどこかかたい。

 

楽(千棘と色々あったけど、あいつのおかげで気持ちが前向きになれて、小野寺と向き合う気力が湧いてきた)

 

楽(感謝、しないとな……あいつに)

 

楽(千棘……今どうしてるかな)

 

楽(……ん?! いやいやいや! は?! 小野寺の家の前に来て、俺は何を考えてるんだ?)

 

楽(関係ないだろ! 今! 千棘は!)

 

楽(集中しろ、一条楽! 俺が今何をすべきか!!)

 

楽(……しつこいと思われてもいい。何度でも、俺は小野寺へ思いを伝えたい……)

 

俺(これは間違いなく俺の本心なんだ!)

 

ゆっくりと指を伸ばし、インターホンのボタンを押す。

ピンポーンという音が静かな店内に響いた。

中から足音が近づき、ほどなくして玄関の扉がガラリと開く。

 

菜々子(小咲の母)「は〜い……あら? あなたは?」

 

楽「……は、はい。一条と申します。小咲さんが、学校に来ていなくて……心配になって、様子を見に来ました」

 

菜々子は一瞬目を見開いたが、すぐに柔らかく微笑んだ。

 

菜々子「……そっか。朝早くから心配かけてごめんなさいね。まったく、あの子もしょうがない子ねえ。……ふふ、でも来てくれて嬉しいわ。あなたが……噂の“一条くん”ね?」

 

楽「……え? 噂の?」

 

菜々子「娘から色々聞いてるのよ? もう、本当によく名前が出てくるから。“今日の一条くんはこうだった”“こんなこと言ってくれた”“同じ空間にいられるだけで幸せ”……。聞いてるこっちが顔真っ赤になるくらい、ずーっと、ね」

 

楽の目が驚きで見開かれる。

あまりにもストレートすぎる“過去の想い”の証言に、息が止まったような気がした。

 

楽「……そ、そんな……。逆に愚痴とか、不満とか……ないんですか?」

 

菜々子は思わず吹き出し、首を振った。

 

菜々子「ないないw 一度もないわね。基本的に“ノロケ”だけ。どんなに小さなことでも楽しそうに話すの。どれだけ一条くんのことが大事かって、すごく伝わってきたわよ。……だから、あなたに会ってみたかったの。娘が惚れた男の子にね」

 

楽は言葉を失い、ただ小さく頷いた。

胸の奥が熱くなる。

涙が込み上げそうになるのを、ギリギリのところで堪える。

 

楽(……そうだ。小野寺は、いつも俺に優しかった。どんなに冗談を言っても、くだらないことをしても、笑ってくれた。なのに、俺は……)

 

菜々子は少しだけ表情を曇らせた。

 

菜々子「だけど……ここ最近は、パタリとその話が止まったのよ。なんだか様子もおかしくてね。学校を休むようになって、私も親として心配してたの。なにか、あったのかしら?」

 

楽「……すみません。複雑過ぎて詳しく説明はできませんけど……俺が……小咲さんを、傷つけてしまったんです」

 

菜々子「……そう。うんうん、何があったかは聞かないけど、ケンカしたって、行き違いがあったって、それも全部含めて青春よ。大事なのは、その後でどうするか、じゃないかしら?」

 

楽「……ありがとうございます。それで……あの、小咲さんは、今……?」

 

菜々子「私はまだ寝ていたけど……多分、さっき出て行ったわよ。天駒高原ってところに行くって。1時間くらい前かしら?」

 

楽「……えっ? 天駒高原?! 何故そんなところへ?」

 

菜々子「ん〜とね……“鍵を届けに行く”って言ってた気がするわ。あの子、子供の頃からいつも大事にしてた鍵があってね。多分そのことじゃないかしら? なんにせよ、今までに見たことないくらい、決意のある顔してたわね」

 

楽の心が激しく揺れた。

胸が鳴る。

頭が真っ白になる。

 

菜々子「今頃、電車に揺られてる頃かしら?」

 

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楽「……ありがとうございます!!」

 

そう言って頭を深く下げると、踵を返し、一気に駆け出した。

 

菜々子「あらら、行っちゃったわ……ふふ……小咲……あんた、愛されてるわねぇ」

 

楽(小野寺……! すぐに行くからな……!)

 

楽(そしてーー)

 

楽(必ずーー!!)

 

楽の背中が、真っ直ぐに朝陽の中を駆けていった。

ーーその先にある、小咲との“本当の答え”を見つけるために。




菜々子(このあとどうなるのかめちゃくちゃ気になる……///)
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