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いつの間にか9月も終わり10月に入った頃。エンデヴァーはマスメディア、報道各所に会見を開くことを伝えた。
普段取材なんかで表に出ることをあまり好まないエンデヴァーが急に会見を開くというので関係者も驚いていた。それに加え彼はいつものコスチュームではなくお堅いスーツ姿であった。
「それでは会見を始めさせていただきます。本日お集まりいただいたのは私の罪を告白するためです。結論から申し上げます。敵連合にいる蒼い炎の個性の
エンデヴァーは一息にそこまで語った。衝撃の告白に場の空気が静まり返る。いつもなら勝手に質問しだすはず記者たちが絶句している。
「この事実が判明した経緯をお話します。まず、8月の敵連合による林間合宿中の雄英への襲撃における戦闘によって荼毘のDNAの一部が現場に残されていました。警察による必死の捜査でも一致するDNAを持つ者はいませんでした。ただ被害者として採取していた雄英生の中に近いDNAを持つ生徒がいました。それが私の息子、焦凍です。警察は近親者の線を考えて捜査したようですが、残されたDNAと一致する者は中々見つけられなかったようですが、8月下旬、一致する者が判明しました。私の長男の燈矢です」
そこまでエンデヴァーが話したところで、衝撃から記者たちも回復してきたようだ。
「エンデヴァー!あなたの息子が
「なぜすぐに公表しなかったんです⁉秘密にしておきたかったんですか⁉」
「これは責任問題ですよ!次期ナンバーワンヒーローの息子が
「荼毘の被害者は数多くいます!どう責任を取るつもりですか⁉」
記者から矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
「質問には最後に答えさせてもらいます。まずは経緯と罪の告白をさせてください。なぜ彼が
まず、私はナンバーワンに非常に強い憧憬を抱いていました。しかし同時に私の実力ではそこには至れないと諦めていました。そこで考えたのが子供に自身の野望を叶えさせようという恐ろしいものでした。個性目当てに妻の実家に金銭を渡し妻と結婚しました。いわゆる個性婚というやつです。
そこで産まれたのが長男の燈矢、荼毘です。私は最初、彼を自分を超えるヒーローにしようとした。しかし彼は私が望んだ個性ではないうえ、個性が体質に合っていないため個性を使えば怪我をする体でした。彼にヒーローを諦めさせるため、望んだ個性を産ませようと妻に子供を産ませ、誕生したのがご存じの人も多い焦凍です。
そして私は焦凍以外の子供を妻や使用人に面倒を見させ育児放棄し、燈矢が傷を作って個性を使う事を責め妻へ暴力を振るったこともありました。それらの行為によって妻を心が壊れるまで追い込みました。また、焦凍には虐待じみた訓練を幼いころから課してきました。
しまいには10年前、燈矢がいつも個性を使っていた山に来て欲しいという願いを私は無視し、結果そこでの山火事で公的には燈矢は死亡しています。
彼がどうやって生きて来たのか、死んだはずの人間がなぜ生きているのか、なぜ
この度は私の過去の行いのせいでご迷惑をおかけしました。申し訳ございませんでした」
長々と説明をしてからエンデヴァーは深く頭を下げて謝罪した。
「それでは質疑応答に移らせていただきます。質問がある方は挙手をお願いいたします」
司会がそう話すと一斉に手が上がる。
「荼毘があなたの息子である判明してから1月ほど経ってますよね?どうしてこんなにも空いたのでしょうか?あわよくば隠そうと思っていたのではないですか?」
記者の質問に対してエンデヴァーも答える。
「そういうつもりはありませんでした。ただ、死んだはずの息子が生きていただけでなく
次の記者が発言する。
「本当に息子と戦えるんですか?今は
この質問に対し少し考えたエンデヴァーだったが決意を決めた目で答える。
「その指摘はごもっともだと思います。最初、この報告を聞いた時は自分は息子と戦えないと思っていました。ですが、家族にこのことを話したら戦うしかないと言われました。息子の焦凍は自分が戦うとも。ならば私が責任をもって戦うしかないと覚悟を決めました」
エンデヴァーの決意を聞いて記者はある程度納得したようだった。
「荼毘の被害者は多くいると聞きます。その責任の所在は誰にあると思いますか?」
それは意地悪な質問だった。これでエンデヴァーが自身ではないところを言ったら責任逃れだと批判するつもりだろう。
「責任は全て私にあるものと考えています。ヒーローであり親であるはずの私が
その後もエンデヴァーを責める声や、執拗に叩く声もあったがエンデヴァーは真摯に答えて行った。長丁場となった会見を受けての反応は様々だった。
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乱菊side
その日は急にエンデヴァーが会見を開くというのでアタシも自室でスマホから見ていた。それにしても赤裸々に喋ったわね。まさか焦凍にお兄さんがもう一人いたとは……
焦凍は大丈夫かしら?会見でのエンデヴァーの発言からして家族に発破かけられたって言っていたから彼はあらかじめ知っていたんだろう。
でもエンデヴァーの件でこの前相談してきたくらいだから、落ち込んでいるかもしれない。一応話してみようかしら?連絡してみると、夕食後に部屋に来て欲しいとのことなので焦凍の部屋に行く。
「お邪魔しまーす」
「おう、入ってくれ。座布団しかねえがいいか?」
「ええ」
焦凍と向かい合って座る。
「それで?事前に聞いてたんでしょ?どう思ったの?」
アタシが問いかけると焦凍は答える。
「正直戸惑った。燈矢兄とはあんまり喋ったことがない。どうしていいのか分からなかったけどそれでも家族だ俺が戦うしかない、そう思った。お母さんとも話した。親父もお母さんと話したみたいだ。親父も戦うつもりみたいだがその時どうなるかはわからないし、俺が燈矢兄を止めるつもりだ」
焦凍は思っていることをそのまま話したかのように喋った。彼もまた頭の中では混乱しているのかもしれない。
「そっか。でも事前に聞いてたならどうしてアタシに言ってくれなかったのよ。会見見ててびっくりしたんだから」
「悪い。でも口外禁止って公安からも言われてて……」
「ウソウソ、冗談よ。アタシも荼毘の逮捕には協力するわ。アタシの個性なら炎に対する壁くらいにはなるだろうし」
「それは嬉しいが俺がやる。お前はいい」
「遠慮する事ないのよ?」
「いや、いい」
「だから、遠慮しない!」
「お前が燃えたら困る」
「だ、か、ら!少しは頼りなさいってば!そんなに頼りない?」
「そんなことはねえが……」
「じゃあ決まり!荼毘と戦う時にはアタシも呼びなさい。約束よ?」
「はぁ……わかった。でも無理はするなよ」
「もちろん!じゃあ元気そうな姿も見れたしアタシはお暇しようかな」
焦凍が思いのほか大丈夫そうでよかった。思い詰めてないことが確認できたので帰ろうとする。
「実家から送られてきた和菓子あるけど食わねえか?俺あんま甘いもの好きじゃねえから」
「和菓子⁉いいの?食べる食べる!あ、お茶も欲しいわ」
「わかった。淹れてくる」
そうして焦凍の部屋で和菓子を食べながらくつろいでいたら、お暇するのは結構遅い時間になってしまった。長々と滞在して少し申し訳ない。
余談だけど、夜に焦凍の部屋からアタシが出ていくのを瀬呂が見ていたらしく、一瞬でクラス中に広まっていた。峰田が自分の部屋にも来いって誘ってきたけど入るわけないわ。