夏休みまでもう少しのある日の昼休み。いつも通り女子のみんなと喋っていると、轟がやってきた。
「松本、ちょっといいか?」
「うん?なにかしら?ここじゃまずい?」
「ああ。ここじゃ話しづらい。付いてきてくれ」
「わかったわ。じゃあみんな、また後でね」
なんかこんなこと前にもあったわね。人気のないところまで移動して話を聞く。
「で、どうしたの?」
「I・エキスポってわかるか?あれのプレオープンに親父が招待されたんだが行けないみたいで俺が代わりに出席することになった。それで同伴が一名まで可能らしいんだがどうだ?」
「どうだって……一緒に行かないかっていうお誘い?」
「ああ、そうだ」
「嬉しいわ。アタシもI・エキスポには興味あるしぜひ行きたいわね。ところでどうしてアタシを誘ってくれたの?出久たちには声を掛けなかったのね」
「親父がレセプションパーティに出るなら女性同伴が基本だろうって。あとパーティの衣装はこっちで用意するらしい」
なんだかまたエンデヴァーが絡んでるみたい。職場体験でもちょっと思ったけどアタシたちをくっつけようとしてる?
でもそれはないか。大事な息子をアタシみたいな一般人とくっつけても意味ないし。たまたまだろう。
「パーティの衣装ってドレスよね?そんなものまで用意してもらっていいの?流石に悪い気がするけど……」
「親父がいいって言ってんだからいいだろ。こっちから誘ったんだし」
この前は勉強教えてもらったし、今度はI・エキスポのチケットにドレスまで……まるでアタシが男に貢がせる悪い女みたいね。
「詳しいことはまた連絡する」
そう言われ焦凍とわかれ教室に戻る。
そこでは女子一同が待ち構えていた。
「轟なんだって?」
響香が尋ねる。
「I・エキスポのお誘いだったわ。一緒に行かないかって」
「いいなー!私も行きたい!」
三奈がはしゃぐ。
「そういえば私、父からI・エキスポのプレオープンのチケットを貰いまして、2枚余ってますの。どなたか一緒に行きませんか?」
百がそう言った途端、皆の目が獲物を狙う目になった。全員が行きたいと希望したのでじゃんけんで決めることになった。
その結果、お茶子と響香が行くこととなった。行けなかった子は一般オープンで来るそうだ。会場でみんなに会えるといいわね。
I・エキスポに向かう当日、空港で焦凍を待っていた。なんでも飛行機の手配も任せてくれって言っていたからお任せしたけど……
すると特に荷物もなく焦凍がやってきた。
「おはよう、焦凍。荷物持ってないけどどうしたの?忘れちゃった?」
「忘れてねえ。もう機内に運んである。お前の着るドレスも用意してあるから心配すんな。行くぞ」
そう言ってアタシの荷物をもってスタスタ歩いて行ってしまう。アタシは慌てて追いかける。
案内されたのはプライベートジェットだった。
「えっ、これで行くの?」
「なんか親父が勝手に手配してた。借り物らしいが快適そうだし悪くないだろ」
「悪くないってアンタねえ……こういう時は素直に感謝しときなさいよ。エンデヴァーにお礼言っといてね」
その後機内に入り、I・アイランドに向けて出発する。プライベートジェットの中ってこんななのね。広くて伸び伸び寝れたし、食事まで豪華だった。
空の旅を楽しんでいると、機内にI・アイランドにもうすぐ着くとのアナウンスが流れた。I・アイランドではコスチュームを着ていいらしいので、持ってきたコスチュームに着替える。
「あっちで着替えてくるけどちょっとくらいなら覗いてもいいわよ?」
「覗かねえよ。早く着替えろ」
「ちょっとは迷いなさいよ、もう!」
こんな美女が間近で着替えているというのにどうして迷わないのかしらね?性欲ないの?
そんなわけで空港に着陸し、I・アイランドに到着した。
「これからどうする?とりあえず興味あるパビリオン見て回る?」
「そうするか」
アタシと焦凍はパビリオンを見て回ることにした。焦凍は個性柄か温度調節や熱耐性に興味があるみたい。そこにアタシもついていく。
すると突然話しかけられる。
「オウッ!アーユージャパニーズサムライ?ニンジャ?」
やっぱり死覇装だと侍とか忍者っぽく見えるのかしらね?
「イエスッ!アイムジャパニーズサムライ!ニンニン!」
「いや、侍か忍者かはっきりしろよ」
焦凍からツッコミが入る。その話しかけてきた人と記念に写真をとってから別れた。素敵なカップルだわって言っていたけどそう見えるのかしら?
「次どこ行きたいとかあるか?俺のに付き合わせちまったから次は松本が行きたいのに行こう」
「え?じゃあ次は…………」
色々なパビリオンを見て回るのは楽しかった。とここでヴィラン・アタックというイベントをやっているのを発見する。
「焦凍出てみれば?焦凍なら1位取れちゃうでしょ!」
「そうか?なら出てみるか」
というわけで焦凍が出場するのを観客席で見物する。一人だからか何回かナンパされる。やっぱ隣にいい男がいたほうが男避けになるわね。
焦凍が出るまで見物していると、切島が出てきた。彼も来てたのね。その後爆豪、出久と知ってる面々が続く。
やっと焦凍が出てきた。
『ひゃー!すごいすごいすごーい!じゅ……14秒、現在トップに躍り出ました!』
流石は焦凍。範囲制圧なら右に出るものはいないわね。さて、労ってあげないと!と思っていたら、爆豪が客席から飛び出してきた。なんだか揉めてるみたいだ。
その後、天哉や出久に切島まで出てきて止めに入っていた。アタシも百たちに挨拶してくるかな。
「やっほー、みんなここに居たのね」
「松本さん!来てたのは知っていましたがここで会えるとは!」
「彼女も雄英生?カッコいいわ!」
「そうですわ。同じクラスの松本乱菊さんです」
「松本乱菊よ。よろしくお願いするわ」
百たちと一緒にいた見知らぬ女性に挨拶する。彼女はメリッサ・シールドといい、研究者を目指しているらしい。
そこでしばらく喋っていると、焦凍がやってくる。
「松本、俺は少し疲れたからホテルに帰ってパーティまで休もうと思うんだが、お前はどうする?」
「じゃあアタシも戻るわ。歩き回って疲れたし。というわけでみんなまたパーティで会いましょう!じゃあね!」
そう言って女子のみんなと別れ、ホテルに向かう。結構いい部屋を取ってくれたのかホテルの部屋はかなり広々としていた。
「ドレスは部屋に用意してあるらしいぞ。一人で着替えられるか?」
「馬鹿言ってんじゃないわよ。ドレスくらい一人で着替えられるわ」
「そうか。じゃあ時間になったら呼びにくる。またあとでな」
「ええ。また後で」
ドレスを確認すると、かなりいい生地でできているっぽい。これ相当高価なものでしょうに息子の友達のためにエンデヴァーがここまでするかしら?やっぱりなんか怪しい気がする。しかも装飾品まで用意してあるし……
まあいいか!そうならそうでやりようがあるし!というわけで時間まで寝ることにする。おやすみなさい。
目覚ましの音で目が覚める。もうこんな時間かパーティの準備をしないと。シャワーを浴び、ドレスに着替え、化粧をする。髪もドレスに合わせてセットして、最後にネックレスとイヤリングに指輪をして準備オーケー。
準備ができたところで焦凍から連絡が来た。これから部屋に来るらしい。返事をして焦凍を待つ。
呼び鈴が鳴ったのでドアを開けると、白いスーツを着た焦凍が立っていた。
「似合ってるじゃない。スーツ姿を見るのは初めてだけどいい感じよ。ん?どうしたの?」
焦凍が黙りこくってこちらから目を逸らすので尋ねると、
「いや……いつも以上に綺麗だから驚いた」
「まあ今日はメイクも濃い目だし、着飾ってるからね。もしかして照れてる?アタシの魅力にやられちゃった?」
茶化してみても無反応。えっ、これ本当にそうなの?これにはアタシも照れくさくなる。
「これはちゃんと言わないとって思ってたんだが、すごく綺麗だ」
「ホント?そう言ってもらえて嬉しい。焦凍もカッコいいわよ」
そこから無言。まるで付き合いたてのカップルのような会話になっていた。これじゃあ進まないしお姉さんが引っ張るしかないか。
「もう!天哉たちから連絡あったでしょ?もう居るだろうし早く行きましょ。ヒールで歩きづらいからエスコートして下さる?」
「おう」
そう言って焦凍は手を差し出す。それを掴んで歩き出すが、ヒールはまだしも裾が長いのもあってやっぱり歩きづらい。
無言のまま待ち合わせ場所へ行くと、天哉たちがもう来ていた。
「おっ!轟くん、松本くん!二人とも時間厳守で偉いぞ!」
天哉は相変わらず元気ね。パーティが楽しみって性格でもないしどうしてなのかしらね?
「うひょ~!松本エロ過ぎんだろ!お前ホントに高1かよ!」
「最高です!ありがとうございます!」
なぜか居る峰田と上鳴がアタシを見て叫び声を上げている。こっちも相変わらずね……気持ち悪いわ。
すると焦凍が天哉に話しかける。
「緑谷はまだか?」
「あぁ。全く何をやっているのやら。それに女子一同も松本くん以外はまだだ」
「女子は仕方ないわ。女の支度には時間がかかるものだもの。少しくらい待ってあげるのが男というものよ」
「むっ!確かにそうだ!俺としたことが……時間ばかり気にするあまり女子の支度に関して思慮が不足していた。ありがとう松本くん!」
「どういたしまして」
集合時間は過ぎたが遅れている人たちはなかなか来ない。なので服装を改めてチェックする。うん!問題なさそう。
だが焦凍に目をやるとネクタイが曲がっている。
「焦凍、こっち向いて」
「ん?どうした?」
「ネクタイ曲がってるわ。直すからこっち向きなさい」
「すまねえ」
慣れない正装だったからあわててたのかしら?かわいいとこもあるわね。
「はい、これでよし。ん?天哉どうかした?」
天哉が意味ありげにこちらを見ている。
「いや、そうしているとまるで夫婦のようだと思ってな」
「夫婦?まさか……アンタもなんかいいなさいよ」
焦凍の体を軽くたたく。
「いや、意外とこういうのも悪くないなと思っただけだ」
「それってどういう……」
「ごめん、遅くなって……ってあれ、他の人は?」
「まだ来ていない。女子は身支度に時間がかかるらしいからな。仕方がない面もあるが」
やっと出久が来た。この子は何をやっていたんだか。
「ごめん、遅刻してもうた」
「申し訳ありません、耳郎さんが……」
「ううぅ、ウチこう言う格好はその何というか……」
「馬子にも衣裳ってやつだな!」
「女の殺し屋みてえ」
「失礼な男共ねー。かわいいとか美しいとかも言えないわけ?そんなんだから彼女出来ないのよ!」
男子諸君はアタシの言葉に打ちひしがれている。
「響香はこんな男共の言葉に耳を貸さなくていいわ。とっても似合ってるしかわいいじゃない」
「ありがと、松本。松本はなんか……ハリウッド女優みたいだね」
「松本さん、お綺麗ですわ!ご自分でここまで?」
「借り物だけどね。焦凍のほうで用意するってことになってて実際はエンデヴァーやお姉さんが準備してくれたんだろうけど」
「基本的には姉さんがやってくれた。俺と親父は意見を言うだけだ。ただドレスの色は赤がいいって俺が言ったら赤になった。あとそれはもう松本にあげたもんだから借り物じゃないぞ」
待って情報が多い。焦凍の正装が白のスーツでアタシの正装が赤のドレスってさ、焦凍の髪の色じゃん!しかも装飾品は焦凍の目の色を意識した配色になってるし。
またエンデヴァー絡みかと思ったけど焦凍が選んだって言ってたし……この感じは独占欲かしら?こんなことされるとこっちも意識しちゃうんだけどな。
そろそろ真剣に焦凍とのこと考え始めないといけないかもね。
考えがまとまらない中メリッサさんも来た。もうパーティは始まっているらしい。
『I・アイランド管理システムよりお知らせします。警備システムによりI・エキスポエリアに爆発物が仕掛けられたという情報を入手、I・アイランドは現時刻をもって厳重警戒モードにいこうします。島内に住んでいる方は家に、遠方からお越しの方は島内避難施設に退避して下さい。今から10分以降の外出者は警告なく身柄を拘束されます。また、主要施設は警備システムによって強制的に封鎖されます。繰り返します…………』
これはパーティやってる暇はなさそうね。