其は人類最後の/   作:血中ウィルキンソン濃度

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Initium Iter

 あなたは決して英雄の器ではない。

 

 剣も弓も槍も振るえない。

 

 乗騎は無く、魔術は使えず、闇夜に紛れず、狂乱しない。

 

 公平な秤を持たない。恩讐の炎に身を焼かない。

 

 月に住まわず、別人格に乖離せず、遥か果てから降臨せず、役を羽織らず。

 

 無論、不撓なる盾も持ちはしない。

 

 

 其処には愛がある。

 あなたは決して認めようとはしないだろうけど。

 

 一人の善きヒトとして、当たり前のように他人を愛している。

 目の前のヒトに手を差し伸べる。一歩一歩、前を見据えて歩いていく。ただ一人のために/総ての人のために。

 

 

 其処には罪がある。

 あなたはきっと頷いてしまうだろうけど。

 

 救えなかった人がいた。見殺しにしてしまった人がいた。

 7つの世界を滅ぼした。己の世界を救うために。蜃気楼のように消えていく人々がいた。

 

 

 

 笑いがあった。涙があった。希望があった。絶望があった。郷愁があった。後悔があった。

 数多の出会いと別れと共に、長い長い旅路を駆け抜けた。

 

 この物語(グランドオーダー)を以て、あなたのクラスはクラスは決定された。

 

 即ち────。

 

 

 

 

 

 目が覚めると、真っ青な空が遠く遠く広がっていた。

 

「ここ…………どこ………?」

 

 そこは一面の銀世界だった。

 

 白紙化地球、ではない。体が沈みこんでいるのは柔らかな雪だし、疎らだが木や建物があるし、遠くには微かに稜線が見える。それでも状況の不可解さは変わらない。

 

 こんな風景に見覚えはない。

 北海道?東北?北陸?

 いや、日本国内と言う予想すら楽観的なものだ。シベリア、カナダ、グリーンランド、まさか南極?いったい全体、どうしてこんなところに。

 

 前後の記憶が曖昧だ───レムレムの時には大抵そうだけど。また何か厄介な特異点にでも巻き込まれたか。

 できるだけ記憶を思い出してみよう。

 

 オレは藤丸立香。人理保証機関カルデアのマスター。

 7つの特異点、そして時間神殿を攻略して人理焼却を解決した。

 4つ……いや、5つ?の亜種特異点を乗り越えた。

 7つの異聞帯を切除し、4つの責務を踏破した。

 

 そして……そして南極に行った。地球白紙化を解決した……はずだ。そう。すべて終わって……終わって?

 

 おかしい。

 ならどうして、オレはここにいるんだろう?

 まだ解決されていない問題が残っているのか?

 もしや何か人理漂白に続く新たな世界滅亡が発生して、それに巻き込まれた?

 

「は、は、はは」

 

 まて、まて、まて。いくら何でも。

 

 否定する言葉は頭をぐるぐる回って、それでも否定し切る根拠が得られない。雪に埋まったままの手足が震えるのは、寒さのせいではない。

 

 落ち着け。落ち着け、藤丸立香。

 今取り乱しても得るものはない。自分にできることを、一歩ずつ。お前が今までやってきたことだろう。

 

「よ………よしッ」

 

 腹筋に力を込めて体を起こす。

 体を見下ろせば、身に纏うのは決戦用カルデア制服。

 

 そう、それがおかしい。

 人理漂白の解決を以て、オレはカルデアの所属から離れたはずだ。この服だって……オレは、この服をどうしたんだったっけ……?

 

 落ち着け、大丈夫だ。記憶喪失なんて珍しいことじゃない。

 

「今の状況より、この認識の方がよっぽど怖いんじゃないか……?」

 

 右手を見れば、令呪が……無い。

 つまり、オレはもうマスターでは無い。

 当たり前だ。もうカルデアの人間ではないのだから。

 当たり前だけど、右手の甲が空っぽというだけで胸が軽く疼く。

 

 えーっと。

 分かったこと。今のオレはカルデアの所属でも、マスターでもない。なのになぜかカルデアの礼装を着て、記憶喪失のまま雪原に放り出されている。

 端的に最悪だ。愉悦竜が見れば笑いだしそうな窮地じゃないか。

 

 これ以上確かめるべき事が思いつかない。

 他に手がないなら、早速周囲の探索に出るべきだ。

 でもその前に、疲れた頭を休めよう。

 

 王様に教えてもらった瞑想法。

 再びごろんと雪に寝転がる。目を閉じ、視線を瞼の裏、遠くへ向ける。深く息を吸い、細く長く吐く。すー、はー。すー、はー。

 意識的に、無意識の世界へ。落ち着いて、落ち着いて……。

 

 瞬間、ふっと体感覚が遠ざかった。

 

「!?!?!?」

 

 なに!?なに!?なに!?

 ウルク式瞑想はこれ程暴力的な離脱感を伴わない。

 落ち着いた気持ちなど何処へやら、跳ね起きて体を見下ろすと。

 

「えっ!?透けてる!?……エッ!?」

 

 幽霊?オレ、一瞬で死んだ?いや、死体が残ってないからそんな訳無い。

 体は動く。少なくとも、その感覚がある。聴覚はくぐもったように感じる。体が軽い。

 怖くなって体に力を込める。

 途端、ふっと体が再出現した。

 微かな光の粒子が舞う。

 そう。まるで────。

 

 念じると、体が消える。

 念じると、現れる。

 消える。現れる。消える。現れる。光の、魔力の粒子が舞い散る。

 

 この現象には見覚えがある。

 

「……霊体化?」

 

 サーヴァントの能力の一つ。

 思い出すはカルデアでの日々。

 霊体化して、こっそりマイルームに入り込むサーヴァント達。

 ベットの下に。ダクトの中に。剛胆な者は、見えないのを良いことにやりたい放題……今はどうでもいい。

 

 まさか。

 オレが、サーヴァントに?

 

 一切自覚がない。否定する言葉はいくらでも沸き上がってくる。そもそもオレには死んだ記憶も、抑止力と契約した記憶もない。

 いくつか納得はある。

 サーヴァントはその者の最盛期の姿で召喚される。オレの最盛期が人理漂白解決直後、と認識されて、その上何らかのイレギュラーによってそれ以後の記憶がない状態で召喚されれば。

 ありえない、と言いたいが、実際自分の死を認識していなかったサーヴァントもいたし、おかしな話ではない。誰かに「お前の人生そっから下り坂だよ」と言われているようで腹が立つが。

 それにいくら決戦礼装が優秀とは言え、こんなに雪に手を突っ込んで冷たさを感じない訳が無い。サーヴァントになったなら、体が強化されててもおかしくない。

 

 物は試し。体が強化されているなら、垂直跳び自己ベストを更新できるはず。わが記録は68cm。

 イメージするものは常に最強の自分。筋力、敏捷が高ければ、10mも夢じゃないかも!

 

「いくぞいくぞいくぞ……そーい!」

 

 あい、きゃん、ふらい!

 

 記録、1m13cm(目算)。なお、ギネス記録は1m22cm。

 驚異的な記録には違いないが、ビルの壁面をピョンピョン跳び移るサーヴァントたちを思い出すと、残念感が強い。作家の面々より高かったのは救いか。

 

「とはいえ、こんなに跳べて生身は無いよな」

 

 垂直跳び選手に成る予定もないし。

 

「………サーヴァントかぁ!」

 

 そもそも根本的な問題は解決していない。オレはどうしてここにいるのか。聖杯戦争に喚ばれた、にしては周囲にマスターらしい魔術師はいない。そもそも人の気配がない。

 何らかの理由で召喚者が遠くにいるのかもしれない。聖杯に喚ばれた逸れなのかもしれない。キャスター達なら分かるだろうけど、オレにはさっぱりだ。こんなことなら二世とメディアの講義をもっと受けておけばよかった。

 

 そもそもサーヴァントは召喚される時に、聖杯から知識を授かるはずだ。オレにはそれがない。

 それ以前に、自分のクラスも分からない。真面目に考えればキャスター?あり得なくはないが、オレは別に魔術師じゃない。アヴェンジャー?忘却補正が無いから違うのではないか。ルーラー?オレに公平性はない。アルターエゴ?プリテンダー?思い当たるフシはない。まったく分からん。

 何たる事だ。おのれ聖杯。

 

「う~~〜〜ん……うん?」

 

 頭を抱えて悩む……と、手に何か硬い感触が当たった。

 

 何か小さな、それでいて確かな存在感を放つそれは……。

 

 

 

 角。

 獣性の証。

 

 

 

「…………なんでさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 故に、あなたのクラスは決定された。

 人類最後のマスターなぞ、偽りの名。

 其は人類には記憶されない、人類史で最も多くの救済を成した大災害。

 数多を滅ぼし、数多を救った罪を背負う、最も新しい悪。

 ビーストV/P(プネウマ)。七つの人類悪の一つ、その片割れ。「生存」の理を持つ獣。

 

 心配することはありません。

 私たちは皆、あなたの事を覚えている。

 ただ一つ、言う事があるとすれば………。

 

 待て、しかして希望せよ。

 その時、あなたはすべてに勝てるでしょう。

 

 

 

 

 

プロフィール

 

クラス:ビーストV/P

真名:藤丸立香

身長:172cm

体重:59kg

出典:Fate/Grand Order

属性:中立・善・獣

地域:日本、その他

 

 

 

 

 

ステータス

 

筋力:D

耐久:EX(E)

敏捷:D

魔力:E+

幸運:B

宝具:EX

 

とても貧弱な霊基だが、異常に打たれ強く、しぶとい。

 

 

 

スキル

獣の権能:E

その世界の人理に対する特効。「世界を滅ぼす者」である藤丸立香は、世界のテクスチャ、それを支える者に対して優位性を持つ。具体的には抑止力、守護者への特攻、特防。結果と肩書きから獲得したスキルであるため概念強度は弱く、最低ランクである。最大の利点は、現界に際し冠位英霊の目を逃れることが可能な事。

 

単独顕現:E−

単体で現世に現れるスキル。記憶の保持も、時空間移動も出来ない。即死攻撃に耐性がある程度。

「条件の整った場所に勝手に召喚される」という、殆どデバフのようなスキル。

 

ネガ・フィニス:A-

終焉の否定。「生存」の獣であるビーストは、あらゆる「おしまい」を否定する。いくら罪と重責を背負おうとも、その歩みは止まらない。

その本質は押し付け。彼の背負ったその罪と重責は、顔のない「人類」によって強いられたものである。七の世界を滅ぼす大虐殺こそが彼の悪であり、何食わぬ顔で原罪を代行させた事こそが人類の獣性と言える。

強迫観念に近い生存への希求。しかしその方法を決める権利は、他ではない彼の手の内にある。たとえ強いられたものだとしても、目を逸らさずに向き合ったのだから。

 

星のカリスマ:D+++

人理修復の旅で磨かれた人間的魅力。大軍団の指揮には向かないが、誰かの道行きを確かに照らす星になる。団体戦において味方の戦力を底上げし、一部対象の士気を大幅に向上させる。

 

逆境踏克:A

嵐の中でも光を辿り歩き続ける。あらゆる困難を克服してきた精神性の象徴。立ち止まるのも、振り返るのも、一瞬。戦術眼、仕切り直し、戦闘続行の複合スキル。窮地においては全ステータスが1ランクアップし、幸運は2ランクアップする。

 

夢界接続:C

レイシフト適性が100%である藤丸立香の肉体は、異界と繋がりやすい。いわゆるレムレム。

 

英霊の祝福:EX

藤丸立香は多くの英霊達に祝福されている。世界の壁さえ越えた絆。そのスタンスは英霊により異なる。座から静かに見守る者もいれば、経路が開き次第直ぐにでも飛び出そうとするものもいる。

 

 

 

宝具

『満天流る送り歌(アンチシステム・フェイト)』

ランク:EX

種別:対人宝具

レンジ:??

最大捕捉:1人

 

いつか見た星空。遠く、美しい日々の象徴。

常時発動型宝具。藤丸立香はその肉体、精神に英霊達との縁が刻み込まれている。その強度はあらゆる聖遺物を凌駕する。

彼が人理修復の旅の中で英霊から贈与された品々を自由に取り出すことができる。

また、この宝具により英霊の「座」との経路が形成され、接触が可能になる。

 

 

『人理未定・救世探訪(ロストプルーフ・グランドオーダー)』

ランク:B++

種別:対粛正宝具

レンジ:50

最大捕捉:99人

 

聖杯探索、その遠大な旅路の具現たる宝具。確定した未来を打破し、希望を繋ぐ。あるいはそれは、世界にとっての絶望か。

戦闘では絶対の防御、必殺の攻撃を相殺し、対処可能な領域に堕とす。

その本質は、事象の不確定化。ビーストとしての能力を最大限活用することで、抑止力による世界の剪定すらキャンセルし、事象全てに不確実性と無限の可能性を与える。

 

『追憶■■喪■■七咎(■■■■■■■■)』

ランク:■■

種別:対人宝具

レンジ:??

最大捕捉:??

 

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 人理と抑止力の使い分けが分からない…………。

 もしよろしければ、「ここはこうじゃない?」「こういう設定も面白くない?」などの感想を書いて頂けると、作者が感動で咽び泣きます。
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