転生松本乱菊のヒーローアカデミア   作:カワニ

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期末試験に向けて

 時は流れ6月最終週、期末テストまで残すところ一週間を切っていた。

 

「「全く勉強してねー‼体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねー‼」」

 

 三奈と上鳴が大声で騒いでいる。

 

「確かに」

「アタシも勉強してないわ」

 

 そう、何を隠そうアタシも相当追い込まれている。実は中間試験の成績はクラス最下位だったりするわ。

 

「演習試験もあるのが辛えとこだよな」

 

 そう言うのは中間9位と微妙に高い順位を取っている峰田だ。

 

「あんたは同族だと思ってた!」

「お前みたいな奴は馬鹿で初めて愛嬌出るんだろが……どこに需要あんだよ……!」

「世界かな」

「世界中どこを探してもアンタの需要は限りなくゼロに近いわよ」

 

 だがここで人のいい出久が励ましてくれる。

 

「芦戸さん、上鳴くん、松本さん。が……頑張ろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん!ね!」

「うむ!」

「普通に授業受けてりゃ赤点はでねえだろ」

 

 最後の焦凍の言葉に上鳴はダメージを受ける。アタシもだけど。

 

「言葉には気をつけろ!」

「皆さん、座学なら私、お力添え出来るかもしれません。演習の方はからっきしでしょうけど……」

 

 百のその言葉に何人か教えてもらおうと声を掛けている。うーん。アタシはどうしようかしら?百に教えてもらう人数がすでに多くてこれ以上は負担になりそう。

 そこでアタシは考えた。ここに余っている人材がいると。焦凍の肩をつつく。

 

「ん?なんだ?」

「焦凍も中間の順位高かったわよね?アタシに教えてくれない?」

「構わねえが……そんなにやばいのか?」

「アタシの順位知らないの?最下位よ?」

 

 なんだか絶句している様子。でもなんでもできるより可愛げがあっていいと思わない?

 

「そういうわけだから頼むわね!詳細は後で連絡するわ」

「おう」

 

 というわけでこれで期末試験は何とかなりそう。

 

 

 授業が終わり教室で喋っていると、出久たちから期末の演習試験が対ロボットの実践演習だということが知らされた。

 どうやらB組の拳藤から教えてもらったらしい。これには三奈と上鳴も大喜びだ。

 

「んだよロボならラクチンだぜ!」

「お前らは対人だと個性の調整大変そうだからな……」

「ああ!ロボならぶっぱで楽勝だ!」

「でもいつまでも対人で使えないわけにはいかないわよ?アタシたちが将来相手にするのは人なんだから」

「「はい……」」

 

 だがここで爆豪も苦言を呈す。

 

「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろ。何がラクチンだ、アホが」

「アホとは何だ、アホとは!」

「うるせえな。調整なんか勝手にできるもんだろ、アホだろ!なあ⁉デク!」

 

 出久にまで絡みだした。ホントに爆豪は出久が絡むとダメね。

 

「個性の使い方……ちょっとわかってきたか知らねえけどよ。てめえはつくづく俺の神経逆なでするな」

「あれか……前のデクくん、爆豪くんみたいな動きになってた」

「あー確かに……!」

「体育祭みたいな半端な結果はいらねえ……!次の期末なら個人成績で否が応にも優劣が付く……!完膚なきまでに差ァつけてテメェぶち殺してやる!轟ィ……てめえもなぁ!」

 

 そう言って爆豪は教室を出て行った。この二人ってどうしてこんなに仲悪いのかしらね?幼馴染って聞いてたけど……

 

「焦凍、爆豪に喧嘩売られたけどどうするの?」

「別に……俺は普通に試験受けるだけだが、なんかした方がいいのか?」

「それでいいと思うわよ。この試験で争う必要なんてないし。それよりも勉強教えてもらう件だけど、休日に焦凍の家行っていい?流石にウチまで来てもらうのは申し訳ないし……」

「ああ。姉さんに確認しとく」

「お願いね。それじゃアタシも帰るわ。また明日!」

 

 これで筆記試験もなんとかなる目途がついた。持つべきものは頼れる友達ね!

 次の日聞いた話だが、アタシが教室を出た後、焦凍はアタシたちの会話を聞いていたみんなにどういうことなのか詰められたらしい……

 

 

 週末、アタシは駅前で勝った手土産を持って焦凍宅の最寄り駅に来ていた。駅まで焦凍が迎えに来てくれるというので見回すと彼はもう待っていた。

 

「お待たせ。わざわざ迎えに来てくれてありがとう」

「構わねえ。……お前の私服初めて見るがだいぶイメージと違うな」

 

 そりゃそうでしょうよ。勉強しによそ様のお宅に伺うのに、いつもみたいな露出が激しいファッションは流石にできない。

 

「今日はお姉さんもいるんでしょ?ならなおさらこの服装でよかったわ」

 

 なんとかアタシが持ってる服を組み合わせて清楚に見えるようにしたけど……多少露出があっても問題ない夏でよかったわ。

 

「姉さんがいるとなんか変わるのか?」

 

 焦凍は首をひねっているけど、この子はホント天然というか無垢というか……そこも焦凍のいいところだと思うけどね。

 少し歩いて焦凍の家に到着した。すごく大きな日本家屋ね。やっぱナンバーツーともなると収入が桁違い何だろうなー。そんなことを考えながら門をくぐる。

 

「ただいま」

「お邪魔します」

「おかえりなさい。いらっしゃい!よく来てくれたね」

 

 玄関を入るといきなり少し年上の女性が出迎えてくれる。焦凍のお姉さんかしら?

 

「姉さん、松本連れてきた」

「うん。松本さん、わざわざ来てくれてありがとね」

「いえ、こちらこそお休みの日に訪ねてきてすみません。クラスメイトの松本乱菊です。焦凍くんとは仲良くさせてもらってます」

 

 お姉さんはなんだか感激しているようだ。目が潤んでる。

 

「ごめんなさい。焦凍がお友達を連れてくるなんて初めてで……姉の冬美です。これからも焦凍のことをよろしくね」

「こちらこそ。あぁ、これもし良かったら」

 

 いきなりで驚いて忘れていた手土産を渡す。

 

「わざわざありがとね。私、お茶入れてくるから焦凍は案内してあげて」

「ああ。こっちだ松本」

 

 焦凍が案内してくれる。外から見た通り大きなお家ね。日本家屋はやっぱり落ち着くわ。前世の暮らしを思い出す。

 案内されたのは焦凍の部屋。ただ物があまりない。ミニマリストほどでは全然ないけれど、趣味のものとかが見当たらない。これは触れない方が良さそうね。

 

「早速勉強教えてもらってもいいかしら?」

「どこからやる?」

 

 勉強を始めると冬美さんがお茶を持ってきてくれた。アタシが持ってきた手土産もある。お礼を言ってもらう。こちらの様子が気になるようだったがすぐに部屋を出て行ってしまった。

 勉強を再開しわからない箇所を徹底的に教えてもらう。アタシ特に英語がダメなのよね。

 集中しているとあっという間だった。気づいたら日が暮れてそろそろ帰らないといけない時間になっていた。

 

「アタシそろそろ帰るわ。今日は教えてくれてありがとう。これで期末試験は何とかなりそう」

「そうか。じゃあ駅まで送っていく」

「いいの?じゃあお言葉に甘えて」

 

 というわけで冬美さんにも挨拶して帰ろうとすると、

 

「もしよければなんだけど、夕ご飯食べていかない?親御さんにはこちらから連絡するし」

「それは申し訳ないですよ……アタシは一人暮らしなので親へ連絡は要らないですが……」

「一人暮らしなの⁉それならなおさら食べていきなよ。今から帰ると遅くなっちゃうし」

 

 ここまで言われたので夕ご飯をご馳走になることにした。ただそれだけだと申し訳ない。

 

「まだ夕ご飯作ってないですよね?良かったらアタシも手伝っていいですか?自炊するくらいしかしたことないですけど」

「いいの?ゆっくりしてもらって構わないんだけど……じゃあお願いしようかな。焦凍は座って待っててね」

 

 アタシと冬美さんは焦凍を置き去りにして台所に移動した。そして一緒にご飯を作り始める。

 毎日作っているだけあって冬美さんの手際がいい。参考にしたいわ。頃合いを見計らって本題に突っ込む。

 

「あの……アタシになにか話があったんですよね?」

「えっ、わかる?焦凍と仲良くなってくれる子だもんね。察しがいいのは当たり前か……まずはお礼を言わせて欲しいの。あの子と仲良くしてくれてありがとう」

「アタシが仲良くしたいからしてるんです。お礼を言われるようなことじゃありません」

「そっか。でも改めて言わせて欲しかったの。焦凍は雄英に入ってから明確に変わった。で、いきなり友達を連れてくるって言ってこんな綺麗な女の子だなんて驚いちゃった」

「焦凍くんが変わったのは他の友達の影響も大きいですよ」

「他にも友達いるの⁉」

 

 この人の中で焦凍がどんな存在だったかわかって悲しくなる。

 

「もちろん。最近はクラスのみんなともよく話してます」

「へー、良かった。上手くやってるようで。それで聞きたいんだけど……ウチの事情って聞いてる?」

「ある程度は……お母様のことは聞いてます。それでお父様を恨んでいたとも」

「焦凍、そこまで喋ってたんだ。それを聞いても変わらず接してくれるんだね。こんな子が彼女でよかったよ」

「え⁉彼女じゃないですよ⁉」

 

 アタシ今日一日彼女だと思われてたの⁉

 

「そうなの?私てっきり……焦凍が女の子一人連れてくるなんてことなかったから。というか女の子の話自体出ることなかったわね」

 

 やっぱり焦凍は苦労してたんだわ……あの年、あの顔で浮いた話がないなんておかしいもの。

 

「彼女ではないですけど焦凍と一番仲がいいとは思ってます」

「そうなのね。私は松本さんが彼女になってくれると嬉しいけどね」

 

 そう言われると照れるわね。

 

「フフッ、それは焦凍くん次第ですね。アタシに釣り合うようないい男に成長したら考えてあげてもいいです」

 

 冗談交じりにそう言う。

 

「そっか。なら焦凍に発破かけないと!松本さんを射止められるように」

「期待して待ってます」

 

 食事の準備は和やかに進んでいった。

 その後の夕食も基本アタシと冬美さんが喋って偶に焦凍が答えるという風だった。食事が終われば流石に帰らないとまずい。泊るわけにはいかないしね。

 

「冬美さん、夕ご飯までいただいてしまってありがとうございました」

「いいのよ、乱菊ちゃんも手伝ってくれたし。これからも焦凍のことよろしくね」

「こちらこそ。今日も勉強教えてもらいましたし」

「そうね。焦凍、乱菊ちゃんをしっかり送ってくるのよ!」

「わかってる。じゃあいくぞ」

「うん。ではまた!」

 

 焦凍の家を出て駅まで歩く。

 

「いつの間に名前で呼び合う仲になったんだ?」

「え?夕ご飯の時には名前で呼び合ってたわよ」

「そうだったか?仲良くなれたならよかった」

「すっごく仲良くなったわ。連絡先も交換したし。焦凍の写真とか送ってあげる約束したわ」

「思った以上に仲いいな。なんでだ?」

「共通の好きなものがあるからかな?」

 

 焦凍は首をかしげている。こういう動作も絵になるわね。

 

「共通の……料理か?」

「まあそういうことにしとくわ。……まだ話せてないこと、あるんでしょ?」

「……わかるか?」

「ええ。女の勘舐めちゃダメよ。話せるときがきたらでいいから話なさい。アタシにでもいいし出久や天哉でもいいし。一人で抱え込まないように」

「気を遣わせちまったな。悪い」

「だから謝るようなことじゃないってば。もっと周りを頼りなさい」

「わかった、そうする。ありがとな」

 

 ここで駅に着く。

 

「ここでいいわ。遅くまで今日はありがとう。とても助かったわ」

「姉さんもお前が来てくれて喜んでたし……俺も楽しかった」

「フフッ、勉強会が楽しいって変な人。じゃあまたね」

「ああ。またな」

 

 焦凍とわかれ家まで帰った。思いのほか長時間焦凍の家にいたけど居心地のいい空間だったわね。

 一人で家にいると急に寂しくなる。その日の夜は久しぶりに前世の夢を見た。

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