暴力耐性ゼロの社畜ゲーマーが喰うか喰われるかの異世界で生きていける訳ないだろ! 作:土ノ子
浅葱常太郎が持つ第一の《紋章》、《
そう、“武装”と“錬金”だ。真っ赤な誓いや核鉄とは関係がない。いや、本当に。
ともあれ錬金の語意を遡れば『卑金属を貴金属へ変える学問』に辿り着く。『変える』のであり『生み出す』のではない。これまで武器や装備を生み出していたのは“武装”の方だ。
つまるところ――、
「
それくらいに呆気なく2つの要素が組み合わさった
手の中に納まるナイフの刀身に輝く《紋章》をしげしげと眺める。これの意味する可能性は無限大だ。
「っよし! これならあの
(まさに『
常太郎と『武士』が興奮した声を上げるのも無理はない。
歩兵が出せる事実上の最大火力である
仮にもヒト型生物が生身でロケラン以上の火力をぶっ放したりあっさり防いだりするなお前ら人間じゃねえと正直絶望しかけもした。
だが現代装備をベースに《紋章器》を創造できるとなれば話は別だ。真価を発揮した《
(常太郎。そのジャッカロープナイフがどの程度強化されているか見たい)
元々は旧ソ連の
原型のスペツナズナイフは刀身を時速60キロで撃ち出し有効射程は5メートル程だったというが……。
「ふむ」
まず比較対象として手元にごく普通のスペツナズナイフを生み出す。《紋章》のない普通のものだ。
通常版スペツナズナイフの刀身をジャッカロープの骨肉ピラミッドへ向け、そのまま鍔に隠れたボタンを押し込む。
柄の内側に収められた強力なスプリングが解放され――、
ドスッ!
射出された刀身があるジャッカロープの脇腹に深々と突き刺さる。ブシュゥッ、と血が一瞬激しく零れ落ちた。
だが貫通まではしていない。突き刺さっただけだ。
(肋骨で止められたようだな。防具を着込めば防げる程度だ)
「あくまで不意を突くための隠し武器なんだな」
それでもかなりの威力だ。斬り合いの最中に射出すれば不意を突けるし、人間の目鼻や喉首に食らわせればかなりの痛撃だ。尤も冒険者はしばしば人間離れした身体能力を発揮するので通用するかは怪しいが……。
ならば《
(おい。丁度良く
と、『武士』が言う。
視線を遠くに移せば草むらから草むらへひょこひょこと歩くジャッカロープの姿。こちらに気付いているようだが、15メートルは離れていることで警戒は薄そうだ。
試し撃ちに丁度いいかもしれない。
「……行くぞ。照準補正頼む」
(了解した)
期待半分、今度はジャッカロープナイフを手に取る。
ゆっくりと刀身を生身のジャッカロープへ向ける。殺人兎はピクリと顔を上げて反応するが、遠間なのと手に持っているのが遠距離武器でないと悟りすぐに視線を切った。
油断だ。
狙いを定め、切っ先の角度を補正し、鍔にある射出ボタンをゆっくりと押し込む。
――ドンッッッ!
銃声に似た轟音。
手を突き抜ける衝撃。
血飛沫。
飛び散る肉片。
大地に突き立つ刃――。
「~~~ッ! これ、かなり反動が強いな」
射出の瞬間、手首にミシッと鈍い音が走った。常太郎のデタラメに強化された身体能力でも気合を入れて握らないとどこに吹っ飛んでいくか分からない衝撃だ。刀身を飛ばすスプリングに《
元々人体工学的に優しくない原理・構造を想定外の改造でさらに悪化させ、プロの軍人でも手首を痛めかねないゲテモノが出来上がったらしい。現代基準なら確実に欠陥品だ。
(だがその分強力だ)
視線の先には筋肉と肋骨をブチ抜いた果てにジャッカロープを深々と地面に縫い留めたナイフがあった。
近くには肉片と血飛沫が撒き散らされており、死骸はピクピクと力なく痙攣するのみ。
不意を突けば人間離れした身体能力の上位冒険者が相手でも通用するだろう。たった一つの《紋章》と掛け合わせるだけで元のスペツナズナイフから威力が跳ね上がっている。
火力の頭打ちが早々に見えていた常太郎にとって、《紋章器》を創造する能力は本当に福音だった。
「これを他の火器……対物ライフルやロケランにも応用できれば」
(火力は飛躍的に増強されるはずだ。地球の科学力以上のバケモノ兵器を生み出せるぞ)
まともな人類には運用できない基準の身体能力が要求されるだろうが、それは身体強化と《
これを繰り返せばあの黒騎士相手にも勝ち目が見えてくるはずだ。
「ゲテモノが出来上がる可能性のが高そうだけどな」
(だがそういうのも悪くない。だろう? 少なくとも俺は興奮している。ワクワクする、と言ってもいい)
「…………まあな! 正直分かる」
常太郎はふた呼吸ほど迷いつつ結局取り繕わずに正直になって深々と頷いた。
地球でも実現不可能な『ぼくのかんがえたさいきょうのろまんへいき』をワンチャン作り出せるとなればウキウキになるのもまあむべなるかなというところ。
元々凝り性なので無限にある選択肢から自分だけのロマン武器を妄想するだけでもう楽しい。街に戻ってからは絶対にギルドの図書室に籠って《紋章》の一覧が載った資料を貪るように読み込むだろうと確信していた。
「……ダメだ、ソワソワしてきた。早く残りの
メインは終わり。あとはジャッカロープの死骸を使ったサブの実験が幾つかと、死骸から首を切り落とす作業が待っている。
面倒な仕事は手早く終わらせるに限る。常太郎は言葉通り落ち着きのない様子で動き出した。