大天狗令嬢 vs シャーマンスープレックスホールド 作:いぶりがっこ
『北辺』に残る名もなき都は、現代の文明をも上回る治水技術を有し、その地下に広大な上下水道を備えていた。
地上の都の拡大と共に、拡張を続ける地下施設は次第に複雑化の一途を辿り、さながら巨大な地下迷宮を形成していく事となる。
都が
広大なる迷宮の最深部。
誰も知らぬ秘密の拠点の奥底で、今、四人の人外が円卓を挟んで向かい合っていた。
「……シトロンが斃れたようだな」
分厚い甲冑を擦らせて、『
重厚な
「もっと早く、私が事態に気付いてさえいれば……」
握り締めた拳を震わせ『
雷鳴を統べる
「彼奴を倒したのは
あのような埒外の天魔の襲来など、誰が予見できようものか」
皺枯れた声を響かせて『
不死身の肉体に数千年の知髄を蓄えた、魔王軍四天王の参謀役である。
「ククク……、シトロンなど所詮、腕っぷしだけが取り柄の小物。
結局ヤツは四天王の器では無かったというだけの事よ」
下卑た嗤いを浮かべながら『
一部資料によれば四天王に名を連ねる事があったり無かったりするという、魔王軍四天王の第五の男である。
「どれだけ綺麗に言葉を飾った所で、魔族の流儀は弱肉強食。
弱卒が一人が斃れただけの話に、やれ会議など……。
名高き魔王軍四天王とやらも、随分と腑抜けになったものよのう」
「…………」
「強者に必要なのは絶対的な孤独のみ。
協調だの連携だのの女々しい思想は、不純物にしかならんわ。
我々の内の誰かが、彼奴ら身のほど知らずどもをぶち殺す。
それ以上の馴れ合いは必要あるまい?」
傲岸不遜なマンジューの言葉を、三人が無言で黙殺する。
こう見えて彼ら魔王軍四天王は、互いの強さを
如何に強くとも、仲間への敬意と知性に欠けるマンジューの言葉が、他の幹部たちに受け入れられる事は無いのだ。
そもそも孤高を由とするならば、コイツはなんで幹部会などに顔を見せたのか?
いや、そもそもの話、正規の四天王でも無いヤツが、どうやって今日の会合を嗅ぎ付けたのだろうか?
だが、この逼迫した状況下で、敢えてマンジューにそれを問う者はいない。
四天王で無いとは言え、マンジューが軍内で五、六番目の実力者で有る事だけは間違いないのだ。
ただでさえ謎の乱入者の前にシトロンが斃れ、無傷の巫女が魔王の本拠に迫ろうとしているこの状況で、更に仲間割れを起こそうなどと愚者の所業である。
そのような思惑交じりの沈黙を黙認と受け取ったのか、へっ、と一つマンジューが吐き捨て笑いを浮かべた。
「早い者勝ちと行こうじゃないか、なあ大統領?
敵が怖いならそうやって、魔軍司令の椅子でも磨いておるがいいさ。
この『十万石』のマンジュー様が仇敵を葬り去る姿を、指を咥えて見守っておるがよい!」
そう言って腰を上げたマンジューの姿を、三者が冷ややかな視線で見送る。
どの道、このような傍若無人な輩と連携など望めようはずが無い。
幸いな事にこいつは今、自分からいの一番に敵と当たると言ってくれているのだ。
マンジューが万が一にも勝利してくれればそれでよし。
敗れたならば、その敗因を分析して次の戦いに備えていけばいい。
三者は内心そのような事を考えながら、無言の仮面の下で、ほっ、と安堵の吐息を吐いた。
刹那、何事かの殺気を感じ取ったカフェの指先が、ぴくん、と反射的に跳ね上がった。
「イカン、皆、入口から離れろッ!」
「応!」
「承知」
「……あん?」
さすがは名だたる魔王軍四天王である。
カフェが叫ぶとほぼ同時に、三者はまさしく阿吽の呼吸で、見えざる殺気の射線から大きく飛び退いていた。
ただ一人、呆気にとられたマンジューを除いて……。
「破 王 天 ・
ドワオッ!!
瞬間、凄まじい衝撃の奔流が、重々しい鉄扉を真正面からぶち抜いた!
青白い
「ばッ! バ、バカなあアァああアアァアァァァーッッ
この十万石のマンジューともあろう者がっこのような所でエェェ―――ッ!!」
十万石の断末魔が激流の中に潰え、やがて閃光が霧散したとき、五人目の四天王の姿は一片たりとも地上に残っていなかった。
「ホーホッホッホ!
流石はかの『
この程度の不意打ちなどでは、到底通用しないようですわね」
「何奴ッ」
凄惨な破壊の爪痕を睨みながら、ド=ノエルが顔を上げる。
生温い殺気の旋風を孕み、カラン、コロンと高下駄の音が響き渡る。
漆黒の
金色の髪を
「用心せい、ノエル」
臨戦態勢に入ろうとした大統領の後背から、魔軍の知性がぼそりと囁く。
「今の青い炎は地上の
西方の魔術理論に東洋の神仙道をミックスした、まったく新しい気功術と見た」
「東洋の神仙術!?」
「ならば……貴様が名にし負う極真大山の
極真の大天狗。
拠点を襲った乱入者の正体を認め、たちまち三者の目の色が変わった。
さして広くもない室内に、たちまち殺意の渦が凝集していく。
「大天狗とやら、よもや貴様の方から出向いてくるとは好都合よ。
我が終生の友『
ガシャリと一歩、重鎧が前に出た。
漆黒の甲冑の奥で、ちろり、と灼熱の瞳が鬼火を灯す。
「シトロンの怒りを!」
ぶわっ、と四足を突いた雌豹の髪が紫電とともに逆立ち、その身が金色の体毛に覆われていく。
「終末公の無念を」
しゅるり、と枯れ木の腕が無数の触手のように解け、虚穴となった腕の奥から、髑髏の杖が現れる。
三者三様。
剣呑なる空気を纏い戦闘準備を整えた魔人たちを前に、仮面の奥で乙女がちろりと舌を舐める。
「魔王軍四天王。
今の私には
ただ一時、我が征く道先を遮った、己の不運を地獄で嘆きなさい!」
吠えながら、天狗が高下駄を脱ぎ高らかと飛び上がった。
同時に三者が大地を蹴り、風を巻いて走り出した。
名もなき都の忘れ去られた地の底で、今、神と魔の因果から切り離された、知られざる闘いのゴングが鳴った。
・
・
・
地の底にまで続いているのではないかと言われるその巨大な裂け目は、太古の時代、地殻変動とともに『北辺』の中央島を襲い、当時この地に栄えていた海洋国家の都を跡形もなく破壊した。
住まう者なき廃墟と化した島々は、やがて地の底から現れた魔王率いる怪物たちの棲家となり、
時は流れ、現在――。
当代の
「……あれが、当世の魔王の『城』にござるか」
岸壁切り立つ断崖より『閃光』の剣士ブードゥーが、眼下の光景を忌々し気に睨み据える。
瓦礫に埋もれた都市の中心にそそりたつ半球の
その漆黒がいかなる物質で構成されているのか、遠目には推測もつかない。
半球の外殻には歪な尖塔が生き物のように生え揃い、見る者の美的感覚を狂わせる。
「魔王の『城』は
地の底より吹き出る瘴気を内部に取り込み、漆黒に染まると言います。
濃縮された闇の波動は六芒星の中心たる玉座に注がれ、魔王の力を永遠にするとも……」
古文書の一説を諳んじて『破壊王』ホンブリッヂが息を呑む。
少なくとも眼下には、古文書の記載を裏打ちする形で、禍々しい『城』が存在している。
ならば峡も魔王も、やはり間違いなくこの世に実在するのであろう。
カルラはしばしの間、そそり立つ魔城の異形を無言で見つめていたが、その内にゆっくりと振り返り、後背の三従士の顔を見渡した。
「みんな、ここまでの過酷な戦いについてきてくれて本当にありがとう。
みんなと一緒に旅を出来た今日までの日々を、心より光栄に思います」
「えっ」
「ここから先は、
みなは皇都に戻り、皇国の人々の為に尽くしてください」
「馬鹿な!?
あの忌まわしき魔王の居城に、貴殿一人で乗り込むと言うか!」
「む、むむむ、無謀ですカルラさま!?
魔王の麾下にある四天王たちは、まだ三人も姿を見せておりません!!
それに、それに……!」
思いもよらぬカルラの言葉に、泡食ったホンブリッヂが更に言い募ろうとする。
その前を、すっと白い指先が遮った。
断腸の想いを嚙み殺すように唇を噛んだ『蝶夫人』パピヨンの顔。
常ならぬ年長者の苦悶の表情に、残された二人もわずかに冷静さを取り戻した。
そう、三人とも、宿命に彩られた
一週間前、一行が四天王の一人『
あの時放たれた渾身の
その面立ちから年相応のあどけなさが薄れ、時折このような無謬の瞳を下界に向ける。
個を殺し、少女は純粋な
元より聖痕三従士とは、巫女が魔王の居城に辿り着くまでの露払い。
太陽神の代弁者たる、巫女の決断を遮る事など出来よう筈がない。
何より、あの超常の
「一足先に、皇都にてお待ち申しております。
どうぞ一刻も早く、無事にお戻りください」
震える感情を押し殺したパピヨンの言葉に、カルラは無言で頷くと、次の瞬間、さっと身を翻し鮮やかに断崖へと飛び立った。
(確かに『北辺』に来て以来、わからないことが多すぎる)
瓦礫交じりの急勾配を軽やかに跳ねながら、カルラが一人思考する。
仲間たちとの別離の情は、確かに胸の奥底に燻っていたが、それ以上に目の前に溢れ始めた疑念が、少女の胸中を搔き乱していた。
なぜ、敵は誰一人として襲ってこないのか?
古の神話に謳われる魑魅魍魎の軍団はどこに消えたのか?
魔王は、
かかる想定外の事態すらも、太陽神の導きの内と、あるいは魔王の狡猾な罠とでも言うのか?
――いや
一つだけ、誰が今、この舞台劇を搔き乱しているのかだけは知っている。
遥かな太陽神と魔王との歴史に、一切絡まぬ門外漢。
四天王随一の肉体を有した終末公を、真っ向からの肉弾戦で制した極真の
ザッ
立ち込める土埃を掻き分け、太陽神の巫女が魔城の正面へと降り立った。
見上げるほどの漆黒の半球。
立ち込める大虎峡《タイガーホール》の瘴気で形成された漆黒の外壁は、果たしてこの世の物質なのか、この至近にあってもその正体を定かにしない。
駆け寄って、より詳細を確認したい。
だがその前に、カルラには清算しなければならない過去があった。
「……追いかけっこは十分でしょう。
ここにはもう、君とボクの二人しかいないよ」
ある種の確信を持って、悠然とカルラが後背に視線を向けた。
同時にカッ、と乾いた高下駄の音が石畳を叩く。
漆黒の
じっと目線を細めて見れば、ところどころ外套はほつれ、わずかに覗いた両腕には、以前よりも生々しい傷痕が残る。
だが、その全身から立ち上る殺気は却って雄大さをを増し、仮面の中心から延びる傲慢は、いよいよ天を衝かんばかりに荒々しく漲っていた。
「貴方にしては随分と、回りくどい手を使う。
……そうじゃないか、ゴリィ=アントワネット=ギロチンドロップ」
「人より生まれた皇国の徒花、
ゴリィ=アントワネットは十九で死にましたわ」
言いながら、ゆるりと天狗が身を起こした。
仮面の奥の瞳に、ちろりと魔性の炎が燃える。
「ここにいるのは極真大山の
神も悪魔も知ったこっちゃないただ一匹の獣が、西域の伝説に挑戦しようというのです」
「ただの獣と言うのなら、尚の事、今日、この場にこだわる理由なんて何処にもないじゃないか?
ボクの方はいつだって良かった。
戦闘の最中だろうが、街中だろうが、野営の時だろうが、小舟の上だろうが」
「強者というのは、常に貴方を手本とするべきね。
その潔さは貴方のものか、あるいはどこぞの借り物か……?」
微かに熱を帯びたカルラの言葉を、仮面の奥でクスリと微笑してやり過ごす。
だが言葉とは裏腹に、天狗の内に宿った青い炎は、いよいよその激しさを増そうとしていた。
「……けれど、
言うと同時に、天狗が鮮やかに外套を翻した。
東方風の洗い晒しの胴衣の腰に、不釣り合いな
金色の髑髏の紋様が施された異様なベルト、その四辺には眼球ほどの四つの
ぴくん、と巫女の体が微かに震える。
その
だが、四つの宝玉という数の符号が、本能的に巫女の脳裏を走り抜けた。
「
太古の時代、
溢れ出す瘴気を制御する四つの
この統一ベルトなくして、魔王城の結界は破れませんわ」
言いながら腰元のベルトを外し、高らかとカルラの眼前に晒す。
確かに彼女の言う通り、四つの
故郷へと帰る道を求めて震えていた。
「時は来た、それだけですわ!
さあ、
凛呼とした天狗の咆哮が、ビリリ、と大気を震わした。
両者の間合いの内で、ぐにゃり、と空気が歪み、闘争の予感がみるみる膨れ上がっていく。
「……ふ」
くすり、と微かにカルラがらしからぬ微笑を浮かべた。
ふっ、圧力が緩んだ瞬間、カルラは既に天狗に背を向け、悠々と魔城に向けて歩み始めていた。
カルラはやがて、魔城との境で足を止めた。
視界を覆う、物質ともエナジーともつかぬ漆黒の結界を前に、ほう、と一つ溜息を吐き出す。
「資格、など――」
そう呟くが早いか、カルラは突如大きく腰を落とし、漆黒と大地の狭間に勢い良く両手を突っ込んだ。
唖然とする天狗を置き去りにして、腰を入れ、両足を広げて大地に踏ん張り、両の奥歯を粉砕せんばかりに喰い縛る。
「うんぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぅうぅぅぅっ」
広背筋が盛り上がり、乙女の唸りが大気を震わす。
やがて、渾身の馬鹿力に呼応したかのように、ズ、ズズン、と大地が鳴動し、瞬間、少女の両脚から四方に向け勢いよく亀裂が走った。
「ま、まさか……!」
驚く間もなく、周囲の地形がボゴン!と一斉に陥没し、天狗の体が擂鉢状となった瓦礫の半ばに跳ね飛ばされる。
かろうじて体勢を立て直し見上げた先で、巨大な漆黒の
「馬鹿な……」
常軌を逸した世界を光景に、間の抜けた感想が洩れる。
だが、見たままを語るしかない。
カルラ=クラウザーは今、邪悪なる魔性の結界を、
堅牢な大地と、完全なる精神、そこに健全なる肉体が加わった時、この地上のありとあらゆる物質を、我が臍の上に預ける事が出来るだろう。
偉大なる
だが、本当にそれを実践する馬鹿があるか!?
神は一体、何をやっている!
この文字通り驚天動地の光景すらも、大いなる
知らず仮面の内側で、にやり、と恐怖の笑みが顔に貼り付く。
だが、惚けてばかりもいられない。
この
足元は地獄に続く釜の底、天空には日の光を遮る漆黒の大壊球。
天地の狭間でサンドイッチとなったゴリィに、もはや逃げ場はない。
「ド ォ ウ リ ャ あ ア ァ あ ぁ ァ―――ッッッ!!!!」
荒れ狂う天地を引き裂いて、少女の、巫女の、
泣き叫ぶ大地を漆黒の闇がすっぽりと覆い尽し、空より破壊が降ってくる――
・
・
・
――ドワォッッ!!
「オオ!」
凄まじい爆音と共に天空まで土塊が高らかと舞い上がる様を、三従士たちは海上にて目撃した。
たちまち襲来した鳴動が容赦なく小舟を揺すり、立て直す間もなく、海上を埋め尽くさんばかりの大津波が立ち上がる。
「ぬぉわっ、どっッしゃああああああああいっっ!!」
いち早く我に返った『
新たに出現した破壊衝動の水柱が大津波と相殺し、かろうじて難を逃れた小舟の上に、海水のスコールが叩きつけるように降り注ぐ。
この世の終わりのような激動に晒されながら、それでも一同は歯を喰い縛り、一様に破壊の彼方を睨み続けていた。
この凄まじい爆烈の源が
たとえ今世の大魔王であろうと、あの小癪な天狗であろうとも、この爆烈を前に生き残る事は不可能であろう。
運命の巫女は、己の使命を成し遂げたのだ。
だが、これほどの破壊の中心に居て、果たして巫女自身は無事であると言えるであろうか?
先代の
あの少女は、再び一人の少女として、生きて祖国の地を踏む事が出来るのだろうか……。
「…………」
結論から言えば、カルラ=クラウザーは、未だ破壊の只中に居た。
渾身の
力無く、だらりと弛緩した少女の肢体に、破壊の嵐が降り注ぐ。
だが、天まで舞い上がった巨大な土塊も、わずか一片の石礫すらも、少女の体を傷つける事は叶わない。
舞い降る瓦礫は自ずから少女を擦り抜け、ただその周囲のみに破壊の爪痕を刻んでいく。
まるで少女の手が届く0.5バーバの真円のみが、下界の風景から切り離されたかのように平穏を保ち続けていた。
力無き人々が見れば、まさに
……そう、この力が『奇跡』で無くて何だというのだ?
最初にこの『力』を自覚したのは、
恐るべき
そして再び気が付いた時、目の前には今日のような破壊の爪痕と、血塗れでこちらを見つめる乙女の姿があった。
あの日、この体の内から溢れ出した力の正体が何だったのか、カルラ自身にも未だに理解できてはいない。
だが、戸惑う少女の内側で『力』は日増しに膨れ上がり続けていた。
この力は、いずれ自分自身にも制御できなくなる。
その時『力』の犠牲となるのは、あの可哀そうな
自身の内に宿る力を少女は畏れ、そして一つの決断をした。
少女の力を奇跡と称える人々の熱狂に乗り『
伝承になぞらえ魔王と戦う人々の牙となる。
この力の是非も、善悪すらもカルラには分からない。
だが、愛すべき人たちを傷つけ、魔物として人里から追放されるよりは、人々の望む
カルラには、戦いの後、ついに人々の下へ帰らなかったという、顔も知らない先代の巫女の心情が痛いくらいに理解出来た。
いずれにせよ、これで全てが終わった。
顔合わせもしなかった魔王とやらも、これでははもはや、崩れ落ちる居城もろとも
ひとり残った自分も、先代の示してくれた道の通りにすればいい。
……たとえ彼女が、運命の奴隷になる生き方を、絶対に認めぬ性質だと分かっていても。
「ホーッホッホッホッホッホ!」
突如、甲高い
驚き見上げた巫女の瞳に、逆光を背負い漆黒の翼が影を為す。
極真大山の
人三化七。
性、傲慢にしてその正体を知らず、神に唾吐き我がもの顔で天空を駆る。
東洋の天魔神仙の類と謳われ、西方において唯一人、
「大地を哭かす大神の鉄槌、まずは見事……と、言いたい所ですが!」
吠えながら、乙女が中空で体を捩じる。
引き絞られた剛弓の如く、その全身に凄まじい応力が漲っていく。
「たとえ島一つを鎮める制裁と言えど、この空の広さには到底及びませんわッ!!」
渾身の舌鋒と共に、乙女が剛弓を解き放った。
うねりを加えた
「爆 烈 天 ・
瞬間、強烈な閃光が天狗の爪先から爆発した!
中空の巨大な外壁が立ちどころに四散し、散弾の如くカルラの元に飛来する。
「ムン!」
突如その身を襲った瓦礫の雨霰に対し、カルラは尚も冷静であった。
迫り来る弾丸の軌道を瞬時に見極め、体を通る欠片だけを、冷静に捌き、切り落とす。
まさしくは金城鉄壁。
たとえ
ガイン!
不意に指先に衝撃が走った。
反射的に左腕が跳ね上がり、鉄壁の防御が崩れ、視界の先で役目を終えた木片が落下していく。
(
慮外の奇襲に気を取られた一瞬が明暗を分けた。
カランと下駄が鳴いた時、天狗は既に一本の
「猪 凸 天 ・
螺旋を刻んだ乙女の傲慢。
天狗の