仮免試験も終わり、新学期の朝がやってきた。また忙しい日々になるわね。身支度を整えて1階に降りる。
「皆おはよ~」
「松本おはよー!」
「おはよう、乱菊ちゃん」
「松本遅いぞー」
皆早いわね。これでも寮に入って登校初日だし急いだんだけど。
「ケンカして」
「謹慎~~⁉」
朝ごはんを食べていると出久と爆豪が喧嘩して謹慎になったと聞こえてきた。
「馬鹿じゃん!」
「ナンセンス!」
「馬鹿かよ」
「骨頂——」
「でも喧嘩するなんて青春してていいじゃないの」
「松本、それはどうなん……?」
アタシ個人としては別に喧嘩だろうと好きにやっていいと思うけど皆厳しいわ。
「えええそれ、仲直りしたの?」
「仲直り……っていうものでも……うーん、言語化がむずい……」
「よく謹慎で済んだものだ……!ではこれからの始業式は君ら欠席だな!」
天哉は真面目なだけあって怒ってるわね。
「爆豪、仮免補習どうすんだ」
「うるせぇ……テメーには関係ねぇだろ」
「じゃー掃除よろしくなー」
「ぐぬぬ!!」
「皆いいか⁉列は乱さずそれでいて迅速に!グラウンドへ向かうんだ!」
始業式のためにグラウンドに移動中、天哉の注意が飛ぶ。
「いや、おめーが乱れてるよ」
「委員長のジレンマ!」
「入学式出れんやったから今回も相澤先生何かするんかと思った」
「まー四月とはあまりに事情が違うしね」
「アタシとしては始業式あって良かったわ。いきなりテストとかさせられたら堪んないもの」
「聞いたよ、A組ィィ!」
あれはB組の物間ね。何の用かしら?
「二名!そちらから仮免落ちが二名も出たんだって⁉」
「B組物間!相変わらず気が触れてやがる!」
「さてはオメーだけ落ちたな」
「ハッハッハッハッハッ」
「いやどっちだよ」
「こちとら全員合格。水があいたね、A組」
「…………悪ィ……皆……」
「向こうが一方的に競ってるだけなんだから気にやむなよ」
「そうよ、精一杯やったんだから気にしちゃダメよ」
「切島、松本。ありがとな」
でも物間まで受かってるとは……全員合格だなんてB組もかなり優秀ってことね。
「ブラドティーチャーによるゥと、後期ィはクラストゥゲザージュギョーあるデスミタイ、楽シミしテマス!」
そう話してきたのは確か角取?だったかしら?
「へえ!そりゃ腕が鳴るぜ!」
「つか外国人さんなのね」
「ボコボコォにウチノメシテヤァ……ンヨ?」
「変な言葉教えんな!」
いつもの拳藤の手刀が物間に突き刺さった。
「オーイ、後ろ詰まってんだけど」
後ろから声がかかる。
「すみません!さぁさぁ皆、私語は慎むんだ!迷惑かかっているぞ!」
「かっこ悪ィとこ見せてくれるなよ」
「心操」
「体育祭で緑谷と戦った人」
「あれ……なんかあいつ……なんとなく……ゴツくなった気が……」
「やあ!皆大好き小型哺乳類の校長さ!」
校長の長い話が始まる。最初はどうでもいい話だったがヒーローインターンという耳慣れない言葉もあった。不思議に思っているとアタシたちが社会の後継者であるという話で締めくくられた。
「それでは最後にいくつか注意事項を。生活指導ハウンドドッグ先生から……」
「グルルル……昨日ゔゔ……寮のバウッ!バウバウッ!慣れバウバウ!生活バウ!!アオーン!!」
ハウンドドッグが最後に吠えてマイクをブラドキングに譲る。
「ええと、「昨晩ケンカした生徒がいました。慣れない生活ではありますが節度をもって生活しましょう」とのお話でした」
「キレると人語忘れちまうのかよ……雄英ってまだ知らねーことたくさんあるぜ……」
「緑谷さんと爆豪さん、立派な問題児扱いですわね……」
「A組自体けっこう問題起こしてるわよ?」
「それは言わないでくださいまし、松本さん……」
教室に戻り相澤先生が話す。どうでもいいけどアタシの前後の席が謹慎でいない……
「ごめんなさい、いいかしら先生」
そこで梅雨ちゃんの手が上がる。
「さっき始業式でお話に出てたヒーローインターンってどういうものか聞かせてもらえないかしら」
「そういえば校長が何か言ってたな」
「俺も気になっていた」
「先輩方の多くが取り組んでらっしゃるとか……」
「それについては後日やるつもりだったが……そうだな。先に言っておく方が合理的か……」
相澤先生の話によると、職場体験の本格版で体育祭での指名をコネクションにして生徒が任意に活動するらしい。
じゃあアタシはエンデヴァーのところかしら?でも今、エンデヴァーが何かトラブルというか大変そうなのよね。
「じゃ……待たせて悪かった、マイク」
プレゼントマイクが入ってきて授業が始まる。……アタシ英語苦手なのよね。
新学期初日から三日が経ち、出久が復帰した。この三日間の遅れを挽回しようと息巻いているみたい。
「じゃ緑谷も戻ったところで、本格的にインターンの話をしていこう。入っておいで」
相澤先生が廊下に声を掛ける。
「職場体験とどういう違いがあるのか、直に体験している人間から話してもらう。多忙な中都合を合わせてくれたんだ、心して聞くように。現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名、通称ビッグ3の皆だ」
へー……ビッグ3なんてのがいたのね。皆の様子を見てると知ってた人もいるみたい。
「じゃ手短に自己紹介よろしいか?天喰から」
すごい目つきでこちらを睨んでいる。
「駄目だ、ミリオ……波動さん……ジャガイモだと思って臨んでも……頭部以外が人間のままで依然人間にしか見えない。どうしたらいい、言葉が……出てこない。頭が真っ白だ……辛いっ……!帰りたい……!」
この人はなんなんだろう?人前が苦手なのかしら?
「雄英……ヒーロー科のトップ……ですよね……」
「あ、聞いて天喰くん!そういうのノミの心臓って言うんだって!ね!人間なのにね!不思議!」
そう言ってからビッグ3の紅一点はこちらを向く。
「彼はノミの天喰環、それで私が波動ねじれ。今日はインターンについて皆にお話してほしいと頼まれて来ました。けどしかし、ねぇねぇところで君は何でマスクを?風邪?オシャレ?」
「これは昔に……」
「あら、あとあなた轟くんだよね⁉ね⁉何でそんなところを火傷したの⁉」
「…………⁉それは……」
障子は分からないけど、焦凍のは聞いちゃダメなやつ……
その後も気になることを遠慮なく聞いてくる。峰田は気持ち悪い反応してるわね。
「合理性に欠くね?」
「イレイザーヘッド、安心して下さい!大トリは俺なんだよね!前途ーー⁉」
ゼント?何かしら?この人もクセが強そう。
「多難ー!っつってね!よおし、掴みは大失敗だ!」
クラス中に困惑の声が広がる。
「そうだねぇ……何やらスベリ倒してしまったようだし……君たちまとめて俺と戦ってみようよ!」
やっぱこの人も変わってるわ。相澤先生が同意したので戦うことになりそうだわ。
体育技に着替えて体育館γに移動した。
「あの……マジすか」
「マジだよね!」
「ミリオ……やめた方がいい。形式的にこういう具合でとても有意義です、と語るだけで充分だ。皆が皆上昇志向に満ち満ちているわけじゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない」
遠くから天喰先輩が話す。
「あ、聞いて、知ってる、昔挫折しちゃってヒーロー諦めちゃって問題起こしちゃった子がいたんだよ、知ってた⁉大変だよねえ、通形、ちゃんと考えないと辛いよ、これは辛いよー」
アタシたちかなり舐められてる?それほどの差がビッグ3とはあるってことかしら?
「そんな心配される程、俺らザコに見えますか……?」
「うん、いつどっからでもきていいよね。一番手は誰だ⁉」
「僕……行きます!」
「意外な緑谷!」
「問題児!いいね君やっぱり元気あるなあ!」
いざ始まると、いきなり通形先輩の服が脱げた。透過する個性?出久が顔面に蹴りを放つがすり抜けた。そして遠距離攻撃もすり抜け、煙が晴れたらそこに姿はなかった。
「まずは遠距離持ちだよね!」
そう言って通形先輩は後衛に襲い掛かる。ワープというか地面から飛び出なかった?なら空中に居たほうがいいか。灰雲で地面から離れる。
一瞬で遠距離個性持ちがやられてしまった。
「あとは近接主体ばかりだよね」
「何したのかさっぱりわかんねえ!すり抜けるだけでも強ぇのに、ワープとか……それってもう……無敵じゃないすか!」
「よせやい!」
「何かからくりがあると思うよ!」
そこから出久の考察によるとカウンター狙いで行くとのこと。なるほど、攻撃の瞬間はすり抜けてないわけか。
だが通形先輩は走りながら沈み、出久の後ろへとワープする。それを読んでいたのか後ろ蹴りを放つが、目つぶしをされみぞおちを殴られていた。
その後も次々に殴られダウンしていく。これは勝負ありね。味方がその辺に転がってる状態では大技も繰り出せないし……
「そこの浮いてるお嬢さんは攻めてこないのかな?」
「あら?そちらからは来ないんですか?ワープの個性ならこちらに来れますよね?」
「ハハハ!そう言うってことは気づいてるのかな?でもワープじゃなくても行けるんだよね!」
そう言って通形先輩は地面に沈み、こちらに飛んでくる。そこですかさず、灰煙遁を最大規模で放つ。
「煙幕⁉」
視界を塞いでるうちに倒れている皆を回収し、逃走した。今の状況では勝てない。勝てないなら逃げるしかないわよね?
「相澤先生、勝てないなら逃げるのもありですよね?」
「まぁ今回の趣旨とは違うがいいだろう。皆を起こせ」
「は~い」
というわけで皆を起こしていく。
その後通形先輩の話によると、個性は透過で元々は強くなかったけどインターンの経験で強くなったらしい。だからやるべきだということのようだ。
なるほど……アタシも真剣に検討しよう。
※※※
轟焦凍side
轟焦凍は悩んでいた。仮免試験が終わった後から胸がムカムカしており、夜嵐が乱菊に告白してからだ。しかしそれを誰にも相談できないでいた。
「昨日、松本にそっけない態度取っちまったよな……らしくねぇ」
心配したのは杞憂だったのか、乱菊は轟にいつも通り話しかけていたうえ関係も特に変化はなかった。
新学期が始まって4日目、インターンの説明にやってきた先輩とA組は戦うことになった。轟は仮免を取っていなかったため参加しなかったが乱菊の戦う姿に落ち込んだ。
自分は他の受験生と揉めて仮免落ち、一方乱菊は合格し先輩相手にも立ち回れている。
「差ァ、開いちまったな……」
「焦るな、轟」
相澤は轟に声を掛ける。
「お前は仮免取ることに集中すればいい。足りないところは分かってるだろ?」
「はい……!」
轟は乱菊に追いつこうとより一層気合を入れた。
「ところで先生」
「ん?」
「松本見ると心がムカムカするんですけど、これなんですか?」
「あん?あー……とりあえず婆さんに診てもらえ。俺はそういうの分からん」
後日轟はリカバリーガールのところに行って相談したが、特に異常はなかった。(当たり前)