■元カノに未練たらたらの女✕女の話見てぇ!! 作:あばなたらたやた
私は床を蹴った。
爆音。
機械獣のエネルギーブレードが叩きつけられ、さっきまで立っていた場所がまとめて吹き飛ぶ。
熱風が頬を焼いた。
床が融解している。
まともに受ければ装甲ごと蒸発する。
「うわっ、床なくなったんだけど!?」
「安心したまえカノ君、まだ通路は半分残っている!」
「半分しか残ってないんだよ!」
ウタハは楽しそうに笑っていた。
完全に遊園地の絶叫マシンに乗ってるテンションだ。いや、こっちは命がかかってるんだけど。
「カノ!」
ウタハの声。
同時に、青白い閃光が通路を貫いた
《カラサワ》。
超高出力レーザーが大型機械獣の側面装甲へ直撃して、装甲が赤熱する。火花が噴き出す。けれど、浅い。
分厚すぎる。
「硬っ……! 何この装甲、趣味悪!」
「真正面から削る相手じゃない! というか削れる前提で作ってない!」
私は瓦礫を蹴り飛ばしながら叫ぶ。
「イチカ!」
「もうやってるっす! というか二人ともテンション高すぎっす!」
直後、乾いた狙撃音。高所へ移動していたイチカの弾丸が、機械獣の右脚関節へ突き刺さる。
火花と共にわずかな姿勢崩れた。その瞬間を逃さず、私は加速した。
前衛。
敵の視線を引き受け、真正面へ飛び込むと機械獣の赤いセンサーがこちらを捕捉した。
《THREAT PRIORITY UPDATED/脅威の優先度が更新されました》
「うわ、優先的に狙われた」
「モテモテじゃないか!」
「嬉しくない!」
次の瞬間、肩部砲門が展開した。
「来る!」
砲撃だ。
私は横壁へ飛び込む。背後で通路が吹き飛んだ。
衝撃波。
警報。
崩落。
施設全体が悲鳴みたいに軋む。その中を、ウタハが滑るように駆け抜けた。
「左腕、貰うよ!!」
「頑張れ!! 応援している!!」
パイルバンカーが炸裂する。
轟音。
超重量の杭が装甲へ突き刺さり、機械獣の左腕を強引に弾き飛ばした。金属片が雨みたいに降る。普通ならそこで止まる。でもウタハは止まらない。発熱警告を無視して、さらにカラサワを構える。
「浪漫は火力! 覚えておきたまえ!」
「その浪漫で施設ごと吹き飛ばさないでよ!?」
超高熱プラズマレーザーが至近距離から炸裂した。装甲が溶ける。機械獣が咆哮した。
直後。
耳障りなノイズが通信へ割り込んだ。
《――こちら、天才病弱幸薄美少女です!! ミレニアム特異現象捜査部のヒマリ!》
私は思わず眉を寄せる。ウタハが舌打ち混じりに応答した。
「今忙しい!」
《その敵性体は現在、デカグラマトン案件に指定されています!》
空気が変わる。
デカグラマトン。
その単語だけで、背筋が冷えた。通信の向こうで誰かが早口に続ける。
《対象コード確認! 現在交戦中の個体は、“第四機神セラフィム・ケセド”が生産した上級兵器です!》
「なにそれ。うわ、名前からして絶対ヤバいやつじゃん……」
「ふっ、いいじゃないか。燃えてきた!」
「そこでテンション上がるのやめて!?」
大型の機械獣が再びこちらを向く。赤熱した胸部装甲が、ゆっくり展開していく。内部で超高密度エネルギーが脈動していた。
嫌な予感というか、見た瞬間わかった。
アレは撃たせちゃダメなやつだ。
《高出力砲撃が来ます! 弱点は胸部砲撃口!》
「わかりやすすぎるっすね!」
イチカの狙撃が砲撃口付近へ直撃。けれど、エネルギー障壁に弾かれる。まだ足りない。
《砲撃直前のみ装甲開放を確認! 最大火力を一点集中してください!》
「つまり!」
私は走る。瓦礫を蹴る。爆風の中を突っ切る。
「口開けた瞬間にぶち込めばいいんだね!」
「雑だけど合ってる!」
「説明が脳筋すぎるっす!」
機械獣の胸部がさらに展開する。
眩しいほどの赤熱光。
エネルギー収束。
空気が震える。
施設全体が壊れ始める。
ウタハが笑う。本当に楽しそうに。
「いいね、そういう単純なのは好きだ! デートはこうでなくちゃ!」
「どんなデートだぁバカやろー!」
「少なくとも一般的ではないっす!」
カラサワの出力が限界まで上昇する。
警告灯が赤く点滅。
左腕のパイルバンカーも再装填完了。
イチカの声が通信へ響く。
「カノ先輩、三秒止めてください」
「了解!」
「軽っ!? もっとこう、命懸け感とかないんすか!?」
私は真正面へ飛び出した。
大型機械獣がこちらを見る。
砲撃口が輝く。
来る。
私は床を蹴り砕きながら突進した。真正面、至近距離。熱で視界が歪むそれでも止まらない。
ライフル連射。
センサー。
関節。
視界。
全部撃ち抜く。
「ほらほら、こっち見ろ!」
《TARGET LOCK/ターゲットロック》
「うわ返事した!」
大型機械獣がわずかに照準を揺らした。
その瞬間。
「――撃つっす」
轟音。イチカの超長距離狙撃が、砲撃口中央へ突き刺さる。
エネルギーが乱れる。
暴走。
そこへ。
「浪漫全開だァ!!」
ウタハのカラサワが火を吹いた。
青白い極太光線。
真正面から砲撃口へ直撃。流石は限界出力だ。空気そのものが焼けている。綺麗だ。
次の瞬間。
大型機械獣の胸部が、内側から爆発した。
閃光、轟音、衝撃波。
私は咄嗟に顔を庇う。爆炎が通路を飲み込み、熱風が全身を叩いた。
巨大な機械獣が後ろへ傾き、赤熱した装甲が崩れ落ちていく。
動力炉が明滅し――沈黙した。しばらく、焼けた金属が崩れる音だけが響く。
私はゆっくり息を吐いた。
「……生きてる」
「勝ったね!」
「いやぁ、いいデートだった!」
「絶対違うからね!?」
焼け焦げた空気の中、隣でウタハが満足そうに笑う。
「どうだい?」
向こう側、高所。
イチカがスコープを下ろしながら呟く。
「いや……普通にデートのテンションでやる戦闘じゃないんすよ、これ」
「でも楽しかっただろう?」
「認めたくないっすけど、ちょっとだけっす」
「ほら見たことか!」
「そこでドヤ顔しないでください!」
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