ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜   作:nemu1116

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小野寺さんの答えは……


サイカイ

高原の風が、まるで物語の運命を導くかのように、ゆっくりと吹いていた。

草原の丘、その頂にぽつんと佇む大きな岩。

そこに、小咲は一人座っていた。

 

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陽はやや傾き始め、午後の光が彼女の肩を淡く照らしている。

淡い栗色の髪が風に舞い、頬にかかるたび、小咲は静かに目を閉じた。

 

手のひらにある、小さな銀色の鍵。

あれほど「埋める」と決めてきたのに、指が震えて離せなかった。

 

小咲「……ダメだなぁ、わたし。これじゃあ、踏ん切りつかないままじゃん……」

 

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ふ、と小さく笑ったつもりだった。

けれど、その声は涙に濡れて、掠れていた。

 

頬を伝う雫。

拭っても、次から次へと零れていく。

 

小咲(……それでも、埋めなきゃ。終わらせなきゃ)

 

そう思っていたその瞬間ーー

 

風を突き裂くような、叫び声が高原に響いた。

 

楽「小野寺ーー!!」

 

小咲「ん……えっ?!」

 

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一瞬、何が起こったのか分からず、呆けたように辺りを見渡す。

そして、風に乗って近づいてくるあの声、あの足音、あの――姿。

 

草原を、息を切らせながら全力で駆けてくる――一条 楽。

 

小咲「えっ……? えっ、ま、待って?! 一条、くん……?!」

 

あまりにも突拍子もなくて、現実味がなかった。

夢かと思った。

けれど、楽は確かにそこにいた。

 

小咲はあまりに驚いて、立ち上がることもできず、ただその場に佇んでいた。

やがて、風を巻き起こして彼が目の前まで駆けてくる。

 

楽「……はぁ、はぁ……小野寺……!」

 

楽の顔は汗と土埃に濡れていたが、瞳だけは真剣だった。

何よりもその声が震えていた。

 

小咲「……どうして、ここに……?」

 

問いかけたその声は、かすれていた。

でも、楽はその答えよりも、今伝えるべき想いを、先に吐き出した。

 

楽「聞いてくれ、小野寺!」

 

その一言には、どんな言葉にも代えがたい必死さが宿っていた。

 

楽「俺はさ……一番大好きな女の子を、一番傷つけて、泣かせ続けた最低な野郎だ。でも……それでも、俺には一つだけ、はっきりと言えることがある」

 

真っ直ぐに、小咲の瞳を見据える。

その瞬間、小咲の胸が、確かに鳴った。

 

楽「俺は、小野寺小咲を愛してる。どうしようもなく。誰よりも、ずっと」

 

まるで、時間が止まったかのような静寂。

耳に入るのは、風の音と、自分の鼓動だけ。

 

小咲「……っ! だ、だめ……ダメだよ、一条くん……。わたし、もう……そんなこと、言われても……。もう、覚悟して……ここまで来て……!」

 

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唇が震え、声がかすれる。

心は溢れそうなのに、口が追いつかない。

 

だけど、楽は構わずに歩み寄った。

 

楽「……でも、小野寺。まだ鍵を手に持ってるじゃないか」

 

その言葉に、小咲の手がぴくりと反応する。

隠そうとするように、握りしめた。

 

楽「もし、もう終わりにしたいって心から思ってたならーーもうその鍵を、持っていないはずだ」

 

楽「まだここにあるってことは、ほんの少しかもしれないけど、迷いがあったんじゃないのか?」

 

小咲「……そ、それは……」

 

手の中の鍵が、急に重く感じた。

言い訳なんて、きっと通じない。彼は全部、見抜いていた。

 

楽「それと……今、千棘に告白された」

 

小咲「……えっ?!」

 

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涙の途中で、息を呑んだ。

声にならない息が漏れる。

泣き疲れていた瞳が、大きく見開かれた。

 

小咲は思わず息を詰め、楽の目をじっと見つめた。

それはまるで、静寂を切り裂く雷のようだった。

 

楽は、それでも真剣な顔を崩さず、言葉を継いだ。

 

楽「正直に言う。かなり気持ちは揺らいだし、千棘との未来も本気で考えた」

 

小咲

「……」

 

思考が追いつかない。

でも、なぜかーーその言葉に嘘がないことだけは、伝わってきた。

 

楽「でもさ。俺が、何をおいても隣にいて欲しい人は、どう考えても、やっぱり1人だけだったんだ」

 

そして、ふたたび前に出て、小咲の目の前に立つ。

 

楽「小野寺……俺の隣で、また笑ってくれないか?」

 

小咲「い、一条くん……」

 

小さく名前を呼ぶ声が震える。

もうすでに、目尻からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。

 

それでも、楽は言葉を重ねた。

 

楽「俺の中には、本物の気持ちしか残ってない。俺は小野寺のことが好きだ。どれだけフラれても、どれだけ距離ができてしまっても……それでも俺は、小野寺のことがやっぱり好きなんだ。どうしようもなく……!」

 

小咲の心が、崩れた。

しゃくり上げる声が洩れ、涙が止まらなかった。

 

楽は、震える拳を胸の前で握る。

 

楽「どうか……もう一度だけ、俺と付き合ってくれないか……! 頼む、もう一度だけ……チャンスをくれ!!」

 

そこにあるのは、真実だけだった。

飾らないまっすぐな楽の心の叫び。

楽なりに誠意を示したつもりだった。

 

しかしーー

 

小咲「……ごめんなさい……」

 

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その一言が、すべてを止めた。

 

小咲「もう、わたし……一条くんとは付き合えない……」

 

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楽「……そ、そんな……!!」

 

信じられないという表情で、楽の目が揺れる。

何度も自分の耳を疑うように、視線が泳ぐ。

 

小咲は、涙でぐしゃぐしゃになった顔を必死に抑えながら、言葉を紡いだ。

 

小咲「……会いに来てくれて、ありがとう。でも、わたしはもう……一度選んだから。きれいな気持ちのまま、終わらせるって……。だから、お願い……もう、わたしを好きでいないで……?」

 

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彼女の選択はーー“拒絶”

その言葉は、誰よりも優しくてーーでも、これ以上ないほど残酷なものだった。

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