一歩分の距離(書き直し中) 作:青い月
※主人公の苗字部分と間柄に関しまして修正を入れました
「ねぇ、ちーこれってうち等のチームやばいんじゃない?」
「接戦だねどっちもオフェンスがすごくて点の取り合いになってる」
「でも相手チームは6人でスタミナの消費も激しいと思うしハーフタイム後はリードできるといいけど...」
「でもあの7番は本当にやばい、一馬君が必死に抑えているのにスリーポイントをあんなに簡単に決めちゃってさ」
「身長差があったらスリーポイントなんて簡単に打てないはずなんだけどなぁー」
「なんでだろう?」
(それは多分...)
「両手打ちだから」
「ちーそれって関係あるの?」
「うん男女合同でバスケした時に両手打ちってディフェンスし難いって言ってたよ」
「男バスって片手打ちが多いからタイミングと違うのかもね」
「ちっちゃくて可愛いのにプレーは可愛くないなぁー」
(でも問題はそこじゃない)
普通バスケでスリーポイントを打たれてもあまり問題にはならないなぜならディフェンスが付いた状態での平均確率はプロで30%後半、高校生など20%後半あれば凄い方だからだ。
(みんなこの異常な状態に気付いているのかな...)
「また入ったあの子本当に何本スリーポイント決める気よ」
「...5本目だね」
第2クォーターの終わりを告げるブザーにかき消されたが私と7番の母だけは確かにその有り得ない数字を知っていた。
『ママ、シュート打っても届かない』
『結翔、シュートはね優しく打つの力を入れすぎたらダメなのこうやって』
ボールがネットを潜る音だけが鳴る。
母が楽しそうに手本を見せてくれる。
『ほらやってごらん』
母はバスケが好きでたまに僕に教えてくれる時は本当に楽しそうに教えてくれた、それが僕がバスケを好きになった理由の一つだ。
(シュートは優しく指先を意識して打つ)
第2クォーターの終わりを告げるブザーがなる数秒前、スリーポイントラインでチームメイトからのパスを受け母に教えて貰ったシュートを思い出しながら放つ。
「くっ!」
ちびっこ呼ばわりした彼がブロックに飛ぶがタイミングずれている、ボールは彼の手に触れることなくゴールへと飛んでい。
ボールがネットを揺らすのと同時にブザーが鳴りスコアボードにはまた3点が加点され相手チームを2点だけ上回った。
「おい、結翔!今日も絶好調だな!お前のスリーポイントには本当に驚かされるぜ」
見てみろよと促されるまま相手ベンチに目を向ける。
「もうお前を侮っている奴なんていない全員お前を止める為に必死みたいだぞ」
殺気すら感じそうな雰囲気でこちらを睨んでいる相手チームを視界の端にいれてちびっこ君と言われた借りは返せたかなと思う。
「でもインサイドに入ってのシュートは打たせて貰えてないんですよね」
「おいそれは嫌味か?スリーポイントは一回も外していないじゃないか」
「まぁこれが身長が低い僕が試合にでれる理由ですから」
「そうだな...まぁ外しても大丈夫だぜなんたって俺がいるからな」
「いやです外しませんよ」
キャプテンに目線を合わせる。
「でも信頼しています」
「そんな事面と向かって言ってくるなよこっちが恥ずかしくなるわ!」
スリーポイントの精度は技術はもちろんだがメンタルで大きく変わってしまう。
(キャプテンのリバウンド率も大概だからなぁ...)
そして試合が進み第三クォーターの途中スコアはハーフタイムの時とは違い点差が開いていた。
結翔はいつも通りスリーポイントライン付近でボールを受けるが前半と違いシュートをなかなか打てていなかった。
「黒瀬さんカバー!」
相手チームのパワーフォワードがカバーに入り2対1になるそれによりパス、シュート、ドリブル全て難易度が桁違いに上がってしまう。
(さっきはたまたまファールを貰ってフリースローで決めれたけど...)
ピボットで間合いを作りながらどう打開しようか考えているとボールが手の中から盗まれる。
「速攻!!」
相手チームから発せられて言葉を聞きながらディフェンスに急いで戻るが汗で滑って転んでしまって相手に点を取られる。
「審判タイム!おい、結翔大丈夫か?」
さっきまで褒めてくれていたキャプテンの言葉は心配の言葉に変わっていた。
「すみません僕の身長差がチームの足を引っ張てしまっているみたいです」
僕の身長が低いせいで必然的に上からのパスが通せない今ダブルチームは僕に対して必殺の戦術となっていた。
(あぁ約束したのになぁ...)
無意識に応援席に目線を向けそうになるが情けない顔を見せるわけにもいかずうつむいてしまう。
「おい、なに下向いてるんだ」
キャプテンによって強制的に顔を上げさせられる。
「お前バスケは下を向いてやるスポーツじゃねーぞ...前を向け味方とゴールを見ろ下向いてる暇なんてあるのか?」
目が合うその瞳はまだまだやれるよなと訴えかけていた。
「それにだお前いったよな信頼してるって」
言葉が僕の背中を押してくれる。
「なら俺を信じて100%なんていらないお前の出来る限りのシュートを打てよ落ちても俺がとってやるから」
(やっぱこの人かっこいいな)
「それならいまからどんどん打っていきます...でも外しませんから」
さっきの自信があった時の言葉ではないただの強がりの言葉。
「この負けず嫌いが」
メディカルタイムアウト開けハーフライン付近の自陣でパスを受ける。
「オールコート!!!」
(狙われた!?)
2人のディフェンスが僕の前に立ちはだかりパスコースはすべてふさがれドリブルで突破しようにもそんな隙は無いように見えた。
「一馬詰めすぎるな確実にコースを潰せ!」
シュートは遠すぎてないと判断したのだろうドリブルとパスコースだけを絞りながらプレッシャーをかけられる。
(100%入らなくてもいいか...)
一馬と呼ばれた選手の目を一瞬見た後ボールを縫い目に合わせながら膝をいつもより深く曲げる。
「一馬!打てても入るわけがない詰めるな!」
今日僕はまだスリーポイントを外していないそれに両手ならこの距離でも届くんじゃないかと彼を惑わせる。
(本当に打つぞ?)
念の様なものを彼に飛ばしながらシュートの為に曲げた膝を伸ばそうとした時一緒に彼の腰が少しだけ上がったのを確認しもう一度膝を落としながら前傾姿勢で二人の間に突っ込んだ。
「くそっすぐ戻れ!」
その言葉が1歩後ろから聞こえてくるこれが彼らを出し抜いた距離。
スリーポイントラインの内に入る直前でドリブルを止めシュートモーションに入る。
(やっぱ追いつかれたちゃったか)
ツーマンセルディフェンスで体力を削られすぎたせいかいつもなら安全だったはずの一歩分の距離はほとんどゼロになっていた。
いつも通り上に飛ぶのではなく斜め後ろ体を少し倒しながら相手との距離を少しでも伸ばす為に飛ぶ。
「フェイダウェイ!?でも軌道がおかしい」
相手の言う通り完璧ではないシュートがリング向かい鈍い音を立てて真上に上がると同時に背中に強い衝撃が来た。
(外したでも信頼してます)
「「リバウンド!!」」
アドレナリンのせいかいつもより大きい自分の声と相手の声がほぼ同時にコートに響く。
リング下でいまかいまかと男たちがボールを待っていたがそれは杞憂に終わる。
ボールはリングにはじかれた後誰の手にも触れることなくネットに吸い込まれた。
(10本目だ)
これが僕がその日コート上で見た最後の景色だった。
栄明チームは第三クォーターから7番の子に対して限定的なツーマンセルを組む事で、相手のオフェンスの種類を減らし点差を栄明有利でじりじりと引き放していった。
それでも7番も意地を見せてインサイドでの攻防を成功させ食い下がるがその後速攻を仕掛けられるが戻る途中に転んでしまう。
その姿を見た栄明は7番が疲れている姿を見て点差を引き離す為タイム明けオールコートマンツーマンディフェンスを仕掛けたのだ。
あんなものされてしまったらどうしようもないはずなのに彼の汗で張り付いた髪が激しい運動により無理やり動かされ表情が見え私は感じたこともない感情になった。
(この状況で笑ってるの?)
そしてそのプレーはその日一番の盛り上がりを見せ私も彼のプレーに魅せられた。
「ここでオールコートツーマンセルディフェンス?!」
「一馬君と黒瀬先輩のプレスが早いこれは完全に嵌めた!」
7番はセンターサークル付近でパスを受け普通ならまだそこでプレスがきても一人なのだが今回は後ろに下がれないで位置でツーマンセルハイプレスを仕掛けたのだ。
一馬君と男子バスケ部のキャプテンの素早いプレスを受けシュートをするには遠すぎるしパスをする空間もつぶされていて誰もがこれはボールを奪えると思った瞬間彼は二人の限りなく狭い間を倒れこむような低姿勢で切り込んでいった。
「ダックインドリブル!?」
「でも二人とも反応している!」
ドリブルで抜かれてしまったがダックインドリブルは姿勢を低くしてドリブルをするためスピードもそこまで出るわけではなく2人が両サイドから挟むようにして追いつく。
そしてスリーポイントラインを割って入ろうとした直前で彼は急停止してシュートモーションに入っただがそれを見ていた一馬君は今まで見ていたおかげもあってか反応して上に飛ぶ。
だがそれも届かなかった、7番の彼はとっさに上体を後ろに倒しながらジャンプしシュートするための空間を無理やり作り出し一馬君が出した手を超していくようにいつもより弾道の高いボールが放たれた。
彼の手から空中に放たれたボールがゴールへ行くまでの1秒もかからないであろうその瞬間皆が息をするのも忘れていた、そしてボール放った彼が体勢を崩し背中から倒れるとほぼ同時にリングがボールを拒み真上にはじかれ両チームのエースがリバウンドと呼ぶが今度は素直にリングを通る。
その反撃の狼煙になるような喜劇的プレーを目にし会場では割れんばかりの歓声がおきる。
(10本連続一度もスリーポイントを外さなかった)
だがそこでこの大会の物語は終わり、疲れがピークに達していたのだろう彼は背中を打った拍子にけがをしてしまいその試合ベンチから出てくることはなく私たちの学校が彼のチームに勝ち試合は終わったそしてその勢いのまま私たち栄明はベスト4で敗退する事になる。
この大会でスリーポイント成功率10/10を達成し第三クォーターまでに一人で30点以上取った彼は少しの間みんなの記憶に刻まれていたが全国大会が進み日常が進んでいくなかで少しづつ風化していった。
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それから1カ月後夏休みがもう終わろうとしていた時今年最大の出来事が起きた。
「ただいまー」
部活の朝練が終わり家の玄関を開ける。
(なんだがリビングが賑やかなような...)
「あら千夏おかえり」
「あら初めまして千夏さん私は青井 円っていいますよろしくね」
「今日から隣に引っ越してきた私の親友なのそれでその隣の彼が息子君」
相手の顔を見た私はいまどんな顔をしているだろか。
「初めましてこの度隣に引っ越してきた青井 結翔です。これからお隣としてよろしくお願いします」
彼の声は意外と低くとても落ち着いた声だった。
「ほら千夏も挨拶しなさい」
「初めまして青井くん、私の名前は鹿野 千夏っていいます」
遠目で分かりづらかったが顔は中性的でとても整っていた。
「千夏さんっていうんですね改めてよろしくお願いします」
優しい笑みを浮かべながら挨拶をしてくれた彼に目が一瞬だけ奪われてしまった。
多分終わった 後で見直す