キングヘイローの話を書きたくてまた始めました。
前のとこっちの、どっちが面白いかは分からないですけど、楽しんでもらえたら幸いです。
ちなみにかなり主観的な解釈が入っているし、今後も入ってくるので、合わなかったらそっ閉じしてね!
その人は初め、臣下を装って近づいて来た。
『自分を君の
若くて、腰が低くて、初対面でも優しい人なんだろうなとは思えた。
少し緊張している様子からも新人のトレーナーなんだとも分かった。
それ故にきっと努力をしてくれるトレーナーなんだろうと、率直に思えた。
だから、というわけでは無いの。
『全然ダメね。あなたは一流の私のトレーナーに相応しく無いわ』
『それは、どうして?』
『呆れた。そんなんじゃ側近にすらなれないわよ?出直しなさい』
私ははっきりと断った。
この人が求めたのは私の側近。けれど私が目指すのは誰もが認める一流。
キングヘイローという名に相応しい世代の王。
そんな現実を望む私に必要なのは決して側近なんかでは無くて……。
『………わかった』
この人が望むウマ娘も、きっと私では無い。
少なくとも、選抜レースで勝ち切れなかった私では無いわ。
……そう、思っていた。
「君のトレーナーになりに来た」
「…ふぅん」
翌日の朝。中央トレセン学園の校門前で。
その人は私を待っていた。
「まさか昨日の今日で忘れたの?」
「忘れたよ。だから君を待ってた」
賑やかに交わされる挨拶が通り過ぎていく中で、まるで私とその人だけが止まった世界の中に居る。
「そ。けど、昨日の繰り返しじゃ私はあなたを選ばないわよ?」
私を見ている。
真っ直ぐに、私の目だけを見ている。
「知っているよ。だから、忘れて来た」
「……?」
私達を通り過ぎていく生徒の中にはスペシャルウィークさんやエルコンドルパサーさん、セイウンスカイさんやグラスワンダーさんもいた。
みんなデビュー前から素質を見込まれたウマ娘で、誰もが昨日言い寄っていた、正しく次世代。
そんな彼女達をこの人は一瞥もしない。
「……よく分からないけど、何か勝算があって来たんでしょう?いいわ、聞いてあげる」
「有難う。大丈夫、授業には間に合うようにするから」
「今は気にしなくていいわ。キングの器量はそんなに小さく無いもの」
私の言葉で安堵したのか、少し張っていた筋肉が緩んだように見えた。
…そうしてその人は私を説得し始めた。
「君は、キングだ」
「ええ、そうね」
「目指す先はキングの冠に相応しい頂点だと思う」
「…少し違うけど概ねあっているわね」
「だから、自分は初めその夢を支えたいと思った」
「ええ。だから側近を選んだんでしょう?」
「そうだね。でも、そうじゃなかった」
「と、言うと?」
「自分がすべきは支える事じゃない。君と手を取り合う事だ」
私の瞳を見つめ続けるその目の色が、少し、強くなる。
「皇帝は孤独だ、ただ一人で統べてしまったから。覇王は畏怖だ、力で捻じ伏せたんだから。けれど王は違う。王は、独りじゃ無い」
視線は変わらない。だから嘘は言っていないと分かる。
心から私を説得したいという思いが恥ずかしくなるくらいに伝わってくる。
「そしてそれは一流も同じだと言える。なにも一流は誰か一人しか座れない椅子取りゲームじゃない」
「……まぁ、そうね。…それで、何が言いたいの?」
我慢できなくてつい口を吐いてしまった言葉をこの人は一度の瞬きで受け止めてから続ける。
「自分がなるべきは側近じゃなった。君と同じ王で、一流だ」
「………何を言っているの?あなた」
「一流の
そうして言い切ったのは。
……私が望んでいた言葉。
「だからもう一度言わせてほしい」
一歩、そのトレーナーは前へ出る。
「自分を君の
右手を出して私に同意を求めて来る。
「…一つ聞くわ」
「なんでも」
「あなたは私の何を見て隣を歩きたいと思ったのかしら」
「君を見て」
「…言い切るのね」
「必要であれば何度でも。それでも君の求める人材でなければ諦めるよ」
「………そう」
差し出された手を見つめる。
新人らしく、今はまだ綺麗な手。
でもいつか。
私を、誰もが認める一流へと導く手。
そう見えて疑わなかった。
「…分かったわ。結びましょう?あなたとのトレーナー契約」
「!!!!」
「…ふふっ、なにそんなに喜んでいるのよ。これから一緒に沢山の栄冠を獲るっていうのに」
「あ、ああ、そうだね。うん、そうだ。浮かれるのはまだ早いね」
「でしょう?だから頼むわよ?私の
「大丈夫。何があっても隣に居るから」
差し出された手を握り、確かに契約を結ぶ。
優しく握らなければ潰れてしまうような手。けれど、私のトレーナーはしっかりと握り返してくれる。
「じゃあ、まずは私の至る現実について教えておくわね」
頷いたトレーナーはもう一度真っ直ぐ私の目を見る。
「私が至るのは誰もが認める超一流のウマ娘。そのためならなんだってするわ。妥協は許さない。いいわね?」
「ああ。大丈夫、妥協なんてしない。一緒に行こう。誰もが認め、憧れる、輝かしいウマ娘を世界に知らしめるために」
「よく言ったわ。それでこそ私のトレーナーよ」
交わした握手を終えて歩き出す。
私のトレーナはその隣を歩く。
「ギリギリ間に合うね。良かった」
「そうね。超一流の二人が遅刻なんてお話にならないもの」
「あはは、全くだ」
校庭のタイルを踏みしめる音が響く。
僅かに急いているけれど、心の弾むような綺麗な音。
その音はいつか。
いつか人々の、多くのウマ娘の視線を一身に集める音になるわ。
必ずね。
to be next story,
毎回このくらいの長さで投稿できたらいいですね。
出来るとは思えないですけど。努力します。