ついに仮免試験当日がやってきた。
「降りろ、到着だ」
相澤先生の指示に従ってぞろぞろとバスを降りる。
「緊張してきたぁ」
「ほら、深呼吸しなさいよ」
響香が緊張しているっぽいのでリラックスさせる。
「多古場でやるんだ」
「試験てなにやるんだろう。ハー、仮免取れっかなあ」
「峰田、取れるかじゃない。取ってこい」
「おっもっ、モチロンだぜ!」
「この試験に合格し仮免許を取得できればお前ら卵は晴れてヒヨッ子……セミプロへと孵化できる。頑張ってこい」
普段クールな相澤先生にこう言われると気合入るわね。
「っしゃあなってやろうぜ、ヒヨッ子によぉ!」
「いつもの一発決めて行こうぜ!せーのっプルス……」
「ウルトラ!!」
ん?誰かしら?知らない子が入ってきている。
「勝手に他所様の円陣へ加わるのは良くないよ、イナサ」
「ああ、しまった!どうも大変失礼致しましたぁ!!」
急に入ってきたかと思ったら頭を地面に打ち付けて謝ってる……世の中変わった子がいるものね……驚きをもって見守っていると、周囲が騒がしくなる。その反応からすると西で有名な士傑高校らしい。
「一度言ってみたかったっす!プルスウルトラ!自分雄英高校大好きっす!雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっす、よろしくお願いします!」
なんか元気に挨拶し始めた。テンション高いわねえ。
「夜嵐イナサ」
「先生、知ってる人ですか?」
「すごい前のめりだな。よく聞きゃ言ってることは普通に気のいい感じだ」
「ありゃあ……強いぞ。夜嵐、昨年度……つまりお前らの年の推薦入試、トップの成績で合格したにも拘わらず、なぜか入学を辞退した男だ」
推薦1位か。戦うことになったらかなりの強敵ね。
「雄英大好きとか言ってた割に入学は蹴るってよくわかんねえな」
「変なのー」
「変だがマークしとけ」
「イレイザー⁉イレイザーじゃないか!」
そこへ相澤先生に声がかかった。
「テレビや体育祭で姿は見てたけどこうして直で会うのは久しぶりだな!結婚しようぜ」
「しない」
「わあ!」
また強烈な人が来たわね。
「しないのかよ!うける!」
「相変わらず絡み辛いな、ジョーク」
先生に絡んできたこの女性はスマイルヒーロー、Ms.ジョークらしい。なかなか仲が良さそうだわ。
「何だ。お前のとこもか」
「いじりがいがあるんだよな、イレイザーは。そうそう、おいで皆!雄英だよ!」
Ms.ジョークの生徒であろう人たちが挨拶してくる。
「傑物学園高校2年2組!私の受け持ち、よろしくな」
なかでも中心にいた真堂が爽やかに接してくるが爆豪はそっけない。まあ胡散臭いのは同意だけど。
そんなこんなでコスチュームを着て試験会場にやってきた。人が多くて狭苦しい。
とっても眠そうな目良とかいうヒーロー公安委員会の人の進行で進んでいく。
「ずばりこの場にいる受験者1540人一斉に勝ち抜け演習を行ってもらいます。」
そこから現代ヒーローに求められるのはスピードだと説明される。そのために先着100名を通過とするらしい。1540人中100人か……想像より条件が厳しいわね。
体に取り付けたターゲットを、ボールをぶつけられて3つ発光したら脱落、二人に3つ目のターゲットを当てて倒すと勝ち抜きらしい。
どう相手を拘束するかがカギになってきそうね。
「えー……じゃ展開後ターゲットとボールを配るんで全員に行き渡ってから1分後にスタートとします」
展開って何のことかと思ったら今いる建物の壁と天井が開いて広大なフィールドが展開された。
「先着で合格なら……同校で潰し合いはない……むしろ手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋……!皆あまり離れず一塊で動こう!」
出久がそう提案するが、
「フザけろ、遠足じゃねえんだよ」
「バッカ、待て待て!」
爆豪はどっかへ行き切島も追いかけて行った。
「俺も。大所帯じゃ却って力が発揮できねえ」
焦凍まで離れて行ってしまった。アタシはどうしようかしら?
「アタシも一人で動くわ。後で会いましょ」
「ちょっ、松本さんまで!」
焦凍を追いかけようかとも思ったがやめた。お互いこの状況だと一人の方が戦いやすいだろうし。
『スタート!!!』
開始の合図が場内に響き渡る。その瞬間周りの視線がアタシに向かうのが分かる。
「雄英生が一人だなんて不用心だねっ!」
そう言ってボールを投げてくる。それは灰塵の太刀で簡単に両断した。
「一人でも問題ないからここに居るんでしょうが!灰雲!」
灰塵の太刀を使用しながら、灰雲で逃げる振りをする。そして受験生たちが一方向に固まる習慣を待つ。そしてタイミングを見計らって灰塵旋風を放つ。狙っていた受験生全員が射程圏内だ。
「灰塵旋風!」
「何だこりゃ!」
「うわああ!」
「グッ、痛え!」
灰塵旋風を止めた時にはそこには誰も立っていなかった。というか全身傷だらけで動けなそうね。彼らはここまでかしら?
一番近くにいた受験生二人のターゲットを六杖灰牢で拘束し、ターゲットにボールで触れる。そうすると、
『ピピッ、通過者は控室に移動してください』
機械音声で案内される。
『おっと、開始早々通過者が!全く寝る暇もない……!』
このアナウンスはアタシのことかしら?気にしても仕方がないしさっさと控室に移動する。控室には誰もいなかった。やっぱりアタシが一番だったみたい。こんな簡単に通過していいか悩ましいけど安心した。ただあんなに用意した必殺技が出番がなかったわね……
『一人目から少し経ち、ようやく二人目の通過が……うぉ⁉脱落者120名!一人で120名脱落させて通過した!えーさてちょっとびっくりして目が覚めて参りました。ここからドンドン来そうです』
このアナウンスから少しして士傑の夜嵐?だったかしら?が控室に入ってきた。
「あ!雄英の方っすよね!一番乗り何てすごいっす!」
暑苦しいだけでやっぱりこの子いい子よね。
「ありがとう。あなたもすごいじゃない。一気に120人も脱落させたんだって?」
「あれは結果的にそうなっただけで狙ってはないっす!」
「そうなの?アタシは詳しくないけど士傑って名門なんでしょ?そこで上級生に交じって仮免受けさせてもらえるなんてよっぽど期待されてるのね」
「あざっす!体育祭見てました!乱菊さんって呼んでもいいすか⁉」
「ええ……いいけど……」
ずいぶんフレンドリーというか距離詰めてくるわね。まあ別に構わないけども。
「特に決勝戦、熱すぎて俺、感動したっす!」
「そう言われると嬉しいけど負けちゃった試合をそう言われると恥ずかしいわね。士傑では体育祭みたいな行事とかあるの?」
「士傑では~…………」
お互いの学校の様子なんかを話しているうちに通過者が増えてきた。共通していることも多いけど違うところも思ったよりあるわね。士傑は校則厳しいみたいだし雄英でよかったわ。持ち物検査なんてされたら水筒にノンアル入れてるのバレちゃうし。
通過者が50人を超えたくらいに見覚えのある人影が入ってきた。
「松本、早いな」
「ふふん!アタシ一番だったのよ!アンタこそ思ったよりも遅かったじゃない」
「俺への対策がしっかりしてた。想定より苦戦しちまった」
焦凍の実力ならもう少し早く来れたと思うのよね。
「じゃあ乱菊さん!また!」
「え、ちょっと……今紹介しようと思ってたのに」
夜嵐は焦凍が来た途端去って行った。去り際の焦凍へ向ける視線、とてもじゃないけど友好的なものじゃなかった。
「焦凍、夜嵐と知り合いだったりする?」
「いや、見覚えがねえ。でも推薦入試で会ってるはずなんだが」
「ふーん……まあいいわ。今は試験に集中しましょ」
その後、百たちとも合流して試験を見守っていたが、A組20名全員が一次選考を突破した。