仮面ライダー×仮面ライダー ジェイナス×アルカナ NOVEL大戦Glorias 作:地水
某所。
何処とも知れないであろう異空間……そこに戻ってきたのはサーベルタイガードラウとカブトガニドラウ。既に足を運んでいたのであろうマンモスドラウが彼ら二人へ近寄って声をかける。
「どうやら手酷くやられたようだな。二人とも」
「ああ……見ての通りオレの甲羅に傷つけられちゃってよ」
マンモスドラウに自身の甲羅の破損具合を見せるカブトガニドラウ。
その横ではサーベルタイガードラウが悔しそうな声を上げている。
「ちっくしょうが……今度戦う時はただじゃおかねえぞ、アルカナどもめ!」
アルカナとジェイナス、二人の仮面の戦士に倒される寸前まで追い詰められて腹藁が煮えくり返るような思いが抑えきれないサーベルタイガードラウは地面を蹴り飛ばす。
そんな彼らの元へ、エメラルドでできた体を有する怪人・エメラードが現れた。
エメラードが姿を現した事にドラウ怪人の三人は並び立ち、まずマンモスドラウが訊ねる。
「エメラード殿、ジェイナスとアルカナという二人のライダーが揃った今、どうするつもりだ?」
「無論、障害は排除するが……それより我らの目的が優先だ」
エメラードはドラウ怪人達が口にした『ライダー達の排除』より『自分達の目的』の事を示すと、掌を前へ差し出した。
するとエメラードの掌から出現したのは大きな結晶体……一見多面体にも見えるそれには、幾つもの光景が写っていた。
砂漠が広がっている世界
海と空だけが存在する世界
至る所から炎が吹き上がる世界
高く聳え立つ摩天楼の世界
様々な世界が写るその結晶体を見て、サーベルタイガードラウは目を少し見開かせる。
「ソイツが幾つもの世界へ通じる『扉』かよ?」
「然り、これぞディメンションクリスタル……数多の世界へ行くための力よ」
そう言いながらエメラードはその結晶体――ディメンションクリスタルを宙へ浮かせた。
キラキラと光るディメンションクリスタルを見て、カブトガニドラウは質問を投げかける。
「ディメンションクリスタルとやらは今すぐ使えるのかい?」
「いや、コイツはまだ未完成だ……現在手に入れているエナジークリスタルで補強するとしても、まだ時間がかかる」
宙に浮かぶディメンションクリスタルを注意深く見ているカブトガニドラウに対し、エメラードは静かに答える。
『時間がかかる』という所に反応して、サーベルタイガードラウが機嫌悪そうに訊ねた。
「ということはアレか? また暫くクリスタル集めか、完成するまで辛抱強く待つのかよ? チッ、ガラじゃねえなあ……」
「いや、それだとライダー達にこのディメンションクリスタルの存在を気付かれてる場合がある……何より、お前達はそれじゃあ嫌なのだろう?」
「ッ……!?」
エメラードに自身の気持ちを見透かされてしまったのか、サーベルタイガードラウは酷く驚く。
戸惑っている表情を傍らで見ていたカブトガニドラウは笑いを嚙み殺し、マンモスドラウは他所の方向を向いて質問を投げかけた。
「では、暴れてもいいのだろうか? 我らドラウ怪人、人々を不幸にさせて神の如き姿へ至るのが宿命だが……」
「ああ。このディメンションクリスタルには人々の"不の力"を糧に完成を促進するよう
エメラードが指差す先に浮かぶディメンションクリスタルが怪しく輝き、それを見たサーベルタイガー・カブトガニ・マンモスのドラウ怪人三体はほくそ笑む。
……今までは仮面ライダーという邪魔者に気付かれずにエナジークリスタルという裏工作を務めていたが、集めたクリスタルがディメンションクリスタルとなった今、隠れて暗躍する必要はなくなった。
三体のドラウ怪人はそれぞれ溜まっていた想いを口にする。
「なら話は早いぜ。チマチマとクリスタルの内職作業で体がなまっていた分、思う存分本職やれるのは願ったりかなったりだぜ!」
「オレは好きだったんだけどねえ、クリスタル集めは……まあ、同胞であるお前さんらと大暴れするのはもっと好きだけど」
「我らがやることは一つ。人の不幸を集め、束ね、力の糧として神へ至る……それが我ら、ドラウ怪人の
ドラウ怪人達はそう言うと、異空間の出入口というべき
凡そ、ジェイナスの世界へ向かったのだろう……と考えた後、エメラードは体内からある物を取り出す。
「アイツらがそう簡単に敗れるとは思ってないが、念のためだ。これを使えるようにしておくか」
エメラードがそう言って手を開けば、そこにあったのは……。
――深藍色、紫、紅、灰色のライドクリスタルであった。
~~~~
――ジェイナスの世界。
異世界からの仮面ライダー・アルカナである御崎統人を連れて目的の場所へと向かっている一登・優奈・レオンハルトの三人。
今はレオンハルトが駆るXF-Z、そのサイド部分の座席に統人は座っていた。
「なるほどねぇ……つまり、この世界にはジェイナスっていう二人で一人の仮面ライダーが戦っているってわけか」
「なんだよ、すんなり受け入れてるなお前。普通は驚くもんじゃないのかよ?」
「まあね、こう見えて先輩ライダーはそこそこ会ってるから」
XF-Zのエンジンを吹かしながら走らせているレオンハルトを横目に少し自慢げな表情を浮かべる統人。
……事実、統人は様々な仮面ライダーと共闘した過去を持っている。
風の街を守る探偵、魔法の指輪を使う魔法使い、鏡の中の世界を駆る騎士……といった具合に経験豊富なのだ。
そんな統人だからこそ、一登と優奈という二人に興味を惹かれたのか、レオンハルトに質問した。
「ところでジェイナスに変身する一登と優奈だっけ……あんなに若いのに仮面ライダーやってるとはねえ。難儀なことで」
「お前も十分若いだろ……というか、他人のお前がわかるのかよ」
「わかるさ、これでも2013年から現在2018年の今でもアルカナとして戦ってるからね。若い時からライダーやるのって大変だよ?」
「西暦とか年齢とか色々ツッコミたいのは山々だけど、とりあえず割とベテランだなぁ!?」
意外な事実が判明して驚くレオンハルトと、それを軽く笑って受け流す統人。
まるで漫才コンビのようなやりとりを繰り広げている二人……その彼らが駆るXF-Zを乗って、一登と優奈が乗るクロスサイクロンが追う。
その最中、優奈は一登に声をかける。
「ねぇ一登君……あの統人さんって人、もしかしなくても」
「うん……強いな。以前出会った沖さんや筑波さん、あとはライドキラー……彼らとは似て異なる強さをしていた」
一登の脳裏に思い浮かべるのは、かつて出会った仮面の戦士達。
【スカイライダー】……筑波洋
【仮面ライダースーパー1】……沖一也
そして正体不明の戦士である【ライドキラー】
少なくとも3人の戦士に会った事のあるが、そのどれとも違う強さを有していると統人に対して比べてみてそう感じた。
どちらかと言えば、自分達が変身するジェイナスの方がアルカナに近しいものを感じた。
未知の仮面ライダーとの遭遇に少なからず自分達二人は戸惑っているが、今は力強い味方と信じて彼の仲間がいるであろう目的地へ向かっていた。
やがて目的地に差し掛かる頃には一登や優奈にとって見慣れた街並みが見えてくる。
この時点で『ん?』と思った一登達だったが、先導しているXF-Zに乗る統人が叫ぶ。
「あ、この店だ!」
……と、指差した先にあったのは、見知った喫茶店・New Amigo。
今は繁盛している時間なのか、行列ができていた。
扉を開けると……。
―――そこにいたのはメイド服姿の真依だった。
足元まで長い漆黒のロングスカートの上から純白のエプロン、手首まで肌を隠すほど長い腕丈といったクラシックスタイルのメイド服だ。
俗に言う露出が極端少ない古き良きメイドスタイルに、統人は少し観察し、一言呟いた。
「うーん、肌の露出を控えたそのスタイルも、乙な物だね!」
「――それがはぐれた相手に言う第一声かぁ!!」
目に見えぬほど素早い鋭いビンタが統人の左頬に炸裂。
真依に張り倒されかけた統人はもたれ掛かる形でテーブル席の椅子へ突っ込み、その光景を呆れて見ているレオンハルトと優奈。
一方、この店の一員でもある一登は店の中にいるであろう【彼】の名前を呼びかけた。
「おい、おやっさん! いるんだろ!」
「――おやっさんなら今はいないぞ。一登」
一登の声に現れたのは、このNewAmigoとして働いている紅道心矢。
一登と優奈にとっての先輩である彼の手元には調理中だったのかフライパンが握られている。
「紅道先輩? あれ……今日は担当じゃなかったはずじゃあ」
「頼まれたんだよ。八代のおやっさんにさ……その肝心のおやっさんは、ちと謝りに行ってるが」
「ええ……何したんだよおやっさん」
紅道の口ぶりを聞いて呆れる一登。
そこへ、二人の会話を聞いていた真依が申し訳なさそうな表情を浮かべ、いきなり頭を下げた。
「すいません! 私のせいで八代さんにご迷惑かけてしまって!」
「それってどういうことなの、真依ちゃん?」
「えっと、まず最初に起きたのは……」
統人が不思議そうに訊ねると、真依は自分に起きた事を話し始める。
――今よりほんの3時間ほど前。
頼打地区にある商店街にて買い物をしていたのは、二人の若い男。
一人は黒髪が特徴的な元気快活な若い男・八代悠二。
もう一人は高校生くらいの少年・吾郷改。
彼ら二人は両手に買い物袋を抱えながら店へと向かっていた。
「悪いな、改くん。手伝わせてもらって」
「いえいえ、八代のおやっさんのためなら力仕事の一つや二つ楽勝ですよ!」
両手に持った紙袋を持ちあげながら改はこれまでにないいい笑顔を八代へ向けていた。
……そう言えば改が俺と出会う時はいっつも上機嫌だな、と八代がそんなことを思い出していると。
上空から悲鳴が耳に聞こえてきた。
「きゃあああああああっ!!」
「……ッ!」
八代が見上げれば、遥か上空から落ちてくる人影の姿が見えた。
よく見ればそれは吾郷と同じ年くらいの高校生ぐらいの女子生徒であり、今も地上目掛けて落下していた。
このままでは大怪我を負いかねない……それを悟った瞬間、八代は紙袋を隣にいた改へポッと投げ渡す。
「悪い、これ持っててくれ」
「へっ、八代さん何を……へぶぼぁ!?」
改が反応する時には投げ渡された紙袋を顔面で受け止め、その姿すら八代は気にせず走り出す。
周囲の人からすれば目にも止まらぬ速さで踏み出し、そして地面を蹴り上げる。
気付けば商店街の店の壁を蹴り上げ、街灯のライトを足場にして、空高くジャンプ。
やがて、少女と地上との高さが建物三階立てくらいの距離まで落下しようとしたところへ……。
「間に合えっ!?」
と、高くジャンプした八代が少女の体を難なく受け止めた。
その空から落ちてきたポニーテールの若い少女――真依は自分が何者かに助けられたことに驚いていた。
「ふえっ、誰ですか!?」
「通りすがりのおやっさんだ。それよかしっかり噛み締めておけよ。舌噛むぞ」
「えっ……ぬぎゃああああああああああああああああああああ!?」
つんざく様な悲鳴が商店街中に響いた後、真依を抱えた八代はそのまま自由落下……。
そして、次に人々の耳へ聞こえてきたのは大きな破壊音だった。
「大丈夫ですか、八代さん……!?」
改が駆け付けて見てみれば、八代達が落ちたであろう場所へ向かうと……。
青果店の売り物であったであろう砕け散った果実達、壊れた水槽から出て来たのかのた打ち回っている青魚達、通路に散らばっている葉物野菜。
どうやら落下地点にあった商店街の店が落下の余波に被害に遭ったようだ。
そして肝心の少女を助けた八代はというと……。
「嬢ちゃん、無事か?」
「ふきゅぅ……」
多くの土煙が待っている中で真依を抱えながら無事な姿で現れた。
超人じみた活躍を一部始終を見て、改は無言で驚くしかなかった
そして現在。
真依が何か起きた事をライダー一同が聞いた後の事。
「で、それで働くことになったわけか。真依ちゃん」
……と、一人勝手に納得しているのは執事姿の御崎統人その人。
ご丁寧に眼鏡をかけているあたり、割と決めている様子である。
彼は紅道から受け取った料理を受け取ると、テーブル席へ女性客へ向けてニコリと笑うとその料理を置いた。
「お待たせしました、お嬢様。こちらのオムライスにケチャップによるサービスをしても?」
「「きゃー!!!」」
女性角からの黄色い声が上がり、統人は笑みを浮かべたままケチャップで見事な絵を描く。
まるでこなれているような様子に、同じく執事姿の一登は呆れた表情で見ていた。
「なんで慣れているんですかあの人」
「おい、一登。さぼってないでササっとこっちの分持ってけ」
「へいへいっと」
今の状況に戸惑っている一登を見て、レオンハルトは叱咤の言葉を口にする。
そんなレオンハルトも屈強な男にしては柄じゃないエプロン姿をしており、紅道と共に料理を作っていた。
彼ら男達が自分なりに店の切り盛りやっている中、新しい客が店内に入ってくる。
そんな彼ら彼女らを出迎えたのは一人の少女だった。
「いらっしゃいませ、今空いているお席はこちらです」
「こちら、メニューです。お決まりになりましたらお伝えください」
そう言って席に案内してきたのはクラシックスタイルのメイド服を纏った優奈。
ロングスカートに白いエプロンという露出の少ない恰好なのは真依と同じだが、唯一違うのは長い髪をポニーテールに纏め上げている点。
彼女の元来持つ愛らしさと相まって丁寧な接客によって、やってきたお客さんたちはとろけるような笑顔を見せて案内されていく。
NewAmigoにて広がる幸せな空間。
ドラウ怪人が今の何処かで暗躍している他所に、一同はNewAmigoで起きているピンチを真正面から解決していくのであった。