それでも楽しんで頂けると幸いです。
さて、フィーネと別れを告げてから幾つかの時が過ぎ現在、私は二課の本部で――
「でやああああああああ!!!」
「はい、終わり。」
「ああああああああああ!??」
響相手に無双していた。
「おい、大丈夫か!?」
クリスの視線が飛んでいく響を追う。けれど……
「残念、隙だらけだよ?」
「な!?ぐはっ!!!」
右手に持った銃で腹に撃ち込む。シンフォギア相手だと普通の弾丸は容易に防がれる為、多少の恐怖を込めて打ち込む。
「隙あり!!」
「無いよ。」
振り返る事もなく、左手でハンドガンを抜き、そのグリップを振り向きざまに叩きつける。
「がっ!!!?!?」
翼の顔面を正確に打ち、翼は鼻血を出しながら昏倒する。
そして、地面に倒れ伏す3人を見て、私は銃を下ろして表情をだらけさせる。
「はい、今日の訓練はこれで終わり。いやぁ、強くなったねぇ。初めは私の動きについて来れなかったのに、今じゃいつ攻撃を喰らってもおかしく無い位になったね。おじさんは嬉しいよ。」
「はっ、余裕で全部に攻撃を避けといてよくいうぜ……」
クリスが小さくそう呟いた。
タオルとスポーツドリンクを手渡して、僕も一緒に水分補給を済ませる。
「いや~、負けた負けた!強いね、ヨルちゃん!」
「ああ。この強さ……あの時のフィーネ以上の強さを感じる。」
「こんなチミっ子なのに、どっからそんな強さを出してんだよ。」
響は屈託ない笑顔でそう告げる。
翼は忌憚ない意見を述べ、クリスは何処か納得がいかない様子だ。
「いやぁ……これでもかつては『暁のホルス』って呼ばれてたからねぇ。簡単には負けられないよ。
クリスちゃんだっけ?これでも私、もう高校3年生だから、君よりは年上なんだよ。
まっ、色々あって寂れたおじさんになってしまったのさ。」
「お前のどこがおじさんだよ……」
クリスは呆れた様子で呟く。すると、トレーニングルームのドアが開いて、二課司令である風鳴 弦十郎が入ってきた。
「お前たち、精が出るな!」
「あ、師匠!お疲れ様です!」
「修行後なのに元気だな、お前……」
片手を上げ、快活な挨拶をする司令に、僕も挨拶を返した。
「いやぁ、どうも司令さん……流石におじさんももう歳だねぇ。腰が痛くてしょうがないや。」
「はっはっは!何を言う。まだまだ余裕がある事は君の立ち姿を見ていればよく分かる。」
「買い被りだよ~。さて、ただ様子を見に来た訳じゃ無いんだよね?」
僕がそう聞くと、司令はニヤリと笑って告げた。
「いや、何……君ほどの使い手とは中々会えないので、是非とも手合わせをと思ったのさ。」
司令は拳を合わせて臨戦体制をとる。
――本気、だね――
私も伊達に此処まで戦ってきた訳じゃ無い。しかし、自分の意思で戦場に立った事はない為、どこまで通用するのか未知数ではあるが……彼と戦えば、この世界でどの程度通用するのか分かるだろう。
「分かった。それじゃあやろっか?」
私は銃を構える。
その様子を見ていた彼女たちは、既に部屋の端で待機している。
「いくぞぉ!!!」
体全体に叩きつけるかの様な風圧だ。大地がまるで柔らかい土であるかの様に砕け、凄まじい勢いでこちらに突撃してくる。
「スゥ……!」
こちらもただ眺めている訳ではない。小手調べに普通に散弾銃を連射してみるが、傷一つつく様子はない。
――なるほど、確かにコレは怪物だね……OTONAと呼ばれる訳だ。
突き出された拳が顔面を捉える直前、私はのけぞる様に回避する。
「その程度の攻撃じゃ、傷一つ着ける事は出来ん!!」
「そうだね……じゃあ、コレはどう!!」
恐怖を込めた弾丸は、散弾を一発の銃弾とするが、威力はその分上がっている。
――彼を相手にするなら、少なくともシンフォギア相手だと思った方が良い。
「はあ!」
震脚……とでも言うのだろうか。足を前に出しただけであるのに、地面が起き上がり壁となる。しかし、それで防がせるほど甘くはない。
銃弾はそのまま壁を粉々に砕いた。
「――――――!」
――いない?……上か!!
「でやあ!!」
背後に転がり回避する。
そして銃口を彼の頭に向けると同時に、司令のパンチも私の頭をとらえた。
ブオン!!
そんな音が聞こえ、お互い静止したまま動かない。
「——この勝負、引き分けだな。」
「——そうだね。これ以上やったら、お互いただじゃ済まなそうだ。」
拳と銃、それぞれ顔に突き付けあっていたが、互いに矛を収めた。
「此処まで本気になったのはいつ以来だろうか。良い経験になった。」
「それは僕も同じさ。まさか司令さんが此処まで強いとはね……」
内心、冷や汗が伝う。
僕は、小鳥遊ホシノの肉体と経験から齎された強さが全てだと言うのに、風鳴弦十郎と言う男は鍛錬された肉体だけで此処までの域に辿り着いている様だ。普通の人間が出せる力を超越した存在……それはある種、キヴォトスの最強格が持ち得る資質にも似ている。
「さて、それじゃあそろそろ俺は戻るとしようか。」
司令さんは踵を返す。
私はその後ろ姿をただ見送る。
「……あそこまで強さがあるからこそ、私を受け入れる決断が出来たのかな。」
ふと、フィーネとの戦いの後の事を思い出した。
次回、主人公が二課入りした経緯を描こうと思います。
戦闘描写難しい……こんな物でも楽しんでいただけたなら幸いです。
此処まで読んでくださり、ありがとうございました!