仮面ライダー×仮面ライダー ジェイナス×アルカナ NOVEL大戦Glorias 作:地水
一登達三人が異世界から来たアルカナ一行を出迎えたその頃。
「たーっく、どんだけ派手にやらかしたんだよ」
頼打地区郊外のとある商店街……そこでは改が他の商店街の人と修理している姿があった。
金槌と釘を手にして壊れたベンチを直していく姿はまるで大工さんのような姿であり、慣れた手つきでベンチを改修し終えたのだ。
その立派な出来に同じく作業をしていた人は驚いた。
「こんな立派なベンチになっちゃって……」
「へへっ、これでも負けたくない相手がいるんでね。それを比べるとベンチの一つや二つ直すのなんてお茶の子さいさいってんだ」
驚く相手に対して自慢気味に答える改。
無論、改にとっての負けたくない相手というのは夏川一登の事である。
とある理由で何らかの形でもいいからいつか勝ちたいと思っており、こうして
そうして一つのベンチを綺麗に直した所で周囲の様子を見回すと……そこへ通りかかった見知った顔の二人を見かける。
相手側二人もこちらの存在に気付いて駆け寄ってきた。
「ちょっとちょっと、なんなのよこの状況?」
「吾郷さん、何があったんですかこれ?」
改の名前を呼んでやってきたのは、一登・優奈の同級生兼クラスメイトである須崎里子、その里子の後輩である綾瀬珪花だった。
彼女達二人は商店街の惨状と改の姿を見て驚いており、改は何処から話したもんか悩んでいた。
「お前らか……なんていうか、んー……おやっさんがやらかした?」
「えっ、おやっさんていうと、八代さんですか? これを!?」
改から教えられた事実を知って目を丸くして驚く珪花。
どう見てもSFドラマでありそうな空から落ちてきた小さな落下物のせいで散らかったような光景に、里子は何処か納得した表情を浮かべていた。
「まあ、おやっさんならやらかしかねないわね……」
「里子さん!?」
「お、分かるのか?」
里子の発言に珪花は驚き、共感者がいてくれたことに改は笑顔になる。
……事実、里子と珪花は以前八代のおやっさんには謎の集団に助け出された事があり、その時の戦いぶりは記憶に新しい。
まさかあそこまで激しい戦い並のことを今度はこの商店街で爪痕残すとは思っても見なかったが。
「これの被害出したのおやっさんなんだろうけど、何やらかしたのよ?」
「んー、見たまんまで言うと……空から美少女降ってきて、それ助けて着地したらこうなった感じ」
「美少女ですか!? また一登さんに忍び寄る魔の手が……!」
里子の問いかけに改は少し言いよどんだ後に答えると、珪花は大声を上げて驚いた。
どちらかというと、意中の相手になりやすい一登に対しての危険を察知したようだが……。
そんな珪花の話など他所に、里子と改が談笑を続けていると、丁度この場にやってくる人物がいた。
「よぉ、改……と、理子ちゃん珪花ちゃんもいるのか」
名前を呼ばれて振り向くと、多くの段ボールの荷物を抱えた八代の姿があった。
彼の手に持っている荷物の量は軽く2メートル近く詰みあがっており、それを悠々とした表情で八代は運んでいる。
彼の常人離れとした力持ちに珪花は口をあんぐりと開け、里子と改は『アチャー』と言わんばかりなしまった表情を浮かべる。
「わぁ……」
「「おやっさん、やりすぎ」」
「ええっ、やりすぎって……うんとこしょっ、どこがやりすぎなんだよ」
呆然とする珪花とツッコむ里子と改の言葉に対して、八代は一旦荷物を置いて抗議する。
その際、どっしりとした質量を示す音がしっかりと響き、常人離れした膂力を有している事の説得力がさらに増してしまう。
理子はジト目を向けながら八代へと訊ねる。
「おやっさん、何をどうしたらこんな商店街に隕石が落ちたような惨状を生み出せるってのよ?」
「あー……あれだ、アレ。昔取った杵柄ってヤツだ。ちょっとした力自慢でなぁ」
理子の問いかけに対して、八代は少し口を閉ざした後に腕に力こぶを作りながら答えた。
まるで誤魔化しているような印象を里子と改は感じ取ったが、二人に対して珪花はキラキラとした瞳で感心している。
そんな最中だった……八代が見ていた景色の中に映った『異変』を見逃さなかったのは。
「ん……」
「どうしたんですか? おやっさん」
「悪い、改君。荷物ここに置いとくぞ」
何かに気付いた八代は改に荷物の事を託すと、そのまま何かを追いかけるように走り出した。
一体何をどうしたのか、と改が考えようとする前に隣に立っていた珪花が叫ぶ。
「待ってくださいおじ様! せめて、せめて美少女が一登さんとお近づきになってるかだけでも教えてください……!!」
背姿を向けて遠くへ消えていく八代へ向けて、悲痛に聞こえる程の必死な珪花の声が商店街内を響いた。
"我欲に必死よね、珪花"と心の中で思った里子は遠くへ向かう八代の姿が見えなくなるまで真っすぐと見ていた。
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商店街にいる改達三人と別れて、八代は先程視界に入った存在を追っていた。
それは、虎の風体をした異形の怪人……サーベルタイガードラウであり、目にも止まらぬ速さで頼打地区の各地を駆け巡っていた。
「……チッ、誰だか知らんがこのオレを追いかけてるのかよ」
一方、サーベルタイガードラウは自分を追いかけている存在に気付き、舌打ちをする。
何処かに不幸にできそうなヤツがいないのか人間の世界を探っていた所へ、謎の人間がこちらに気付き、しかもこっちを見失わない程度の速度で追いかけている。
何者だのかは知らないが、追いかけられたままでは邪魔されかねないと思ったサーベルタイガードラウは、ギアの速度を上げんとばかりに速度を一段階上げた。
「人間に本気出すのはもったいないが、しゃらくせえ!」
常人ならば視界に捉えきれないであろう速度までスピードを上げ、一瞬目の前で消える。
視界から消えた怪物を見て、一旦その足を止めた八代。
――その背後を狙って、サーベルタイガードラウが鉤爪を展開しながら迫っていた。
「くたばれぇ!」
「誰がだよッ!!」
振り下ろされた鉤爪の腕を身を翻して躱し、八代は咄嗟に回し蹴りを叩き込もうとする。
意外な反撃を目にしてサーベルタイガードラウは空いていた片腕で八代の繰り出したキックを咄嗟に受け止める。
人間にしては予想外なほどの重みのある攻撃を受けて、違和感を覚えたサーベルタイガードラウは叫ぶ。
「テメェ、人間か? 随分と重い一撃だなぁ!」
「こっちは柔道と空手、その他諸々やってた経験者だからな……で、お前さん何者だ?」
軽いフットワークでサーベルタイガードラウと相対する八代。
自慢ではないが、人の子も泣いて恐れる異形である自分を見ても驚くどころか平然としている八代を見て、サーベルタイガードラウは訝しむ。
……まさかコイツ、仮面ライダーかその関係者では?、と思いながらドラウ怪人は何者かと訊ねている八代へ返答した。
「不幸を招くが我らが宿命、神へと化けるため人に仇名すが我らドラウ怪人……その一人、荒ぶる風の化身が一人、サーベルタイガードラウ! 我が
威風堂々とした勢いでサーベルタイガードラウは名乗り上げる。
自分達の存在意義は『人々の不幸を糧に神の如き進化を果たす』……それだけでいいし、疑問も持たない。
己の奥で発する心に従い、目の前にいる愚かな不届き者を切り裂くだけ。
だが、この時ドラウ怪人は気付いていなかった。
八代悠二というこの男が【怒り】ともとれる険しい表情を浮かび上がせている事に。
サーベルタイガードラウは一歩踏み出し、両腕の鉤爪を展開して不可視の速度で猛ダッシュする。
本来ならライダー相手に振りかざす大技であるが、この生身の男を放っておくわけにはいかず、思い切って振り翳すことにした。
迫るサーベルタイガードラウの幾重の鉤爪に八代はゆっくりと見定め、そして……。
――八代の背後から飛んできた飛び蹴りが、サーベルタイガードラウの頬を掠った。
「ッ!?」
目の前にいる八代ではない明らかに第三者の存在に対し、咄嗟に身を翻してバックステップを取るサーベルタイガードラウ。
そして乱入してきた存在を見て、眉を潜める。
「テメェ、仮面ライダーか!?」
「……いいや。オレは、ライドキラーだ」
そこに現れたのは、一人の仮面をつけた緑の戦士・ライドキラー。
時には【襲撃者】としてジェイナスと対峙し、時には【協力者】としてレオンハルトと共闘した謎の戦士は今、八代の隣に立っていた。
彼は少しだけ視線を八代に向けると、八代が眉をひそめて不満の言葉をライドキラーへぶつけた。
「なんだよ、コッチに来たのかよ」
「無論だ……その形相を見てはより一層な」
「なにっ……あっ!」
自分の形相という単語を聞いて、近くにあった窓ガラスを鏡代わりに見た。
どうやら余程酷い顔をしていたのか、気まずそうな表情を浮かべている。
……こんな顔、アイツらには見せられないな。
内心そんな事を思っていると、待ちきれなくなったサーベルタイガードラウが叫ぶ。
「てんめぇ、仮面ライダーじゃねえくせに邪魔しやがって!」
「そうだな……オレ達は確かに仮面ライダーではない。だが……」
ライドキラーは自身の事を仮面ライダーではない事を肯定しながら拳を握り締める。
何やらヤバい雰囲気と感じ取ったサーベルタイガードラウは身構え、相手の出方を伺いながら警戒する。
そしてライドキラーは地面を蹴って距離を詰め、その拳を勢いよく繰り出した。
「タァッ!」
放たれた必殺の拳はサーベルタイガードラウを殴り飛ばした。
予想より速く放たれたそれをサーベルタイガードラウは対応するのが一歩遅れ、勢いよく殴り飛ばされてしまう。
近くにあった鉄柵を破壊して突き抜け、地面へと叩きつけられると、サーベルタイガードラウはようやく焦る。
「なんだよコイツ……ただのパンチなのに、アルカナどもの拳よりも痛ぇ!」
「生憎、オレにできることは限られていたからな。自分ができない事を悔やむより、自分ができる事をひたすら伸ばした」
そう言いながら、ライドキラーは一歩ずつサーベルタイガードラウへ進んでいく。
少しずつやってくるだけ、たったそれだけの勢いのはずなのにサーベルタイガードラウの目には違って見えた。
――まるで、ゆっくりと歩み寄るその姿は、天よりも高いほど巨躯を誇る巨人のようだった。
人間と同じ等身大サイズである自分の大きさでは絶対に斬り倒すことは決してできない……そう思える程の強みを感じた。
自分自身より強い存在に遭遇し、サーベルタイガードラウは苦虫を嚙み潰したような悔しい声を上げた。
「畜生がぁ!」
大振りに振り翳した斬撃がライドキラーへ狙うが、それに対してライドキラーは両腕を駆使して振り下ろされた鉤爪を展開する腕を掴んで狙いを逸らす。
そこからは蹴り、拳といった殴打による攻撃を手捌きで防御しながらお見舞いしていく。
ジェイナスやアルカナとは違う、何らかの重みと凄みを感じる一撃一撃がサーベルタイガードラウを追い詰めていく。
「ぐああああああ!?」
「いくぞ、トゥ!」
ライドキラーは大きくジャンプし、空高く上空へ舞い上がる。
コイツを食らえばマジで危ない……野生動物由来の直感が警告を鳴らし、サーベルタイガードラウは咄嗟にタロン兵を召喚する。
タロン兵は此方へ飛んできているライドキラーを視認すると、同じく勢いよくジャンプしてその手に剣を構えて突貫する。
向かってくるタロン兵達へ目掛けてライドキラーは背部に展開した噴出ユニット・キラーブースターからジェットを吹かし、必殺の一撃を放った。
「――ライドキラァァァ、ブレイクッ!」
ライドキラーが繰り出した飛び蹴りによる一撃『ライドキラーブレイク』は緑の閃光と共に突撃し、向かってきたタロン兵をことごとく粉砕していく。
思っていたより凄まじい威力の一撃にサーベルタイガードラウは咄嗟に風と共に消える。
後に残された最後のタロン兵を蹴り飛ばし、ライドキラーは着地した。
「逃がしたか……」
ライドキラーは上手く着地した後に、その姿を解いた。
――そこに現れた【協力者】は、険しい表情を隠そうとせず逃げたサーベルタイガードラウがいた場所を見た。
無論、痕跡は何処にも残っておらず……手がかりになりそうなものは残っていないと判断し、さらに額の皺を潜めた。
「……異世界の怪人、ドラウ怪人か。アイツらが何をしようと俺達が阻んでやる」
「ま、そう力むなって。例のアルカナだったっけか? その仮面ライダーがいるなら心配に越した事はねえと思うぜ」
そう言いながら戦いを終えた【協力者】の元に現れたのは、【敵対者】その人。
どうやら急いで駆け付けたようで、ニヤリと不敵な笑顔を浮かべて悔やむ自分を窘める。
【敵対者】はそう言って相棒とも言うべき彼に肩に手を置いて自分の意見を告げた。
「認めたくはないが、これはジェイナスの奴らも関わってやらねえと大変な事になるかもな」
そう言いながら【敵対者】は【協力者】に向かって告げた後、二人ともこの場を去っていく。
後に残されたのは、ライドキラーとドラウ怪人というライダーではない強者の戦いの痕跡だけだった。