暴力耐性ゼロの社畜ゲーマーが喰うか喰われるかの異世界で生きていける訳ないだろ!   作:土ノ子

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 主人公視点に戻ります。
 諸事情により聖女ちゃんの覚醒シーンはカットしました。身も蓋もなく言うと描写がなくても話は進むので…。


旧版 第十二話 ラストバトル始まってる……

 世界の命運を賭けた戦い。

 そう評しても異論は出ないだろう壮絶な戦いを繰り広げる黒騎士と勇者の激突を常太郎(『武士』)は遠く離れた大木の陰から見守っていた。

 視線の先では一振りで大木をまとめて両断し、黒の魔弾と銀の斬撃波はクレーターを生みだし大地を抉り斬っていく。

 比較的まともに見える貴族令嬢(アウレリア)ですら《紋章》由来と思しき光の壁を展開。内部に兵士達を保護しながら周囲が焼け野原になる余波を退け、小揺るぎもしていない。十分人外だ。

 

(異世界転移一日目なのに、ラストバトル始まってるんだが??? こちとらチート貰っただけのゲーマーなんだが???)

 

 明らかに世界観(ジャンル)が違うドッカンバトルに常太郎がキレ気味に呟くと『武士』も深く頷いて同意を示した。共感というよりは事態の異常さへの無言の同意である。

 

「パワーインフレが過ぎるな。奴らに対抗するには少なくとも年単位で準備期間が要る」

(数年でどうにかできそうなのがむしろ驚きだよ俺は)

「所詮仮定の上の未来予測だ。確かなのはいま介入すれば9割がた死ぬという事実だけだな」

 

 現状では介入のリスクは極めて高いと『武士』は断言し、常太郎も頷いた。

 

(このまま銀色の方が真っ黒くろすけに勝ってくれればいいんだが)

 

 身も蓋もなく他力本願な願望を呟く常太郎。バトルジャンキーでも何でもないただのゲーマーなので俺より強い奴に用はないのだ。命の危険が無ければ腕試しくらいはしてもいいが。

 

「難しいな。見るからに押されている」

 

 武士が言う通り、戦場の天秤は少しずつ黒騎士に傾きつつあった。

 

(『武士』、形勢判断頼む)

「……黒い方が強い。今は互角に見えるが、膠着状態が続けば削り殺されるな。強さもだがそれ以上にスタミナは黒が無尽蔵だ」

 

 黒騎士の全身から立ち上る《瘴気》の底が見えない。対してもう片方の少年 (少女?)が纏う銀のオーラは勢いに陰りが見えた。

 

(だよな……どう見てもあの真っ黒くろすけが《不具(バグ)》の原因か、手がかりなんだが)

「常太郎、ここは撤退して態勢を整えるべきだ。状況が悪すぎる」

 

 慎重派の『武士』の提案に常太郎は条件反射で頷きかけ――、

 

(……………………いや、撤退はなしだ。介入する)

 

 たっぷり四呼吸分の”間”を挟んでから却下した。

 デスマーチ確定だがここで頑張らないともっと酷いことになると悟った社畜の如くとても嫌そうな声だった。

 

「……戦闘担当としては断固反対する。いくら主人格(オマエ)の判断でも根拠がなければ頷けん。9割方死ぬぞ」

 

 あまりにも妥当な反対意見だ。状況が許せば常太郎だって首がもげそうな勢いで頷いていただろう。

 だが生憎と常太郎は俯瞰的な冷静さを()()()()()()()()()。RPGで主人公(PC)を操作するゲーマーの如く。

 

(OK、状況の再検討だ。まず大前提。俺達がクレアトールの依頼を達成するなら結局あの推定黒幕の黒騎士(真っ黒くろすけ)()()()()しなきゃならない)

「…………」

 

 あの、世界を焼き尽くすような勢いでドス黒い《瘴気》を噴き上げている黒騎士を、どうにか。

 あまりに無情なクリア条件を思い出し、流石の武士も冷や汗を一筋垂らして黙り込んだ。難易度が大分ルナティックだ。

 なお達成できなければクレアトールによる世界丸ごと再構築コースなので逃げ場はない。

 

(逆に言えばあの真っ黒くろすけをボコって情報吐かせれば依頼達成の最短ルートだ。RTAなら世界一狙えるな!)

「……この状況で狙うのがそれか?」

 

 多分に強がりを含んだ冗談を飛ばす常太郎に『武士』も呆れの目を向けた。

 

()()()()()()()()()! 俺だって安全策取れるなら取りたいよマジで!?)

 

 キレ気味に吐き捨てる常太郎。彼自身どうしてこうなったと百万遍は言いたかった。

 

(戦闘担当に質問だ。俺達はアレから逃げ切れるか? いや、見逃してくれると思うか?)

 

 根本的な問題点だ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……あれが俺達に興味がなければ」

()()()()()()()()()()()()()()()()?)

「…………」

 

 常太郎の指示とはいえ散々暴れ回った自覚がある『武士』も黙らざるを得なかった。

 

(運ゲーやるには分が悪すぎる。せめてやれることを全部やってから乱数の女神に祈ろうぜ)

 

 それならまだ納得できる、と常太郎は続けた。

 撤退でも介入でも潜在リスクは大して変わりがない。ならばあとは方針次第と語る常太郎に『武士』は反論できない。

 

「……だが勝率が悪いのは変わりはないぞ」

(逆に考えろ。向こうに推定黒幕と殴り合ってる勇者(フロント)がいるんだぜ? アレ以上の戦力が用意できるか分からん以上()()()()()()()()()()()()()()

 

 時間を置いてもいま以上の好条件を揃えられるのか、と問われれば『武士』も分からないとしか答えられない。

 少なくとも視線の先で戦う銀のヒーローがこの世界でも相当な上澄みであることは間違いない以上、常太郎が言うことには一理あった。

 

(俺達だけで倒す訳じゃない。あくまで俺達で主導権を握って天秤を揺らす――それならどうだ、戦闘担当?)

 

 要するにさっきのヴィキシーVSアラケネ・マドゥルガと構図は変わらないのだ、危険度(リスク)が急上昇しているだけで。

 

「……勝算のあるプランなら」

 

 遂に『武士』も条件付きで賛同した。

 

(一応アイデアはある。今なら細胞のストックは潤沢だしな……まあ、うん、”元”はともかく)

「意外と美味かったぞ、あの蜘蛛」

(俺の別人格がゲテモノ好きすぎる件……)

 

 思い返すように口元を触れ心なしか満足げに頷く『武士』に常太郎は心の距離を一歩置いた。今は綺麗に拭っているが、アラケネ・マドゥルガの甲殻を割って肉片を口に放り込み、青みがかった体液で口元を汚す『武士』の姿はかなりホラーチックだった。夢に出てきそうだ。

 

(マジで躊躇なく食ったよなお前。いや、地球でも蜘蛛がご馳走な地域ってあるらしいが)

「ちなみにカニの味だった。栄養価も高い。再生で消費した細胞とエネルギーをフルチャージできたのは僥倖だ」

(俺はあのデカブツを食い切ったお前と、《生態兵装(セル・レギオン)》の悪食っぷりにビビったよ)

 

 いかにも腹を下しそうなゲテモノだったが《生態兵装(セル・レギオン)》の細胞同化機能で無理やり消化して取り込んだらしい。自分の肉体がいまどんな代物になっているのかもう見当すらつかない常太郎である。

 

(お陰で()()が用意できたからいいけどさ)

 

 常太郎が言うコレ。あくまで一時的な使い捨てに過ぎないが、使いこなせれば十分に役立つはず……。

 あらゆるゲームにはルールがあり、ルールに縛られる。

 そして極まったゲーマーはだからこそこう考える――()()()()()()()()()()()()()()()()()




■本作における分かりやすい戦力イメージ

一般冒険者:下位ハンター相当。玉石混淆。多くは箸にも棒にも掛からぬ雑魚。
兵士:下位ハンターの上澄み相当。本作では銅〜銀級。
騎士:エリート戦闘職。上位ハンター相当。本作では銀級。
ヴィキシー:上位ハンターの上澄み相当。本作では黄金級。多くの武芸者が憧れる強者。
アラケネ・マドゥルガ:パッケージモンスター相当。一晩で村を滅ぼし街に多大な被害を与える生物災害。現実的に遭遇しうる最大脅威。

~~~怪物の壁~~~

勇者くんちゃん:上位古龍の幼体相当。下位古龍と互換。
黒騎士:古龍相当。ほぼ人類の限界値がここ。

~~~超えられない壁~~~

神格:すごくつよい(小並感)。勇者は竜神エラディアスの眷属というあたりで察して頂きたい。
   ただし神代末期に起きた大戦争がキッカケで結ばれた盟約により地上への直接干渉は自制している。また、人類が神格に勝利した例もある。

~~~以下、分類不能~~~

使徒:神格の代行者であり単純な戦闘力ではその真価は測れない。
主人公:本来なら兵士相当だが《紋章(チート)》を活用してアラケネ・マドゥルガを討伐した
    なんか小さくてこわいやつ(ちいこわ)
    シナリオブレイカーであり、《不具(バグ)》デバッガー。
    一番ロクでもない点は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
    彼の可能性は彼が思うよりも広く、深い。

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