ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜   作:nemu1116

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この2人の関係好きです。


シンユウ

高原の風が、色づきはじめたススキを揺らしていた。

千棘は草の上にうずくまるようにして、静かに嗚咽を漏らす。

 

千棘「ありがとう、万里花……。それでも、やっぱり……私は、選ばれなかったんだよね……」

 

万里花は少し目線を外したが、すぐに再び千棘に視線を戻す。

 

万里花「……ええ、その通りです。楽様はお一人しかおりません。誰かが選ばれる以上、誰かは切り捨てられるーー残酷ですがそれが現実です。それでも、突き進まなければならない……それが恋愛ですから」

 

万里花はしゃがみ込み、千棘の体を優しくも力強く、ギュッと抱きしめる。

 

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千棘はもう、こらえきれなかった。

俯いたまま、唇を噛みしめる。

それでも堰を切ったように、涙が止まらない。

 

千棘「……万里花……私……選ばれたかったよ……っ!!」

 

嗚咽混じりの言葉に、万里花は何も言わず、ただ静かに千棘の肩を引き寄せた。

そして、そのまま抱きしめる。

 

万里花「……わたくしだって、そうですわ」

 

優しく、けれどどこか寂しさを滲ませて。

 

万里花「心のどこかで、いつだって“選ばれた自分”を夢見ていた。……でも、現実はそう甘くなかった」

 

万里花「わたくし、途中でわかってしまいましたの。わたくしでは……楽様の“本当の恋”には、届かないって。それでも……完全には諦めてはおりませんでしたけどね♪」

 

万里花は無理やり笑顔を作る。

 

万里花「だからこそ、最後まで願っていたのです。せめて、貴女が届くなら、と」

 

千棘は、ぐしゃぐしゃに泣きながらも、顔を上げた。

 

千棘「……私が?」

 

万里花「ええ。正直に言いますと……わたくし、楽様と両思いの小野寺さんに対してーーではなく、貴女に対して“悔しい”と思っていたのです」

 

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万里花「貴女と楽様の距離感、喧嘩しても戻れる関係、照れ隠しの言葉の裏に見え隠れする真実ーー全部、羨ましかった。ええ、嫉妬ですわ。貴女に対してわたくしの当たりが強かったのは、そのせいですの。今まで申し訳ございません」

 

千棘「万里花……」

 

万里花「だから、貴女が今日、全てが終わるリスクを負ってでも、“それでも一緒にいたい”って、全力で伝えたあの瞬間……わたくしの胸が震えましたのよ。……素直に、すごい、と思いました」

 

万里花の手が千棘の背中をやさしく撫でる。

 

万里花「悔しいです。でも、胸を張ってください。貴女は楽様を“愛した”んです。心から」

 

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万里花「そんな恋は、誰にも恥じるものではありませんわ。絶対に」

 

千棘「う、うぅぅぅ……私、私は……っ!」

 

千棘は、そのまま万里花の胸に顔をうずめた。

肩が震え、声を殺して泣く。

 

万里花「桐崎さん……貴女は、楽様と小野寺さんの両思いーー完全無欠の要塞を、あと一歩のところまで上り詰めたのです。どうか、お顔を上げて誇ってくださいまし」

 

千棘「……う、うぅ……」

 

万里花「悔しいですが、認めましょう。貴女はわたくしが辿り着けなかった位置まで楽様との関係が進展しておりました。正直言って、このまま楽様が桐崎さんを選ぶかもしれないーーそんな世界線すら想像させるまで、貴女は小野寺さんを追い詰めたのです」

 

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万里花「どこかで……何かが……違えば。小野寺さんが今の貴女のように、天駒高原の地に一人で立ち尽くしていたーーそんな未来を連想させるほどに」

 

千棘、万里花の胸で号泣する。

万里花は優しく、何度も千棘の背を叩いた。

 

千棘「……私……分かってたの。楽は、このまま小咲ちゃんのところに行くつもりなんだって。告白しても、フラれるんだろうなって……! でも! ちゃんと……全部、伝えたんだよ……!」

 

千棘「……ええ。ちゃんと見ていましたとも。あなたの言葉、全部届いてましたわ。きっと楽様の心にも……今もずっと残っているはず。胸を張りなさい」

 

千棘「……私は……これから、どうしたら……」

 

万里花「ふふ、これからなんて、今は考えなくていいのですよ。慌てないでください。今は、ただ泣きましょう。ほら、わたくしの胸で存分にお泣きなさい」

 

千棘「……万里花も泣いてるじゃんw」

 

万里花「それは……気のせいですわ///」

 

天駒高原の地に優しい風が吹き、彼女たちの頰をそっと撫でた。

 

ーーーー

しばらくして。

 

万里花「少し、寒くなってきましたわね」

 

千棘「ええ、そうね……。でも、不思議と心はあったかいや」

 

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千棘の目には若干涙の名残はあったが、どこか吹っ切れた様子を見て、万里花は安心したように微笑んだ。

 

万里花「さあ、桐崎さん、わたくしと共に帰りましょう。ヘリの中に“橘特製・元気の出るスペシャル弁当”をご用意しておりますので。美味しいですよ♪」

 

千棘がくすっと笑った。

 

千棘「それ、楽にあげようとしてたやつでしょww」

 

万里花「……はい♪ でも、もう必要ないようですもの。あの方には、もう寄り添ってくれる人が、いますから」

 

千棘「ふーん……いいのかな? 今お腹空いてるし、完膚なきまでに完食しちゃうわよ?w」

 

千棘は目を細め、腰に手を当てる。

万里花は千棘に背を向け、静かに答える。

 

万里花「ええ……いいのです。むしろ、貴女に食べて欲しいのです。桐崎さんは、わたくしの楽様を想う気持ちを唯一共有できるーー大切な親友ですから」

 

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万里花の目には、涙が浮かんでいた。

 

千棘「万里花……ありがとう」

 

万里花「ふふ。だから……今日は貴女のために作ったって、ことにしておきましょう。……たまには、いいでしょう? そういうのもww」

 

千棘は万里花にゆっくりと近づき、万里花の手をぎゅっと握った。

 

千棘「……万里花、あんた、ホンットに優しいのね」

 

万里花「ええ、はい♪ これでも淑女ですから♪」

 

千棘「はいはいw そーでしたねww なんで私が泣き止んで、アンタがまた泣いてるのよww」

 

万里花「……泣いてません♪」

 

千棘「いやいやww めっちゃ涙出てるしww」

 

万里花「汗です♪」

 

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ーーーーー

万里花(ふふ……楽様、おめでとうございます。わたくしから祝福の証として、サプライズをご用意しましたの。ぜひ、堪能してくださいね♪)

万里花は意味深に微笑むと、人知れず、千棘とともに風の吹く草原をゆっくりと歩き出す。

沈みかけた太陽が、二人の背中を黄金色に染めていた。

千棘は、もう振り返らない。

万里花とともに、少しずつ、未来へ向かって進みはじめた。

心に残るものはまだある。

けれど、その痛みさえ、やがて彼女たちの糧になるだろう。

 

そうーーこれは、ある恋の終わり。

そして、その一方で、次の恋の始まり。

そうあって欲しいと願いながらーー

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