■元カノに未練たらたらの女✕女の話見てぇ!! 作:あばなたらたやた
警報が鳴り響く。
直後、会談区域全体が赤く染まった。
迎撃システムの起動。自動砲台展開。対地ミサイル発射準備。
明らかに歓迎されていない。
「これは酷いですね」
ナギサが冷静に言う。その声を聞きながら、私は前へ出た。自然な動作だった。考えるまでもない。
守る。
それだけだ。
私はバーストライフルを構える。
次の瞬間、遠方のビル群から砲撃が飛来した。
轟音。
爆発。
アスファルトが吹き飛ぶ。
「伏せて!」
私はナギちゃんの腕を掴み、横へ飛んだ。砲弾が着弾する。道路が抉れた。爆炎が視界を覆う。だが私は笑う。これくらいなら問題ない。
「砲撃部隊ですね」
ナギサが分析する。
「高層ビル群の上層部です」
「了解」
私はバーストライフルを構える。
爆煙の向こうにいる狙撃支援用の観測ドローン。砲兵指揮車両。レーザー誘導装置。
全部見えている。私は引き金を引いた。
バースト射撃。
三点。
三点。
三点。
観測機器が次々と破壊され、誘導システム喪失していく。
直後、砲撃精度が激減した。
「ナギサちゃん」
「なんでしょう」
「もう当たらないよ」
「頼もしいですね」
少しだけ嬉しそうだった。
私は前進する。
その時だった。
轟音と共に道路を突き破るように戦車部隊が現れた。
ゲヘナ製重戦車。前面装甲。多連装ロケット。機関砲。正面から戦えば面倒な相手だ。だが私は止まらない。
「目標確認」
右肩の拡散バズーカを展開。
照準。
固定。
発射。
轟音。
戦車先頭車両が吹き飛び、横転。爆発炎上した。後続車両が混乱する。その隙に私は突撃した。
距離を潰す。
加速。滑るように走る。
バーストサブマシンガンによる連続掃射。
センサー、照準器、履帯が脆い部分だけを正確に撃ち抜く。
爆発。
爆発。
爆発。
わずか数十秒で戦車部隊が沈黙した。
私は振り返る。
ナギちゃんは無事だ。
よし。
それだけで十分だった。
「順調ですね」
「うん」
私は笑う。
「今日は調子いい」
空が唸った。
嫌な音。
私は即座に上を見る。
「航空戦力」
ナギサが告げる。
雲の向こう。
爆撃ドローン群。さらに攻撃機。大量だ。普通なら面倒だ。普通なら。
「ナギサ」
「はい」
「耳塞いで」
「?」
私は左肩の六連装ミサイルを展開する。
マルチロックオン。
六機が発射。
ミサイルが空へ駆け上がる。そして連鎖爆発して空が燃えた。黒煙。火花。墜落。残った機体へライフルを連射する。
一機。二機。三機。
撃墜。撃墜。撃墜。
破片が雨のように降り注ぐ。まるで空そのものを撃ち落としたみたいだった。
私は肩を回す。
「終わりかな?」
「残念ながら」
ナギサは首を振る。
「終わっていません」
その瞬間、ビル群の奥から巨大な影が現れた。
重装甲自走砲、長大な砲身、分厚い装甲、完全に要塞だった。
「なるほど」
私は小さく笑う。
「最後の門番だ」
砲身がこちらへ向く。
警告音。
発射。
世界が白く染まる。
私はナギサを抱き寄せる。
爆風が背中を叩く。瓦礫が降る。でも傷一つない。
私は彼女を守り切った。
「大丈夫?」
「ええ」
ナギちゃんが私を見る。その瞳には不安より先に信頼があった。
それが少し嬉しい。
私は彼女を後ろへ下がらせる。
「ここで待ってて」
「無茶はしないでください」
「しないよ」
私は笑う。
「勝つだけだから」
そして前へ出る。
砲撃。
爆炎。
機銃掃射。
全部を突っ切る。
だって私の後ろにはナギサがいる。
それだけで十分だった。
誰が来ても。
何が来ても。
今日は負ける気がしなかった。重装自走砲の砲撃が大地を揺らす。
爆炎。
衝撃波。
瓦礫。
普通なら近付くことすら困難な火力だった。けれど私は止まらない。止まる理由がない。
後ろにはナギちゃんがいる。
前には障害物がいる。なら壊して進むだけだ。
私は瓦礫を蹴り飛ばしながら加速する。
砲撃が来る。横へ跳ぶ。着地。さらに前進。また砲撃。
今度は地面を滑るように回避。
爆炎の熱が頬を掠める。
それでも前へ。前へ。前へ。戦場では時々、妙な感覚になることがある。
銃声も。
爆発も。
悲鳴も。
全部が遠くなる。
自分と目標だけになる。
今がまさにそうだった。
私は自走砲の懐へ飛び込む。
右肩の拡散バズーカ展開され発射。
轟音。
砲塔基部へ直撃。
鋼鉄が歪む。
それでもまだ動く。
硬い。本当に硬い。だから私は笑った。
「いいね」
強い相手は嫌いじゃない。
左肩のミサイルを発射。連続命中。爆発。さらにライフル。サブマシンガン。
同時射撃。火花が散る。装甲が剥がれる。内部構造が露出する。そして。最後にもう一発。
拡散バズーカ。
砲塔そのものが吹き飛んだ。
巨大な鋼鉄の塊が横転する。爆炎。黒煙。沈黙。撃破。
私は振り返る。
「終わったよ」
ナギサが小さく息を吐く。
「毎回思いますが、貴方は本当に規格外ですね」
「褒め言葉?」
「褒め言葉です」
少しだけ嬉しい。私は肩を竦めて再び前を見る。だが敵はまだ終わっていなかった。迎撃システムは自治区全体へ広がっている。
高層ビルの機銃座。
自動砲台。
警備ドローン。
地雷原。
対空ミサイルサイト。
ありとあらゆる防衛設備が敵になっていた。
「面倒だね」
「ええ」
「でも」
ナギちゃんが少しだけ微笑む。
「貴方なら突破するのでしょう?」
私は笑った。
「もちろん」
そして再び進む。ビル上の砲台が火を吹く。私は撃ち返す。一瞬。砲台が爆発する。
次。警備ドローンの群れ。ライフルを連射。空中で次々に火球へ変わる。さらに次。道路を埋め尽くす自律兵器。
ミサイル一斉発射。爆風が吹き荒れる。残った敵をサブマシンガンで掃討。
十秒も掛からない。
私は歩く。
止まらない。
迎撃網がどれだけ厚くても。
敵がどれだけ多くても。
全部壊して進む。
それだけだった。
途中で何度も爆発が起きた。砲撃も受けた。狙撃も飛んできた。でもナギサには一発も届かない。
それだけは絶対だった。
私は彼女の前に立つ。
盾になる。敵を壊す。また前へ進む。それを繰り返す。やがて自治区全体が静かになった。
燃え上がる残骸。
破壊された砲台。
墜落した航空機。
沈黙した戦車。
迎撃システムは完全に壊滅していた。
私は周囲を見回す。
敵影なし。
砲撃なし。
警報なし。
完全制圧。
私は息を吐く。そして後ろを振り返った。ナギちゃんは無事だった。
服も綺麗なまま怪我一つない。
それを確認して、私は満足そうに笑った。
「よし、道が開いた」
ナギちゃんは壊滅した自治区を見渡す。そして少し呆れたように言った。
「護衛任務のはずだったのですが」
「うん」
「気付いたら迎撃部隊そのものが消滅しています」
「結果オーライだよ」
私がそう言うと。ナギちゃんは小さく笑った。
戦場の先、会談場所はもう目の前だった。
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