トーナメントの一回戦を終え、あまり時間も経たずに二回戦に入る。もし二回戦に勝てたら次の試合の勝者と戦うことになる。しっかり見ておかなくちゃね。
『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!まさしく両雄並び立ち今!緑谷
展開としては単調だった。緑谷が指を壊しながら轟の氷結を防ぐだけ。だがこれだけで緑谷はボロボロだ。それに対して轟は無傷。
轟相手は流石に厳しいかと思ったが、轟の動きも個性を使いすぎたのか鈍くなっている。すると緑谷の拳が轟に突き刺さる。なんでかわからないけれど言い争いをしている?
そして轟の左半身から炎が上がった。これが本当の彼の個性か。これを使わないで戦ってたなんてふざけてるわね。そんなことを考えていると、観客席から大声が聞こえてくる。
「焦凍オオオオ!!やっと己を受け入れたか!そうだ!いいぞ!ここからがお前の始まり!俺の血をもって俺を超えていき……俺の野望をお前が果たせ!」
『エンデヴァーさん急に激励……か?親バカなのね』
エンデヴァーの言葉から察するに親子の確執があって炎の個性を使わなかったってこと?
その後緑谷のフルパワーと轟の火炎が衝突し凄まじい爆発が起きた。最後に立っていたのは轟だった。次これと当たるのか。厳しい戦いのなりそうね。
控室に行き呼ばれるまで待つ。
『ステージ補修でお待たせしたぜ!ここまでお互い好成績で勝ち続けてきた優等生対決!松本乱菊対飯田天哉!スターート!!』
予想通り飯田はスタート直後から最高速で突進してきた。そこでアタシは煙幕をばらまく。カメラ映りは悪くなるが許してほしい。
だが思ったよりも飯田に接近を許してしまい、蹴りが放たれる。それを灰の壁をクッションにしながら受け、距離を取った。
流石にこの体格差じゃ接近戦は分が悪い。だが仕込みは終わった。辺り一面は灰だらけだ。これを飯田の周りに固めて身動きを封じる。
「くッこの拘束くらい俺のレシプロで……‼」
だが残念ながら対策済みだ。エンジンのマフラーに灰を詰めておいた。これで自力での脱出は無理。
「降参してくれない?」
「……降参だ。すまない、兄さん……!」
『飯田行動不能!松本が準決勝進出だー!』
ふう。何とか勝てたけどかなりギリギリだった。戦闘経験の差が出た勝負だったかしら?
この後の常闇対塩崎は常闇の個性が猛威を振るい、場外に叩きだした。
爆豪対切島は爆豪がその戦闘IQの高さを見せつけた。硬化がほころぶのを予期して攻撃を仕掛け、切島を気絶させた。
『爆豪エゲツない絨毯爆撃で準決勝進出!これでベスト4が出揃った』
轟への対策を考えているうちに試合の時間がやってきた。
『準決!サクサク行くぜ!これまで他競技で何かと争って来た両者がついにぶつかる!轟焦凍対松本乱菊!スターート!』
スタートするや否や、予想通り轟は氷結を放ってきた。アタシはそれを灰の壁を作ってガードするが、氷結の威力が強すぎて防ぎきれず氷に閉じ込められる。
『轟、いきなり氷結ぶっ放す!いきなり勝者決定か⁉』
『いや、そう簡単には決まらないだろ。それに松本は本来の個性を使ってない』
『ん?灰を出して操る個性じゃないのか?』
『はぁ……生徒の資料くらいちゃんと読め……』
アタシを閉じ込めていた氷を灰で切り刻んで脱出する。
『おっと松本!氷を破壊して脱出だああ‼これは一体どういうことだ⁉』
『松本の個性の本来の使い方は灰で切ることであって、他のは副産物に過ぎない。人相手には威力が高すぎて使いづらいが氷相手なら遠慮いらないしな』
『あの灰切れんのかよ⁉怖すぎ!』
脱出してすぐに灰で轟を拘束しようとするが避けられる。個性だけじゃなくて運動能力もいいようね。
轟が氷結で応戦してくるが灰雲に乗って避ける。空中に居れば氷結の個性は脅威にはならない。
「轟さあ、あんたアタシのこと舐めてんの?さっきから右の個性しか使ってないわよね?そりゃあんたは強いよ。でも舐められっぱなしはムカつくわねっ!」
轟に向かって灰を操る。それを轟は氷結で真っ向から受ける。だけどそれは悪手ね。切断能力を持った灰は氷を削り切りながら轟に襲い掛かる。
轟はそれを避けるが掠ったのか片足を引きずっている。
「どうして左を使わないの?理由は他人のアタシにはわからない。でもね、守る人がいてもそんなことするつもり?」
「⁉」
「アタシはこう見えていつでも命をかけて戦ってるつもり。使える手ならなんだって使う。あんたの個性なんだから使うかはあんたの好きにすればいい。でも後悔だけはしないようにしなさいよ!」
そう言ってからアタシは今できる最大規模の灰で吹き飛ばそうとする。灰色の波を引き起こす。
それをみて轟は左を使うことにしたようだ。轟の左半身から炎が吹き上がる。
二つの攻撃がぶつかろうとする寸前、急に炎が消えた。そしてアタシの攻撃が轟を場外に吹き飛ばす。
「轟君場外!松本さんの勝利!」
ミッドナイトがアタシの勝ちを宣言する。轟は壁まで吹き飛んでいたが意識はあるようだ。
とりあえず足のケガもあることだし肩を貸して医務室まで運ぼう。
「肩貸すわ」
「わりぃ」
「んー⁉青春の香りがする‼」
後ろでミッドナイトが騒いでいる。医務室に行きリカバリーガールから治療を受け轟と話し始める。
「轟、なんで最後炎消したの?緑谷との試合で出した炎の威力を見ればアタシの個性と真っ向からぶつかれば轟が勝つのは目に見えてたはず」
「わからねえんだ……緑谷との試合できっかけをもらったけど……どうしたらいいのかわからねえ……」
「悩んでるの?ならお姉さんに相談してみなさい!」
「お姉さん……?同い年のはずだが……じゃあ聞いてくれるか?」
そこから轟が話す内容は壮絶だった。正直エンデヴァーを見る目が変わってしまうくらいだ。轟が左を使いたくない気持ちもわかる。アタシは思わず胸に轟を抱きしめる。
「話してくれてありがとう。辛い話をさせてしまったわね。あんたはどうしたい?使いたくないなら使わないでもいいとアタシは思うわ」
「緑谷が言ってた、俺の力だってのもわかるし、お前の言ってた使わないで取り返しのつかないことになったら後悔するってのも納得した。これが終わったらお母さんに会ってみようと思う。会えば前に進める気がする」
「そう……わかったわ。あんたがそう決めたならそれでいいと思う」
轟を胸に抱いたまま話をしていると、急に医務室のドアが開く。
「焦凍オオ‼なんだあの不甲斐ない結っ……ん?これはどういうことだ?」
「エンデヴァー⁉」
「……親父⁉」
「焦凍、これはどういうことだ?彼女か?彼女がいたのか?俺は何も聞かされてないぞ!」
「いや彼女がいようとあんたに言うわけねえだろ」
「いや彼女ってとこ否定しなさいよ……」
アタシが轟のちょっとずれているところに困惑していると、
「いや、ありか?汎用性が高い強個性に加え女子にしては優れたフィジカル、おまけに容姿も優れている。最高傑作の嫁として相応しいか?」
なんかエンデヴァーがぶつぶつと呟いている。なんか怖いわね。
「焦凍、お前は最高のヒーローになるんだ!俺が改めて鍛えなおしてやる。松本君もいい試合をしてくれたな!まだ息子の嫁に認めるわけにはいかないが……それではまた会おう!」
好き勝手言ってエンデヴァーは去っていった。
「エンデヴァーっていつもあんな感じなの?」
「いつもよりテンションが高え。左を使った緑谷戦には勝って使わなかったお前との試合に負けたから嬉しいんだろ」
なんか違うような気がするけどまあいいか。アタシもそろそろ控室に行かないとだし。
「もうそろそろ時間だし控室に行くわ。またなんかあったら何でも話しなさい。相談くらい乗ってあげるわ」
「おう。話聞いてくれてありがとな」
「どういたしまして。それじゃお大事に」
医務室を出て控室へ向かう。次はいよいよ決勝ね。気合入れなきゃ。