■元カノに未練たらたらの女✕女の話見てぇ!! 作:あばなたらたやた
「私達が負けるわけない! 私たちは最強だもんね!」
私がそう言った瞬間、カヨコは、ほんの僅かだけ目を細めた。
爆炎が彼女の横顔を赤く照らす。その表情はいつも通り静かなのに、長い付き合いだからわかる。
今の彼女は、少しだけ怒っていた。
少しだけ寂しそうで。
そして、どうしようもなく——本気だった。
「そうだよ、最強だった。そして今、再び最強になった」
カヨコが、一歩前へ出る。光学迷彩が起動し、その輪郭が夜の景色へ溶けていく。
「あの子のところに」
言葉と同時に、彼女の姿が消えた。
次の瞬間。
移動型重装砲台の左側面で爆発が起きる。
監視センサー。
照準装置。
ミサイルポッド。
弱点だけが、正確に破壊されていく。まるで最初から全部見えていたみたいに。
「昔みたいに」
今度は右側。
また爆発。
地雷散布装置。
副砲。
迎撃機銃。
次々と火花を散らし、沈黙していく。
私は思わず笑った。
変わっていない。
カヨコは昔から、そうだった。私が前へ進むために邪魔なものを、全部静かに消していく。
誰にも気づかれず。
誰にも見せず。
ただ、私だけが戦いやすいように。その愛し方だけは、一度も変わっていなかった。
「私だけ見て」
その言葉が、通信越しじゃなく、すぐ耳元で聞こえた。
いつの間にか、カヨコがすぐ隣にいた。
思わず笑ってしまう。
「見てるよ」
その一言だけで。
カヨコの目が、ほんの少しだけ揺れた。
次の瞬間だった。
『……正面装甲、熱源上昇!』
遠くで、ナギサの声が聞こえる。でも、今はもう必要なかった。
私は全部、わかっていた。
カヨコも、同じだった。
言葉はいらない。
視線だけで十分だった。
私が前へ出る。
移動型重装砲台の真正面。残った全火力が、一斉に私へ向く。ロケット。ミサイル。機銃。主砲。
全部。でも、それでいい。私しか見えていない。なら、打てる手はある。それを理解した瞬間、カヨコが消えた。
光学迷彩からの完全潜伏。
敵の視界から、存在そのものが消える。
それを悟らせないように私は真正面から弾幕へ突っ込んだ。
爆風。
火炎。
金属片。
全身が熱い。でも止まらない。その間に、カヨコが背後を取る。重装機動砲台の敏感な部分である背面に、レーザーハンドガンとレーザーキャノンが発射される。
『ダメージ限界、突破』
重装機動砲台からのシステムアナウンスが漏れる。監視センサー破壊、冷却装置破壊、弾薬供給系統破壊。
全部、わずか数秒。
私が引き付け、カヨコが殺す。
昔と、何も変わらない。むしろ——今の方が、噛み合っていた。
「カヨコ!」
「うん」
私は右肩のバズーカを展開した。同時に、カヨコのレーザーライフルが背部コアへ照準を合わせる。
呼吸すら、同じだった。
「——いくよ!」
「……当然」
轟音。
閃光。
二つの火線が、鋼鉄の怪物を貫いた。
一瞬の静寂。そして——壁の上すべてを揺らすほどの、大爆発。移動型重装砲台の中心部から炎が噴き上がり、その巨体がゆっくりと崩れ落ちていく。
たった数秒だった。あれだけ苦戦していた怪物が、もう動かない。
私は息を整えながら、隣を見る。
カヨコは煙の向こうで、静かに私を見ていた。
少しだけ。
本当に少しだけ。
嬉しそうに、笑っていた。
『重装機動砲台の破壊を確認。任務完了です。残敵掃討はこちらが手配した部隊が担当します。帰投してください』
ナギサからの通信を受け取って、カヨコに視線を戻す。
「助かった。ありがとう」
「いいよ。別に」
「そっか。戦場ではない場所で会えたら、話がしたいね。積もる話もたくさんあるだろうし」
「この世界にそんなものが残っているいるなら」
私は負傷したイチカを回収して、帰投した。
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