大天狗令嬢 vs シャーマンスープレックスホールド   作:いぶりがっこ

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最終話「ゴリィ天地を砕く!」

 

 初春の草原に、ぽつら、ぽつらと白い点描が息づき始めていた。

 暦の上で春を迎えたとは言え、高原に吹く風は未だ厳しさを残している。

 『名残雪(ラストスノウ)』の名を持つ早咲きの白百合たちにも、開花にはしばしの時が必要であった。

 

 この丘が、純白の百合で満たされる時、眼下に広がる(セント)クロックアップ学園の子女たちも、新たな巣立ちの季節を迎える事となる。

 季節は巡る。

 皇紀1130年、春。

 カルラ=クラウザーは友人たちを連れ立ち、未だ蕾の花園の頂上を目指していた。

 

 二年ほど前、少女は時代の中心に在った。

 神から与えられた奇跡の力と使命を胸に、皇都の人々の希望を一身に背負い、ひとり北辺の地へと旅立っていった。

 困難な冒険の末、少女の祈りは地上の闇を打ち払い、太陽神(ゴッチ)巫女(シャーマン)は現代の神話となった。

 

 今、カルラの中にかつての奇跡は残っていない。

 一年間の闘いの爪痕が残る肉体があるだけだ。

 時折、手にした杖の付き損なって体が泳ぐ。

 その度に慌てて身を乗り出す友人たちを制し、少女は黙々と丘の上を目指していた。

 

「それにしても、皇都の郊外にこのような花園があるとは知りませなんだ」

 

「この白百合の丘はね、麓に立つ聖クロックアップ学園の生徒たちにとって特別な場所なのよ。

 名残雪(ラストスノウ)の純白の花弁、乙女の魂の清らかさを称えると言ってね」

 

 物珍し気に辺りを見渡す『閃光(シャイニング)』ブードゥーに、傍らを歩く『胡蝶夫人(マダム)』パピヨンが微笑をこぼす。

 彼女たちも一昨年の戦いの際、巫女を支える聖痕三従士として覚醒を果たし、カルラの冒険に最後まで付き従った勇士であった。

 

 魔王が地上を去り、太陽神(ゴッチ)の加護が薄れた今、かつての三従士も役割を終えた。

 元々、三人が三人とも、それぞれの分野の頂点を極めたひとかどの達人ではあったのが、現在の彼女たちにはもう、人の子の限界を超えた力の痕跡は残っていない。

 

「ええと、この花園は一昨年の天変地異で一度崩壊していたんですが、

 皇国一の大貴族であるギロチンドロップ公爵家の尽力でここまで再建されたんですよ。

 一般客への正式な公開は、来月の開花の時期を待ってからになるそうで――」

 

 最後尾に居た三従士最後の一人『破壊王(デストロイヤー)』ホンブリッヂが、前を行く二人にそのように説明しかけ、そして少し小首を傾げた。

 

「……カルラさまは、公爵家の方々ともお付き合いがあるのですか?」

 

 ホンブリッヂの問いかけに、カルラは答えなかった。

 ただ、目指す丘の上からこちらに下ってくる二つの人影を認めて足を止めた。

 

 巌の如き逞しい肉体を有した、屈強の女戦士が二人。

 揃って花園よりも戦場が似合いそうな、逞しい威容の乙女たちであったが、彼女たちが今日、その身に纏っていたのは、華やかな闘衣(レオタード)ではなく、落ち着いた黒の喪服であった。

 乙女たちの放つ歴戦の闘気に、思わず身構えた三従士たちを片手で制し、カルラが深々と一礼する。

 

「ご無沙汰しています、ダイベアー先輩、アッチャブゥ先輩」

 

「……っす」

「しゃあ……」

 

 久方ぶりに再開した学園の後輩に対し、乙女たちは簡潔な挨拶で応じた。

 言葉少なではあったが、そこにはどこか哀しみの色が混じっていた。

 

 のっし、のっしと花園を下っていく乙女たちの背を見送り、ほうっとブードゥーが嘆息する。

 

「今の御仁、どちらもかなりの猛者とお見受けしたが……?」

 

「『重爆女帝(ビッグ・バン)』ダイベアーに、『肉弾魔人(ボンバー・ミート)』アッチャブゥ。

 共に現在の皇国軍人を代表する、皇都親衛隊の隊長(エース)ですわね」

 

(セント)クロックアップ学園の第六十四期生は、

 長い学園史の中でも傑出した天才(エリート)揃いだったと言われています。

 中でもあの二人は当時からその実力を認められ、学園の三闘神(ミューズ)と称えられていたとか……」

 

三闘神(ミューズ)

 あの二人に匹敵するほどの実力者が、同期に更にもう一人居ると……」

 

 ぴたり、とそこで再びカルラの足が止まった。

 思わず三人の会話が止まる。

 

 辿り着いた丘の上には、すでに幾人かの先客がいた。

 入口に居た金髪の青年が、カルラたちの姿を認め、わずかに微笑してみせた。

 

「殿下……」

 

 ぽつり、とカルラのこぼした呟きに、三人ははっ、と目を丸くした。

 自分たちの眼前に居るのがこの国の第一皇子、ビューリホゥ=イッチヴァーンその人である事に気が付いたのだ。

 慌てて片膝を突こうした一同を制し、王子がどこか寂し気な笑みを向ける。

 

「今日、この場において、堅苦しい挨拶は不要ですよ。

 ここに居るのは共通の友人を偲ぶ者だけ……、

 そうでしょう、太陽神(ゴッチ)の巫女どの?」

 

「……殿下、でしたらその、巫女、というのもお止め下さい。

 ボク、私にはもう、太陽神(ゴッチ)の声は聞こえません」

 

「……そうだね。

 けれど、たとえ奇跡を失ったとしても、

 貴方がこの国にとって大事な女性である事は変わりませんよ」

 

「…………」

 

「彼女に会いに来たのでしょう?

 ならば僕よりも、まずはあの人たちの所へ」

 

 皇子の言葉に頷いて、カルラが一人、花園の中央へと歩を進める。

 居合わせた男女の中から、大柄な中年が一歩、歩み寄り、少女を迎え入れるように諸手を広げた。

 

「ギロチンドロップ公爵……」

 

 感情を無理やり押し殺すような声に、ギロチンドロップ家当主、ドーリマンは静かに首を振り、暖かな眼差しをカルラへと向けた。

 

「我々の間に、そんな言葉はいらないよ。

 カルラ、よく無事で帰って来てくれたね」

 

「……おじ様」

 

「こんな時に、何の役にも立てず、すまなかった」

 

「おじ様……、けれど、だけど……!」

 

「君がこうして我々の前に、無事に姿を見せてくれたという事は、

 あの娘が本懐を果たしたという事だ、そうだろう?」

 

 かつて父のようにすら思っていた男の言葉に、カルラの声は、もう平静を保てなくなっていた。

 公爵は困ったように頭を掻いて、ゆっくりと周囲を見渡した。

 

「……この丘も二年の歳月を賭けて、何とかここまで再建できたよ。

 少々無理もしたが、なにせあの娘は、ここからの風景がお気に入りだったからね」 

 

 さあ、と促すように、公爵が右手を差し出した。

 太い掌の先には、ひとかかえもあるような大岩が一つ据えられていた。

 

 無数の純白の蕾に彩られた、明るい白色の大岩。

 川底で磨かれた巨石のように、丹念に角が落とされていたが、それ以上の装飾はない。

 一見、墓標のようにも見えるが、墓碑銘は無い。

 

「あの娘はもう、公爵家の人間では無いからね。

 一族の墓には入れられない、名前を遺す事もできない。

 それでも、この花園を与えられたなら、きっと満足しているはずさ」

 

 傍らにいた、ギロチンドロップ公爵家の長子、テリーがそう言って微笑した。

 このような人生の節目においても日課のスクワットを止めようとしない、用心深い男であった。

 

「あうぅ……、ゴリィお嬢様、ご覧になっておられますか?

 カルラ様が……、カルラお嬢様が来てくださいましたよ。

 うっ、うう、うおおおおおおお~ん! うおおおおおおおぉ~~~ん!」

 

 感極まった使用人のアンナがボロボロと泣き崩れる中、ゆっくりとカルラが大岩へ歩いていく。

 

「ゴリィ……」

 

 ポツリ、カルラは乙女の名を呼ぶと、手にした杖を打ち捨てて、すがるように大岩へと抱き着いた。

 

「……っぐ」

 

「カルラ……?」

 

「んぬっ、ぬぐぐ……、んンギギギギギ……っ!」

 

 最初に違和感に気付いたのは、背後にいたドーリマンであった。

 カルラ=クラウザーは、泣いていたわけでも感極まったわけでもない。

 怒っているのだ。

 今、腰を落とし、一抱えほどもある大岩に必死でとりつき、一思いにぶん投げようと全身の筋細胞を震わせているのだと分かった。

 

「カルラさま!?」

「一体、何を――」

 

 異変に気付いた三従士が慌てて駆け寄ろうとするのを、傍らの皇子が片手で制した。

 今、彼女がしようとしている事が、カルラ=クラウザーという少女にとって、どれほど重要な儀式であるかを、聡明な青年は即座に察したのだ。

 

 皇子の意図を理解しながら、それでも三人は気が気では無かった。

 カルラ=クラウザーにはもう、かつての奇跡の名残は無い。

 聖クロックアップ学園で培われた魔闘家(メイジ)としての力量も戻っていない。

 まして今は、その肉体すらも傷つき衰えている。

 

 今の少女にあるものは、純然たるド根性とバカ力だけ。

 上がるわけが無い。

 無理な力を加えれば病み上がりの体を痛め、最悪、崩れた大岩に挟まれ重傷を負いかねない。

 

「んンんんんんっ、グギッォおおおおおおおおおおおお」

 

 その時、信じられない事が起こった。

 少女の咆哮に合わせ大気が震え、ズ、ズズ、っと微かに大地が揺れた。

 信じがたい光景を前に、居合わせた一同が圧倒される。

 持ち上がろうとしている。

 少女の体より、何倍も重い大岩が。

 奇跡も、魔術の力すら無く。

 ただの少女の純然たるド根性によって――!

 

「んおおおお……、ド ォ ウ リ ャ あ ア ァ あ ぁ ァ―――ッッッ!!」

 

 瞬間、ボゴン、と大地が揺れて、大岩が渾身の雄叫びと共に少女の臍の上へと乗った!

 必死の黄金橋(ブリッヂ)は崩れかけながらもアーチを描き、宙に浮いた大岩が、ドッ、と大地を跳ねながら、丘陵を緩やかに転がっていく。

 

「ハァ……、ゼァ……!」

 

 少女は泥だらけとなった体を起こし、大きく肩で息を吐き出し、大穴の残る花畑を見下ろし呟いた。

 

「彼女は……、ゴリィ=アントワネットは、こんな所に眠ってません」

 

「カルラ……!」

 

「帰って来るって、言ったから……

 すぐに戻って来るって、彼女はボクに約束したから……!」

 

 そう言って、カルラは一同の方を振り返ると、カルラ=クラウザーは、赤い瞳に涙を蓄え笑って見せた。

 先ほどの『奇跡』が嘘のような、素朴で屈託のない笑顔だった。

 

 

 ――風が、変わった。

 

 

 その異変に最初に気が付いたのは、花園の隅から一連の事態を静観していた、ギロチンドロップ家先代公爵夫人、ボアウッド=ギロチンドロップであった。

 

「奥方様――?」

 

 背後にいた使用人、コンナが不信を質すより早く、夫人は車椅子から音もなく身を起こすと、眼下より迫る何者かに向け油断なく身構えていた。

 

 その段になって、ようやく一同も異変に気が付いた。

 雲の流れが早い。

 先ほどまで地上を照らしていた初春の太陽が、今やすっぽりと分厚い暗雲に包まれている。

 春先とも思えぬ冷たい風が、丘の下から花園へ向け吹き上げてくる。

 その冷たい向かい風に乗って、尋常ならざる気配を持った何者かが、ゆっくりと姿を見せる。

 

 緊張する一同の前に姿を現したのは、伝統的な黒のドレスに身を包んだ一人の少女であった。

 漆黒の衣装と対を為す、精巧な人形のような――、あるいは生気の無い死人のような白い肌。

 フリルで飾った帽子から覗く、白銀の光沢を持った長い髪。

 儚げな切れ長の両目に宿る、危うい野心を乗せた金色の瞳。

 

 そして、そのしなやかな両の指先は、それぞれに傷ついた屈強の乙女を引きずっているではないか!

 

「……っ、す……」

「しゃ……、あ……」

 

「――!?

 アッチャブゥ先輩! ダイベアー先輩!」

 

「ファーッファファファ!」

 

 カルラの悲痛な叫びと同時に、少女が手にした乙女たちを軽々しく放り投げた。

 屈強な戦士の肉体が手品のように宙を舞い、ズン、と花園を揺らす。

 

「……ッ そ、そんな馬鹿な!」

 

「あああ~っ、けれどあの白銀の髪! 悪鬼の邪眼!

 そ、そして何より、この胸をざわつかせる圧倒的恐怖はッ!」

 

「……大魔王【 オ ー ル ス イ ー ツ サ ン デ ー 】!?」

 

「ファファ!」

 

 三従士の断定を肯定するように、少女の邪眼がギロリと光った。

 ぶわっ、と逆風が渦を巻き、殺意の嵐が花園を吹き荒れる。

 

「……一体、どういう事?

 お前はあの日、崩れ落ちる魔王城もろとも、大虎峡(タイガーホール)の奥底に沈んだハズなのに」

 

「ファファファ……、甘い、甘いのう、当代の巫女よ。

 確かにあの時ばかりは、このオールスイーツサンデーかくやと思った……、だがなァ!」

 

 フン、と大魔王が右腕に力を籠める!

 繊細なドレスの袖がたちまち爆裂し、さきほどの巨岩もかくやというほどの力こぶが出現する!

 

「『終末公(ウィークエンド)』シトロンの暴力(パワー)!!」

 

 バッと大魔王が左手を伸ばす!

 その指先に刃のような爪がジャキリと生え揃い、青白い稲光がバチンと走る!

 

「『雷帝(エクレール)』カフェの残虐(スピード)!!」

 

 ドゴン!と大魔王の両脚が大地を叩く!

 そのスカートから巨木の根が幾重にも生え揃い、触手のように蠢き始める!

 

「『大賢邪(ガトー)』ショコラの不死性(タフネス)!!」

 

 バッ、と大魔王が上衣を破る!

 はだけた胸元の中心で、どくり、と巨大な鼓動が大気を震わせる!

 

「そして『大統領(ブッシュ)』ド=ノエルの闘争心(ハート)!!」

 

「……ッ」

 

「あの時、朽ちかけていた世の肉体を、冥府に居る四天王が救ってくれたのだ。

 さあ! 運命の巫女よ! そして人類の英雄たちよ!

 憎き太陽神(ゴッチ)の恩寵を失った貴様らが、余と仲間たちの友情パワーに勝てるかなッ!?」

 

 ズン、と一つ、魔王の足が大地を揺らした。

 もはや、一同には返す言葉も無かった。

 目の前で巨大な異形へと変貌していく少女の様に、大魔王の実存を認めざるを得なかったのだ。

 人類終焉の時が、刻一刻と近付いていた。

 

「……ぁ」

「ファ?」

 

 ふと、何かに気付いたカルラがおもむろに顔を上げた。

 つられた大魔王が、ぽかんと大口を開けて頭上を見上げる。

 

 ぼん、とブ厚い暗雲を突き破り、何か光のようなものが天空より降ってきた。

 光弾は遥か上空で螺旋を描き、花園へ向け緩やかに――

 

 ――いや、違う!

 

 天狗だ!

 天狗の仕業だ!!

 

 その鼻を巨大な傲慢(ドリル)に変え、全身を金色の雷神に包んだ大天狗(レイヴン)が、今、大魔王の頭上へ向けて一直線に突っ込んで来た!

 

「超絶究極天上天下爆烈驀進猛烈抹殺殲滅撃滅最終劇終天 ・ 乙 女 大 爆 発(ヲトメチックドリル)!!」

 

「な……、なにィいいいいいぃ~~~~っ!?」

 

 魔王の絶叫は、最後まで聞き取れなかった。

 突如として頭上を襲った巨大な乙女(ドリル)が、魔王の巨体をミンチにしながら、せっかく直した花園に大穴を開け、遥か地底の奥深くまで全てを捻じ込んで行ってしまった。

 

「うぉ……オのレええええぇエエ――ッ

 ファファファ! だが覚えておけ人間どもよッ!

 この世に悪しき魂ある限り、大魔王の肉体は不死身ッッ!!

 このオールスイーツサンデー何度でも蘇りッ

 貴様ら人類の安寧を脅かし続けてくれようぞおおおおオオオ―――ッッ」

 

「やっかましいですわッ!

 たかだか地獄の君主風情が、これ以上、私とカルラの間に挟まる事は許しませンわ!!」

 

 

 ――ドワォ!!

 

 

「オオ!」

 

 爆音と共に、土塊が遥か天空にまで吹き上がった。

 暗雲を蹴散らし、砂塵の雨が降り注ぐ。

 

「ホーッホッホッホ!

 随分とご無沙汰しておりましたわね!

 太陽神(ゴッチ)の裔のみな皆さま!」

 

 晴れやかな乙女の言上と共に、大穴の底から漆黒の大天狗(レイヴン)が飛び上がった。

 呆然と天を仰ぐ一同の上に鴉の羽が舞い落ちる。

 

「ああ!

 その声、その技、そして何よりその不遜な態度」

 

「君は、貴方はやはり……!」

 

「ゴリィッ!?」

 

 堪え切れず、カルラが叫んだ。

 同時に天狗を取り巻く漆黒の(オーラ)が解け、たちまち鮮やかな深紅のドレスへと転ずる。

 

 乙女の背中には、天狗(レイヴン)を象徴する大鴉の翼が生え揃い。

 左腕の肘から先には、機械仕掛けの白銀の義手を備え。

 深い痕の走る左目は、白百合の刺繍をあしらった眼帯に覆われている。

 

 久方ぶりに地上に降りた乙女の姿は、その風貌だけで、彼女が歩み続けた過酷な戦いの歴史を裏打ちしていた。

 だが姿形がどのように変わろうとも、ゴリィ=アントワネットの瞳の輝きは、彼女がかつて『学園の徒花』と謳われていた頃の潔さを、今なおその内に宿し続けていた。

 

「待たせましたわね!  

 私のカルラ=クラウザー」

 

「ゴリイィィ―――ッ!」

 

「さあ!」

 

 ゴリィが花園に降り立つと同時に、息せき切ってカルラが走り出した。

 未だ不慣れな片足を引き摺り、もどかしそうに体を傾げる。

 必死で両手を伸ばす永遠の恋人の姿に、ゴリィは大輪の花の笑みを浮かべて諸手を広げ――

 

「……の」

 

 カルラ=クラウザーは差し出されたゴリィの両手を搔い潜り――

 

「へ?」

 

 ぐっ、とゴリィの腰元に両腕を回し、鮮やかに背後をとった。

 

「バァカアァアアアアあああああああああああああ―――ッッ」

 

「いや、ちょっ、ま……」

 

 

「ド ォ ウ リ ャ あ ア ァ あ ぁ ァ―――ッッッ!!!!」

 

 

 ゴリィの戸惑いの声が、カルラ渾身の雄叫びの中へと消えてゆく。

 刹那、二人は閃光となった。

 魂の咆哮が大気を震わし、地響きとなって足元を揺るがす。

 

 眩いばかりの輝きの中、カルラ=クラウザーの背筋が力強く反り返り、光と化したゴリィの体が中空に半円軌道(アーチ)を描き出す。

 吟遊詩人(アーティスト)たちは後に、それこそが太陽神(ゴッチ)の巫女の生涯において、もっとも幻想的(ファンタスティック)黄金橋(ブリッヂ)であったと述懐する。

 

 

 乙女たちの伝説は、再び幕を開けたのだ。

 

 

「ひいいいィイイいいィぃぃぃ~~~ッッ」

 

 ゴリィの悲鳴を搔き消して、ズン、と一つ、大地が揺れ――

 

 

 純白の名残雪(ラスト・スノウ)が、少女たちの頭上に一斉に舞い上がった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 以上を持ちまして本作は完結となります。
 ここまで本作を応援して下さった皆様、誠にありがとうございました。
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