転生松本乱菊のヒーローアカデミア   作:カワニ

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職場体験③

 職場体験三日目、アタシたちは保須市に来ていた。エンデヴァーはこれまでの傾向から、ここにヒーロー殺しステインが出没する可能性が高いと見ているようだ。

 わざわざ職場体験中にこんな危険な(ヴィラン)の相手をしようとしなくてもいいと思うのだけれど……よっぽどショートにいいところを見せたいのかしらね。

 

 というわけで保須市内をパトロールしているんだけど、ステインを警戒して厳戒態勢となっている。当然そこら中ヒーローだらけだから(ヴィラン)なんて現れようがない。

 

「あれって雄英の松本じゃね?ネットの情報通りエンデヴァーのとこ行ってんのか」

「エンデヴァーが来たからにはステインも終わりだな」

「エンデヴァーの息子やっぱイケメンだなー」

 

 ただこういう市民の反応はエンデヴァーをイラつかせるらしい。

 

「フンッ!全く呑気なものだ。いつヒーロー殺しが出るかもわからんのに」

 

 それをサイドキックたちがなだめている。そしてアタシたちは暇すぎて市民に話しかけられてそれの相手をする時間が多いくらいだ。

 

「乱菊さん頑張ってね!」

「まっ、松本さん!握手してください!」

「乱菊ちゃんサインちょーだい!」

「デュフフッ!乱菊たん!写真1枚よろしいか?」

「なんつーコスチューム着てんだ……!最高かよ」

 

 大人から子供まで応援してくれて嬉しい。中には濃い人もいたけど。というかヒーローネームが認知されてない。灰猫のためにももっと頑張ろう。

 一方ショートは女性に囲まれているようだ。

 

「キャー‼轟君よ!生で見てもかっこいいわ!」

「イケメンに目が慣れない……」

「なんかクラクラしてきた……」

「彼女いるんですか?」

「あのーこれ連絡先です!良かったら連絡ください」

 

 やっぱヒーローの人気に見た目はかなり影響しそうね。アタシのコスチュームもっと派手にした方がいいのかしら?

 人が少なくなってきたところでショートに話かける。

 

「ショート、あんた大人気ね。かわいい子の連絡先までゲットしてるし、やるじゃないの」

「人気?エンデヴァーの息子だからじゃねーのか?そういうお前こそ大人気だったな。子供とかはいいけど若い男と距離近すぎないか?」

「あら?嫉妬してんの?かわいいとこあるじゃない~」

「そんなんじゃねえ。ただちょっと気になっただけだ」

 

 そんなことを話ながら、気づけば夕方。それは突然のことだった。突如爆発音が響き渡り、街から炎が上がっていた。

 それに対しエンデヴァーは即座に対処することにしたようで、

 

「焦凍、灰猫!事件だ、ついてこい。ヒーローというものを見せてやる!」

 

 エンデヴァーに従って事件現場まで移動する。その移動途中、携帯ににメールが届いた。

 緑谷から?位置情報だけが送られてきている。しかも場所はここ保須市内だ。ショートも携帯を見ていると、

 

「お前たち!何をしている!携帯じゃない俺を見ろ!」

 

 エンデヴァーはアタシたちが携帯を見ているのが不満なようだ。

 ここはどうするか……緑谷の性格で意味のないことをするとは思えないし何かあったのだろうか?

 するとショートは進路を変えて走り始める。これにはエンデヴァーも怒る。

 

「どこ行くんだ焦凍ォ‼」

「江向通り4-2-10の細道。そっちが済むか手の空いたプロがいたら応援頼む。お前ならすぐ解決できんだろ。友達がピンチかもしれねえ」

 

そういってショートは走って行ってしまう。流石にこれはフォローが必要ね。

 

「エンデヴァー。クラスメイトから保須の位置情報が送られてきました。この状況ですから何か事件に巻き込まれたのかもしれません。ですからアタシたちに個性使用許可を下さい。場合によっては戦闘になるかもしれません」

 

 エンデヴァーは悩んでいるようだ。

 

「ムウ……しかしだな、そんな不確かなことでは……」

「ではエンデヴァー、息子さんが個性の不正使用となってもいいということですか?息子さんの経歴に傷をつけないためにも、息子を信じると思って、ね?」

「ハア……仕方ない。許可は出すがくれぐれも危険なことや周囲に被害を出すようなことはするなよ!」

「ありがとう!エンデヴァー!」

 

 許可をもらってアタシもショートの後を追いかけるがもうショートは見当たらなかった。これは急いだほうが良さそうね。

 避難する人が多くてなかなか進めない。緑谷の送ってきたのはこのあたりのはずだけど……戦闘音が聞こえてくる。

 

「やめて欲しけりゃ立て!なりてえもんちゃんと見ろ!」

 

 ショートの声が聞こえる。ここか!路地に入ると、ショートに切られそうになっていた。

 それを灰の壁で守る。しかし倒れていた飯田が敵の持つ刃物ごと吹き飛ばしていた。援護は要らなかったみたいね。

 

「遅かったな、灰猫」

「うるさいわね。あんたがさっさと行っちゃうからアタシが説明してたのよ。それよりこいつ、ステインでいいのよね?」

「ああ。こいつに血を舐められるな。舐められたら体が動かなくなる」

 

 なるほど。あまり強力な個性というわけじゃないけど、あの身のこなしで一対一の状況ならかなり有用な個性ね。

 

「ハア……また子供が増えたか……いや、その見た目ホントに子供か?」

「失礼しちゃうわね!これでも高1ですー!」

 

 こんなことを話しているうちに、飯田が話し出す。

 

「みんな、関係ないことで……申し訳ない……」

「またそんなことを……」

「だからもう、これ以上血を流させるわけにはいかない」

「感化され取り繕っても無駄だ。人間の本質はそう易々と変わらない。お前は私欲を優先させる偽物にしかならない!ヒーローを歪ませる社会の癌だ。誰かが正さねばならないんだ」

「時代錯誤の原理主義だ。飯田、人殺しの理屈に耳貸すな」

「そうよ。頭のおかしい(ヴィラン)の言うことなんて真に受けちゃダメよ」

 

 そう。こんな奴の言うことなんて無視しなさい。だけど飯田は感じ入ることがあるようだ。

 

「いや、言う通りさ。僕にヒーローを名乗る資格などない。それでも折れるわけにはいかない。俺が折れればインゲニウムは死んでしまう」

「論外」

「アンタがね!」

 

 灰をステインに向かってぶちまける。だが構わず特攻してくるようだ。このメンツだと正面から奴の攻撃を受けれるのはアタシしかいない。

 その辺に落ちていたステインのナイフを使う。

 

「アタシが前に出るから援護頼むわね!」

「おい!ったく」

「ほうっ!新しく来た女……お前もなかなかいい!」

「アンタなんかに好かれても嬉しくないわよ!」

 

 ステイン相手に接近戦。普通なら分が悪いけど切り合いなら得意分野だ。心なしかステインも、うざったそうにしている。そして飯田たちに向かってナイフを投げた。

 それを灰でガード。エンデヴァーに習った圧縮がこんなに早く役立つとは。

 灰による攻撃はステインの動きが速すぎて致命傷まではいかないわね。

 

 だがここで緑谷と飯田が勝負をかける。飛び上がったステインに対し、それぞれ全力の攻撃を叩き込んだ。

 その後ステインは立ってこなかった。どうやら気絶している?

 

「流石に気絶してる……?っぽい?」

「じゃあ拘束して通りに出よう。なにか縛れるもんは……」

「念のため武器は全部外しておこう」

「というかみんな血だらけじゃない!早く治療しないと!」

 

 気絶したステインを捨ててあったロープで縛り表通りまで引っ張る。

 そこに小さい老人がやってくる。コスチューム着てるからヒーローかしら?

 

「む⁉んなっ……何故お前がここに!」

「グラントリノ!」

「座ってろっつったろ!まあよぅわからんがとりあえず無事なら良かった」

 

 このご老人はグラントリノというらしい。緑谷と話していることから察するに職場体験先のヒーローかしら? 

 そこにエンデヴァーから連絡を受けたヒーローがやってきた。

 

「みんな……僕のせいで傷を負わせた。本当に済まなかった……何も……見えなくなってしまっていた……」

 

 そう言って飯田が頭を下げた。

 

「……僕もごめんね。君があそこまで思い詰めていたのに全然見えていなかったんだ。友達なのに……」

「そうよ。なに水臭いこと言ってんのよ。仲間でしょーが。そんなに気にするなら今度昼ご飯おごりね」

「しっかりしてくれよ、委員長だろ」

「……うん……」

 

 そんな感じで一件落着かと思っていたら、グラントリノが叫ぶ。

 

「伏せろ‼」

 

 突如飛来した脳無もどきが緑谷を掴んでさらっていく。誰も動けない中でステインだけが動き、飛び散っていた血を使って個性を発動させ脳無もどきを倒した。

 

「偽物が蔓延るこの社会も、徒に力を振りまく犯罪者も、粛清対象だ。全ては正しき社会のために」

「なぜ一固まりに突っ立っている!そっちに一人逃げたはずだが!」

 

 エンデヴァーが脳無もどきを追いかけてここまで来ていたみたいね。ここでステインに気付いたエンデヴァーは攻撃を仕掛けようとしたが、グラントリノに止められる。

 

「偽物……正さねば……誰かが血に染まらねば……ヒーローを取り戻さねば!来い、来てみろ偽物ども。俺を殺していいのはオールマイトだけだ!」

 

 ステインの出す圧倒的な空気感に気圧されて誰も動けなかった……アタシを除いて。

 

「いやオールマイトがアンタを殺すわけないでしょ……ヒーローは殺害厳禁よ?そんなこともわかってないのね」

 

 アタシはそう言ってステインの金玉を蹴り潰した。

 

 いや、言い訳させて!みんな動かないからアタシがやってもいいかなと思ったのよ。個性使ってないし……

 後でみっちり怒られた……不条理だわ……

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