夜も更け、人々が寝静まった深夜帯…寝床から起き上がった男は、何やら身支度を整え、どこかへ出かける準備をする。
身支度を整えた男が、いざ外へ出かけようとすると…
「だ・ん・な・く~ん♡ こんな夜中にどこ行くのかな~?」
…後ろから自らに呼びかける声がする。聞き覚えのある声…というより、いつも聞いてるこの声は…
「い、いや…なんか急にタバコを吸いたくなってさ…でもちょうどタバコ切らしてたから、近くの自販機まで買いに行こうかなって…」
動揺しながらも、男は妻の問いかけに答える。すでに彼の背中には、冷や汗が滲み出ていた。
「うんうん、タバコを買いにね。だったら、わざわざ窓から出て行く必要なくない?普通に玄関から出て行けばいいでしょ?どうして?」
窓の縁に手をかけていた男の体がビクッと震える。心なしか、額にも汗が滲み出ていた。
「ふ~ん…わたしに見つかりたくなかったんだ?勝手に外に出ようとしてるのが、バレたら捕まるから?」
その場で固まる男の背に、問い詰めるように言葉をかける妻。すでにこの場における力関係はハッキリしていた。
「ふふ…もう遅いんだけどね♡ じゃ、ますは手首に手錠をかけて、と…」
彼の手を窓の縁から無理やり外し、すっかり手慣れた感じで、両手に手錠をかける。
「はい、旦那くん、確保~♡ もう逃げられないよ♡ 観念してね♡」
男、あえなく確保される。今宵も外への脱出作戦は失敗であった。
…彼は現在、妻からとんでもないレベルの束縛を受けていた。
会社での飲み会不参加は当たり前、スマホには常にGPSアプリ、どこかで女性とわずかに会話しただけでも速攻バレて問い詰められる…そんな生活をすでに何年も続けていた。
彼の唯一の癒しはタバコのみ。タバコは浮気の可能性を低めてくれるから、とは妻の談。
妻に捕まった彼は、彼女の格好を見て驚愕する。
「あ、えっと…ひとつ聞きたいんだけど、その格好は、何?」
男がおそるおそる訪ねると、彼女は嬉々として答えていった。
「あぁ、この格好?見ての通り、警察官のコスプレだよ?旦那くんがそろそろ逃げ出すかな~って思って、気合い入れて準備しちゃった♪ どう?似合ってる?」
そう、今の彼女は警官のコスプレをしていた。しかも、普通の警官のコスプレではなく、ミニスカ警察である。
そのミニスカは、パンツが見えるか見えないか、ギリギリのラインを攻めていた。まさにパンチラ、男の目線がそちらに吸い寄せられるのも無理はなかった。
必死にすけべ心を抑えながら、男は彼女の格好を褒める。
「あ、あぁ…とってもよく似合ってると思う。綺麗だよ///」
「えへへ、ありがと~。旦那くんもずいぶん褒め上手になったね。でも、上手く褒められたからって、逃がしたりはしないからね?ほら、寝室に戻るよ~。」
無情である。愛する妻を褒めても、全く自らの利益には繋がらなかった。今宵も自由を手に入れられなかった男は思わず項垂れる。
そのまま寝室へと強制連行された男は、布団の上で正座をさせられる。
「さて…お仕置きすることは確定したわけだけど…どうして逃げようとしたのか、旦那くんの口から直接聞かせてくれる?」
妻から絶対に逃さないという圧を感じながら、男は答えた。
「い、いや…逃げようとしたんじゃなくて、本当にタバコを買いに行こうと思って…」
「ん~、それは建前の理由だよね?タバコなんて、いつでも買いに行けるじゃん。本当は?」
だんだん冷たくなる妻の声色。男はその圧に耐えきれず、とうとう本当の理由を自白する。
「その…自由が欲しかったんだ。最近、束縛とかキツかったからさ…」
…彼にとって、本当は最近どころの話ではないのだが、とにかくそう言った。
すると妻は悲しそうに目を伏せて尋ねた。
「そっか、自由になりたいんだ…わたしのこと、嫌いになっちゃった?もう離婚したい?」
先ほどまでとはあまりのギャップに仰天する男。彼は慌てて、妻の言葉を否定する。
「い、いや!そこまでじゃないよ!たしかに束縛はキツいけど、離婚したいとまでは思ってない!」
彼の言葉を聞いた妻は、パァッと顔を上げて言った。
「えへへ…そっか。そこまでじゃないんだ?よかったぁ…君に嫌われたら、本格的に立ち直れなくなるところだったよ~。」
悲しそうな顔から一転、花の咲くような笑顔に戻った妻を見て、男は安堵する。しかし…
「じゃ、離婚の危機も乗り越えたところで…改めて、君を脱走罪で逮捕します♪ますは唇から…♡」
えっ…?と思う間もなく、唇を奪われる。
舌が口の奥までねじ込まれ、唾液を流し込まれる。
そのままの勢いで、舌を絡め取られ、蹂躙され……気がつけば、口内が唾液で溢れていた。
「ん…唇逮捕♡ わたしとのキス、ドキドキした?」
色っぽく、目配せをしてくる妻。そんな彼女に対し、男はコクコクと頷くことしかできない。
「ふふっ、よかった♡ じゃあ、次は耳を逮捕しちゃう♡」
妻の口が容赦なく男の耳に喰らいつく。
顎と舌をしきりに動かし、彼の耳を蹂躙する彼女は、熱っぽい声色で彼に囁く。
「あ~~~~、もうダメ♡ 無理無理♡ こんなの興奮しちゃうよぉ♡ 君ってなんでそんなに可愛いのぉ?」
やたら扇情的な声に男の心臓はドクンと跳ね上がる。必死に平静を装い、彼女に尋ねる。
「で、でも俺、タバコ臭いし…そんな可愛いとか…」
「へーき♡ タバコの匂いも君の匂いみたいなものだし♡ 全然愛せるから、安心して♡」
タバコ臭いのも意に介さず、耳を喰み続ける妻。そんな彼女に尚も言い訳のような何かを続ける男。
「いや、でも…やっぱちゃんと禁煙とかしてから、君に身を委ねたいっていうか…」
「うんうん…わかったわかった。言い訳という名の調書は後で取ってあげるから。今回は現行犯逮捕だから、速攻有罪ってことで、この場で刑を執行しまーす♡ それっ♪」
会話が噛み合わない…と思った瞬間、男は妻に押し倒される。抗う暇すら与えられなかった。
「へへ~♪押し倒しちゃった♡ 手錠されながらってのも、新鮮でいいでしょ?」
目をハートにしながら…訂正、目のハイライトをオフにしながら、上から覗き込んでくる妻に、男は恐怖を覚えた。これから自分が彼女に性的に食べられるんだという恐怖を。
「もぅ…そんなに照れないの♡ 大丈夫、ちょっと痛いのと気持ちいいの、両方シてあげるだけだから♡」
息を荒らげながらそう話す彼女は、もはや獰猛な肉食獣のごとし。理性を失った獣のようであった。
「旦那くんの身体に、わたしの証をいっぱい刻み込んであげる…もう脱走なんてしようと思わなくなるくらいに、ね?」
この言葉を最後に、男の意識は次の日の昼まで途絶えることになるーー
おまけ〜嫁サイド〜
身体中をわたしの歯型やキスマークでいっぱいになった旦那くんが横たわっている。今頃、わたしの夢を見てくれてるのかな?
「ふふっ…可愛い寝顔。」
彼の寝顔なら一日中でも眺めていられる。
脱走癖のある旦那くんだが、それでもわたしがこうして調教すれば大人しくしてくれる。
男の人で、わたしより力はあるはずなのに、なぜか口先で拒否するだけで、あまり抗おうとしない。それの意味するところは、つまりーー
「実はわたしのことが大好き、ってことだよね?」
さっきだって、わたしの警官コスを舐め回すようにジロジロ見てたし。特にこのスカートあたりとか。
「ホント、スケベなんだから…♡ でも、わたしに対してだけなら、別にいいかな♡」
そう、彼がこんな目線を向けていいのは、わたしにだけ。もし、他の女に同じような目線を向けていると分かったら、その女のことは56しちゃうかも。
「大丈夫だよね…?旦那くんはわたし一筋だもんね?わたしのこと、裏切ったりしないもんね?」
そう彼に問いかけるが、答えはない。わたしは一生、この不安から解放されることはないのだろう。それでも…
「君のことが、好きだから。どんな手を使っても、手放したりしないから。」
彼にそっと口付けをする。彼の唇はあったかくて、ほのかにタバコの味が感じられるのだったーー
愛が重いっていいよね