ヒロアカ世界にMARVELのキャラをぶち込んだ短編集 作:龍角散ガム
もしも出久がオールマイトよりも先にあのヒーローに会っていたら...?
緑谷出久が中学1年生の時、彼はアメリカに単身赴任をしている父親の元へ訪れていた。
幼馴染の爆豪勝己を始めとするいじめっ子がいないため、出久はアメリカにいる期間は平和に過ごせると思っていた。
加えて、日本に住んでいると絶対に会うことが出来ないアメリカのヒーロー達をこの目で見ることが出来るため、期待で胸がいっぱいだった。
しかし、その期待もアメリカに着いてから数日のうちに消え去ることとなった。
『個性差別』
異形型の個性や世間一般からかけ離れた非常識な個性を持つ者たちが、優れた個性を持つ者やその集団から迫害を受けるという社会の闇は、アメリカでも変わらなかった。
それどころか、アメリカでは日本以上に個性差別は問題となっており、大通りから外れた小道やビルの陰では常に個性差別による迫害が起きていた。
治安を取り締まる警察もまた個性差別主義者が多く、迫害が視界に入っても見て見ぬふりをしている。中には、迫害の中心人物となる警察官も存在していた。
そして、個性差別の中でも最も迫害されていたのは『無個性』の人々であった。
個性社会カーストの底辺。
集団から外れた存在。
彼らは個性を持つ者に何かをしたわけでもない。
ただ普通に暮らしているだけなのだ。
だが、個性社会ではその普通が普通ではなかった。
無個性は個性持ちの道具として扱われて、良いように弄ばれるのが社会の普通であり、無個性は個性社会の異常なのだ。
出久はフードを深く被り、自身を世界から消し去った。
この人気のない道に日本人という異質な存在に加え、無個性という事実がバレてしまうことでどのような結末が待ち受けているのか容易に想像できる。
僕はこの場所に存在していない。個性という太陽によって生み出された影なのだ。
唇を強く噛みしめながら、出久は自身に言い聞かせて父親の家へと向かっていた。
自身が迫害されることが分かっていて尚、出久が外の世界に飛びだしたのは、アメリカの
しかし、彼女の周りには多くのファンが集まっており、スターアンドストライプに振り向いてもらおうと個性を使う者まで現れていた。
出久は日本では考えられない光景に恐怖を覚えたが、ここまで過激にしなければ彼女に振り向いてもらえないと納得し、リュックサックから取り出した色紙を天に掲げ、自身の存在をアピールする。
しかし、色紙は炎の個性持ちの炎に引火し、色紙の先が燃え始めてしまった。
出久はとっさに色紙を自身の懐へとしまった。
アメリカのために購入した服に黒い焦げが広がっていき、炎はやがて出久の肌を焦がしていった。
火傷の痛みに苦しみつつ炎を鎮火させ、周りに被害がないことに安堵した出久は、炎の個性持ちから離れて再び色紙を取り出した。
しかし、巨大化の個性持ちによって出久の身体は吹き飛ばされ、リュックの中に入っていた色紙は全て宙へと舞った。
周りのファンは舞った色紙を手に取り、スターアンドストライプにサインを求め始める。
集団から突き放された出久は、ファンたちを呆然と見つめることしかできなかった。
そして、出久は改めて理解した。
個性持ちと無個性の圧倒的な壁を。
自身が届かない、ただ外から見つめることしかできない社会の現実を。
出久は何かを悟ったように俯き、ボロボロに踏み潰されたリュックを手に取ってフードを深く被り、NO.2ヒーローに背を向けて父親の家へと歩き出した。
「(かっちゃんたちに虐められていた方がまだマシだ......)」
日本でも無個性は迫害の対象である。
しかし、存在が無かったことにされることはない。
日本とアメリカの文化の差なのだろう。
出久の無個性というコンプレックスが無意識に誇張しているのだろう。
だが、ここは無個性の居場所は存在していない。
出久はそう感じざるを得なかった。
日本にいる幼馴染や友人たちを思い浮かべながら、出久は人気のない道を進む。
「かっちゃんたちは今何をしているのだろう......ほんの少しでも僕のことを思い浮かべてくれたらいいな......」
出久はアメリカに来て初めて自身の幸運を理解した。
自身には爆豪や友人たちがいるのだ。
もし仮にアメリカで生まれ育っていたら、どれほど苦しい思いをしたのだろうか。
想像しただけで胸が苦しくなり、背中から嫌な汗が流れてくる。
出久は自身を守るように腕で身を包みながら歩き進む。
「さっさと金を出せよゴミが!!」
「感謝しろよクズ。俺たちが無個性に価値を与えてやってんだからよ!!」
ただでさえ人気のない道のさらに深く、この世界から切り離されたような影しか存在していない路地裏。
そこでは一人の少年が二人の大人に暴力を振るわれていた。
大人のセリフから少年はおそらく自身と同じ無個性なのだろう。
服は小汚くボロボロで、血と泥で滲んでいる。
少年はお金が入っているであろうポーチを必死に抱え込み、大人たちの暴力から耐えていた。
出久は心が痛むのを感じながらも、その光景を見て見ぬふりをしてしまった。
自身が止めに入ったところで何になるというのだ。
あの少年と同じように、大人たちに暴力を振るわれるだけだ。
ましてや自身は日本人だ。
きっと良いように扱われ、家族に迷惑がかかる可能性もある。
見て見ぬふりをするのが一番平和なのだ。
あの少年もさっさとお金を渡して逃げればいいじゃないか。
何故そこまでして暴力に耐えているのだ。
一番大事なのは自身の身体。逃げることも恥を晒すことも決して恥ずかしくないんだ。
出久は頭の中で必死に言い訳を作り出す。
ズキズキと痛む心を押さえ、出久は重い足を動かし歩く速度を上げた。
すると———
「どうしてこんなことをするの!?僕が何かした!?僕、何も悪いことはしてない!!」
少年は涙を流し大人たちに訴えた。
「僕が無個性だからっ!?無個性の何がいけないのっ!?僕たちも貴方たちと同じ人間じゃないかっ!!」
これまで溜まってきた感情。
虐げられてきた者の魂の叫び。
この世界への嘆き。
それを聞いた出久は足を止めた。
出久が今まで必死に抑え込んできた想いと同じだった。
そして、出久は憧れのヒーロー『オールマイト』の姿を思い出した。
彼は多くの人々を救い、平和の象徴と呼ばれている。
出久はそんな彼の姿に憧れて、ヒーローになることを夢見ている。
だが、今の自身の姿はどうだろうか。
助けを求める者から目を背け、自身の安全を優先している。
その助けを求めている者の感情を誰よりも理解しているというのに。
出久は今まで虐げられてきた過去による悔しさと、今の自分に対する情けなさで涙が溢れてきた。
「はぁ...うっざ。無個性がイキってんじゃねーよ」
一人が少年の顔面に狙いを定め、拳を振りかざした。
少年は恐怖と悔しさで涙を流し、歯をむき出しにして食いしばる。
その瞬間、出久は駆け出していた。
姿勢を低くし肩を突き出し、拳を振りかざす大人の腹部へと突撃する。
「うぐっ...!?」
出久の肩は大人の鳩尾に突き刺さり、大人は呻き声を上げて倒れこんだ。
「てめぇ!!何しやがる!!」
「あがっ...!?」
もう一人の大人が出久の腹に蹴りを入れた。
血と肺の空気が口から漏れ出し、出久は路地裏のゴミ溜めへと吹き飛ばされる。
だが、すぐに立ち上がり、大人の足へとしがみついた。
「くそっ!!離れろクソガキ!!」
大人は足にしがみつく出久に拳を振るうが、出久は全く離れない。
歯を食いしばり、背後の少年に被害が及ばないように、大人たちの標的を自身に向けさせるように必死に耐えていた。
「ごほっ...てめぇ...よくもやったなこのクソガキがァ!!!」
倒れていた大人も立ち上がり、二人がかりで出久に暴力を振るう。
出久は少年に視線で逃げろと伝えるも、少年は恐怖と受けた暴力により立つことすら困難な状態だった。
ならば、出久がやることはたった一つだった。
「(この子を守るために...僕が耐えなきゃいけない...ッ!!」
「はぁ...はぁ...やっと倒れやがったぜこのガキ...!!」
「何もしてこないってことはこいつも無個性か...?無駄に体力だけありやがる。クソが」
約10分も間、出久は大人たちの暴力に耐え続けていた。
だがついに限界が来てしまった。
ガクンと身体から力が抜け落ち、出久は体中から大量に血を流しながら地面に倒れこんだ。
何本もの骨が折れ、ビクリと体が震えるたびに血がにじみ出ていた。
「...なんだよ。こっちのガキ、まだいたのか」
「テメェもコイツと同じ目に遭いたいのか?」
「ひっ...!?」
大人たちは再び少年を標的にし、少年は恐怖で悲鳴を漏らした。
ピクリ......!!
その声に、出久の身体が反応した。
ポタポタと血を垂らし、体中が痛みで悲鳴を上げているのにも関わらず、出久は立ち上がり大人たちに拳を構えた。
「まだ......やれるぞ.....!!」
「「っ!?!?」」
出久の異常な精神力に大人たちは身をたじろいだ。
しかし、相手は既に満身創痍。加えて無個性の子供だ。
大人たちは恐怖で震える身体を無理やり突き動かし、出久へと襲い掛かった。
その瞬間、ガンッ!!という金属がぶつかった音が路地裏に鳴り響いた。
音はどんどん近づき、暗闇から
盾は大人たちにうめき声をあげさせることなく意識を確実に刈り取り、ガンガンと壁を反射して暗闇へと帰っていった。
パシッ!!と誰かが盾を掴む音が響き、足音が出久の元へと近づいてくる。
暗闇から現れたのは一人の男性だった。
腹部の赤と白のストライプと胸の白い星が特徴的な青を基調としたコスチュームを身に纏い、金髪と緑がかった青い瞳の男性。
スターアンドストライプを超える
その名は——————
「キャプテン...アメリカ...!!!!」
出久がアメリカでもっとも会いたかったヒーローが目の前に現れた。
キャプテン・アメリカが現れたことによる感動が体中を駆け巡り、そして安心感が一気に出久に襲い掛かった。
フッ...っと電池が切れた機械のように体の力が抜け、地面へと倒れこむ。
そして、出久は意識が遠のく中、身体に温かいものを感じた。
それは今まで生きた中で最も温かく、安心できるものであった。
出久が次に目を覚ましたのは病院のベットの上だった。
全身は包帯に巻かれており、腕を少し動かしただけで痛みが出久を襲う。
だが、耐えられない痛みではなかった。
出久はゆっくりと体を起こし辺りを見渡した。
ベッドの横に両親が倒れるように眠り込んでいた。
おそらく、ずっと付きっきりで傍にいてくれたのだろう。
すると、母の『緑谷引子』が目を覚ました。
意識を取り戻した息子を目にした引子は、ふるふると身体を震わせ、大量の涙を流しながら出久へと抱き着いた。
続けて目を覚ました父の『緑谷久』も涙を流し、引子に続くように出久に抱き着く。
出久は抱きしめられた衝撃で全身に痛みが襲うも、両親が傍にいる安心感が勝り、涙が溢れ出すのであった。
出久が意識を取り戻してから数日。
治癒の個性を持つ医師の力もあり、出久は歩けるほどまでに回復していた。
現在、出久の両親はお見舞いを買いに出かけており、出久は一人病室から外の景色を眺めてた。
「あの時、助けに来てくれたのは確かに......」
意識を失う前に見た光景と確かに感じた温かさから、あれは夢ではないという確信が出久にはあった。
「ああああああああああっ!!!!せっかく憧れのキャプテン・アメリカに会うことが出来たのにいいいいいい!!!」
もう少し意識を保つことが出来ていれば、キャプテン・アメリカと会話が出来たかもしれない。
サインを貰えたかもしれない。
彼の口から武勇伝を聞けたかもしれない。
あの時とはまた違った後悔が出久をひたすらに襲い掛かった。
すると、コンコンと病室の扉を叩く音が響き、ガラリと扉が開かれた。
「やぁ、少年。元気そうで何よりだよ」
そこにはあの時と同じように、出久の憧れのヒーローが私服姿で立っていた。
「キャッ......キャプテン・アメリカぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」
若干引いた様子を見せるスティーブと、興奮で鼻息が荒くなっている出久。
二人は他に誰もいない病院の屋上へと足を運んでいた。
出久は興奮した様子で自身に巻かれた包帯に頬ずりをしていた。
出久の両腕に巻かれた包帯には大量のサインが書かれていた。
キャプテン・アメリカに出会って真っ先に行ったこと、それは彼からサインを貰うことであった。
出久は床に顔を擦り付ける勢いでスティーブに土下座し、彼にサインを要求した。
『これがジャパニーズ・DOGEZA☆か......!?』
と若干興奮していたのだが、それ以上に出久の超早口のオタクトークに引いていた。
そして今も包帯に頬を擦り付けている出久に引いている。
するとスティーブは、場の空気を改めるようにこほんと咳払いを行い、出久に話しかけた。
「君の勇姿を見たよ。君のような素晴らしい人間を見たのは久しぶりだ」
「い、いやいやそんな!!僕は貴方に褒められるような人間じゃないです!!」
出久は、あのキャプテン・アメリカに褒められたことに感動と興奮で爆発しそうになるも、自身はそんなに立派な人間ではないとスティーブの発言を否定した。
「それに、僕は最初あの少年を見捨てようとしたんです。あの子の気持ちは僕が一番分かっていたのに、見て見ぬふりをした」
「でも、君はあの少年のために戦ったじゃないか」
「それはっ...その、体が自然と動いたんです」
「へぇ...!!」
スティーブは出久の発言に頷きながら、ニヤリと笑みを浮かべた。
「それに、僕はあの大人たちの暴力を受けることしかできなかった」
「身を挺してあの少年を守ったんだろう?」
「でも、僕にもっと力があれば...個性があれば、あの子を怖い目に会わせることはなかった...!!」
「自身のためではなく少年を守るために、か...!!」
スティーブの顔に笑みが増え、声色が上がっていた。
だが、出久は悔しそうに俯いていたため、スティーブの様子には気が付かなかった。
「キャプテン・アメリカ...『個性』が無くてもヒーローは出来ますか!?『個性』のない人間でも貴方みたいになれますか?」
出久は悔しそうに、だが、わずかに希望を込めてスティーブへと問いかけた。
それは、出久が昔からずっと抱え込んできた悩みであった。
「僕は個性が無いせいで...そのせいだけじゃないかもしれないけど、ずっと馬鹿にされてきて...だからか分かんないけど、人を助けるってめちゃくちゃかっこいいって思うんです」
「人々に希望を与え、みんなを助けてくれる!貴方みたいな最高なヒーローに僕もなれますか!?!?」
出久の問いかけにスティーブはそっと目を閉じ、黙り込んでしまった。
心の奥では分かっていた現実、けれどほんのわずかでも抱いていた希望をヒーローに肯定してほしかった。
だが、スティーブの沈黙が物語っている。やはり無理なのだ、と。
無個性がヒーローになることはできないと。
「——————実を言うと、僕は無個性なんだ」
「......え?」
スティーブの予想もしていなかった回答に、出久は思わず情けない声を漏らした。
「正確には無個性
「僕が生まれたのは第二次世界大戦真っ只中の軍事基地だ。世間一般では『超人』という個性により現代まで生き続けているとされているが、そうじゃない。とある実験に志願して、超人的パワーを手に入れたに過ぎない」
「あの時代で国のために戦うためには仕方がなかった。だけど、君たち無個性にとっては卑怯だと思うだろう。僕と同じように実験で力を手に入れたいと思うだろう。だが、あの実験はヒーロー協会によって完全に抹消された。今後、僕のような超人兵士が生まれることは無い」
「そん...な...」
「だから、そんな僕が君の問いに答えるのは、君自身に失礼なことなんだ。僕は、君が憧れるようなヒーローじゃないんだよ」
出久は何も言えなかった。
憧れのヒーローが実は無個性で、違法な手段で力を手に入れたと。
今まで見てきた彼の姿は全て借りものであったと。
とても受け入れがたい真実だった。
だが...
「たとえ、貴方の力が借りものであったとしても...人々を救うことが出来たのはそれが貴方だったからです...!!」
「僕たちは...僕は、貴方のパワーに憧れたんじゃありません!!人々を救う貴方の姿が!!貴方の誇り高き精神が!!スティーブ・ロジャースという人間がNO.1ヒーローたる所以なんです!!だから、ヒーローじゃないなんて言わないでください!!」
「出久......」
すると、出久の言葉を受けたスティーブは目に涙を浮かべ、出久に抱き着いた。
「キャ、キャプテン!?!?!?」
突然の抱擁に出久の声が裏返った。
出久の顔が一瞬で顔が真っ赤に染まり、興奮で湯気を噴き出しながらアワワと腕を振り回している。
だが、スティーブは腕の力を緩めるどころか、出久を強く抱きしめ続けた。
「ありがとう、出久。......そして、君の問いだが、その答えは君自身が分かっているじゃないか」
「え...?どういう...?」
困惑する出久に、スティーブは出久の肩を優しく叩いた。
そして、盾が入っているであろう丸い鞄の中から黒い小さな球体上の物を地面へと落とした。
「なっ......手榴弾!?!?」
その瞬間、出久がとった行動は、逃げることでも手榴弾を遠くに投げることでもなかった。
スティーブが行動するよりも早く、手榴弾に飛びつき腹部へと抱え込んだのだ。
最も人的被害を出さない方法。それは、出久自身が手榴弾の爆発を受けることだった。
出久は目を強くつぶり、来る衝撃と痛みを覚悟した。
グルグルと頭の中で走馬灯が駆け回る。
だが、いつまで経っても手榴弾が爆発することは無かった。
そして、手榴弾を落とした張本人であるスティーブは、出久の姿にかつての自分の姿を重ねていた。
「(やはり、この子は本物だ......!!)」
スティーブは出久の身体を起こし、抱えていた黒い球体を手に取って出久に見せた。
「手榴弾の見た目をしたただのボール!?!?...よかったぁぁぁぁ!!」
緊張の糸が途切れた出久は、へにゃりと地面に倒れこんだ。
そんな様子に笑みを浮かべ、すまなかったと謝罪をしたスティーブは、続けて出久へと語り掛けた。
「対ヴィランに特化したヒーローや救助に特化したヒーローと、僕は今までたくさんのヒーローを見てきた。それぞれ向き不向きがあり十人十色なヒーロー。だけど、どのヒーローも共通して同じことを言っている。『考えるよりも先に体が動いていた』と」
「出久、君はあの少年を助けるために自然と体が動いたんだろう?そして今もそうだ。手榴弾を見るや否やすぐさま抱え込んだ。被害を最小限に抑えるためにね。まぁ、自己犠牲が強すぎるのは問題だけどね」
出久はかつての母の言葉を思い出していた。
母が涙を流して漏らした謝罪の言葉を。
「そして、蔑みの対象であるはずの僕を受け入れ、認め、そして救ってくれた。初めてだよ。僕の真実を聞いて許してくれた人は。本当にありがとう、出久」
「う、うぅ......!!」
あの時、母に言って欲しかったのは謝罪ではなかった。
「君はヒーローに......いや」
「君はもう立派なヒーローさ!!!!」
緑谷出久の人生が変わったアメリカの出来事から数か月。
スティーブに教わった戦略や戦闘術、ヒーローの心得を元に、出久は毎日トレーニングを続けていた。
ヒョロガリだった体形は、今では筋肉がしっかりと付き、そこらのヒーローにも劣らない程の体つきとなっていた。
学校が終わり帰宅した出久は、いつものように家のドアを開けた。
そして、満面の笑みを浮かべた引子が出久を迎える。
「おかえり、出久。あなたにプレゼントが届いているわよ」
「プレゼント?いったい誰から?」
「見ればすぐわかるわ♪出久の部屋に置いてあるからね♪」
いつも以上に機嫌がよい引子の様子に出久は疑問を抱いたが、その原因であるプレゼントを見れば分かるだろうと思い自室へと向かった。
自室の扉を開くとベッドの上に置かれたプレゼントが出久に視界に入った。
出久は、興奮で心臓がドクンドクンと鳴るのを感じながら、ベッドへと近づく。
そして、震える手で『S.R』というイニシャルが入った一枚の手紙を手に取り、中身を読んだ。
手紙を読み終わった出久は、感極まった表情でもう一つのプレゼントを手に取った。
それは、出久のパーソナルカラーである緑と黄色に塗装された、アメリカNO.1ヒーローと同じ盾だった。
「私が来た!!」
「わ!?オールマイト!?何でここに!?!?」
「少年。私は君に礼と訂正...そして提案をしに来たんだ」
「え?」
「君がいなければ、君の身の上を聞いていなければ、口先だけのニセ筋なるところだった!!ありがとう!!」
「ニセ筋...」
「少年......」
「君はヒーローになれる」
「はい!!ありがとうございます、オールマイト!!」
「あれ!?!?ここはもっとこう、涙を流して感動する場面じゃないのかい!?!?」
「あ、ごめんなさい、オールマイト。実は以前にも同じ質問をさせてもらったヒーローがいて、その人にも同じ言葉を貰ったんです!!」
「えぇ!?!?そうなの!?!?......というか、さっきの君戦い方や持っている盾はまるで......!!」
「やぁ、出久!!久しぶり!!盾の扱いはもう慣れたかい?」
「あっ!!キャプテン・アメリカ!!お久しぶりです!!」
「Holy Shi
続くか他の短編を作るかは気分次第です。