終わってる世界で都合の良いエネルギーがあるなら好きに使っていいじゃない   作:AmanatuTaruTaru

3 / 3
新エリー都こそこそ話
博士はホロウで日夜開発に励んでいるが彼は傍から見ると非道なマッドサイエンティストの行いをしているためか原作再現を徹底的に施した作品に毎日のように反逆されているぞ
光の巨人に変身できたのも最初の起動実験と旧都陥落の時だけだ!
模造ヒーローたちからは基本カス扱い食らってるけど自業自得だから是非もないネ


我ニ敵ナシ

一言で言うなら廃墟と化した都市

目の前に広がる光景を言葉に表すならそうとしか言いようがないだろう

 

人っ子一人存在せず、青空を遮る雲は日中であるにも関わらず薄暗い

砕けたアスファルトの道路

時間経過で植物に浸食されたビル群

錆まみれとなった車両や看板

それらはかつての文明の痕跡をかろうじて残しているだけの諸行無常を感じずにいられない

 

しかし、そのような世界が一瞬だけブレた

ほんの一瞬だ。常人には何が起きたかわからない

しかしその一瞬で垣間見えた者には「0」と「1」の数字の羅列で世界が構成されていると分かるはずである

 

バーチャルリアリティ空間

すなわちこの廃墟の世界は現実のそれではなく、限りなく現実に近づけた仮想の世界なわけだ

そんな仮想の世界は地震のような振動が一定の感覚で引き起こされ、その度に世界がブレ続けている

いや、ブレるだけではない

かつては人が住んでいたと思わせる廃墟のビルが真っ二つに引き裂かれる

乱雑に置かれた車両が黒い羽に吹き飛ばされてバラバラに砕ける

 

二つのナニカがぶつかり合う度に世界が耐えられないように軋んで悲鳴を上げている

悲鳴の数だけで数字の羅列で構成された世界が崩壊し、壊滅に追い込んでいく

 

そうした叫びを世界の外から見つめている者たちがいる

いや、見つめるだけではない

なぜなら彼らは仮想世界を作り上げた技術者たちだからだ。鬼気迫るような顔をしながらデータの収集と世界が壊れないように次々とアップデートを繰り返しながら手元にあるキーボードを打ち込み続けている

彼らの頑張りがあるからこそ、仮想世界は未だに保っていられることを二つのナニカはご存じではない

 

「おいおいおい嘘だろ!?!?この前理論上は光の巨人の顕現でも耐えれるぐらいにアップデートしたばかりだぞ!!??」

「口動かすより手動かせぇ!!このままだと空間の復帰が間に合わずにシャットダウンしてしまうぞ!」

「あの二人の戦いだけで光の巨人よりも負荷かかってんのかよありえねぇだろ!」

「雅課長…素敵…カッコいい…濡れるッ!」

「虚狩りが二人でこれかよ!!もうホロウなんて怖いもの無しだろ!!」

「データ処理追いつかないぃぃぃ!頭ぶっ壊れりゅぅぅぅぅう!!」

「ワタワタンナナアナア!!(1351箇所のデータ破損!334のデータ破損!65箇所データ復帰!)」

 

もはや阿鼻叫喚の地獄絵図である

人もボンプも一心不乱に仮想空間の維持を務めていたが、空間内のひとりの剣士とひとりの術士が最後の一撃と言わんばかりに気を高め、構えを取る

この時技術者一同の考えが一合一句一致した

『あ、終わったわ』と

 

 

 

 

 

 

 

「うむ。訓練の後に新たな友とメロンパフェを食べる修行は格別だな」

 

さてはて我らが最強無敵の虚狩りにして星見雅は大変ご満足である

それはそうであろう。もはや新エリー都どころかホロウ内でも敵無しの死角のない無敵のアルティメット雅ちゃんである

常日頃から修行三昧の雅であるがここまで飛びぬけすぎていると訓練相手を探すのも一苦労

光の巨人にならなくてもその気になれば生身で音の壁を超えて縦横無尽に動き回ってエーテリアスを粉微塵にできるのだから彼女と互角に戦えるのは所属しているH.A.N.D.でも数人しかいない

もはや人間じゃねぇだろ。むしろ数人も訓練相手が務まる相手がいるのかよ

 

しかし世界は広い

雅がメロンパフェをパクパクと食べながら机と向かい合う相手は同じく虚狩りの称号を持つ同格の実力者である

新エリー都の中心街から遠く離れた山々に住まう修行者の総本山

雲嶽山の師範にして衛非地区にある適当観の道場主、その名は儀玄。そのバストは豊満であった

 

「こちらとしても弟子の見取り稽古も兼ねて悪くない結果だった。しかしあの施設も悪い事をしたな。しばらく休業になるそうだ」

 

バーチャル機器による戦闘訓練、それに類似したゲームを提供するHIAキャリアセンター

現在では『しばらく休業中』という看板が置かれているがそれもそのはず、虚狩りである雅と儀玄が新型のVR空間でのテストを兼ねた決闘を行ったからだ

ホロウ災害が今でも人々の脅威とされる中で都市の守護者と称えられ、例外無しに人類の頂点として与えられる肩書は軽いものではない

当然ながらHIAキャリアセンターに所属する全職員、更には全てのリソースを用いて全力で挑んだ総力戦となったわけだが結果は御覧の有様である

虚狩り同士の激突は仮想空間の維持すら耐えれるものではなく、機器の故障に加えてしばらくデータ取りと再検証にお休みを余儀なくされたようだ

 

「しかし惜しいな。お前さんの全力を引き出す事には出来たが例の巨人までは至れなかったか。お陰でウチの虎は不満げだな」

 

「むぅ~!不満どころか私、見てるだけで終わってしまいましたよ!私も虎ちゃんも不完全燃焼です!」

 

虚狩り両名は満足のいく戦いにお肌もツヤツヤなのだが儀玄の隣に座る小柄な虎っ子少女は近くにいる鉄球のような機械虎共々に不満げである

何せ継承されてきた虚狩りでも歴代最強と名高い雅と手合わせができると聞いてやってきたのに結果は師匠が楽しむだけで終わったのも当然だろう

儀玄の弟子である橘福福は大変ご立腹である。その胸は平坦であった

 

「仮にあのまま戦いを続けても私は巨人の力を使う事はなかっただろう。アレは力無き者たちを守護する光。それ以外に使う気はない」

 

「だ、そうだ。これは同意見であるし私も龍虎の力を使う気はなかったからな」

 

「えぇ~!?じゃあなんで私たちも連れてきたんですか~!」

 

「言っただろう?見取り稽古も兼ねていたと。お前さんも私の弟子ならいずれあのぐらいの域に達してくれなきゃ困る」

 

「い、いや…あれもう人外魔境とかそういう領域なんですけど…」

 

福福と言えども10年近くは雲嶽山で修行を重ねる門下生である

加えて現代の虚狩りである儀玄の愛弟子なのだから見た目の小ささ、愛らしさに反してその実力は軍部の精鋭部隊に勝るとも劣らない

しかしその弟子からしても師の至る領域は何と遥か遠く山のように高き事か。バストだって豊満である

 

「虎の乗り手ならなおのことだ。福福、お前さんは自分に足りない事を自覚するのは悪いとは言わんが背負わされてる力の大きさに足りるものがあるとも自覚すべきだな」

 

「そーは思いたいですけどお師匠様も雅さんも偉大過ぎて霞みそうですぅ」

 

「腐るな腐るな。せっかく都市部に来たんだから大好きな肉でも食っておけ」

 

大いなる力には、大いなる責任が伴う

格言というものはそれこそ何千年の昔から引き継がれているものだが、遥か昔の旧世界が滅び去る要因となった古代戦争が起きても尚も継がれ続けてきたものがある

虚狩りという決して軽くない座を継げるだけの力を有した以上はそれだけの責務が生じ、後先を考えずに力を振るえればそれだけの不幸を世界に撒き散らしてしまう

そういう意味では雅はその意味合いを理解している強者に相応しい理屈の持ち主である

ただでさえ敵無しの実力に加えてホロウ内であれば無敵に等しい光の巨人の使い手ながらも何処で使うべきかの力を弁えている

 

雅と別れた後は衛非地区に帰る前に地方ではあまり買えない土産や食材の買い出しである

師弟は次々と食材を買い漁っては持ち上げるがあまりの量に前が見えないほど積み重なる光景に思わず通行人たちはなんだなんだと振り返るほどである

小柄な福福ですら大量の荷物を積み重ねて歩きながらも荷物は微動だにしないバランス感覚に修行の成果というのがこれでもかと示されていると分かるだろう

 

「さすが新エリー都の中心街ですねぇ!こんなお肉、衛非地区だったらもっと高かったですよ!」

 

「土産と買い出しはこんなものでいいだろう。三日後に姉様の誕生日だからな…良かったな福福。今週は肉は食える機会が多くて」

 

「えへへぇ…雅さんと手合わせできないのは残念でしたがプラマイで言えばプラスなぐらいです!」

 

昔は姉妹揃ってコソ泥染みた生活をし、当時の雲嶽山の宗主に拾われてからは修行の日々

今では姉の儀降が次代の宗主となり、儀玄は師範として多くの弟子を持つ身となった

旧都陥落時には宗主である姉と自分含めての師範、多くの門下生と共にホロウへと向かう事となったが……

まーやることと言ったら人命救助とべたべたと鬱陶しい特殊なエーテルを消すぐらいしか仕事がなかった

 

見たことのないロボットやら生物兵器やらがエーテリアス相手に大暴れをしており、元々サブカルチャーの部類に詳しくなかったためか軍の新兵器か何かだと思ってたぐらいである

今では奇妙な知り合いであり、大いなる力を持ちながらも責務をちゃんと理解してるのか疑わしい博士の作品だと知った時は納得したものだ

人類の文明に終焉を告げ、人命の尊厳を等しく凌辱する災害の極地とも言うべきホロウを遊び場にするような生粋の狂人はさすがの儀玄とて理解の範疇外だ

善悪の区別が付いている

法についても理解している

しかし己の欲求を満たすためなら容易に倫理観を捨て去れる人間は果たして責任を背負える人物と言えるのか疑わしいものである

 

前宗主との合意とはいえ雲嶽山の秘宝を持ち出した事には思う事はあれどもその秘宝とて「五感と記憶を代償に精々虚狩りに迫れる程度の力を与える」という曰く付きの魔剣の部類である

「代償有りでホロウをなんとかできるわけでもない力しか与えられないとか時代錯誤じゃない?仕組みぐらいは知りたいからちょーだい♡」(意訳)

「儂もその辺どうかと思うから弟子に宗主継がせる前に厄介ものを引き取ってくれるならいいよ♡」(意訳)

これマジ?悪用しない条件込みとはいえそんな簡単に放り投げていいものなの?

 

儀玄も師範の座に就いてから「この伝統いるか?いらないだろ?無駄無駄無駄ァ!」と百害あって一利なしに等しい伝統をあっさり切り捨てる面もあるため、そういう意味では博士とは話が通じる面もある

似たものがあるからこそ危険性も理解している

魔剣「青溟剣」を持ち出す代わりに博士の作り上げた巨大な機械兵を雲嶽山に贈呈されたがアレとて強大すぎる力だ

単純な戦力面では星見雅の変身する光の巨人に匹敵し、そうしたものを作り上げて他者に譲歩できてしまう思い切りが良すぎる

 

儀玄とて不老不死の不死身ではないのだ。いつまでも現役ではいられない

弟子たちが健やかに育つ事を願いながらも巨大な力に振り回されず、悪意を持つ者をも跳ね退けるようになってほしい

 

愛弟子である福福は強大な力の片割れを任せている

任せられるだけの実力と心が備わっている

とはいえまだまだ若いし通わせてる学校でこの前の算術の点数からしてオツムが少し…結構……ちょっとばかり…………博士に相談してなんとかできないか聞いてみるか……

 

まぁ弟子たちが一人前になるのを信じながら儀玄は宗主である姉と雲嶽山の門下生に面倒ごとが降り注ぐ前に虚狩りの座を継ぐことであえて防波堤となったのだ

 

虚狩りの称号のお陰か新エリー都のお偉いさんが雲嶽山にちょっかいにかけることはない

代わりに面倒な調査依頼を任される事も多いが幸いにも後ろめたい匂いがぷんぷんするような代物も来ることはない

ご機嫌取り…とまで行かなくてもお偉いさんだってわかっているのだ

 

同じ虚狩りであり、もはや止められる者など存在しない勢いで突出した星見雅に対しての抑止力

それが儀玄の求められる役割であり、間違ってもいざという時に動けない事があってはならない

 

無論、そんなことが起きない事が一番である

そう思いながらも住処である衛非地区に戻ってこれた

新エリー都の都市部であるルミナスクエアに比べたら何とも雑多でこじんまりという印象が拭えない地方町

しかし儀玄はその町並みを好んでいた。雑多であるがそれ故に人が近しく生き、生命力を感じられる

 

三日後に備えた姉の誕生日は身内と適当観にいる弟子数人で行う予定だ

やろうと思えば雲嶽山の修行者全員で盛大に祝う事もできるが当主に就任しながらも慎ましく生きる姉はそのような贅沢は望まない

 

だと言うのにだ

どうやら衛非地区に戻って早々厄介ごとが舞い込んでくるのだから勘弁してほしいところだ

 

衛非地区の近くに存在するラマニアンホロウ

もはや見慣れた光景ではあるが視界を黒く塗りつぶさんとする半球は不快感と違和感を与え続ける

衛非地区には新エリー都の地方町ではあるが、同時にホロウ探索に必須と言える輝磁と呼ばれるエーテル侵蝕耐性資源の産地でもある

 

そういった重要な産地であるならホロウを監視する防衛軍も常駐している

何せラマニアンホロウは普通のホロウと違い、特殊なエーテル災害も引き起こす独自性を持っており、これに対処できるのは雲嶽山の修行者ぐらいなものだ

そんなホロウが活性変化の兆しを見せており、なんかべたべたとした感じの特殊エーテル「ミアズマ」が漏れ出している報告を受けた

このまま放置をしていれば当然ながら未曾有の大災害に至るのも想像に難くない

旧都陥落のような悲劇を二度も起きれば今度こそ人間の心は折れてもおかしくないのだから

 

「しばらく大人しいと思っていたが随分と急だな。それとも私がいない隙を狙ったか?」

 

「お師匠様!龍ちゃんも虎ちゃんもいつでも出れると潘さんから連絡が!」

 

「どのみちくだらん災厄を見過ごす理由もない。出るぞ!」

 

そうはさせぬと帰ってきたばかりだと言うのに衛非地区にある山に走る

ホロウではなく山に?という疑問はすぐに立ち消えるだろう

なぜなら二人の向かう山はなんと二つに別れ、その内部は今か今かと出撃を待つ巨大な蒼キ龍と白キ虎が鎮座しているからだ

 

儀玄は龍に、福福は虎に

それぞれ乗り込み、練り上げられた法術によって機械の獣たちの体は血流が巡るように唸りを上げ、咆哮を衛非地区に轟かせる

これこそが博士が作り上げ、雲嶽山に贈与された衛非地区を守護する鋼の王

機械に疎い二人ではあるが、法術によって動かす事ができるシステムによって第二の体として思うがままにできる

 

「よぉーしよーし!今日も龍王と虎王も元気いっぱいだぁ!朝から弟子一同で整備した甲斐があったもんだ!お師さんに姉弟子ィ!頑張ってくれよぉ!!」

 

パンダのシリオンである潘引壺は適当観の修行者にして料理人

普段は鋼の王を整備もする縁の下の力持ちでもある

その証拠に人格を有する龍の意思は法術を通して儀玄にも伝わり、調子はすこぶる良好であると感じ取れる

 

ならば憂い無し

問題の解決などさっさと終わらせ、今こそ王の力を発揮する時である

 

さぁさぁご覧あれ!

これこそが衛非地区を守護せし鋼の超機人スーパーロボット!!

 

「必神火帝!」

 

練り上げられた法術に龍の眼が輝く!

 

「天魔降伏!」

 

魔を滅し、命を守らんとする気高き意思に虎の闘志は天高く!

 

「龍虎合体!」「龍虎合体!」

 

荒れ狂うホロウを前にして太古の時代から語り継がれる四神を模した巨神が今、姿を現す!

 

「龍虎王!ここに見参!!」

 

蒼キ龍ノ超機人は操縦者に小難しいものを要求しない

必要とするのは雲嶽山の修行者として並外れた法術、実力、そして正義を成さんとする気高き意思!

その三つを兼ね備えた者にこそ超機人は自らを駆るに相応しき者として認める

 

「行くぞ福福!まずはホロウから漏れ出す鬱陶しいエーテルを纏めて抑え込む!」

「はい!お師匠様!!」

 

儀玄を通して龍虎王と呼ばれた超機人は術符を何百と展開し、それは活性化の兆しのあるホロウを包み込む

本来であれば例え修行者が100人いようが1000人いようが術符程度でホロウを抑え込む事は不可能だ

 

しかし超機人によって増幅された儀玄の術法は異次元の領域に達する

人の記憶を読み取り、蝕もうとするミアズマエーテルがホロウから漏れ出そうとするがその全てが術符によって遮断されている

後はホロウを活性化しようとしている内部の何かしらを降伏ごうふくせしめれば事態は解決するだろう

 

龍虎の巨神がホロウへと突撃し、衛非地区の住民たちはそれを歓声と応援と共に見届ける

我らが無敵の超機人スーパーロボット

それは人々の安寧を守護せし鋼の戦士

光の巨人とはまた別の、虚狩りに相応しき力は今日も平和を守るために戦い続けている




"音声ログデータの取得を確認。プロテクトの解除完了。お聞きになりますか?"

"これは…儀玄さんと市長さんの会話ログ!?なんでここに……うーん、どうしようお兄ちゃん"

"ホロウの僻地にあったログか…試しに聞いてみよう"

"了解。これより音声データの再生を開始します"




「メイフラワー、お前さんに一つ聞きたい事がある」

『ふむ?雲嶽山師範にして虚狩りの就任が決まった君に答えられるものがあるのか…と不安になってしまうね』

「茶化すな。お前さんでも分からない事は誰だってわからんだろう……例の博士の事だ」

『彼か…答えられなくはないが具体的にお願いしたいところではあるな。何せ彼のやらかし…んん、功績の数々はこちらでも計り知れないからね』

「やらかしでいいだろう、あの手の部類は。……虚狩りになるためにお膳立てされた功績積みをしていて嫌でも分かる。企業連中の魑魅魍魎とした政の世界をほんの表面でも垣間見た今、尚の事解せん。
なぜTOPSは…お前さんも含めてアレを野放しに等しい状態で放置しているのかとな」

『ほう?まるで博士に首輪をつけるか、もしくは捕まえる努力義務を怠っていると言いたげではないか』

「そう言ってる。確かに博士の対ホロウに開発した数々は暁光に成り得るものばかりだと科学に疎い私でも分かる。だが、アレは何処まで行っても己の好奇心を満たすだけにしか動かない狂人だ。たまたま救える人間がいたからついでとばかりに救われた人間がいただけで好奇心を満たすなら世界を壊せる引き金を引ける人間だぞ」

『まず一つ弁解させてほしいが博士の身柄の確保は前々から行われている。それこそ旧都が陥落する以前から彼の行動は見過ごせない事も多いからね。それでいて捕まえられないのは単純に彼の逃げ足が速い事だ。企業も彼の技術目当てに手段を選ばない方法も使っているがそれでも捕まえられないのが実情だな』

「だが、それは表向きだろう」

『ああ。私…そして企業の上位経営者は彼をパンドラの箱に例えている。もしくは…イースターエッグかな?』

「未来への贈り物?随分と洒落たな」

『はっはっは!君にもそう感じてもらうとは嬉しい限りだ!……話を戻そう。二つ目の弁解だが彼は世に謳われるような善人ではないが悪人ではない。自分なりの価値観と善性の線引きがある信用のある人間という部分があるからだ』

「そう言える根拠は?」

『星見雅君を知っているだろう?彼女が変身する光の巨人なんだがね…アレに変身するための道具を使う資格はどうも道具側が判断するらしく、その基準も…まぁなんというか…ヒーローの素質やら精神を見定めているようなんだ』

「随分と…曖昧だな…」

『現に彼がそう設定して作ったみたいだ。「もう私には使えないから好きに使いたまえ」…そう言い残してTOPSの会議中に突然現れて道具を放り投げるのは今思い出しても血の気が引くよ』

「つまり博士の手元から離れて企業の手持ちであったと?こうは言ってはなんだが当時の星見雅はまだ15か16だろう。よく企業も光の巨人の道具を彼女に渡したな」

『そこで資格の話に戻るのさ。何せ技術系企業が総力を挙げても何一つ解析ができない…TOPSの面目丸つぶれと言っていい代物だ。そこで使い手に成り得る者がいるなら藁にも縋る思いに等しいだろう』

「うんともすんとも言わない道具でいるよりも少しでも使われたデータが欲しいためか…」

『ま、今でも道具そのものの解析は進んでいるとは言えない。そしてこれは雲嶽山に送られた鋼の守護者にも通ずるものがある。私も詳しい事は知らないが、あれにも使い手を選ぶ機能があるみたいじゃないか』

「ああ……同時に法術も相当練り上げる必要もある。まともに動かせるのも私と姉様…後は数人がなんとか動かせる程度だろう」

『そこが彼の信用できる線引きたる証拠さ。光の巨人はホロウ内でしかまともに使えず、鋼の守護者はホロウ外でも使えるが歴戦の修行者ですらまともに動かせない。言ってしまえば"拘り"のようなものが強すぎるんだ』

「拘りか…確かにそのようなものは感じるが」

『聞いて驚きたまえ。彼が作り上げた数多の機械兵に生物兵器、つまり自我を持ち、知能構造体の試験に合格できるだけの知能も有した彼らの反逆率は実に9割超えだ』

「作った作品に裏切られるだけのダメ人間ってことか?」

『否定はしないが反逆を行った機械兵のベース人格が…うむ。君はヒーロー番組や漫画を知っているかな?ああいう真っ直ぐかつ正道な精神が多いのだよ』

「その手の娯楽は縁のないものでな…」

『それはともかくとして、彼は正義のヒーローを作っては裏切られる事を繰り返すわけだが、それを込みとしての拘りで作っているわけだな』

「理解できるようなできないような…お前さんが博士を個人として信用するに値するとは理解した。だが、TOPSまで放置する理由にはならんと思うが」

『そうだな……気が滅入る話になってしまうが、ホロウ災害を防ぐ事ができず、年々と人類の安住の地も失われるばかりだ。新エリー都という新しい都市の建造こそ出来たがこの都市だって10年後20年後、無事でいられる保証がない』

「……」

『加えて今の人類文明はそのホロウによって生かされてる。エーテルという摩訶不思議なエネルギー源こそが今の人類の命綱であり、仮にホロウを未来永劫消し去る方法が見つかっても人類にそれを手に取る事は…できないだろう』

「人類を滅ぼす要因こそが人類を生かす蜘蛛の糸か。皮肉な話だな」

『まったくだ。……だが、博士の作る作品は違う』

「?」

『彼の作る作品はホロウ内部を前提にしたエーテルで満たされた空間でこそ力を発揮する。それは光の巨人が証明していることだが……ホロウ外でも使える事が示唆されているのさ』

「なんだと?」

『今までは機械兵を始めとした物理的に実在するものに限られていると思い込んでいたが…もし彼の作り続けた作品がホロウ外でも…ホロウが存在しなくなった後でも使えるとしたら…それは文明に対する福音になりえると思わないかね?』

「そうか…だから未来への贈り物イースターエッグか…」

『その通り。彼の異常なまでの拘りの強さからして無意味にホロウ外でも使える機能を用意しておく必要はないはずだ。ホロウを遊び場にする困った奴だが……その実、彼には好きに開発させたほうが未来は明るいと言うわけさ』

「……やれやれ。博士も大概な輩だと思ってたが企業もお前さんたちも清濁を飲み込むにしても恐ろしい傑物だよ」

『虚狩り就任、改めておめでとう。儀玄君、君の役割は光の巨人を担う星見雅君への対抗策……そして私個人からのお願いとしては未来への贈り物イースターエッグを悪者の手に取らせない事だ』

「ふん、大した奴だよメイフラワー。このような話を聞いて断れる奴がいるなら見てみたいところだ」




"以上、会話ログの再生を完了いたしました"



追記:
姉弟子は「私たちも~」と言っていますが鉄球ロボの虎威には虎王の遠隔人格を搭載しています
なのでVR空間であれば疑似的に龍虎王の搭乗も再現可能であったわけです
まぁそんなことしたら光の巨人の顕現も合わせてHIAキャリアセンターが負荷で文字通り大爆発しますが
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。