暴力耐性ゼロの社畜ゲーマーが喰うか喰われるかの異世界で生きていける訳ないだろ! 作:土ノ子
RPG-7の乱れ撃ち。
隠れていた大木の影から表に出た常太郎達の選んだファーストアタックがそれだった。現状の最大火力を躊躇なく初手に持ってくる。
そうでもなければけん制すらままならないと割り切ったのだ。
「『――!?』」
遠間からの狙いを定めない数任せの釣瓶打ち。1発撃っては使い捨て、新たに生み出してまた撃つ。その繰り返し。
一発で着弾地点の周囲十数メートルに爆風・爆音・爆裂の嵐を叩き込むとはいえ精度の粗い襲撃は有効打になりえない。黒騎士も、勇者にも。
『――――!』
「あ、待てコラ――!」
荒々しい殺気を撒き散らす黒騎士がまず動く。
その五指がさながら竜の顎の如く曲げられた中心へどす黒く燃え盛る炎に似た《瘴気》を超圧縮。世界を汚し、穢す醜悪だが強大なエネルギーが球の形で安定する。
そして、解放。
――――
圧縮された莫大な《瘴気》が扇状に放出され、襲撃者が潜む樹海の一角をまとめて無造作に焼き払う。熱したフライパンに水滴を落とすような弾ける音。
猛禽よりも鋭い視力が、その焼け跡に遺った四肢が燃え尽きた人型大の燃えカスを捉えた。どう見ても死んでいる。
「うっへー……ありゃ即死だね。誰だか知らないけど可哀想に」
勇者が息を整えながら呟く。
いまの襲撃はほんの数秒、黒騎士の意識を勇者から逸らす以上の意味を持たなかった。
「だけど、うん、助かった」
届かずとも、小さく礼を言う。たとえ数秒でも一息つけたのは素直にありがたい。吐いて、吸って。世界に巡る魔力を吸い上げる。大気に混じる《瘴気》は丁寧に選り分け、吐き捨てる。それでも吸い込んだ微量の《瘴気》に気分が悪くなった。
「あいつは必ずボクがやっつける――」
それが結局は死者への供養になるだろうとその無念を引き継ごうとするが。
――――ドゴォォンッ!!
その想いは無に帰る。
黒騎士が
「新手っ!? でもあれじゃすぐ死んじゃうぞっ?」
直前の一幕を見ていないかのような、命と数秒間の等価交換を意味する特攻。あまりに景気のいい命の使い捨てに流石の勇者も驚きの声を上げた。
(――すか、聞こえますか? 竜に連なる猛き御方)
(この声、ラステルの《使徒》? ああ、これが《
アウレリアと勇者の精神を繋ぐ直接交感。距離を無視したコミュニケーション。アウレリアが持つ《
(何の用? いま訳分かんないことが起きててちょっと忙しくてさ)
(その件で丁度お話したいという方が――)
(はい?)
”第三者”の存在を示すアウレリアに流石の勇者も呆気に取られた声を返した。
そして
(ドーモ、いま訳分かんないことを起こしてる者です――時間がないから単刀直入に。あの真っ黒くろすけぶっ殺したいんで協力してくれない?)
戦力と地力で劣る以上、盤面にあるものを(時にないものですら)全て利用するのは
何もかもを巻き込んで悪巧みは進行していく。
めちゃ短いですが更新優先ということでお慈悲を~m(__)m
追記
何となく見えて来た方もいそうですが、この世界をRPGとした場合、勇者くんちゃんと聖女ちゃんは主役・重要キャラ枠です。
大河ドラマにおける戦国武将みたいなもんですね。
ところが予想不能なストーリー進行不能バグ(どころかデータ全損級バグ)が突如発生したため、創造者(クレアトール)がキレ散らかしながら送り込んだ生きたワクチンないしデバッガーが主人公です。
主人公の介入っぷりを見て「誰がそこまでやれと言った」って顔をしながら「まあ面白いからエエか……」ってなってもいたり。
なおクレアトールはもたらす影響が世界規模なので極力手を出したがりません。
なので推定黒幕が分かっても直接介入はなし。世界の命運は主人公が社畜時代に鍛えた無茶ぶり対処能力にかかっています。とんでもないブラック勤務ですね。社畜に逃げ場はなかった……?