神野の悪夢と呼ばれた惨劇で社会は大きな打撃を受けたと共に変化を強いられた。雄英からも全寮制導入と家庭訪問のお知らせが届く。
先生方が実家まで来てくれるということなのでアタシも実家に帰って来ていた。
「お話は分かりました。ただ……」
お父さんは相澤先生たちの話を聞いて頷きながらそう答えた。学校からお知らせが来た時点で全寮制には納得してくれてたはずなんだけど……
「今回の事件で娘に被害はなかったとはいえ、
「はい、必ず乱菊さんを立派なヒーローに育てていきますので、どうかご理解のほどよろしくお願いいたします」
話がついたと思って安心していると、お父さんが語り始める。
「乱菊は昔から本当によくできた子でしてね……私も昔はヒーローに憧れていて、その夢を代わりに叶えてくれようとしてくれているんですよ。親のエゴで無理矢理やらせてるんじゃないかとも悩んでいたんです。だから……」
「それは違うわ」
話が変な方向にいきそうだったから口を挟む。
「それは違う。たしかにきっかけはお父さんたちが喜んでくれるかなっていう漠然としたものだったけど、今はこれしかないって納得してるの。だからお父さんが気にすることないわ」
「そうか。そうだったのか……!」
お父さんが感極まったのか泣いてしまった。ちょっと親バカなところあるからなぁ……
「それよりもお伺いしたいことがあるんですが」
「はい」
ここまでほとんど喋っていなかったお母さんが口を開く。
「母親としては娘の恋愛事情が気になるのですが、娘がお付き合いしている人などいるのでしょうか?」
えっ、今それ聞く?お母さん空気読まないというか天然なのよね……
「はい……?私としましては生徒の恋愛事情には関わらない方針でして……」
あの相澤先生も困っている。
「もう!先生困ってるでしょ!今そんな話しないでよ!」
「だってあなたが年頃なのに彼氏の一人や二人作らないからでしょう?昔からあなたモテるのに……」
「彼氏だと⁉そんなのお父さんは認めないぞ!そういえば先生、寮は男女で同じ建物でしたよね?防犯なんかは大丈夫ですか?思春期の男女が一つ屋根の下なんて危険すぎる!やっぱり寮はやめた方が……」
また始まった……恋愛絡みの話になるとお父さん面倒なのよね。お母さんは興味津々だし。
その後、ほどほどのところで話を切り上げて先生方は帰っていった。そういえばオールマイトは空気だったわね。
8月中旬、アタシたちA組は新しくできた寮の前に集合していた。
「とりあえず1年A組、無事にまた集まれて何よりだ」
久しぶりの相澤先生だがいつも通りだ。
「皆許可降りたんだな」
「私は苦戦したよ……」
「フツーそうだよね……」
「無事に集まれたのは先生もよ。会見を見たときはいなくなってしまうのかと思って悲しかったの」
「うん」
確かにあの会見ではかなり雄英の対応に批判が集まった。その矢面に立ったのは校長や相澤先生、ブラドキングだ。
「……俺もびっくりさ。まぁ……色々あんだろうよ。さて……!これから寮について軽く説明するが、その前に一つ。当面は合宿で取る予定だった仮免取得に向けて動いていく」
「そういやあったな、そんな話!」
「色々起きすぎて頭から抜けてたわ……」
「大事な話だ。いいか、轟、切島、緑谷、松本、八百万、飯田、この6人はあの晩あの場所へ爆豪救出に赴いた」
「「「「「え……」」」」」
やっぱりこの話は出るわよね。
「その様子だと行く素振りは皆も把握していたわけだ。色々棚上げした上で言わせて貰うよ。オールマイトの引退が無けりゃ俺は爆豪以外全員除籍処分にしてる」
その後も相澤先生のお説教が続く。切島は口ではヒーローの卵ができるギリギリって言ってたけど、正直アウトよね。
アタシはこう言われることも想定内だったからあんまりショックは受けてないけど。
「正規の手続きを踏み、正規の活躍をして信頼を取り戻してくれるとありがたい。以上!さっ!中に入るぞ。元気に行こう」
とはいえ流石に元気には行けないわね。
すると突然爆豪が上鳴を木陰に連れ込み放電させた。上鳴のアホ面に響香がツボに入ってるみたい。確かに面白いけどこれは……?
爆豪が切島に現金を差し出す。暗視鏡代ということらしい。貸し借りを嫌がる爆豪らしいわね。
そんなことをして少し場が明るくなってから寮の中に入る。
相澤先生の案内に従って寮を見て回るが、とんでもなく贅沢な寮と部屋だった。正直アタシが一人暮らししていた部屋より良いかもしれないわね。
「部屋割りはこちらで決めた通り。各自事前に送ってもらった荷物が部屋に入ってる。とりあえず今日は部屋作ってろ。明日また今度動きを説明する。以上、解散!」
アタシの部屋は5階か。隣が百なのね。あら?
「なんで2階にも部屋が余ってるのに5階に3人も?」
相澤先生に聞いてみた。
「2階に峰田がいるからだ。あいつとお前らが同じ階は危険すぎる」
「なるほど。納得ですね」
相澤先生と喋っていたせいで皆に遅ればせながら自分の部屋に向かう。さて部屋作りしますか。
部屋を作り荷物を片付け終わり一息ついていると、ノックが聞こえる。扉を開けると百がいた。
「どうしたの?」
「もう部屋作りは終わりましたか?私、見当違いをしてしまってすぐに終わってしまったんですが……」
「そうなの?じゃあ他の子のとこも周ってみましょうか」
女子部屋を訪ねていくと皆もう終わっていた。
「ねえねえ、皆の部屋覗きたいなー。お部屋披露大会しない?」
「いいね!皆の部屋がどんなか気になる!」
三奈の提案に透も同意する。
「でもあんまり面白いものなんてないわよ?普通の部屋だし」
アタシがそう言うと、
「いいの、いいの!人の部屋見るだけで楽しいから!」
皆で1階の共有スペースに行くと男子が集結していた。
「男子部屋出来たー?」
「うん、今くつろぎ中」
「あのね!今話しててね!提案なんだけど!お部屋披露大会、しませんか⁉」
そんなこんなで始まった部屋披露大会だが、最初の出久の部屋はオールマイトだらけだった。趣味全開ね……
次の常闇は「下らん」とか言って拒否していたけど無理矢理どかした。中は中二病って感じ。黒すぎてちょっと怖い。
その次の青山の部屋は反対に眩しかった。目がチカチカするわ。
この階の最後は峰田だが……
「入れよ……すげえの……見せてやんよ」
変態部屋っぽいのでスルー。3階最初の部屋は尾白で普通の部屋だった。特にいうことなし。
次の天哉の部屋で真面目そうな部屋だ。眼鏡多すぎ!
次の上鳴はなんかチャラかった。彼氏にはやって欲しくないわ。
その次の口田の部屋は一見普通の部屋だがウサギがいた。かわいいわね~。アタシも何かペット飼いたいわ。でも忙しくてお世話がねー。
「釈然としねえ」
「ああ……奇遇だね。俺もしないんだ釈然……」
「そうだな」
「僕も☆」
「男子だけが言われっぱなしってのはぁ変だよなぁ?大会っつったよな?なら当然!女子の部屋も見て決めるべきじゃねえのか?誰がクラス一のインテリアセンスが全員で決めるべきなんじゃねえのかあ⁉」
アタシたちが好き勝手言っていたからか男子に反感を買っていたようだ。でも……
「峰田、アンタはそれにかこつけて女子の部屋に入りたいだけでしょう?」
「ギクッ!!」
やっぱりこのブドウ頭は……まあでも一理あるということで女子の部屋も後で見て回ることになった。
男子棟4階に移動するが、爆豪は眠いと言って先に寝てるらしい。
「じゃあ切島部屋!ガンガン行こうぜ!」
「どーでもいいけど多分女子にはわかんねぇぞ。この男らしさは!」
そういって切島が開けた部屋に対して女子の反応は……
「彼氏にやって欲しくない部屋ランキング2位くらいにありそう」
「アツイね、アツクルシイ!」
「なんというか普通に嫌だわ」
「ホラな」
次の障子の部屋は本人が面白いものはないと言っていたけど、ホントに何もない。机と布団くらい。
5階に移り最初の部屋は瀬呂の部屋。彼のイメージにはなかったけど家具の一つ一つがこだわったいてオシャレで統一感がある部屋だった。
次はさっきから眠そうにしている焦凍の部屋。試験勉強でお邪魔したときは綺麗な部屋だったけど……
「さっさと済ませてくれ。ねみい」
そう言って開けた部屋はまさかの和室……えっ、なんで?
「実家が日本家屋だからよ。フローリングは落ち着かねぇ」
「理由はいいわ!当日即リフォームってどうやったんだおまえ!」
「……がんばった」
「何だよこいつ!」
和室いいな~。前世も、アタシの実家の部屋も和室だから洋室は違和感あるのよね。
「和室いいわね。アタシも和室好きだから遊びに来ていい?」
「好きにしろ。ねみい」
「あと女子だけなんだから頑張りなさいよ」
女子最初の部屋は響香の部屋だった。楽器がたくさんあってイメージ通りな感じ。余計なことを言った上鳴と青山は絞められていた。
次の透の部屋は女の子っぽい部屋で峰田がタンスを開けようとしていたが、そろそろ彼には何か罰を下すべきでは?
4階に上がって、三奈の部屋はピンクで可愛かったし、お茶子の部屋は生活感があって良かった。
「なんかこう……あまりにもフツーにフツーの女子部屋見て回ってると、背徳感出てくるね」
「禁断の花園……」
「次は蛙吹さん……」
「ってそういや梅雨ちゃんいねーな」
「あ、梅雨ちゃんは気分が優れんみたい!」
「優れんのは仕方ないな。優れた時にまた見せてもらおーぜ」
というわけで梅雨ちゃんを飛ばしてアタシの部屋に来る。
「普通の部屋だけどね。ようこそ」
そう言って微笑みながら扉を開ける。
「わー!いい匂い!素敵!」
「お洋服が沢山ありますわね」
「大人の女や!これは真似できひん!」
一人暮らしの部屋をそのまま持ってきたからあんまりこだわりはないのだけど好評なようでよかった。
匂いはアロマキャンドルの匂いかしら?新築っぽい匂いがしたからさっき焚いたのよね。
ドレッサーだけはこだわっていい奴使ってるけど他はそうでもない。
壁紙は深いワインレッドで天井にはシャンデリア風な照明を使ってる。あんまり明るすぎるのは好きじゃないから間接照明なんかも置いてあるけど。
洋服が好きだから洋服ラックにはかなり私服が掛けてある。人を呼ぶことを想定してなかったけどあんまり見えないような作りにしてて良かった。
「すげぇ……!かっこいいっつーか、女の人ってスゲーな!」
「大人の部屋っつーか、なんかこう、エロイな……」
「ラブホみてぇ!」
切島は褒めてるみたいだけど上鳴のそれは誉め言葉じゃない気がする。峰田のは完全にアウトよ!
「峰田くん……!ぼ、僕はいいと思うよ……!でも、ちょっ、どこ見れば……⁉」
「整頓されている点はいいのだが、これは……教育的にやや問題があるのでは⁉」
出久は顔を真っ赤にしながら庇ってくれてるけど、天哉の教育的にとは?誰も連れ込まないんですけど……
「オイラ……もう我慢できねえ!」
そう言って峰田はアタシのベッドにダイブしようとする。慌てて頭を掴んで引き倒す。
「ちょっとアンタ何しようとしてんのよ!いい加減にしないと叩き出すわよ!」
「お前がユーワクするのが悪いんだろ!」
「誘惑なんてしてないでしょうが!もうアンタは外出てなさいよ!」
峰田を部屋の外に蹴りだす。
「ほら、もう遅い時間だし百の部屋に行きましょう」
というわけで最後の百の部屋に移動する。百の部屋は巨大なベッドが鎮座していた。お嬢様なだけはあるわね。
これで起きている全員の部屋を周った。どの部屋が良かったか投票をする。
「それでは!爆豪と梅雨ちゃんを除いた、第一回部屋王暫定1位は……瀬呂範太!!」
部屋王には瀬呂が選ばれた。結構票は割れたみたいだけど納得ね。オシャレな部屋だったし。これでお開きかと思ったら、お茶子に呼び止められる。
「あっ、轟くん、ちょ待って!デクくんも飯田くんも……それに切島くん、八百万さん、乱菊ちゃん、ちょっといいかな」
外に出ると梅雨ちゃんがいた。
「私、思ったことは何でも言っちゃうの……」
そこからの梅雨ちゃんの思いを聞くと申し訳なくなった。アタシたちの勝手な行動で彼女を悲しませてしまい、泣かせてしまった。
「梅雨ちゃん……すまねえ!話してくれてありがとう!」
「ごめんなさいね、梅雨ちゃん」
「蛙吹さん!」
「蛙吹、すまねえ」
「梅雨ちゃん君!」
「あす……ゆちゃん!」
話し辛いことを話してくれたのね。皆にも気を使わせてしまったみたい。反省しないとね。