■元カノに未練たらたらの女✕女の話見てぇ!! 作:あばなたらたやた
ナギサによるブリーフィングを終えた私は、イチカと共に正義実現委員会の武器庫へ向かった。
分厚い防爆扉が低い駆動音を響かせながら左右に開く。
中に広がっていたのは、整然と並ぶ火器、弾薬、補助兵装。冷えた金属の匂いと、油の混じった独特の空気が鼻をくすぐった。
天井の白い照明が、無数の銃器に反射して鈍く光っている。
私は装備ラックの前で立ち止まり、一つずつ武装を身につけていく。
右肩に拡散バズーカ。
固定用アームが肩へ噛み合い、重い振動が骨まで伝わる。
左肩に追跡型レーザードローン。
小型ユニットが静かな電子音と共に起動し、私の肩の上で淡く青い光を灯した。
右手にバーストライフル。
左手にバーストサブマシンガン。
両手に馴染む重量を確かめるように、軽く握り直す。
悪くない。
私は隣で装備を選んでいるイチカへ視線を向けた。
「イチカはどうするの?」
イチカは壁に立てかけられていた長身のスナイパーライフルを軽々と持ち上げ、肩に担ぐ。
その姿は、私みたいな重武装とは対照的なくらい軽い。
「うーん、機動力重視の狙撃っすかねぇ」
イチカはスコープを覗き込みながら、いつもの気の抜けた調子で笑った。
「できるだけ身軽でいきたいんで、これ一本で」
私は少し笑って肩をすくめる。
「なら私は前衛で囮だね」
「そうっすね」
イチカがにやっと笑う。
「派手に引き付けることを祈るっすよ」
「任せて」
装備確認を終えた私たちは、そのまま戦場へ向かった。
荒野を走る装甲車の窓の向こうでは、遠くで黒煙がいくつも立ち上っていた。
地面は爆撃の跡で抉れ、熱気を帯びた風が砂塵を巻き上げている。
戦場が近い。
通信機から電子音が鳴った。
『二人とも、聞こえますか?』
透き通るような声。
ナギサだった。
イチカが思わず眉を上げる。
「ナギサ様? なんでオペレーターなんかやってるんすか」
一瞬の間。そして、淡々とした声が返ってくる。
『上に立つ者の義務です』
「そ、そっすか……」
珍しく押されているイチカを見て、少しだけ笑いそうになった。
やがて装甲車が停止する。
ハッチが開いた瞬間、熱風と火薬の匂いが一気に流れ込んできた。
私は飛び降り、そのまま前方を見る。
敵影を確認。
赤茶けた岩場の向こうで、温泉開発部の部員たちが採掘機材を運搬している。
巨大なツルハシ。
掘削ドリル。
その周囲には武装した護衛部隊。
『オールウェポンフリー。排除してください』
私は深く息を吐き、両手の銃を構えた。
「了解。交戦を開始します」
次の瞬間。
地面を蹴る。
砂煙が爆ぜた。
私は低空を滑るように加速し、一気に敵陣へ飛び込んだ。
「っ!?」
敵が反応するより早く、引き金を引く。
バーストライフル。
バーストサブマシンガン。
乾いた銃声が連続して響き、火花と薬莢が雨みたいに散る。
最前列の部員たちは悲鳴を上げる間もなく、その場に崩れ落ちた。
止まらない。
敵の横を滑り抜ける。
振り向きざまに撃つ。
また一人。
また一人。
視界の先に、大型輸送ヘリ。
巨大なローターが轟音を上げ、砂塵を巻き上げている。
「見つけた」
私は一気に加速した。
跳ぶ。
機体の側面へ飛び蹴りを叩き込む。
金属が軋む。
機体が大きく傾いた瞬間、右肩のバズーカを展開。
「吹き飛べ」
轟音。
爆炎。
真っ赤な火柱が空へ立ち上がった。
『大型輸送ヘリの破壊を確認。残り五機』
「次へ行きます」
『大型輸送ヘリの破壊を確認。残り四機』
「……え?」
一瞬、動きが止まった。
通信から、イチカの楽しそうな声が聞こえる。
『そりゃあもう、簡単っす』
次の戦場へ到着した時だった。
四機の大型輸送ヘリを守るように、四脚型の武装作業重機が待機していた。
重厚な装甲。
回転するマシンガン。
鈍く光るレーザーブレード。
私はそのまま突撃しようとして。
次の瞬間。
轟音。
閃光。
四脚重機が弾け飛んだ。
「……なんすか!?」
イチカの声が響く。
ナギサが即座に反応する。
『反応確認……ゲヘナ所属、便利屋68の鬼方カヨコです』
黒煙がゆっくりと流れる。
舞い上がった火の粉が、夜みたいに暗くなった空へ消えていく。
その爆炎の中心。
一人の少女が、静かに立っていた。煤ひとつ気にした様子もなく、銃を肩に担いだまま。
カヨコ。
彼女の視線が、真っ直ぐ私に向く。
懐かしい。でも、次の瞬間。
その視線がイチカへ移った途端、空気が変わった。
カヨコの眉が、わずかに歪む。
「……そっちの人は?」
「知り合い?」
私は答えた。
「元恋人」
「……そう」
短い返事。
イチカが気軽に手を振る。
「カノの知り合いなんすね」
カヨコが、ゆっくりと銃口を持ち上げる。
「元恋人」
そして。
感情のない声で告げた。
「——そして、邪魔者」
冷たい銃口が、真っ直ぐイチカを射抜く。
「今から貴方を殺す」
冷たい視線が私ではなく、イチカへ向けられる。
「元鞘カノの隣にいるべき存在は——私だから」
交流がみたい元カノは?
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桐藤ナギサ(孤立操作
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白石ウタハ(献身依存
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調月リオ(崇拝偏愛
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鬼方カヨコ(他者排除
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仲正イチカ(自傷憎悪