無事に?というか全力で筆記試験をやり遂げ演習試験当日がきた。コスチュームを着て集合している。でも先生多くない?嫌な予感がしてきた……
「それじゃあ演習試験を始めていく。この試験でも勿論赤点はある。林間合宿行きたければみっともないヘマはするなよ」
「先生多いな……」
「諸君なら事前に情報仕入れて何するか薄々わかってるとは思うが……」
「入試みてえなロボ無双だろ!」
「花火!カレー!肝試しー!」
「残念!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」
「諸君にはこれから二人一組でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう」
ハア……雄英がそんな甘いわけないわよね……
「ペアの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度……諸々を踏まえて独断で発表していくぞ」
発表されたペアは結構納得がいくものだった。特に出久と爆豪は水と油だものね。
アタシは切島とペアでセメントスが相手だ。体育祭でステージを作る際に見たけど都市部では猛威を振るう個性だ。しっかり対策しないとすぐやられるわね。
それぞれ学内バスに乗って移動する。そこでルールを説明された。戦ってカフスを先生に着け捕獲するか、ゲートから逃げるか。なお先生たちはハンデとして重りをつけるらしい。
なるほどね。なんとなく攻略法が見えてきた。目的地に着くまで作戦会議をしよう。
「切島、作戦会議よ。セメントス先生をどう攻略するか。先生は耳塞いでてください」
「はいよー」
「え?作戦なんているか?ここは男らしく正面突破だろ!」
「ハア……アンタねえ……ちょっとこっち来なさい!」
切島を掴んでバスの後ろまで連れていく。顔を寄せて小声で言う。
「あのねえ、圧倒的格上に対して無策で勝てるわけないでしょ。ここは逃げ一択よ」
「かっ、顔ちけえよ!でどうすんだよ、普通にやるんじゃダメなのか?」
「ゲート付近に居なければそのままゲートに行く、ゲート付近で待ち構えていたら他に誘導する。これが定石だと思うわ」
「そんなことしなきゃいけないのか?」
「しなきゃいけないの!」
言い合っているうちに試験会場についてしまった。あぁもう、これは心から納得してるわけじゃないわね。
だが無情にも試験がスタートする。
「いい?お互い索敵できる個性じゃないから見つからないように慎重に行動するわよ。一応アタシは空から確認してみるわ」
「おう!」
灰雲を使って宙にに浮かびセメントスを探す。薄々思っていたがゲート付近に陣取っていた。一番厄介な選択だ。切島にも先生の居場所を伝える。
「セメントスがいたわ。ゲート付近に陣取ってる」
「じゃあおびき寄せればいいんだな!俺がやろう!その隙にゲートくぐってくれ!」
「いいけど挑発とかできる?結構難しいと思うんだけど……」
「心配すんな!それくらい俺にもできるぜ!」
ホントにわかってるのかしら?でも時間も勿体ないしやるしかない。
「じゃあそれで行きましょう!」
切島は真正面からセメントスに近付く。そして第一声、
「こっちに来い、セメントス先生!」
ダメだこりゃ……これは作戦の練り直しが必要ね。セメントスの個性のキャパが分からないけど、左右から挟撃すれば少しは削れるのかしら?
「ん?そっちから来ないのかい?男らしくないねえ」
あ、まずい……
「なにっ!男らしくない⁉」
「そりゃそうだよ。僕をここから動かしてその隙にゲートに行こうって魂胆だろう?男らしくないねえ」
「取り消してくださいよ……!今の言葉……!」
「ダメよ、挑発に乗っちゃ!」
「断じて取り消さないよ。君は男らしくない。理想のヒーローには程遠いよ」
この言葉を聞いて切島はセメントスに突撃していった。ここはどうするか。切島を追って突撃する?それとも様子を見る?
考えている隙に切島はセメントに飲み込まれ見えなくなった。これは救出するのも無理そうね。
でも味方を簡単に見捨てるわけにもいかない。灰雲に乗って上空から近付く。
「切島ー!聞こえてる?脱出できそう?」
「…………」
ダメだ、聞こえない。セメントで遮られてるだけならいいけど意識がない可能性もある。ここは最悪を想定して動くべきね。
上からセメントスに襲い掛かる。しかしこれをセメントスはセメントをドーム状にしてガード。それを切り刻みセメントスに肉薄する。
灰で作ったダミーのカフスを持ち相手にかける振りをして、本物は灰でセメントスの背後に移動させる。タイミングを見てカフスをかけようとするが防がれてしまう。
「危ない、危ない。やっぱりイレイザーが言っていた一番警戒しないといけない生徒というのは本当のようだ」
「光栄ですけどもっと手加減してくれませんかねっ!」
一旦距離を取って様子を見る。うーん。このままじゃ厳しいわね。やっぱり腕が鈍ってる。前世のアタシならたとえ同じ状況でも突破できてるはず。
戦場に居なかったせいで精神的に甘えがでているわ。そもそも経験値を考えれば体育祭でも優勝できてないとおかしいくらい……
ここは戦場なのよ。集中しなさい!深呼吸をして心を入れ替える。ここからは本気も本気。
灰雲に乗りながら正面に灰をぶちまける。
「やれやれ。破れかぶれの正面突破か……それじゃあ切島くんの二の舞だよ」
正面からセメントが迫ってくる。それを躱しつつできないものは切り刻む。そしてスピードを上げた。
「むっ!ここまでできるとは……!これならどうかな?」
さっきよりも大量のセメントが来るが圧縮した灰で正面突破する。ついにセメントスに接近し、そのまま灰による竜巻を起こす。それによってセメントスは上空に吹き飛ばされる。
「ここなら個性使えないでしょ?」
「参ったな……想像以上だったよ」
アタシはカフスをセメントスにかける。これで試験クリアだ。
「おめでとう。試験クリアだ」
「ありがとうございます。でも先生、先生相手にこの場所って厳しすぎませんか?」
「一応攻略法は用意してあるんだ。最初やったみたいに挑発して移動させるのは良かった。ただ挑発が稚拙すぎて普通の
そう言って気絶している切島を見る。
「切島くんはこちらで運んでおくから、先に戻っていいよ。」
「わかりました。呑気に寝ちゃってまあ……切島のこと御願いしますね」
ふう。どうなることかと思ったけどギリギリクリアできて良かったわ。これで林間合宿にも行けるかしら?
※※※
緑谷side
乱菊がクリアする数分前、緑谷はリカバリーガールと共に試験をモニターで見ていた。
「あの、切島くんと松本さんのペアは何が課題なんですか?二人とも戦闘向きで強い個性ですけど……」
「切島は明確さね。持久戦に極端に弱いこと、頭が単純なこと。この二つだ」
「確かにそれは……あるかもしれません。じゃあ松本さんは?」
「松本乱菊はほぼ完璧な生徒だ。戦闘力も防御力も機動力、精神力までも兼ね備えてる。教師である私たちからすると体育祭で優勝した爆豪よりも評価が高い」
「かっちゃんよりも⁉」
「実力は似たようなもんだけど精神性が違うよ。コミュニケーション能力も高いしね。ただ……」
「ただ……?」
「本気でやってないんじゃないかという疑惑がある。無意識に手を抜いてるんじゃないかとね」
「無意識ですか?あの実力で?」
「元々あの個性は斬撃が出る関係で本気で放てない。そこから全体の能力にセーブがかかってるんじゃないかということさ。セメントスの個性なら本気でやれるだろう。ほらっ……」
「すごい動きだ……それに個性のコントロールに威力……うわァァ……」
「あの子今の攻撃の直前、空気感が変わったね。まるで戦場みたいだった。何者なんだろうね?」
「戦場……ですか?僕には分からなかったですけど」
「アンタはこれから知るだろうさ。あれは本物だよ。というかセメントスは生徒の前だからやせ我慢してるけど、結構な重傷だね。これは治療しないと……っとここで時間だ」
『タイムアップ!期末試験、これにて終了だよ!』
こうして期末試験は終わったが、緑谷はリカバリーガールの言っていたことが頭に残った。