■元カノに未練たらたらの女✕女の話見てぇ!! 作:あばなたらたやた
連邦生徒会長失踪により学園都市キヴォトスを支えていたサンクトゥムタワーが停止した。これにより、これまで「お遊び」で済んでいた争いは、今や再生不可能な傷を刻み始めた。
各勢力はそれぞれの思惑を胸に戦闘を開始し、闘争の熱は封印を解き放つ。オーバーテクノロジーとロストテクノロジー、街談巷説、オカルトが次々と目を覚ます有様だった。
私は――元鞘カノは、そんな混沌の只中で『トリニティ総合学園の正義実現委員会の尖兵』として、争いに身を投じることになった。
【チャプター①:壁の向こうで、もう一度】
トリニティ本部、作戦司令室。
柔らかな照明の下、大きなホログラムスクリーンが浮かび上がっている。桐藤ナギサは白い制服をきっちりと着こなし、天使の輪のような光輪を背に、穏やかな微笑みを浮かべながら二人を見下ろしていた。
「二人とも揃いましたね。……お疲れ様です、カノさん、イチカさん」
ナギサさんは優しく、しかしどこか甘く響く声で語り始めた。丁寧に、まるで大切な恋人に説明するかのように。
「まずは状況を整理いたしますね。本日未明、トリニティ資源集積拠点『セラフィム・リザーブ』が、ゲヘナ所属の過激派集団『温泉開発部』によって襲撃を受けました。彼らは地下温泉資源の権利を主張し、力ずくで我々の自治区に侵攻してまいりました」
ナギサは軽くため息をつき、指先でホログラムを操作する。画面に映し出されたのは、荒れ果てた採掘現場と、でたらめに掘削された大地の傷跡だった。
「温泉のためなら地形すら変える、だそうです。まったく……野蛮で、卑劣で、救いようのない暴力集団です。文化も秩序も理解せず、ただ自分の欲望を満たすためだけに他者の領土を荒らす。こんな連中にトリニティの資源を好き勝手に使われるなど、許されるはずがありません」
彼女は穏やかな笑顔のまま、しかし目だけは冷たく細めていた。
「そこであなた方にお願いしたい任務は以下の通りです」
ナギサは指を一本ずつ折りながら、二人にだけ特別に教えるように説明を続けた。
「第一に敵が物資を運送している大型輸送ヘリの撃墜。第三に、資源集積拠点内の防衛設備の破壊。第四に、温泉開発部が投入した新型大型採掘兵器『
ナギサはそこで一旦言葉を切り、二人を交互に見つめた。特に私の顔を、少し長く。
「敵の最終防衛ライン『壁』を突破してください。あの壁の向こう側が、彼らの本拠地となっています。突破さえできれば、こちらの勝利が大きく近づくでしょう」
彼女は柔らかく微笑みながら、しかしその声には絶対の自信と、敵への深い侮蔑が混じっていた。
「カノさん、イチカさん。どうかご無理はなさらないでくださいね。とはいえ、相手はただの蛮族です。あなた方二人であれば、十分に余裕をもって任務を完遂できると、私は信じております」
ナギサは軽く手を胸に当て、優雅に頭を傾げた。
「補給と情報は随時、私の方から送らせていただきます。何か困ったことがあれば、いつでも仰ってください。私は……あなたの無事を、誰よりも願っていますから」
最後の言葉は、穏やかでありながら、僅かに熱を帯びていた。
「では、行ってらっしゃいませ。無事に帰ってきたら……また、ゆっくりお話しましょう?」
ナギサは二人に微笑みかけ、ホログラムを消した。その瞳の奥には、誰にも見せない、深い執着が静かに渦巻いていた。
ナギサによるブリーフィングを終えた私は、イチカと共に正義実現委員会の武器庫へ向かった。
分厚い防爆扉が低い駆動音を響かせながら左右に開く。
中に広がっていたのは、整然と並ぶ火器、弾薬、補助兵装。冷えた金属の匂いと、油の混じった独特の空気が鼻をくすぐった。
天井の白い照明が、無数の銃器に反射して鈍く光っている。
私は装備ラックの前で立ち止まり、一つずつ武装を身につけていく。
右肩に拡散バズーカ。
固定用アームが肩へ噛み合い、重い振動が骨まで伝わる。
左肩に追跡型レーザードローン。
小型ユニットが静かな電子音と共に起動し、私の肩の上で淡く青い光を灯した。
右手にバーストライフル。
左手にバーストサブマシンガン。
両手に馴染む重量を確かめるように、軽く握り直す。
悪くない。
私は隣で装備を選んでいるイチカへ視線を向けた。
「イチカはどうするの?」
イチカは壁に立てかけられていた長身のスナイパーライフルを軽々と持ち上げ、肩に担ぐ。
その姿は、私みたいな重武装とは対照的なくらい軽い。
「うーん、機動力重視の狙撃っすかねぇ」
イチカはスコープを覗き込みながら、いつもの気の抜けた調子で笑った。
「できるだけ身軽でいきたいんで、これ一本で」
私は少し笑って肩をすくめる。
「なら私は前衛で囮だね」
「そうっすね」
イチカがにやっと笑う。
「派手に引き付けることを祈るっすよ」
「任せて」
装備確認を終えた私たちは、そのまま戦場へ向かった。
荒野を走る装甲車の窓の向こうでは、遠くで黒煙がいくつも立ち上っていた。
地面は爆撃の跡で抉れ、熱気を帯びた風が砂塵を巻き上げている。
戦場が近い。
通信機から電子音が鳴った。
『二人とも、聞こえますか?』
透き通るような声。
ナギサだった。
イチカが思わず眉を上げる。
「ナギサ様? なんでオペレーターなんかやってるんすか」
一瞬の間。そして、淡々とした声が返ってくる。
『上に立つ者の義務です』
「そ、そっすか……」
珍しく押されているイチカを見て、少しだけ笑いそうになった。
やがて装甲車が停止する。
ハッチが開いた瞬間、熱風と火薬の匂いが一気に流れ込んできた。
私は飛び降り、そのまま前方を見る。
敵影を確認。
赤茶けた岩場の向こうで、温泉開発部の部員たちが採掘機材を運搬している。
巨大なツルハシ。
掘削ドリル。
その周囲には武装した護衛部隊。
『オールウェポンフリー。排除してください』
私は深く息を吐き、両手の銃を構えた。
「了解。交戦を開始します」
次の瞬間。
地面を蹴る。
砂煙が爆ぜた。
私は低空を滑るように加速し、一気に敵陣へ飛び込んだ。
「っ!?」
敵が反応するより早く、引き金を引く。
バーストライフル。
バーストサブマシンガン。
乾いた銃声が連続して響き、火花と薬莢が雨みたいに散る。
最前列の部員たちは悲鳴を上げる間もなく、その場に崩れ落ちた。
止まらない。
敵の横を滑り抜ける。
振り向きざまに撃つ。
また一人。
また一人。
視界の先に、大型輸送ヘリ。
巨大なローターが轟音を上げ、砂塵を巻き上げている。
「見つけた」
私は一気に加速した。
跳ぶ。
機体の側面へ飛び蹴りを叩き込む。
金属が軋む。
機体が大きく傾いた瞬間、右肩のバズーカを展開。
「吹き飛べ」
轟音。
爆炎。
真っ赤な火柱が空へ立ち上がった。
『大型輸送ヘリの破壊を確認。残り五機』
「次へ行きます」
『大型輸送ヘリの破壊を確認。残り四機』
「……え?」
一瞬、動きが止まった。
通信から、イチカの楽しそうな声が聞こえる。
「撃破した?」
『簡単っすよ』
「流石だ」
次の戦場へ到着した時だった。
四機の大型輸送ヘリを守るように、四脚型の武装作業重機が待機していた。
重厚な装甲。
回転するマシンガン。
鈍く光るレーザーブレード。
私はそのまま突撃しようとして。
次の瞬間。
轟音。
閃光。
四脚重機が弾け飛んだ。
「……なんすか!?」
イチカの声が響く。
ナギサが即座に反応する。
『反応確認……ゲヘナ所属、便利屋68の鬼方カヨコです』
黒煙がゆっくりと流れる。
舞い上がった火の粉が、夜みたいに暗くなった空へ消えていく。
その爆炎の中心。
一人の少女が、静かに立っていた。煤ひとつ気にした様子もなく、銃を肩に担いだまま。
カヨコ。
彼女の視線が、真っ直ぐ私に向く。
懐かしい。でも、次の瞬間。
その視線がイチカへ移った途端、空気が変わった。
カヨコの眉が、わずかに歪む。
「……そっちの人は?」
私は答えた。
「元恋人」
「……そう」
短い返事。
イチカが気軽に手を振る。
「カノの知り合いなんすね」
カヨコが、ゆっくりと銃口を持ち上げる。
「元恋人」
そして。
感情のない声で告げた。
「——そして、貴方の邪魔者」
冷たい銃口が、真っ直ぐイチカを射抜く。
「今から貴方を殺す」
冷たい視線が私ではなく、イチカへ向けられる。
「元鞘カノの隣にいるべき存在は——私だから」
交流がみたい元カノは?
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桐藤ナギサ(孤立操作
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白石ウタハ(献身依存
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調月リオ(崇拝偏愛
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鬼方カヨコ(他者排除
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仲正イチカ(自傷憎悪