いよいよ雄英に入学する日がやってきた。ただし、呑気にゆっくりしている時間はなかった。なぜなら遅刻ギリギリだから!でも理由があるの。女は朝の支度が大変だから仕方がないのよ。しかも実家からだとあまりに時間がかかるから雄英入学を機に一人暮らしをすることになったし。
そういうわけでアタシはダッシュで教室まで行く。ギリギリ間に合った~。ほっとしたのもつかの間、何かが教室の前に横たわっている。え?なにこれこれ無視していいの?それとも先生とか呼んだほうがいいのかしら?そんなことを考えていると、
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここは……ヒーロー科だぞ。」
えっ何この人……
「静かになるまで8秒かかりました。君たちは合理性に欠くね。担任の相澤消太だ。よろしくね」
担任?この人が?正直言って小汚いしあまりヒーローに見えない。
「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」
そういって相澤先生は教室から出て行った。教室には困惑した空気が残る。しかし担任の先生に言われたのだ。従うしかなさそうね。アタシが更衣室に向かうと他のみんなも動き始めた。
「ねえ。ウチのこと覚えてる?」
着替えているときに突然話しかけられた。振り向くと、そこには入試直前で会った女の子がいた。
「もちろんよ!お互い合格できてよかったわね。しかも同じクラスだなんて」
「ね。知り合いがいて心強いよ。そういえばまだ自己紹介してなかったね。ウチは耳郎響香っていうんだ。よろしくね」
「松本乱菊よ。よろしく」
お互いに名乗っていると、他の女子たちも集まってきた。
「私芦戸三菜!よろしくー!」
「八百万百と申します。よろしくお願いいたしますわ」
「葉隠透だよ!見えないけどよろしくねー」
「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」
「麗日お茶子です。よろしくお願いします」
一通り自己紹介したところでみんなでグラウンドまで歩いていく。
グラウンドに到着すると、相澤先生と男子はもう集まっていた。
「ようやく来たか。君たちには個性把握テストをやってもらう」
「「「「「個性把握テストォ⁉」」」」」
え?入学初日にテスト?さすが雄英。ぶっ飛んでるわね。
まず最初に爆豪がソフトボール投げをやらされた。705メートル。すごい。霊圧のない今の私では火力では勝てそうもない。
「なんだこれ!面白そう!」
「個性思いっきり使えるんだ!さすがヒーロー科!」
クラスメイトの興奮する声が聞こえる。そんなことを言っている声を聴いて、相澤先生は成績最下位の者を除籍すると言い出した。
確かに面白そうだなんて遊び半分じゃまずいわよね。少しでも周りに追いつきたくて前世でも訓練は必死でやっていた。ちょっと前まで中学生だった子たちには酷だけど、必死でやらせるには相澤先生のやり方が正しいのかも。ヒーローが命を懸ける仕事である以上、アタシは理不尽だとは思わなかった。
第一種目、50メートル走。瞬歩が使えない今のアタシでは普通に走るしかないのか。今まで個性を鍛えてきたが、それは威力やコントロールがメインで、個性の使い方に関してはあまり考えてこなかった。今私ができるのは、灰の創造・操作・斬撃。この中だと斬撃は使い道がないか。灰の操作を使えば移動できるかしら?灰に乗るのは難しそうだし背中を押すようにしよう。
スタートした瞬間に背中を押す!結構早くゴールできた。5秒台か。まあまあかしら?
第二種目は握力測定。これは灰でやるより、素の力でやったほうが良さそう。握力計切っちゃいそうだしね。個性を鍛えるとともに体も鍛えてたから自信あるわ。40キロを超えた。
第三種目は立ち幅跳び。これは個性が使えそう。ジャンプするタイミングに合わせて個性を使う。30メートルほど飛べた。なかなかいい感じじゃない。
第四種目は反復横跳び。これは個性の使いようがないわね。普通にやったら女性平均を上回る記録が出た。
第五種目はソフトボール投げ。ソフトボールくらいの大きさなら灰に乗せて飛ばせる。ただ個性の操作範囲の限界がある。100メートルくらいで力尽きた。操作範囲は課題かしらね。
緑谷って子は大丈夫なのかしら?まだ大した記録を出せてないし、さっきから顔色が悪い。そう思っていたら、相澤先生が緑谷の個性を消した。個性を消せる個性?強いわね。
驚いたことに、緑谷の2投目は人差し指だけを使ってボールをぶっ飛ばしていた。なんかそれに爆豪って子が切れてる。きゃんきゃん吠えているのはいじり甲斐がありそうだわ。
上体起こしと前屈はそれぞれ個性で補助しながらやってそこそこの記録が出た。
ただ問題は最後の持久走。私の個性は創造にも操作にもエネルギーを消費する。エネルギーが切れると回復するまで個性が発動しなくなる。ペース配分に気を付けてやって上位に入ることができた。
「んじゃ、パパっと結果発表」
アタシはえーと……7位か。上位は男子ばかりだしかなり頑張ったんじゃないかしら?1位は個性があまりにもずるいわね。
みんなが気になる最下位は緑谷だった。これで緑谷は除籍かと思われたが、
「ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
彼が除籍にならなくて良かった。初日からクラスメイトがいなくなったら目覚めが悪いもの。
ただアタシは本当にウソだったのか疑っている。この先生なら除籍もやりかねないと感じるからだ。
個性把握テストが終わって更衣室で着替える。
「八百万1位おめでとう!」
「ありがとうございますわ。松本さんも上位に入っていましたわね」
「まあねー。あのさ、八百万だと長いから百って呼んでいい?」
「もちろんですわ!名前で呼ばれるなんて嬉しいです(プリプリ)」
「じゃあ私はヤオモモって呼ぶねー!」
「芦戸さん……ニックネームで呼ばれるのは初めてです!(プリプリ)」
仲良くなりたいと思って話しかけてみたけど、いい子だなー。
「松本。ウチのことも名前で呼んでほしい」
「わかったわ、響香。みんなのことも名前で呼んでいいかしら?」
「「「もちろん!」」」「梅雨ちゃんと呼んで」
こうして雄英初日が終わった。