職場体験を終えて初めての登校日、朝から教室は賑やかだった。
「アッハッハッハマジか!マジか爆豪!」
「笑うな!癖ついちまって洗っても直んねえんだ。おい笑うな、ぶっ殺すぞ」
「やってみろよ8:2坊や!アッハハハハハ」
相変わらず爆豪一行は騒がしいわね。あの髪型を笑ってしまうのは仕方がないけど。ちょっとは職場体験で丸くなってればいいわね。
「へえー。
「避難誘導とか後方支援で実際交戦はしなかったけどね」
「それでもすごいよー」
三奈と響香も楽しそうに話している。
「私もトレーニングとパトロールばかりだったわ。一度隣国からの密航者を捕らえたくらい」
「それすごくない!!」
「いいわね~アタシももっと暴れたかったわ」
「いや松本は例の一件でもう暴れてんじゃん……」
「お茶子ちゃんはどうだった?この一週間」
梅雨ちゃんがお茶子に話しかける。
「とても、有意義だったよ」
「目覚めたのね、お茶子ちゃん」
「バトルヒーローのとこ行ってたんだっけ」
お茶子がなんだか覚醒しているよう。変なテンションでこちらの調子が崩れるわ。
「たった一週間で変化すげえな……」
「変化?違うぜ上鳴。女ってのはな……元々悪魔のような本性を隠し持ってんのさ!」
「マウントレディのとこで何を見た。俺は割とチヤホヤされて楽しかったけどなー。ま、一番変化というか大変だったのは……お前ら四人だな!」
そう言って上鳴はアタシや焦凍たちを見た。口々にヒーロー殺しについての話や心配してくれる。やっぱりトップニュースになっていただけあってみんな知ってるか。
しかしそこから問題発言が飛び出る。
「でもさあ、確かに怖えけどさ、尾白動画見た?あれ見ると一本気っつーか執念っつーか、かっこよくね?とか思っちゃったのね」
「上鳴くん……!」
「上鳴さあ」
流石にアタシも頭にきた。
「ヒーロー殺しが今まで何をしてきたか知らないわけじゃないわよね?何人もの命を奪ってきた
教室が急に静かになってしまった。今までアタシが怒ったことなんてなかったからかみんな驚いているようだ。
「いや……いいさ。確かに信念の男ではあった……クールだと思う人がいるのもわかる。ただ奴は信念の果てに粛清という手段を選んだ。どんな考えを持とうとそこだけは間違いなんだ。俺のような者をもうこれ以上出さぬ為にも!改めてヒーローへの道を俺は歩む!」
飯田は熱く語った。そして尾白が口を開く。
「俺も例の動画見たんだけどさ……正直最後の松本さんの蹴りの印象が強すぎて全部持ってかれたよ……」
「オッ、オイラも玉ヒュンッってなったぞ!松本、どうして男に向かってあんなことできるんだ……」
「ふざけたこと言ってるやつなんてあんな対応でいいのよ。オールマイトが人殺すわけないのに」
「まあそれだよなー。オールマイトが
そうそう。ここは殺し合いをしていた前世とは違うのよ。命は懸けるけど命を奪うのは最終手段だ。
「むっ!そろそろ始業時間だ。席に着きたまえ!」
「うるさい……」
「なんか……すいませんでした。松本おっかないって……」
「オイラ松本が切れたの初めて見たぞ。でもそれもいいな……」
ヒーロー基礎学の時間がやってきた。今日もオールマイトが担当してくれるようだ。
そして5人4組に分かれての救助訓練レースをやるらしい。オールマイトがどこかで救難信号を出し、誰が一番早くそこにたどり着けるかを競争する。なお、建物の被害は最小限にしなきゃならない。
最初の組は出久、天哉、尾白、三奈、瀬呂の5人。
「飯田はまだ完治してないんだろ。見学すりゃいいのに……」
「クラスでも機動力のいい奴が固まったな」
「うーん強いて言うなら緑谷さんが若干不利かしら?」
みんなそれぞれ予想し合っている。アタシは隣にいた焦凍に訊いてみる。
「焦凍はどう思う?」
「瀬呂じゃねえか?こういう入り組んだ地形だと飯田は走りづらいだろ」
「そうね。たしかに天哉向けではないかも。でもそれなら出久向けの地形かもよ?」
「緑谷?ん?そういえば緑谷ってあの時……」
ここで1組目がスタートした。一斉にスタートするがここで出久が建物の上を飛び跳ねている。なかなかのスピードだ。
だが結局途中で滑って落ちて最下位だった。ちなみに1位は瀬呂。焦凍の予想が当たったわね。
アタシは第2組で呼ばれた。他には切島、上鳴、青山、口田の4人だ。アタシ以外見事に機動力がないメンバーね。
まあ当然ながら灰雲で浮遊できるアタシが1位を取った。瞬歩がなくても機動力に関しては問題なさそうね。
授業が終わり更衣室で着替えていると、三奈が話しかけてきた。
「そういえば松本って轟や緑谷たちのこと名前で呼んでたっけ?今日から名前呼びしてるけどなんかあったの?」
三奈の顔がにやけている。これは確実にからかっているやつだ。
「ええ。職場体験中にいろいろあってね。そこで仲良くなっちゃった♡」
「なにそれ!大人な関係ってこと⁉」
聞き耳を立てていた女子一同がびっくりしている。それにお茶子も不安そうな顔してるし。
「ウソウソ!ただ単に焦凍はヒーローネームが名前だからそのままでいいって言われて他二人は流れでそうなっただけよ。お茶子はそんなに不安そうな顔しないで」
お茶子自身はそんな顔をしている自覚がなかったようで、
「なっ、何言ってんの、乱菊ちゃん⁉そんなんちゃうよっ!」
「ねえみんな静かに!」
突然響香が声をあげる。どうしたのか訝しんでいると、
「なんか峰田が覗こうとしてるっぽい」
「「「「「⁉」」」」」
覗き⁉ホントあの変態は救いようがないわね。隣の男子更衣室から峰田の声が聞こえる。
『オイラのリトルミネタはもう立派な万歳行為なんだよォォ!松本のドスケベボディ!八百万のヤオヨロッパイ!芦戸の腰つき!葉隠れの浮かぶ下着!麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァァァ……あああ!!!』
響香のイヤホンジャックが眼に突き刺さったようだ。
「ありがと、響香ちゃん」
「何て卑劣……!すぐにふさいでしまいましょう!」
「あの変態は今度本格的に矯正しないとダメね。社会に出すべきじゃないわ」
だが後で相澤先生に報告しておこう。
余談だけれど未遂ではあったので反省文の提出で済んだようだ。残念……ステインみたいに玉潰したかったわ……
でも焦凍が個人的にお仕置きしてくれたらしい。この一件の後、冷たくなった峰田が発見された。
※※※
轟side
最近松本と話すと胸がドキドキする。心臓病か?とも思うが姉さんに訊くとなぜか喜んでいた。この年だと普通のことらしい。
思えば松本は入学当初から目立っていた。異性にあまり興味のない俺でもわかる整った容姿に加え明るい性格。それでいて緊急時には落ち着いている。
体育祭では想像以上の実力を見せた。その時に家の事情についても話しちまった。必要もないのに話してしまったのは松本の大人な雰囲気のせいだろうか?
そこから少し仲良くなって職場体験にも誘った。そこで過ごしていくうちに、真剣な顔、おちゃらけた顔、からかう時の顔、色々な顔をする松本を見れた。
もっと仲良くなりたいと、そう思ってしまった。こんなことを思うのは人生で初めてだ。
今日の救助訓練レースの後の着替えの時、峰田が松本の裸を見ると思ったら、いやな感じがした。今まで異性の友達がいなくて正常なのかよくわからない……
緑谷と飯田に訊いても、緑谷にはごまかされるし飯田には正義感が強いと言われる。そういうことなのだろうか?
違うような気もするがとりあえず峰田はムカついたからキンキンに冷やしておいた。氷漬けにはしなかっただけましだろう?