不屈の緑   作:カピバラ@番長

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 ツイッタで言ってた喫煙の話結局書いて無かったンゴ。
ここでも書けそうに無いンゴ。
ごめんやで。
だからここで概要だけ書いておくで。

まず、キングのトレは彼女の目の前では吸わず、ふとした時にキングに見られて若干慌てます。
けど、キングは嫌がるそぶりは見せず「いつかおしえてね」とだけ言います。
そして鼻腔の中に僅かに残った紫煙の香りや、トレの衣服に付いた残り香をふと思い出す度にトレの顔を思い起こし、微笑みます。

そんな感じです。



next to

 

 その日、キングヘイローはトゥインクルシリーズから引退した。

高松宮記念以降、彼女に勝ち星は無かった。だが、それでも望まれた。

いつか約束した有馬記念への出走を。

 

 『君が一流の王(キングヘイロー)さんだね!同じ舞台に立てるなんて光栄だ!』

 

 『へぇ。このキングを知っているだなんて、覇王の割には殊勝な心掛けね』

 

 『そうでもないさ。路線が違ったとは言え、全ての距離、二つの舞台で王であろうとした君だ。名前くらい覚えていて当然さ!』

 

 『おーっほっほっほ!なら、今日は覚悟しなさい!貴女はこのキングの背中を見て走る事になるのだから!』

 

 『……はーっはっはっは!イン・ボッカ・アル・ルーポ!!悲しい事だけれど、君はボクのフリードリヒ伯爵にはなれないよ。何故なら!ボクの宿命のリヴァルの席は既に埋まっているからね!』

 

 『あら、そうなの?残念』

 

 『けれど、拒みはしないよ。前王に引導を渡すのも覇王の役目だからね!』

 

 『それは楽しみね。なら是非、お互いに悔いの残らない良いレースにしましょう?』

 

 『もちろんだとも!』

 

 『…ああ、それと。一つだけ』

 

 『なんだい?もしかして!美しいボクのこの胸を借りたくなったとか!?』

 

 『手を洗う必要は無いわ。白鳥の騎士さん?』

 

 『……………ブラーヴァ』

 

世紀末覇王とすら称されたテイエムオペラオーとの最初で最後の一戦。

結果は四着。

誰の目にも負けを確信させる包囲網を抜け出し、覇を示したテイエムオペラオーに0.2秒の差を付けられての敗北だった。

しかし、短距離を得意とするはずの彼女が2500mとは言え長距離を駆け抜けた姿は観客達の心を掴んでいた。

最早、彼女が一流である事を疑う者はいない。

今後、キングヘイローを悪く言って笑う奴は現れないだろう。

そうしてそのレースを境に彼女はドリームトロフィーリーグに移籍した。

……のだが。現在もキングヘイローの盟友(トレーナー)を引き受けている自分は、どういうわけかキングのマネージャーみたいな事もしていた。

 

 ≪ねぇトレーナー。この間のデザイナーさんとのお食事っていつだったかしら?≫

 

 「あーっと……ちょっと待ってね」

 

電話越しに話すキングは海外。

高松宮記念での勝利を機に少しずつお母さんと和解していったらしい彼女は今、トレセン学園専属の勝負服デザイナーとして国内全土を、時には海外にまで赴いている。

なんでも、シンボリルドルフ会長がキングのレースに対する姿勢を気に入っていたらしく、[お母さんと同じ仕事をウマ娘達の為に学園を通してやってみないか?]と直々に打診があったらしい。

既に関係性を再構築し終えていたキングは快く了承。以降、年二回あるドリームトロフィーの時期以外は忙しくしている。

そして、彼女が忙しければ自分も忙しい状況になってしまっている。

 

 「あったあった。再来週の日曜日だね。時間も伝えようか?」

 

 ≪それはいいわ。二日前には学園に帰るから、その時にお願い≫

 

 「分かった。じゃあその時に」

 

 ≪ところで、カワカミさんの調子はどう?≫

 

確認し終えた手帳を閉じようとして手が止まる。

カワカミプリンセス。

その名が脳裏に過り、僅かに言葉に詰まる。

けれど、直ぐに彼女の状況を伝える。

 

 「カワカミプリンセスだね?変わらずいい感じだよ。キングの見込みは正しかったなって毎日思ってるくらいだ」

 

 ≪おばか。私はあの娘の背を押しただけ。請け負うかどうかを決めたのはあなたでしょう?≫

 

 「はは、そうだったっけ」

 

 ≪それに私が聞きたいのは素質じゃないわ。…エリザベス女王杯の事≫

 

 「…はは、まぁ、そうだよね」

 

キングにレースの名を出され、少しの間目の前が暗くなる。

進路妨害による降着処分。

一着で駆け抜けたはずのカワカミはレース中にフサイチパンドラの進路を妨害したと判断され、十二着。

それまでが無敗だったが故にこの判断はカワカミの心に深く突き刺さり、以降のレースは思ったように走れていない。

…キングの聞きたい事と言うのは[もう大丈夫なのか]って事だろう。

 

 「問題無い…って、言えれば良かったんだけどね。助けになれない自分が嫌になるよ」

 

 ≪…あまり卑下してはダメよ≫

 

 「分かってはいるんだけどね。自分のせいでカワカミにも悪い影響が出てるのにさ」

 

 ≪そうね。カワカミさんは周りの誰かを感じられないような娘ではないわ≫

 

 「……ああ」

 

 ≪だからシャキッとしなさい。このキングを支えているあなたの手腕はそんなものじゃないでしょう?≫

 

 「だと、良いんだけどね」

 

 ≪…重症ね≫

 

電話越しの声がにわかに暗くなる。

…分かっている。自分のせいだ。

ただ仕事の予定を話していただけのはずがいつの間にか自分の悩みを聞いてもらっている。

自分の、直せていない三流以下の部分だ。

 

 ≪…決めた。あなた、再来週の土曜日を空けておきなさい≫

 

唐突に、キングにそう言われて言葉を失う。

何とか動いた一瞬の思考の後、指定された曜日が耳に入って来る。

彼女の指定した日は、大事な食事会のある前日だ。

 

 「…土曜?けど、それじゃ…」

 

 ≪この一流ウマ娘であるキングが予定を少し詰めたくらいで失敗なんてすると思う?大丈夫よ、とっくに準備は終わっているわ≫

 

有無を言わせないキングの口調に以降の言葉が消える。

 

 「…分かった。じゃあ、カワカミにも連絡を入れておくよ」

 

断れないのならきっとカワカミも居た方が良い。そう思って彼女の名を出すが、電話越しに首が横に振られたのが分かる。

 

 ≪いいえ、あなたとキングの二人だけよ。カワカミさんには前日に話を聞いてくるわ≫

 

 「そ、それはキングの負担が……」

 

 ≪異論は認めないから。……今はただ、頷いておきなさい盟友(トレーナー)。そもそも、負担だなんて思ってもいないしね≫

 

 「……分かった。不甲斐無くてごめん」

 

電話越しの、言葉とは裏腹に優しげなキングに対しての自分の返答に嫌気が差す。

本来ならキングもカワカミも自分が支えなければならないのに、どちらも半端な状態。これじゃあトレーナー失格も良いとこだ。

……けど、今のこの鬱屈とした精神面を何とかしないといけないのも事実だし、何よりカワカミに必要な事だろう。

誰よりも信頼できる相手であるキングヘイローと会話をする事で少しでも良い方向に向かってくれるのならそれが一番だ。

……それを翌日に自分が聞く。その為の時間だと考えよう。

 

 ≪じゃ、こっちを発つ時にでもまた連絡するわね≫

 

 「うん、お仕事頑張ってね、キング」

 

 ≪ありがと。あなたはゆっくり休みなさい≫

 

プツリと電話が切れる。

………少しの間、書斎から動けなかった。

 

        ーーーー    ーーーー    ーーーー    ーーーー

 

 「お待たせ」

 

 時が過ぎて土曜日。

時間は夕方を回って少し。

彼女が来るまで自分と初老のマスターしか居なかった空間に鈴の音が響く。

 

 「カワカミさんとさっきまで一緒でね。ついついぎりぎりまで一緒に居てしまったわ」

 

 「あはは、大丈夫だよ。有難う」

 

キングが予定の時刻から数分ほど遅れてやって来たここは、彼女が成人した際にお祝いとして連れて来た街外れにあるバーだ。

何か嬉しい事があった時によく訪れている場所で、落ち着いた雰囲気やあまり人が来ない所が気に入っている。

そんな場所でまさかこんな話をするとは思わなかった。

 

 「ふふ、懐かしいわね。初めて飲んだお酒、とてもおいしかったわ」

 

 「気に入ってくれたみたいで良かった。苦手だったらどうしようかと思ってたんだ」

 

 「いいえ?あの後から来れてはいなかったけれど、とても気に入っているわ」

 

 「それは良かった」

 

カウンター席の端に座っている自分の傍に来てくれたキングと言葉を交わしながらマスターに目配せをする。

 

 「それで、カワカミはどうだった?」

 

 「…そうね」

 

隣の椅子に座るキングと同時、あらかじめマスターに頼んでいたカクテルーーグラスホッパーが二つ届く。

キングの勝負服のような緑色のこのお酒は、彼女が成人した際に紹介した一杯だ。

けれど、目の前に置かれたそれをキングは気が付かない様子で話し始めた。

 

 「少なくとも、引退は考えていないみたいよ。あなたの説得が響いているみたい」

 

 「………………………そ、っか」

 

 「それにファンレターの事も言っていたわ。心無い手紙を、あなたが目の届かない所に保管してくれているのをとても感謝してる」

 

 「…気付いていたんだ」

 

教えてもらった内容に安堵の息が出る。

カワカミプリンセスの魅力を悪く捉えた人々の、その中でも過激派と言える連中から来た手紙や、直接的な言葉。

それらが今、あの娘の中でフラッシュバックしてしまっている。

その苦痛を少しでも抑えられているのならそれでいいと思っていたが、隠し事なんていうのは出来ないみたいだ。

 

 「……後、ウマッターもやめさせたのよね。『その節は、申し訳ありませんでしたわ』って、伝言よ」

 

次いで出て来たのは自分の中でも特別不安に思っていた事柄。

カワカミから権利を一つ奪った時の話だ。

 

 「謝るのはこっちなのに。あの時は強引に自由を奪ってしまったんだから」

 

 「そこは大丈夫よ。最初は混乱したみたいだけど、直ぐに[正しかった]って考え直せたって言っていたわ」

 

少し微笑んだキングの表情でカワカミが本当に不快に思っていない事が分かって胸の奥が微かに落ち着く。

口頭説明からのアカウント強制停止ーー。明らかに指導者としての一線を越えた行為だった。

あの時の睨む視線は今も覚えている。

大好きなプリファイの最も有効的な情報源であると共に、それで出来た繋がりや、友人関係の一部を剥奪する行為だ。生涯恨まれるとすら覚悟していた。

けれど、そんな事は無かった。それが分かった。

………こういうのを僥倖と言うんだろう。

 

 「それに、私があなたの立場だったとしても同じ事をしていたわ。…無数の傷を負わせるくらいなら、自分だけを恨んでもらった方が良い…って」

 

 「……キング」

 

 「正しかった、とは言えないけれど、最善手の一つではあったはずよ」

 

 「………………有難う、キング」

 

 「事実よ。お礼は不要よ」

 

そう言って、キングは目の前に置かれていたグラスホッパーに気が付く。

 

 「…あの時のお酒ね。戴いても?」

 

 「勿論」

 

答えると、キングは指先で摘まんだグラスを口元に運んで傾ける。

 

 「ふふ、おいしい」

 

木製のカウンターの上にグラスが置かれ、軽い音が小さく鳴る。

変らず自分達とマスターしかいない店内に一瞬だけ響いたように聞こえる音。

それが明確に消え入ると、キングは再び教えてくれる。

 

 「……他にも幾つも話を聞いたわ。けど、あなたを嫌っているとか、避けているとか、そんな話は一つも無かった。寧ろ楽しそうに話している時もあったわ。……一緒に、映画に行ったんですって?」

 

 「あぁ。少し前の事だね。少しでも元気付けられればと思って、ね。楽しんでくれてはいたみたいだけど、無理させて無いか不安だったんだ」

 

 「『とても楽しかったですわ』って。直接も言ったけど、それだけじゃ足らなかったみたいよ」

 

 「なら…良かった。……本当に」

 

 「『今度はわたくしがご招待いたします!』って意気込んでいたわ。妬けちゃうわね。このキングを前にして話していたのに、私は誘われなかったんだから」

 

 「は、ははは、そっか。…そっか。なら、予定をしっかり空けておかないとだね」

 

 「えぇ」

 

微かに上がって来た目元のナニカを押し込むようにグラスの中身を一気に傾ける。

爽やかで、チョコミントのような風味が口内に一気に広がると同時、アルコールが全身を火照らせるのが分かる。

お陰でこれ以上の情けない姿を見せずに済みそうだ。

 

 「結論を言えば、お互いがお互い対して少し距離を置いていた。そうしたら溝になってしまったいた…ってところね。なら、後はどうすればいいか分かるわよね?」

 

彼女の言葉に頷き、……もう一度頷く。

 

 「……これで少しは持ち直せそう?」

 

 「ああ、ああ。有難うキング。カワカミに嫌われていないなら、避けられていないなら、ずっと本心を言ってくれていたのなら。……自分が、彼女から離れる理由は無い」

 

 「…そう。それでこそ私のトレーナー(盟友)よ。諦めるなんて、あなたには似合わないわ」

 

左腕で頬杖を突きながらキングは微笑みを見せてくれる。

それから彼女はマスターを見遣ると、近づいて来てくれた彼にお酒を頼んだ。

 

 「キールを二人分お願い」

 

キングの注文に一礼を見せたマスターは直ぐにカクテルの作成に入る。

 

 「私からあなたに」

 

からからとシェイカーで混ぜる音が響く中、見つめて来るキングに提案されて首を横に振る。

 

 「君は自分にとってはずっと教え子だ。今回のお礼も含めて払わせてほしい」

 

 「…言うと思った。へっぽこ」

 

どういうわけか、キングに笑われながらそう言われてしまう。

…………いや、確かに今回の件はへっぽこな自分だけでは解決しきれなかった問題ではあるんだけど。

何と言うか、そう言う意味では無いように聞こえた。

 

 「ま、いいわ。これは次の目標だしね」

 

 「……????」

 

よく分からない事を言った後、キングはグラスホッパーを一息に飲み干す。

十五度近くあるカクテルだけど、流石はウマ娘。まるで酔った様子が無い。

 

 「気にしないでいいわ。…それより、明日の事もあるから今日はあなたの家に泊まりたいの。いいかしら?」

 

 「それはまぁ、構わないけど……」

 

自分の返答に喜んでか、キングは優しい笑顔を見せてくれる。

…まぁ、年齢と性別の部分はこの際置いておこう。明日の食事会を考えるなら朝から一緒の方が色々楽だし、何より教え子の頼みを断りたくない。

 

 「良かった。なら、今日はとことん付き合ってもらうわよ?」

 

 「ああ!明日もキングの為に空けていたからね。何時まででも付き合うよ」

 

会話の最中、静かにキールが置かれる。

それを手に、二人でグラスを鳴らした。

 

 「ふふふ、おばかな人」

 

何でそう言われたのかは分からない。

けど、キングは嬉しそうにしている。

自分にはそれが何よりも嬉しかった。

『これ以上泣かせない』って約束が守れている事。それが本当に嬉しい。

 

 「…やっぱり、笑っている方が素敵だよ。キングヘイロー」

 

 「……何当たり前な事言ってるのよ、へっぽこ」

 

改めて浮かべてくれたキングの満面の笑み。

幸運な事に、彼女と共に歩む千里の道はまだまだ続きそうだ。

 

 ーーそんなあなたに惹かれている私も、充分おばかでへっぽこなんだけどね。

 

 

 

 

end.





 やっとこすっとこどっこい終わったキングヘイローのお話です。
カワカミ周りの話を無しにして書き直そうか迷った結果の最終話でしたがいかがだったでしょうか。
あ?手癖の暗い話が出過ぎてる?無芸なんだ、笑えよ。
なおこの後、キングとトレは関係を更に構築していきますがその辺を書く気は一切無いです。勝手に保管してください。
そんでこのトレはカクテル言葉とかなんも知りません。
色似てる~~~!くらいで紹介しました。キングはそれも理解してます。
けどまぁ一応…で調べてたら結構色々あって面白かったのでそれなりに詳しくなった。そんな感じですね。

 んで、オペは多分こんな事言わない。
てーかオペラ使いすぎや。しっかり分析してくださってる方のを見てもマジで訳わかめだった。
すんごい分かりやすく説明してくださってたんだけどね。私には適性が無い。

 てな感じで終わりです。
まぁまたキングの現役時代の話は書きたくなって書くかもしれないです。
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