人から馬になってウマ娘になってた。 作:意地があんだよ男の子には!
初めての描写なので簡潔かつ単純になってます……
「……」
「ふぅ」
「よっと」
各々、軽く身体をほぐしている。たかが遊び、という訳では無さそうだ。
ストレッチが終わり無言で前を見つめ構えているのがルナ、息を吐きながら体を伸ばしているのが黒松、掛け声を出してジャンプしているのがシリウス。
「よしよし……」
伸ばし終えた黒松は右脚を踏みしめると地面を前後に蹴る。その蹴りで芝が捲れ、土がむき出しになる。
「おいおい、そんなに荒らすなよ。スタートが上手くいかなくなるぞ」
「お気遣いありがとう。でもね、こうしたくなるんだ」
「……変なやつ」
シリウスはそう呟くと正面を向き、スタートの構えを取る。
それに連れるように黒松もスタートに備える。
「それでは」
爺やは旗を地面と水平に構える……
バッ!!
「「ッ!!」」
「ヨシ……ッ!!」
タイミングはほぼ同時。踏み込みの音にはっきりと違いがわかったルナとシリウスは横を見る。
そこには自分よりも半バ身ほど前にいる黒松が見える。
観客は驚きと諦観が洩れる。
「うっそ……」
「天才の上にまた天才が来るの……!?」
「世の中バケモノしかいないなぁ」
「ほぉ……これは」
「驚いた。やると思ってはいたが、ここまでとは。ふふ、これは楽しみだ」
スピードシンボリは笑みがこぼれる。もしかすれば、現役時代の自分の目標を、一族の、日本の悲願を達成するかもしれない。そしてその光景をその目で観れるかもしれないと。
模擬戦に話を戻すと、先頭に黒松、1バ身後ろにシリウス、その3/4バ身にルナという形になっている。
「チィ素人じゃねぇのか……!!」
「そんなこと知るもんかッ……!!」
憎み愚痴を吐きながら黒松に迫る。
差が縮まってきていることに少し冷静さが戻り始める2人。
その間の黒松は
(前世の当週追いと同じ感覚でいけばと思ったけどキッツ!!?そりゃ身体ができてないし、何より普段の調教もしてないもんな!でもまぁここでカッコ悪いとこ見せたら嫌だし、負けるのもなんか癪に障るし……死ぬ気でギア上げて走るか!!楽しいなぁ!!(ヤケクソ))
愚痴愚痴と自分に対して愚痴っていた。しかし、最後の心の宣言通り
大きく発された踏み蹴る音と共に黒松は加速した。
「は……ッ!!クソが……ッ!!」
「ッ……!」
ずんずんと離されていく光景にシリウスは唖然を通り越してもはや闘志をむき出し、ルナは逆に圧倒される。
「あぁあぁああァ゛ァ゛ー!!!」
「ぅおおぉォォラ゛ァ゛ァ゛ー!!!」
「!!ッぉおオオオォォ゛!!!」
黒松とシリウスがラストスパートの雄叫びを叫ぶ。それによって我に返ったルナも、脚を最大限に使う。
結果は変わらずと言ったところ。1着が黒松、2着がシリウス、3着にルナという形になった。やはりラストスパートの出遅れが響いていた。
走りきり軽く流した後に膝に手を置き、肩で大きく呼吸する黒松。
「はぁっはぁっふぅぅ……はぁっ…………っ気持ちいいなぁ……っ!!ゲホッゲホッ……はぁっ……ふぅぅ……」
今まで自由に走れていなかった分、開放感で頭が支配されている黒松。息はまだ途切れ途切れではあるものの、整ってきてはいる。
「はぁ……はぁ……アイツっ……流しはあれだけで良いのかっ……?」
未だに息を整えながら流しているシリウスは黒松を見てそう思う。
普通ならば流しはそれなりにしておかないと足の負担にも繋がるのだが、彼女にはそれらしい症状はない。
「はぁ……速いっ……はぁっ……速かったっ……」
これまで負け無し、唯一シリウスに足を掬われかけることもあったが、これまで自分が近況の世代で最強だと思い込んでいた。それがたった今打ち砕かれたことに幾ばくかショックを受けていた。
「あのルナお嬢様が気迫に押されるとは」
「自分に絶対の自信があるからこそ……かな?いずれは矯正しないといけないと思っていたけれど、今回で治りそうだね。それにしても、はは……彼女達、まだまだ本格化も身体も出来上がってもないのにこれほどとはね……」
黒松
16.5-17.3-15.2-13.6
62.6秒
シリウス
17.1-16.8-15.4-14.0
63.3秒
ルナ
17.2-16.7-15.6-13.9
63.4秒
「楽しかったです!」
「それは良かった。ジャジャっ子たちも落ち着いたから助かったよ」
「……」
「はぁぁ……どんでん返しかよ……」
満面の笑みで回答する黒松に、礼を言うスピードシンボリ。
そしてそれを後目に休息を摂るシリウスとルナ。ルナの方は黒松の笑顔に目が釣られている。
「さて、どうだったかいルナ」
「!……速かった」
話を振られ、顔を逸らして話すルナ。
「誰を見ていたんだい?」
「う、うるさい……」
スピードシンボリの発言からまたからかわれているとわかったルナは拗ね気味に返答する。そんな中に黒松は高揚を残したまま入る。
「ねぇ、ルナは楽しかった?」
「!…………うん」
「嘘だよね?その間は」
「嘘じゃ……ないもん」
「顔が笑ってないし、なにより何か考えてるでしょ?私はな〜んにも考えられないくらい楽しかった!だから、ルナは楽しくなかったように見えるんだ」
「それは……君の考えだろ。僕は違う……でも、心の本心じゃ楽しめてなかったかも……しれない」
「うん、そうだよね。いつも走ってるんだから楽しみじゃなくなるよね。ごめんね」
「あ、謝る必要はないから……!」
急激に冷静になっていく黒松にルナは擁護に入る。
「そうだね……ルナ、1度初心に戻ってみるといい。黒松はある意味で、本来のウマ娘の在り方の一つだ。今のただ強くある為の考えだけじゃなくて、楽しく走る考えをした方がいい。これはシリウスにも言えることだからね」
「楽しく……走る」
「勝つ事だけ考えるのは悪循環ってか?まぁ、一理あるとは思うが」
スピードシンボリの言葉に2人は今までの走りについて考える。
シリウスはルナに対して、ルナは期待に対して必要以上に執着しているのではないかと考える。
「……期待に応えつつ楽しく走る……」
「周りの人の目を気にせずに走る。…………ハッ、よくよく考えればなんか馬鹿馬鹿しく思えてきた。なるほどそういうことか」
「うんうん、良い方向に向いてきたね。ありがとう黒松、君がいなかったら2人共々恐らく考えようともしてなかったよ」
「あ、はいお役に立てたならなによりです」
突然の礼に通例文で返す黒松。
「でも、無茶は禁物だよ。明らかに最後はオーバースピードだった。脚は大丈夫かい?」
「脚は、大丈夫です。思ったより丈夫なので!」
「丈夫でも粗末に扱えば簡単に壊れるよ。気をつけるように」
「それは……そうですね、気をつけます……」
「とはいえ、いいものを見せてもらったよ。なにやら胸に込み上げてくるものがあるね」
「あはは……夢中になるのも良いですけど、盲目にはならないで下さいね?」
「む、それはそうだ。不思議と、君には何やら惹かれてしまうものがあるらしい……何なのだろうか」
「さぁ……私もあまり見当が……いつかわかるといいですね」
「わかったとして、しこりが取れればいいが」
「それは……難しい話ですね……」
そうこう話しながら休憩をしているところに爺やがやって来る。
「お疲れ様です御三方。まもなく昼食の時間でございます。皆様もそちらの方に集まっておられます。身支度の準備を」
「ああ、わかったよ」
「はぁあ、無駄に汗かいたな」
「えー、私はどうすればよろしいでしょうか……」
「ご心配なさらず。こちらで用意しております」
「そういうわけだから、心配は要らない。君にはみっちりと作法を教え込むから、そのつもりで来てくれ」
「あっ……はい」
唐突なカミングアウトに黒松は為す術なく返事を返す。そう、ここは名家なのだ。過ごすのであれば恥のないようにするのは必至である。郷に入っては郷に従えが頭に浮かんだのであった。
タイムに関してはハヤスギィ!!とかオソスギィ!!とかだったら直します……この歳(幼駒おそらく0~1歳手前)の平均とか分からぬ!!というか記録ありますの?ワタクシ分かりませんわ!!(パクパク芦毛)(深夜テンションあとがき)
一応馬ゲフンゲフンバ身についてはだいたい0.2秒で1バ身つくらしいので、それを元に調整はしてます()