■元カノに未練たらたらの女✕女の話見てぇ!! 作:あばなたらたやた
壁越え作戦から数日後。
あれだけ激しい戦闘が行われたとは思えないほど、“壁”周辺は慌ただしく動いていた。
吹雪の中を行き交う輸送車両。
瓦礫を撤去する工兵部隊。
破壊された砲台を解体する整備班。
トリニティの旗を掲げた復旧部隊が、占領下に置かれた街区の再建を急いでいる。
壁は落ちた。
温泉開発部が築き上げた要塞は、今やトリニティ管理区域へと変わりつつある。でも、それは“終わった”という意味じゃない。
むしろここからが始まりだった。
占領地維持。
補給線再建。
治安管理。
残党掃討。
行政復旧。
壊すより、創り、守る方が遥かに難しい。
私は復旧護衛任務として、一人で壁周辺を巡回していた。
雪を踏む音だけが静かに響く。
右肩には拡散バズーカ。
左肩にはミサイルポッド。
両腰には予備弾倉。
いつもの重武装。
工兵部隊の護衛としては、少し過剰なくらいだった。でも。この場所では、“抑止力”が必要だった。遠くでは、工兵たちが壁面の修復作業を行っている。
温泉開発部特有の無骨な鉄骨構造は、少しずつトリニティ式の白い外装へ置き換えられていた。
鋭く威圧的だった要塞が、少しずつ“都市”へ戻っていく。その様子を見ながら、私はゆっくり歩く。
復旧部隊の生徒たちが、私を見ると視線を逸らした。
小声。
囁き。
聞こえないふりをしていても、耳には入る。
「……あれが」
「正義実現委員会の」
「壁越えした人……」
「猟犬……」
「違うって、暴力装置の方」
「でも味方見捨てたんでしょ?」
「敵と内通してるって噂も……」
私は足を止めなかった。
慣れている。
こういう視線。
こういう噂。
怖がられること。
距離を置かれること。
それ自体は昔からあった。でも最近は特に酷い。
壁越え作戦以降、一気に増えた。
私は歩きながら、小さく息を吐く。
……猟犬に暴力装置。更に敵と内通して仲間を見捨てた。
「好き勝手言ってくれるなぁ、もう」
でも、完全に否定できない言葉が混ざっているから苦笑いしかできない。
カヨコと共闘した。
敵だったはずの彼女と。しかも私は、それを完全には拒絶するどころか喜んだ。
イチカが倒れ、死にかけた時、助けてくれたのはカヨコだった。もし彼女がいなかったら私はあの場で死んでいたかもしれない。あるいは、重装機動砲台を突破できなかったかもしれない。
それは事実だった。でも、だからといって、“正しい”わけじゃない。
正義実現委員会の人間が、ゲヘナの便利屋と共闘。しかも相手は私の元恋人。
噂になるには十分すぎた。
私は壁上の通路へ出ると吹雪が頬を叩く。見下ろせば、復旧中の街区で人が動いていて物資が運ばれている。
私は、その景色を静かに見下ろした。
吹雪の音だけが響く。
「透明だ。気分が良い」
その時だった。後ろから、少女たちの声が聞こえる。
「でも……助かったのは事実だよね」
「え?」
「壁越えの時、あの人が前に出なかったら私たち死んでたし……」
「でも怖いよ……」
「うん、怖い」
一拍。
「でも、“必要”なんだと思う」
私は振り返らなかった。壁上通路をゆっくり歩きながら、白い息を吐く。吹雪の向こうでは、復旧部隊が黙々と作業を続けている。
誰も私に近づかない。誰も軽々しく話しかけてこない。でも、視線だけは感じる。
恐怖。
警戒。
緊張。
そして——期待。
厄介事が起きたら、あれを向かわせればいい。
敵が来たら、あれを出せばいい。
あれなら壊してくれる。
あれなら突破してくれる。
そういう視線。
私はその視線を、不思議と嫌だと思わなかった。むしろ安心した。役割だけ果たせばいい。
その方がずっと楽だった。
必要だから使うし、怖いから距離を取る。でも、結果を出す限りは切り捨てない。
その割り切った関係が、今の私にはちょうど良かった。
私は壁の外側を見下ろす。
白い雪原。
遠くで動く輸送車両。
再建されていく防衛設備。
秩序。
管理。
統制。
その光景を見ながら、私は小さく笑う。
「……居心地いいな」
自分でも少し驚くくらい、自然な本音だった。
トリニティは賢い。少なくとも、上層部は。
特にナギサは。
私を“正義”として扱わない。
英雄としても扱わない。ましてや善人だとも思っていない。
でも利用価値がある限り、最大限活用する。その代わり、成果を出す限りは庇護する。
非常に合理的だった。だから動きやすい。
トリニティという巨大組織の庇護下。
正義実現委員会という大義名分。
行政復旧。
治安維持。
対テロ制圧。
その名目さえあれば、大抵のことは許容される。
多少強引でも。
多少危険でも。
多少血塗れていても。
“結果”さえ出せばいい。
実にクレバーだった。
感情論で縛られず理想だけで運営されていない。
必要だから使うし、危険だから管理する。
その冷たさが、逆に居心地良かった。
今くらいが丁度いい。
怖がられるくらいでいいし、利用されるくらいでいい。距離を置かれるくらいが、安心する。
その方が間違えないし、その方が壊れない。
その方が、誰かを期待させずに済む。
私は歩く。
吹雪の中を。
トリニティの猟犬として、暴力装置として、必要だから使われる存在として。
その在り方は、とても静かで。
とても合理的で。そして少しだけ、心地良かった。
交流がみたい元カノは?
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桐藤ナギサ(孤立操作
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白石ウタハ(献身依存
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調月リオ(崇拝偏愛
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鬼方カヨコ(他者排除
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仲正イチカ(自傷憎悪