暴力耐性ゼロの社畜ゲーマーが喰うか喰われるかの異世界で生きていける訳ないだろ!   作:土ノ子

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 あっという間に10,000ptを超えておりました!
 頂いた感想も全ては返せておりませんが、拝見させて頂いております。いつもありがとうございます!


第十話 勇気のありか

 アウレリア・オクシダリスは辺境伯家という名家に生まれた()()の小娘だ。少なくとも本人の認識においては。

 幼少期、高齢でようやく授かった娘を溺愛する父と歳の離れた兄アルトルに可愛がられて育つ。

 

 生まれながらの痛がり屋で怖がり屋。そのくせお節介で他人が困っている場面に首を突っ込んでは、要領の悪さで毎回失敗してばかり。その無駄に整った顔の良さと度を超えたお人好しは生まれた家が庶民ならとっくに人攫いに遭っていただろうと囁かれた。

 だが他人のために一生懸命になれる彼女を周囲は愛した。戦乱の世が長く続くこの世界で優しさとは尊さだった。

 

 そんな彼女の運命が大きく動いたのは少し前。世界を統べる八大眷属神の一柱であり、彼女が属するセレスタリア教国を守護する女神ラステルの《使徒》に選ばれた日だった。

 本来なら首都の高位聖職者こそが選ばれるはずの《使徒》――神の権能を振るうことすら許された超越者――になぜ西方辺土の一貴族に過ぎないアウレリアが選ばれたのか。

 幾度祈り、問いかけても女神は応えなかった。それもまた不可解だった。

 

 首都で何か異変が起こっているのかと訝しみ、直接乗り込んだ当主の父は……()()()。西方辺土の大黒柱にして優れた戦士でもあった父が、あっさりと。辺境伯家にはただ事故死と伝えられた。

 当然強い抗議の意を示し、再調査を望むオクシダリス辺境伯家の要望はことごとく無視され、中央と西方の関係は急速に軋み始めていく。

 急遽亡くなった当主の座を継いだ兄アルトルも家中の掌握に手いっぱい。その隙を突くように《西方深淵樹海ブロセリアンド》から溢れ出す魔獣災害は増大の一途を辿っていく。

 西方深淵樹海(ブロセリアンド)と人類領域を隔てる前線開拓都市は魔獣災害の防波堤であり、此処が崩れれば一気に西方辺土の人類は魔獣達の胃袋に収まりかねない。それほどまでにまで状況は切迫していた。

 

 最早残された手がかりは《紋章》を授かった時に得た『ここに――』という断片的な神託(オラクル)と、《西方深淵樹海ブロセリアンド》の深奥を指し示す幻視(ヴィジョン)だけだった。

 

 お人好しでお節介な彼女は託された使命をこれ以上無視できなかった。使命を果たすため、彼女は反対するヴィキシーと兄アルトルを説き伏せ、《使徒》の力を示す《紋章》の真価を引き出せないまま西方深淵樹海(ブロセリアンド)へと足を踏み入れる。

 そして今、目の前で決死の覚悟を込めて戦うヴィキシーの背を震える指先で唇を噛み締めながら見つめていた。

 

(お願い、お願い、お願い――! このままじゃみんなが……女神(ラステル)様――!?)

 

 まだ間に合う、間に合うはずなのだ。彼女が本物の《使徒》ならば。

 気さくに声を交わし、守ってくれた兵士達が一人、また一人と倒れていく姿をアウレリアは心をグチャグチャにしながらただ見ていた。見ている事しかできなかった。

 貴族令嬢として育てられた彼女に武芸の心得があるはずもなく、こうして深淵樹海に足を踏み入れているだけ並みの男性貴族よりもはるかに使命感を備えているとすら言える。

 だがどれだけ必死に祈ってもラステルは、彼女の《使徒》に応えない。

 

「お嬢様……申し、訳――」

 

 タイムリミットが訪れる。

 余力を搾り尽くした果てに力尽きるヴィキシー。彼女が最も信頼する騎士が、崩れ落ちた。

 そして、絶望が彼女の眼前に聳え立つ。

 

『…………』

 

 哀しいかな。厳然たる事実として彼女にこの状況を変える力はない。

 半ば事故のように授かった《紋章》は輝かず、彼女を導くはずの女神の託宣はどれほど祈りを捧げても届かない。

 

「ひッ……ぁ……」

 

 ガチガチと、歯の根が合わないほど覚え、震える少女。彼女が無力であるかと問われれば、”(Yes)”と答えるほかない。

 そう、彼女にできることは何もない――――――――()()()

 ”(No)”だ。

 無力であることと何もできないことは違う。たとえ無力でも、その行いが実を結ばなくとも彼女にはまだできることがある。

 

「――どうか、助けを」

 

 何故なら彼女はまだ声を出すことができた。

 

()()()()()()()!」

 

 自分以外の傷ついたみんなのために、彼女は助けを叫んだ。たとえ届くはずがないとしても、それだけしかできないが故に喉も張り裂けよと声を上げた。

 ()()()()()()()()()()()――そんな状況でも無力な少女は膝を折らずただ自分ができることに背を向けなかった。

 恐怖を恐怖のまま飲み込み、前を向く――その心に灯るのは、勇気。故に少女の額に刻まれた《紋章》の名は《星灯の聖痕(アストレル)》。夜空に輝く旅人たちの道しるべが、淡く淡く輝いた。

 痛がり屋で怖がり屋の彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「スバラ、シイ」

 

 昆虫が無理矢理人の発声を真似したような、かろうじて声と分かる歪んだ音の連なり。黒騎士が初めて漏らした声は、少女への称賛。しかし一瞬後に悍ましい殺意へ変わった。

 

「――故ニ死ネ」

 

 だからこそ殺すと、禍々しい殺意が吹き荒れる。死神の鎌が振り上げられ、少女の華奢な喉首へ迫ったその刹那――、

 (ゴウ)、と。

 荒れ狂う風の唸りが彼らの頭上、森の天蓋を超えた上空を飛び越えた。

 誰もが直感する――いまなにか()()()()()()()()()()が通り過ぎた。

 

『――――』

 

 全員が、黒騎士――仮称《魔王》すらも弾かれたように上を見た。そうせざるを得なかった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 何故か。

 1人の、ここにいない()()が決められた予定調和(シナリオ)を狂わせたのだ。もしいまこの瞬間、全ての陰謀を巡らした黒幕のヴェールを剥がすことができていれば……卒倒し、驚倒した面を拝めただろう。黒幕の勝利(バッドエンド)へ向けた詰みの一手がことごとくひっくり返され、それ以上に強烈な一撃が叩き込まれていくのだから。

 

「お――」

 

 バキバキと、天蓋の如く地上と空を隔てる分厚い枝葉をへし折りぶち割り突き抜ける音がする。

 

「オオオ――」

 

 次いで影が。

 黒騎士に匹敵するオーラの塊が降ってくる!

 

「見ィつけた――!!」

 

 獰猛なまでの闘志に溢れた笑顔とともに、銀の剣が黒騎士目掛けて振り下ろされる。

 ガギンッ!

 硬く固いものがぶつかり合う激しい音とともに()()()()()()()()。爆音。剣戟に込められたエネルギーが荒れ狂い、木々を揺らした。

 

「――!?」

 

 黒騎士が退いた、否、押し込まれた。見れば銀剣を防いだ右の腕甲が砕けていた。

 ヴィキシーの膂力に小揺るぎもしなかった怪人と真っ向張り合った者は――、

 

()()()()!」

 

 地上に降り立つその手には、銀に輝く鋼の剣。少年とも少女とも見える中性的な顔立ち。なにより特徴的なのは無理無茶無謀を突き通す無敵の笑顔。

 天真爛漫、天下無双。諸国諸方を渡り巡って争い揉め事大戦争(トラブル)に首を突っ込み、その有り余る力で木っ端微塵に(バスター)して去っていく、恐れ知らずの蛮勇者(ドレッドノート)

 

「勇気のありかは、どこにある!!」

 

 恐怖を知らず、故に勇気を知らず。だからこそ勇気のありかを探し求める蛮勇者と、勇気の灯を宿す少女の運命が交差する。




 Q.どうしてこうなった?(ラスボス)
 A,大体主人公のせい(マジレス)

 ラスボスはマジでキレていいよ。


 追記
 ちなみに自称勇者くんちゃんと聖女ちゃんはツルペタです。意味は分かるな?(not heroine)
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