会場は観客の声援によって盛り上がっていた。そして、会場の中央には一人の男が立っていた。
「さぁ!皆さん、ついにこの日がやってきました。オーシャンバトル!千年ぶりの開催で会場は大いに盛り上がってまいりましたぁ!」
男の掛け声によって、さらに観客たちが盛り上がる。
『うぉぉぉぉ!』
「今回は私、トリトーンが審判と司会を務めます。よろしくお願いします」
トリトーンは一礼をし、司会を続けた。
「さて、前フリはここまでにし、一回戦の戦士を紹介しましょう!一回戦は双璧師弟対決!アトランティスを十万の大軍から護り抜いたという伝説を持ちながらも、禁忌を犯し深淵に堕とされた最強元双璧の戦士、リヴィアタン・クレイ!そして、師匠リヴィアタンから双璧の術を習い、最強の双璧を受け継いだ双璧戦士、セラ・クロッソ・シーラカンス!」
司会の紹介と共に師匠が入場してきた。師匠の姿はあの日ぶりで、相変わらず殺気が凄まじく、俺と師匠の間には緊張感が漂っていた。
「では、一回戦。始め!」
ポセイドンの掛け声と共にゴォォォンとドラが鳴り響いた。
お互い動かず、様子を見合っていた。
『あれが…父さん?全く動かないけど』
「師匠が動かないのは、イメージしているからだ」
『イメージ?』
「あぁ。何万通りというイメージを繰り返し、最適な戦い方をする。それが師匠の戦い方だ」
『じゃ、どうすれば…』
唯一、師匠に勝てる可能性があるとしたら、師匠にイメージをする隙を与えないことだ!
「イメージをする前に仕掛ける!」
俺は地面を強く蹴った瞬間、脚に加速術を素早く展開し、師匠に一気に攻め込んだ。
「はぁぁぁ!」
「加速術か…」
師匠に隙を与えないように攻撃をするが、師匠はかわしていく。
「ほう?あの日に比べて少しはまともになったか」
「あんな惨めな思いは、もうしたくはない!俺だって、あなたを倒すために強くなる!」
師匠の左上腕に蹴りを入れた。
「入った!」
「確かにお前は強くなっている。だが、格闘だけじゃ俺には勝てないのはお前が知ってるだろ?」
「ッ…!?」
蹴りを入れた左上腕をよく見ると、上腕に魔力が集中しているのがわかった。俺はそれが危険なものであると察し、すぐに間合いを取ろうとしたが、師匠の右腕が俺の脚を強く掴んでいた。
「加速術、肉体強化発動」
「まずい!」
俺が腹部に魔力を集中させた瞬間、師匠の蹴りが入って、そのまま飛ばされ、壁に叩きつけられて倒れた。
「つっ……」
相変わらず一撃が重く、吐血してしまった。
『セラ、大丈夫!?』
「だ、大丈夫だ……」
肋骨が折れているが、治癒術をかければまだ動ける。俺はよろめきながら立ち上がり、治癒術を施した。このままでは勝ち目がどんどん無くなってしまう。良い案はないかと思っていると、アオが声をかけてきた。
『……セラ、代わって』
「どうした…急に」
『いい作戦を思いついたの』
「作戦?」
俺はアオの作戦の内容を聞いた。
『……どう?』
「流石だな。その作戦、やってみる価値はある」
『よし、じゃあやろう!』
俺は師匠に勝つため、アオの作戦を実行することに決めた。
「どうした?諦めて、もう終わるか?」
「いや、まだ終わりません!」
俺は加速術を使って動きを早くし、腰のポーチから煙玉を数個取り出して地面に叩きつけた。そして、精神をアオと入れ替えた。
「煙幕!?視界を遮ってきたか」
「クジラの視界は人間よりも悪いと聞く」
「なっ!?」
次の瞬間、彼女は師匠の腰に素早く蹴りを入れ、煙幕の中へと姿を消した。
「それに、この歓声ならクジラ特有の反響も聞き取りづらい!」
アオは次々と攻撃を繰り出し、煙幕の中に姿を消すのを繰り返した。俺は彼女が早く動けるように、肉体強化と加速術を重ねていく。
『これならいける!』
「もらったぁぁぁ!」
これで決めてやる!とアオと俺は拳に魔力を集中させて、師匠に叩き込もうとしたその時だった。
「まだ、弱いな」
『「なっ!?」』
師匠は俺たちの攻撃を見破り、瞬時に腕と頭を掴んで地面に叩きつけた。
「俺の弱点を見破ったのは流石だ」
「……ぐっ」
俺たちの頭を掴んでいる師匠の手が徐々に強くなっていく。
「このまま、お前の頭蓋骨を潰す」
まずい、このままだと師匠にやられてしまう。他に手はないのかと考えるが思いつかず、徐々に師匠の殺気と力に気圧され、諦めかけた瞬間、急に俺の意識がプツリと切れた。
「もう終わりだな」
父さんは徐々に手に力を入れていく。嫌だ、終わりたくない…セラと出会ってからここまで来たんだ。目の前には会いたかった父さんがいる。
手と足は動く。あとは気持ちだけだ!動け、動け、私の身体。
「…だ」
「ん?」
「まだ終わらない!」
「!?」
私はお父さんの腕を力強く掴み、少しずつ頭を離した。
「どういうことだ?セラの意識は飛ばしたはず。まさかアオ……」
「……はは、やっと呼んでくれたね。お父さん!」
「なっ!?」
私は腕に魔力を全集中し、力強く投げ飛ばした。
「……はぁ、はぁ。お父さんがどんな理由で行方不明になったのかは知らない。でも、お父さんを思って慕っていた……私のセラを傷つけることは許さない!」
私は魔力を練る姿勢になり、魔力を練り始めた。
なんだろう、この感覚。湧き水のように魔力が溢れてくる。
「はぁぁぁ!」
魔力が波のように現れ、私を包み込んだ。
「この魔力量、まさかお前、覚醒したのか……」
「行くよ、父さん」
私は素早く間合いを詰め、下から拳を突き上げようとした。
「はぁぁ!」
「っつ…早い…!?」
父さんは素早く防御の術を展開したが、それは私の狙い目だ。どんなに防御が強くても、強い攻撃を与え続ければ、防御に使う魔力を削ることができる。
父さんに攻撃の隙を与えない、もっと、もっと早く!攻撃を与え続けて、やっと防御の術にヒビが入り始めた。
「これで決める!」
「させるかぁ!」
父さんは手刀で私の拳を叩き落そうと振り下ろした。
ドゴォン!と凄まじい音が鳴り響き、辺りに土煙が広がった。そして、その場に倒れていたのはアオで、立っていたのはリヴィアタンだった。
「はぁ……はぁ……お前たちがこの短期間でここまで強くなるとはな。だが、この戦いは俺が……」
リヴィアタンは勝利を確信し言いかけたその時、アオの姿が急に消えた。
「なっ!?」
リヴィアタンの足元の地面が割れ、下からアオが現れた。
「はぁぁぁぁ!」
リヴィアタンは防御の術を展開するが、アオの拳はリヴィアタンの防御術を突き破った。そして、その拳はリヴィアタンの顎に直撃した。
私の拳を直撃を食らった父さんは、身体を動かすことも出来ず、そのまま後ろへ倒れた。
「はぁ……はぁ…」
「くっ、あの状況で
「父さんと戦うって知らされたとき、セラや皆にバレないように作戦を練ったんだよ。父さんの資料を全て読んで、何万通りの作戦を考えた」
「……そうか。審判」
父さんは満足そうな表情をし、審判に話しかけた。
「俺はもう動けない。ギブアップだ」
「……勝者、セラ・クロッソ・シーラカンス!」
トリトーンの掛け声により、会場は大きな歓声に包まれた。
父さが医療班に運ばれようとしたとき、私に声を掛けてきた。
「アオ、後で医務室に来い。そこで、話すことがある」
「……分かった」
「お前の中で眠っている、セラも一緒にな」
父さんがそう言うと、そのまま医務室に運ばれていった。