不屈の緑   作:カピバラ@番長

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三時間くらい書いてた。
半分くらい書き終わってたのに。

まぁ、知識無いからなんですけどね。初見さん。
故に、調べてもまるで分かんなかったので今回の話はほぼ創作です。勘弁してください。


Show the

 

 ーージュニアメイクデビュー。

全ての競走ウマ娘が最初に走るレース。

約四カ月のトレーニングの後に臨んだこのレースは、恐らく勝利する。

 

 「…うん、最高のコンディションだ」

 「とーぜんでしょ。なんて言っても、私は一流のウマ娘なんだから!」

 

体操着に身を包み、軽い柔軟も済ませたキングヘイローはそう言って口に手を当てて高笑いする。

これから彼女が走るのはマイル・1600m。

今日までのトレーニングを経た自分の見立てでは最適正距離は短距離なので少し長いが、悪くは無い。

最適性の他のウマ娘に対してはカタログスペック的に見て若干の不利は背負ってはいるだろう。

けど、彼女ならその程度問題無い。

彼女の脚なら。並みの不利は平然と跳ね除けられる。

 

 「じゃ、行ってくるわ。トレーナー」

 「うん。自分も少ししたら観客席に行くよ」

 「間違っても私のデビュー戦を見逃したりしないでよ?」

 「あはは、大丈夫。誰よりも近いところで見てる」

 「それならいいわ」

 

数言言葉を交わしてキングの背を見送る。

扉へと向かう彼女からは十二分な気力が感じられるし、何より気負い過ぎていない様子だ。

やる気が裏目に出て、なんて事は無いだろう。

 

 「……うん、負けるわけが無い。彼女は既に一流だ」

 

見送り続けていた自分の視線が締まった扉に届く。

このおよそ四カ月間で自分が目にしたのはキングヘイローという少女の持つ圧倒的な素質と、決して弛まぬ努力だ。

自分のトレーニングとは別に行われている自主トレは単にレースに関する事だけじゃない。

勉学に始まり、交友関係の構築、校内イベントへの積極的な参加、更には彼女自身が友人達の助けとなるべく手を差し伸ばしたりと、大人の自分でも頭が上がらない行動の数々が含まれている。

ひと月目に彼女に理由を問えば『一流は独りではなれないわ。みんなが認めて初めて一流なの。…それに、困っている娘を放って置けるほど情けの無いウマ娘じゃ無いしね』とすら言っていた。

自分にはあまりに眩しく、思慮深い言葉で、その心構えこそが彼女を彼女足らしめる根幹だと理解できた。

 

 「…彼女の盟友(トレーナー)として、恥ずかしくの無い行動をしないと」

 

レース後のため、タオルやスポーツドリンクを用意しつつ口を吐いた言葉。

耳に入って来たその言葉で自身を律し、観客席へと向かった。

 

         ーーーー    ーーーー    ーーーー

 

 

 時が来る。

それまで騒がしくも活気のあった観客席が、まるで示し合わせたかのように静まり返る。

皆が視るのは時計、その秒針。或いは数字そのもの。

誰もが、彼女をよく知るトレーナすらも固唾を飲む中で、開幕の音が響き渡る。

 

 《ゲートが今、開きました。各ウマ娘、スタートです》

 

聞き慣れた女性の実況がマイクを通してレース場全てに行き渡る。

決して小さくは無い音量。それを掻き消さんばかりにターフを駆け抜けていく蹄鉄の多重奏が響く。

 

 ーー勝負は一瞬ね。

 

芝が捲れ、土くれが舞う中でキングヘイローは冷静にレースを俯瞰()る。

己の位置、他ウマ娘の位置、それぞれの息遣い。

誰が最も早く仕掛けるのかという機微を。

 

 ーートレーナーと立てた作戦は最終直線での差し切り。それまでに埋もれず、全体の空気を感じられる所は……

 

レースを俯瞰て得られた感覚を基に位置の調整を行うキングヘイロー。

他のウマ娘達も示し合わせたように己の望む位置取りを行い、最初の二百メートルを過ぎる頃にはそれぞれがおおよそ求めた位置でレースが行えている。

その中でも、特にキングヘイローの位置は彼女が求めていた通りの場所だった。

 

 ーー練習や模擬戦とはやっぱり違うわね。みんな眼が真剣そのものだわ。

 

平均的な通過タイムで走れているが故に余裕を持てているキングヘイローは再度、周囲の状況を確認し、脚を溜め続ける。

 

 ーーけど、勝つのは私よ。

 

四百、六百とレースが進んでいく。

その間にそれぞれで幾度かの位置変更が行われ、レースの流れが少しずつ変化していった。

そしてそれが最も顕著に表れたのは最終コーナーに入る瞬間だった。

 

 ーー仕掛けて来たわね。

 

 《後方集団先頭の八番、動き出した!》

 

キングヘイローより後方五番手のウマ娘が一際深く芝を抉る。

その瞬間誰よりも大きな一歩で前へと出た八番のウマ娘は勢い良く他の娘達を抜いていく。

それを見てか。または抜かれたからか。一人、二人と勝負を懸け始める。

それまで僅かに膨らんだ直線のようになっていたバ群は崩れた。

導きの勝利を得る為に、瞳に、表情に、声に、勝利を求める本能が現れる。

だが、キングヘイローはまだ動いていない。

『勝負は一瞬』と解した上で、彼女は〔遅れるやも]という不安を思考から切り離す。

現在は最終カーブの半ば。最後の直線には届いていない。

故に、作戦とはタイミングが違う。ーーからではない。

 

 ーーあなたが信じてくれる脚よ。私が信じないわけにはいかないでしょう?

 

作戦だからではない。己を見い出してくれたトレーナーの言葉を信じている。

だからこそ彼女の中に生まれた冷静さは、彼女に焦りを忘れさせる。

 

 ーー……ピリピリ来る。まるで背中から戦車が迫ってくるみたい。

 

最初に仕掛けた八番のウマ娘の走りは観客の目を引くものがあった。

であれば、それを直に目の当たりにし、間近で感じながら抜かれたウマ娘達には刹那の絶望と呼べるだけの恐ろしさがあった。

勝つためには呼吸と共に飲み込んで活力へと変えるはずのそれを、だが、多くの娘達には拭えぬ残影となって脚を縛り付ける。

 

 【追いつけない】と。

 

だが。

 

 《コーナー回って最終直線!最初にゴール板を抜けるのは誰か!》

 

 ーー…今!

 

真裏にまで迫った八番のウマ娘の圧を感じながらキングヘイローは仕掛けた。

時を同じく。キングヘイローよりも前を走っていた他のウマ娘も脚を開放する。

 

 《仕掛ける!!先に仕掛けた八番の前方、十番と五番そして十二番が一気に駆け出す!》

 

ターフを抉る蹄鉄の音が明確に殺気を帯びる。

それまでを前座と言わんばかりに速度が加速度的に増していく。

 

 《十番抜けた!後を追うは八番!次ぐ十二番と五番も負けじと追う!その差は僅か!》

 

 ーーいいえ、今だけよ。

 

溜め切った脚を爆発させたキングヘイローは眼前だけを見る。

最早目前とまで迫ったゴール板。そこへと脇目も振らずに駆ける。

 

 《差が開く!十番・キングヘイロー!すさまじい脚だ!》

 

 ーー見ていなさい。一流が一流を示す様を……。その始まりの蹄跡を!!

 

脚いろは堕ちない。彼女を追う八番と差が開く。

しかし、八番も諦めはしない。起きるかもしれない何かに全てを賭けてなお走る。

レースに絶対は無いのだからと。全ては、己の力を最初に示す為にと。

[唯一抜きんでて並ぶ者無し]と、自分を信じてくれる人の為に。

ーーそして。

 

 《今、ゴールイン!》

 

レースは、終わる。

乗り切ったスピードを収める為、僅かな距離を進む両者。

立ち止まり、荒ぶる呼気を深い呼吸を持ってなだめ、太鼓のように叩かれる鼓動の音を意識から追いやり、彼女達は掲示板を見上げた。

 

 《勝ったのはキングヘイロー!直線でしっかりと抜け出し、二着と1/2バ身離してメイクデビューを一着で飾りました!》

 

 「………!ぐ…っっっっそォォォォ!!」

 

 「…勝った?」

 

涙声交じりの叫びが上がる中、キングヘイローは掲示板を見続ける。

そこに映し出されている[一着]は全てがキングヘイローを示す単語。

 

 「…そう。あの人には届いたかしら」

 

呟き、キングは観客席に身体を向ける。

最初に目に入ったのは己のトレーナー。次には今、共に走ったウマ娘のトレーナーや恐らくはそのチームメイト達。

 

 「…おーっほっほっほ!これがキングの実力よ!」

 

観客達に向けて行われる高笑い。その声が喝采と声援に埋もれていく。

 

 「……ねぇ、貴女」

 

喝采と実況者の声が響き渡る中でキングヘイローは振り返る。

居るのは、二着以降に達したウマ娘達。

皆、一様にキングヘイローに視線を向けている。

 

 「強かったわよ、貴女達」

 

彼女の一言を境に空気が張り詰める。

 

 「でも、今日は私の方が強かった。再戦、待ってるわ」

 

挑戦的と取れる言葉を残し、踵を返したキングヘイローは振り返る事無く控え室へと向かった。

彼女の背を見送る好敵手達の目に灯るのは、確かな意志。

次こそは高笑いなんて出来ないようにしてやるという決意だ。

 

 

 

to be next story.





 なんか、話数結構かかりそう(小並感)。
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