テイワット大陸。
七人の神が七つの国をそれぞれ治めているこの大陸。各地には魔物も人も、妖怪も神も存在しており、一部の者は無意識に神が贈った『神の目』を駆使し、元素の力を使って戦うことが出来る。
このテイワットでは、最近妙な噂が流れていた。
ある人は『崖から落ちてしまったところを落下してるところを助けてくれた』
またある人は『ヒルチャールの群れを一瞬で蹴散らした』
似たような噂は山ほどあるが、それらの噂をする人々の共通点として、助けてくれた人の姿を全く見たことがないことだ。
まるで陰から守るヒーローな存在。一部ではそんな呼び名が飛び交っており、やがて、その正体を知らない幻のような者はこう呼ばれていた。
『神速の戦士』と。
▽
風の国、モンド。ここは自由な国であり、風神バルバトスの加護の元、人々が暮らしている場所だ。
基本的に国の治安は『
かつてモンドは、神と龍を巡った事件が起きたことがあった。その事件の解決に導いたモンド外の人物達が、今まさにモンド城の前までやってきていた。
「ここのところ、気がついたら魔物が倒されていたり救助されたりって現象が各地で噂になってるらしいぜ!しかも、その正体は誰も見てないんだ。まるで神様が助けてくれたみたいだよな」
この白い装いに元気な口調で話す小さき人物の名は『パイモン』。普段はフワフワと浮いており、どういう生命体なのかは不明だが、彼女もまた、モンドの事件に深く関わった1人である。
「神様を信仰しているモンドではありそうだよね。実はウェンティのことだったりして」
金髪の少女で落ち着いた雰囲気の人物は『蛍』。彼女はテイワット外からきた異界の人としてテイワットのあらゆる所で知られており、今まで各地の問題の解決に大きく貢献した。モンドではその栄光を讃え、『栄誉騎士』と呼ばれている。
「あははっ!有り得るぞ!でも、モンドだけで起きてることじゃないからなぁ。吟遊野郎がいくら凄くても、他の国の人を助けるのは無理なんじゃないか?」
これまである目的のため、モンド、璃月、稲妻、スメール、フォンテーヌ、ナタ。6つの国を旅してきた彼女達は、仲間達に顔を見せ、久しぶりのモンドを楽しもうとこの国へ戻ってきていた。
歩いてきたことでお腹が少し減っていたのでレストランの『鹿狩り』に足を運ぶ。パイモンはそこの店員スタッフであるサラに話しかけた。
「こんにちは〜!サラ!ご飯を食べにきたぞ!」
「あら、旅人にパイモン!いらっしゃい!今日はね。おすすめの新メニューがあるの。どう?食べてみない?」
「おお!オイラ、その新メニューがいいぞ!旅人もそれにするか?」
「うん。私もパイモンと同じもので」
「分かったわ。ちょっと待っててね」
サラのおすすめに惹かれ、2人はそれを注文する。
席に座り、暫くすると店の中から料理を運ぶウェイトレスが出てきた。パイモンはその人物を見て首を傾げた。
「ん?知らない顔だな……」
「待たせたな。
料理を運んできたのはサラではなく、顔立ちの良い男性だった。男が運んできたのは白米、味噌汁、秋刀魚の塩焼き。至って普通の和食だ。
「
「そこまでインパクトはないし、稲妻のメニューにありそうなものだね。でも、美味しそう」
ある意味衝撃を受けたと言えばそうではある。むしろ好きな料理なので、不満は2人ともなかった。
「そういえば、初めて会ったよな。オイラ、パイモン!お前モンドでは見ない顔だけど、名前なんて言うんだ?」
「おばあちゃんが言っていた」
「んあ?」
パイモンが聞こうとしたが、男は答えずに指を天に掲げながら何か言い出した。パイモンは急にどうしたと言わんばかりに首を傾げる。
「食事の時間には天使が降りてくる。そういう神聖な時間だ。俺のことを聞くより、まずは食事を楽しんでくれ。冷めないうちにな」
「お、おう……」
そう言い残して店の中へと戻っていく。クールな様子にプラスして正論まで言われれば言い返すことも出来なかった。
「なんか凄味のある名言が出たな……ますます気になるぞ……」
パイモンと蛍は、とりあえず言う通りにして食事をする。目の前の秋刀魚の塩焼きを箸で身を一部取り、口へと運んだ。
「「!」」
味をよく確かめ、飲み込んだ後、2人はカッと目を見開いた。
「お、美味しいぞ!ただの秋刀魚の塩焼きなのに、この絶妙な塩加減と焼き加減!完璧な調整だぁ!」
「凄い……焦げも殆どない。身もしっかりあって食べ応えがあるし、お米も何だか味がいつもより良いような……」
味付けも素晴らしいの一言で、普段から色々と料理をしている旅人でさえ、こんな美味しい秋刀魚の塩焼きは滅多に食べられるものでないと思った。
「「ご馳走様でした」」
「ふぅ〜……普段より少量なはずなのに凄く満足したぞ!不思議だな!」
2人は満足そうにご飯を食べ終わる。男もその様子を見て、満足そうにその皿を下げていく。
「モンドの英雄にそう言ってもらえると、作った甲斐がある」
「食べ終わったから聞きたいんだけど、お前って鹿狩りの新しい従業員なのか?」
「まぁ、そんなところだ」
「さっきの料理、とても美味しかった。もしかして、どこかの国の凄腕の料理人?」
今度は旅人が聞くが、その質問に対して男はまた空に指を向けた。
「おばあちゃんが言っていた」
「また始まったぞ……」
指を天に掲げる男は、太陽に向けて宣言するかのように告げる。『どんだけおばあちゃん言うんだ』とパイモンはツッコミを入れたかったが、黙って聞くことにした。
「俺は天の道を行き、総てを司る男」
その名を誇りとし、堂々した立ち振る舞いからは名乗る姿でさえ、威厳を感じ取れる。
男は、その名を口にする。
「天道……総司」
天道総司。この天道は映画時空ではなく、テレビ本編後の天道です。