■元カノに未練たらたらの女✕女の話見てぇ!! 作:あばなたらたやた
空間が裂けた。
正確には裂けたように見えた。
目の前の景色が歪み、ガラスにひびが入るような音が響く。
次の瞬間、そこに一人の少女が立っていた。
銀髪に黒いドレス。雪のように白い肌。年齢だけ見れば私たちと大差ないはずなのに、不思議なほど大人びて見える。
そして何より強い。
武器は持っていない。
銃もない。
剣もない。
何もない。
なのに。
私の身体が警告していた。
危険。危険。危険。
戦場で何度も死線を潜った感覚が叫んでいる。
――あれは危ない。
私は無意識にナギサの前へ出る。そして左手で彼女の手を握った。少し冷たい。けれど握り返してくる力はしっかりしていた。
私は銀髪の少女を見る。
少女も私を見ていた。
いや、見つめていた。
熱を帯びた視線。まるで長い間探していたものを見つけたみたいに。
懐かしいものを見るように。
愛おしいものを見るように。
その視線だけで、少しだけ胸がざわつく。
私は首を傾げた。
「えっと、誰?」
少女は微笑む。
綺麗な笑顔だった。でも少し怖い。
「反転と崇高と色彩と黄昏の技術を使った移動能力」
「現れた方法は聞いてないんですけど?」
思わず即答してしまった。
一瞬。
少女がぱちぱちと瞬きをする。そして小さく笑った。本当に小さく。けれどどこか楽しそうに。
「そう。ごめん。間違えた」
少女はドレスの裾を摘まみ、優雅に一礼する。
「私は貴方に会いに来た」
「それは嬉しいけど」
私はライフルを構えたまま答える。
「名前を聞いても?」
「ん」
少女は微笑む。そして。真っ直ぐ私を見る。その瞳には奇妙な熱が宿っていた。
「私は貴方を愛している」
「重いなぁ」
即座に感想が出た。
ナギサが横で小さく咳払いをする。少女は真面目な顔のままだ。
「事実」
「いやいや、初対面だよね?」
「私にとっては違う」
「怖いなぁ」
私は正直な感想を述べた。少女は傷付いた様子もなく首を傾げる。その仕草は妙に可愛らしい。でも。やっぱり怖い。何だろう。
敵意は感じない。
殺意も感じない。
なのに緊張する。
戦場で会う強敵とも違う。
もっと別の何か。
理解できないものへの警戒感。
そんな感覚だった。
少女はゆっくりと私へ近付こうとする。
私は即座に一歩前へ出た。
ナギちゃんを庇うように。
少女の足が止まる。そして少しだけ悲しそうな顔をした。
「やっぱり、今はまだ、その女の隣にいるんだ」
視線がナギサへ向く。
一瞬だけ。本当に一瞬だけ。周囲の温度が下がった気がした。私は反射的にナギちゃんの手を強く握る。少女はそれを見て。再び私へ視線を戻した。
「安心して。今日は戦いに来たわけではないから」
「本当に?」
「うん」
少女は微笑む。
その笑顔はどこか満足そうだった。
「会いに来ただけ」
私は少し考える。
信用はできない。でも今のところ攻撃する気配もない。少女は私を見つめ続ける。まるで宝物を見るみたいに。
「……変な人だね」
私がそう言うと少女は幸せそうに目を細めた。
「よく言われる」
その返答に。
私は何故か少しだけ嫌な予感を覚えた。
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