■元カノに未練たらたらの女✕女の話見てぇ!!   作:あばなたらたやた

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【チャプター①】壁越え④

 

「私達が負けるわけない! 私たちは最強だもんね!」

 

 私がそう言った瞬間、カヨコは、ほんの僅かだけ目を細めた。

 爆炎が彼女の横顔を赤く照らす。その表情はいつも通り静かなのに、長い付き合いだからわかる。

 今の彼女は、少しだけ怒っていた。

 少しだけ寂しそうで。

 そして、どうしようもなく——本気だった。

 

「そうだよ、最強だった。そして今、再び最強になった」

 

 カヨコが、一歩前へ出る。光学迷彩が起動し、その輪郭が夜の景色へ溶けていく。

 

「あの子のところに」

 

 言葉と同時に、彼女の姿が消えた。

 次の瞬間。

 移動型重装砲台の左側面で爆発が起きる。

 監視センサー。

 照準装置。

 ミサイルポッド。

 弱点だけが、正確に破壊されていく。まるで最初から全部見えていたみたいに。

 

「昔みたいに」

 

 今度は右側。

 また爆発。

 地雷散布装置。

 副砲。

 迎撃機銃。

 次々と火花を散らし、沈黙していく。

 私は思わず笑った。

 変わっていない。

 カヨコは昔から、そうだった。私が前へ進むために邪魔なものを、全部静かに消していく。

 誰にも気づかれず。

 誰にも見せず。

 ただ、私だけが戦いやすいように。その愛し方だけは、一度も変わっていなかった。

 

「私だけ見て」

 

 その言葉が、通信越しじゃなく、すぐ耳元で聞こえた。

 いつの間にか、カヨコがすぐ隣にいた。

 思わず笑ってしまう。

 

「見てるよ」

 

 その一言だけで。

 カヨコの目が、ほんの少しだけ揺れた。

 次の瞬間だった。

 

『……正面装甲、熱源上昇!』

 

 遠くで、ナギサの声が聞こえる。でも、今はもう必要なかった。

 私は全部、わかっていた。

 カヨコも、同じだった。

 言葉はいらない。

 視線だけで十分だった。

 私が前へ出る。

 移動型重装砲台の真正面。残った全火力が、一斉に私へ向く。ロケット。ミサイル。機銃。主砲。

 全部。でも、それでいい。私しか見えていない。なら、打てる手はある。それを理解した瞬間、カヨコが消えた。

 

 光学迷彩からの完全潜伏。

 敵の視界から、存在そのものが消える。

 それを悟らせないように私は真正面から弾幕へ突っ込んだ。

 爆風。

 火炎。

 金属片。

 全身が熱い。でも止まらない。その間に、カヨコが背後を取る。重装機動砲台の敏感な部分である背面に、レーザーハンドガンとレーザーキャノンが発射される。

 

『ダメージ限界、突破』

 

 重装機動砲台からのシステムアナウンスが漏れる。監視センサー破壊、冷却装置破壊、弾薬供給系統破壊。

 全部、わずか数秒。

 

 私が引き付け、カヨコが殺す。

 昔と、何も変わらない。むしろ——今の方が、噛み合っていた。

 

「カヨコ!」

「うん」

 

 私は右肩のバズーカを展開した。同時に、カヨコのレーザーライフルが背部コアへ照準を合わせる。

 呼吸すら、同じだった。

 

「——いくよ!」

「……当然」

 

 轟音。

 閃光。

 二つの火線が、鋼鉄の怪物を貫いた。

 一瞬の静寂。そして——壁の上すべてを揺らすほどの、大爆発。移動型重装砲台の中心部から炎が噴き上がり、その巨体がゆっくりと崩れ落ちていく。

 

 たった数秒だった。あれだけ苦戦していた怪物が、もう動かない。

 私は息を整えながら、隣を見る。

 カヨコは煙の向こうで、静かに私を見ていた。

 少しだけ。

 本当に少しだけ。

 嬉しそうに、笑っていた。

 

『重装機動砲台の破壊を確認。任務完了です。残敵掃討はこちらが手配した部隊が担当します。帰投してください』

 

 ナギサからの通信を受け取って、カヨコに視線を戻す。

 

「助かった。ありがとう」

「いいよ。別に」

「そっか。戦場ではない場所で会えたら、話がしたいね。積もる話もたくさんあるだろうし」

「この世界にそんなものが残っているいるなら」

 

 私は負傷したイチカを回収して、帰投した。

交流がみたい元カノは?

  • 桐藤ナギサ(孤立操作
  • 白石ウタハ(献身依存
  • 調月リオ(崇拝偏愛
  • 鬼方カヨコ(他者排除
  • 仲正イチカ(自傷憎悪
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