突然のエンデヴァーの告白は社会にある程度の混乱をもたらした。
批判する声が大きかったが、依然応援する声も根強かった。次期ナンバーワンとして誠実に受け答えする姿勢を見て理解を示す人もいたらしい。
批判と応援の二極化となったが、共通する意見としてはこれまでの彼の実績を考えるとエンデヴァー以外にナンバーワンは務まらないだろうという意見が多い。
オールマイトの引退から続く混乱と不安はしばらく収束しそうになかった。
そんなヒーロー社会が不安定な中でもアタシたちの高校生活は続く。
「文化祭があります」
「「「「「ガッポオオオイ!!」」」」」
突然の相澤先生のお知らせに盛り上がるA組。でも雄英の文化祭って何やるのかしら?
「文化祭!」
「ガッポイの来ました!」
「何するか決めよー!」
口々に好き勝手なことを言うA組だけどそこに水を差すのが一人……
「いいんですか⁉この時世にお気楽じゃ⁉」
切島の言う事もわからなくはない。
「切島……変わっちまったな」
「でもそーだろ。ヴィラン隆盛のこの時期に!」
「もっともな意見だ。しかし雄英もヒーロー科だけで回ってるワケじゃない」
その後の相澤先生の話は納得だった。他の科が主役の文化祭を中止にするというのは申し訳が立たないわね。
「主役じゃないとは言ったが決まりとして一クラス一つ出し物をせにゃならん。今日はそれを決めてもらう」
へー、出し物かぁ。何がいいかしらねえ……
「ここからはA組委員長飯田天哉が進行をつとめさせて頂きます!スムーズにまとめられるように頑張ります!まず候補を挙げて行こう!希望のある者は挙手を!」
そう天哉が言った途端に皆手を上げ始めた。すごいわ。これが若さなのかしら?
「上鳴くん!」
「メイド喫茶にしようぜ!」
「メイド……奉仕か!悪くない!」
メイド服かわいいわよね。
「ぬるいわ上鳴!おっぱ……」
峰田がそこまで言ったところで梅雨ちゃんに吊るされた。峰田さぁ……それはないわ……
次々と候補が上がる。アタシは居酒屋にしといた。お酒好きだし。
「一通り皆からの提案は出揃ったかな」
「不適切・実現不可、よくわからないものは消去させて頂きますわ」
私の居酒屋も消された。残念だわ。未成年しかいないし当たり前か。
その後、色々と話し合ったが一向に決まらなかった。そこでチャイムが鳴る。
「実に非合理的な会だったな。明日朝までに決めておけ。決まらなかった場合……公開座学にする」
まさかの公開座学⁉文化祭でまで勉強はしたくないわよ⁉これはちゃんと決めなくては……
「あぁそれと……今年は女子が多いから一応言っておくがミスコンがある。参加者は各クラス一名までだ。ただし出し物決めてからだぞ」
相澤先生はそう言って教室を出て行った。
「ミスコン⁉雄英ミスコンあるのかよ!」
「ミスコンかぁ……男にはあんま関係ないか?」
「ミスコンだとぉ⁉そうとなったら早く決めねえと!」
放課後、アタシも何故か補習に呼ばれた。
「先生、間違えてませんか?アタシはインターンは週末だけで授業は休んでないはずですけど……」
アタシは相澤先生に尋ねた。
「お前は座学の成績が悪い。ついでに受けとけ」
「酷い⁉」
というわけで何故かアタシも補習を受けさせられた。でも授業を受けてなかったはずの出久やお茶子より理解できなかったから良かったかもしれない……
寮に戻ってから出し物が決まったことを知った。バンド演奏とダンスホールを融合したような空間だそうだ。しかもこれが焦凍からの発案だというのに驚いた。アンタそういうの知ってたのね……
文化祭まであと一か月というところでやっと補習が終わった。寮に入ると皆で役割を話し合っているようだった。
「うーす」
「補習今日でようやく穴埋まりました。本格参加するよー!」
「やばいわ……補習受けたのにおいて行かれてるような気がする……あとで焦凍に頼もう」
アタシはそう思って話し合いに加入する。
「へ?うたは耳郎ちゃんじゃないの?」
お茶子が疑問を投げかけた。
「いや、まだ全然……」
「ボーカルはオイラがやる!モテる!」
「ミラーボール兼ボーカルはそう、この僕☆」
「オウ!楽器は出来ねーけど歌なら自信あるぜ!」
皆がそれぞれ歌ってみるがなんだかズレている気がする。
最後に響香が歌うがとても上手い。いい声してるわね~。
「耳が幸せー!」
「ハスキーセクシーボイス!」
「満場一致で決定だ!」
というわけでボーカルは決まったわけだけどまだまだ決めることがある。
「……じゃあそれはそれで……で!あとギター!二本欲しい!」
「やりてー楽器弾けるとかカッケー!」
「やらせろ!」
「俺弦切りそう」
上鳴と峰田がギターをやりたいようだ。だが……なんと身長で峰田はギターに手が届かない。
そこで常闇がギターに手を伸ばし、音色を奏でた。
「常闇……⁉」
「なんて切ねえ音出しやがる……」
「弾けるのか⁉何故黙ってた⁉」
「Fコードで一度手放した身ゆえ。峰田、おまえが諦めるならば俺がお前の分まで爪弾く」
「勝手にしろ、クソが」
どうやら峰田はいじけてしまったみたい。
「下らん下らん。はよ終われ、文化祭。全員爪割れろ」
それを見ていたお茶子が三奈に声を掛けた。
「峰田!ダンス、峰田のハーレムパートつくったらやる⁉」
「やるわ。はよ来いや、文化祭。あ、ミスコン!!」
峰田が大声を出す。
「ん?どうした?」
上鳴が尋ねる。ミスコン?そういえばそんな話もあったわね。
「ミスコンだよ!ウチのクラスからも出さなきゃダメだろーが!」
「そうは言ってもよ、誰が出るんだ?」
「そりゃ……」
峰田はそう言ってアタシたち女子を嘗め回す様に見る。純粋に気持ち悪いし怖いわね。
「松本ー!!頼むから出てくれー!!」
峰田はアタシの足に縋り付いてそう言った。
「え、アタシ?アタシも皆とステージ立ちたいわよ」
「そこを曲げて頼む!!ミスコンはオイラの夢なんだ!!お前の美貌なら間違いねえ!!」
必死に頼み込んでくる姿勢に出てもいいかという気持ちになる。別に目立つのが嫌ってわけじゃないし。
「もう、わかったわよ!とにかく離れなさいよ。でも皆もアタシだけでいいの?」
そう聞くと皆頷いていた。というか演奏に参加しない女子はミスコン嫌そうにしてるし。
「そういえば衣装係兼付き添いも必要って言ってたような」
「私がやろうか?付き添いってことは女子でしょ?演奏とかダンスを教えたり、個性柄役割があったりするわけじゃないから私がやるよ!」
透が立候補してくれた。というわけでアタシと透はクラスの出し物とは別に準備することとなった。
その後も夜遅くまで役割を話し合った。
「全役割、決定だ!!」
深夜1時になってやっと全ての役割が決まった。もう眠いわね。細かいことは明日以降ということで今日は就寝することになった。
次の日の放課後、アタシと透は相澤先生にミスコンに出場する旨を伝えて、どういう衣装やパフォーマンスにするのか考えていた。
お互いの部屋でもいいが共用スペースで資料を広げながら話し合う。
「うーん……衣装にパフォーマンスねぇ……色々と考えないとダメねえ」
「乱菊ちゃんの長所を出すとしたら……やっぱり……」
透はそう言って黙るが、視線がアタシの胸辺りにあるような気がする。透明で見えないけど。
「でも露骨に色気を売りにするのも高校の文化祭と考えると問題ある気もするなぁ」
透の言う通り、あくまで学校行事で露出を増やしすぎるのもまずい。たしかさっき先生から貰った要項でも過度な露出はダメって書いてあったはず。えーと……あった。
「ここに露出に関する規定があるわね。衣装のチェックがあるみたい」
「ホントだ!じゃあお色気路線はダメだね!正直あってる気はしたけどなぁ。じゃあどうしようか?」
「着物はどう?アタシ、日本舞踊やってたんだけど」
「日本舞踊⁉いいじゃん、いいじゃん!ならパフォーマンスもそれでいかない?」
そういえばクラスメイトに日本舞踊をやっていたことは言っていなかったような気がする。前世からだから相当長くやってるし人様に見せても問題ないはず!
「いいわね!じゃあそれでいこうかしら。衣装は割と派手目な柄の着物で」
「じゃあそれで運営に連絡しておくね。衣装は運営で手配してくれるらしいし」
「悪いわね。細々した用事ばかり頼んでしまって……」
ミスコン参加者の付き添いなんて裏方も裏方だ。誰かがやる必要があるとはいえ少し申し訳ない。
「いいの。私は個性柄ミスコンなんて出れないし、少しでも手伝いたいなって思ってたの。だから気にしないで!」
その後もある程度話会って方向性が決まった時に外で練習していたダンス隊が帰って来た。なんだか皆疲れているみたい。
「おかえり~。疲れてるみたいだけど大丈夫?」
お茶子と梅雨ちゃんに尋ねる。
「疲れたよー……」
「思ったよりも三奈ちゃんがスパルタだったわ」
三奈がスパルタとは意外だ。あんまり厳しく言いそうな子じゃないのに。
「ミスコンの方はどんな感じ?パフォーマンスとかするんだよね?」
「松本!パフォーマンスならストリッほげっ!」
「駄目よ、峰田ちゃん」
お茶子は純粋な疑問だったけど、峰田のはアウトね。梅雨ちゃんがぶっ叩いてくれて良かったわ。
とりあえずA組を代表してるわけだしある程度決まって良かったわ。
翌日以降もアタシたちはミスコンの準備に掛かりきりで、クラスの出し物の様子はたまに練習を覗くくらいしかでしか分からなかったが進んでいそうだった。特にバンド隊は練習がやっぱり大変そうだ。
アタシと透は化粧やヘアアレンジを練習したり、実際に衣装を着てパフォーマンスの練習をしたり意外と忙しい。写真撮影なんかもこなさなきゃならなかった。
しかも3年には昨年グランプリの絢爛崎先輩と準グランプリの波動先輩がいるし、B組にはCMに出演してた拳藤もいた。ライバルが沢山ね。
そうやって忙しく過ごしているうちに気付けば文化祭前日になっていた。ミスコンの準備は済んでいたのでクラスの出し物のリハーサルを観客として見させてもらう。明日の本番では準備やらなにやらで見れそうもない。
「いいわ!すごくいい!バンドもダンスも演出も素晴らしかった。ね、透」
「うんうん!これならばっちりだよ!」
アタシと透はべた褒めだった。練習の成果が良く出ていてとても素人がやっているものとは思えないくらいだったわ。
「そう言われると照れるな……」
「練習した甲斐があったな!」
「これなら本番も成功間違いなしだね」
その後も通し練習を見させてもらった。夜9時になるとハウンドドッグ先生が怒りながらやってきて強制的に下校させられる。
「じゃあ皆、アタシはもう寝るわね」
「もう⁉早くね?」
「夜更かしは美容の天敵なのよ、お馬鹿さん」
アタシはそう言って部屋に戻る。
「そっかミスコンだもんな……」
「麗しき女の戦い……」
「応援してやらねえとな。二人だけで戦ってるわけだし」
後ろでそんな会話が聞こえて口角が上がってしまうアタシだった。明日は頑張らきゃね。