転生帰還者の、愉しい語り   作:苦悩

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息抜き、または生存報告とも言う


序─

「帰ってきたぞー!!!」

 

いやー、長かった永かった。

トラックに轢かれて死んだと思ったら、テンプレ転生して気づいたら異世界農家の赤ん坊。一瞬『転生ktkr』とか思っちゃって期待したじゃんね。

 

端的に言うわ。異世界、クソやわ。

 

生まれた瞬間に意識があったせいで産声が短くてさぁ、死んだかと思われたんよ。まあ、心臓マッサージすればいいって知識はあったんかな?めっちゃ胸叩かれてさぁ、それが原因でマジで死んだのよ。

本当さ、普通産まれたばかりの赤ん坊に、大人の本気の力で心臓マッサージするとか、アホかと。逆に死なねぇわけねぇじゃんね。

 

クソわよ。

 

で、まあ。腐っても異世界転生だったからかさ、ちゃんとチートはあったんよ。

その名も、【蘇生変換】。

俺が俺だと認識できた瞬間、つまり産まれた瞬間から知覚できて、どんな力なのかも理解出来たんだけどさ。

まさか、その十数秒後に早速使うとは思わないやん?チートの詳細が詳細なだけに。

 

転生チート、【蘇生変換】。

条件を満了すると発動するスキルで、直接的な戦闘系のスキルじゃない。

まあ、名前からわかる通り蘇生が主の能力な訳だが。

 

残念ながらこのスキル、何回でも蘇生する訳じゃなくて、回数制限あり。

死亡する都度3回まで生き返ることが出来て、蘇生しても素の能力値(的なもの)は引き継ぎ。

そして蘇生する度、身体が「組成変換」する。

 

待て待て、石を投げるな、ダジャレじゃねえ。

 

詳しく言うと、身体の中の『属性』的な、なんというかな。

んー……そう、例えば、生きてる生物、ってのはさ。身体の中に『生』の属性的なのが満ちてるわけよ。それが原子とかの代わりに身体を形作っていて、日々の食事とか、睡眠とか……まあ、交わり(・・・)とか。そういうのを通じて、補給するわけよ。

 

あ?何笑ってる訳?……あぁ、そういう。

いや、可笑しいのは君らだから。何?異世界でも法則はこの世界準拠ですよー、って?

 

馬鹿言っちゃいけないよ。所詮、この地球があるのってさ、天の川銀河群、っていう宇宙から見たらちっぽけな所の、さらにちっちゃな一惑星よ?

それがたまさか天動説みたいに世界の中心って、馬鹿なんじゃない?外宇宙の法則がこの宇宙の法則と同じだなんて確率は低いのに、異世界が同じだなんて、そんなそんな。

 

ちなみに異世界は天動説だったよ。

 

で、えぇと、そう。身体が『生』の属性で出来てるって話はしたよね。

この『生』の属性ってのがとにかく繊細でさぁ。何もしなくても減るくせに、身体が傷つけばすーぐ漏れ出て枯渇しやがるんよ。

でも身体の中には『生』があったスペースってのがちゃんとあるわけで。

 

あー、問題ってことにしとこうか。『生』が減った身体っていう容器。『生』の属性の代わりに何が入るでしょーか。

3秒以内に答えないと……あ、3秒だったね。

 

じゃあ答えね。

答えは、『死』の属性。

異世界では瘴気とか呼ばれてたけど、これが入ってくるんだよね。

普通は成長とともに体に入り込んできて、それを日々の『生』の摂取で上塗りするっつう感じだな。

比率同じ容積にすると、質では2:1で『生』の方が1な?

詰まり、何もしなければ『生』がどんどん増えてって、見かけ上は成長してるように見えるって訳よ。

 

ご想像の通り、俺ってば転生直後に死んだ訳で、この『死』の属性がめちゃんこ入って来ちゃったんだなぁこれが。

本来、この『死』って本質的に【終わり】を司るんだけどさ。これが苦しいのなんのって。

柔らかい骨が折れて、その部分が腐り落ちて。

心臓が潰れて、肺が破れて、血液が溢れて。

 

地獄の苦しみよねぇ。転生した直後だったから、これが地獄かって思ったもんだよ。

 

ゲーム的にいえば、HPバーの緑の部分が減って、代わりに黒い、下地の部分が増えていく。黒い部分が緑の部分を完全に食い尽くせば、晴れて死亡。

イメージとしてはそんな感じ。

 

で、類に漏れず俺もそうそうに『死』で身体がいっぱいになって死んじゃったわけよ。

そこで発動するのが転生チートの【蘇生変換】。

 

まあ、ここまで言えばわかっちゃうかも知んないけど、このチートってのがなかなかに扱いにくくてねぇ。

なんせ使用条件が、『完全に死ぬこと』と来たもんだ。

 

俺もこんな早くに使うことになんのは予想外だったけど、そんなの関係なくこのチートはシステマチックに権能を発揮しやがったわけですよ。

 

まず、身体(うつわ)の中の『生』がなくなった瞬間、詰まりは『死』で満ちた瞬間だな。

このチート様は、俺の身体を「変換」した。

分かりやすく言えば、そうさな。

 

『死』で満ちているくせに動く存在、詰まり既死者(アンデッド)にしやがった。

転生者、ってのも関係あったのかねぇ。存外、俺は『死』の属性と相性が良かったらしい。

生まれた直後、ってのも悪かったんだろうな。

 

だから。

次にチート(【蘇生変換】)は、『死』の本質を変換しやがった(・・・・・・・)

本来【終わり】を司る『死』なんだが。この瞬間、俺の身体の中に満ちた『死』は、【始まり】と定義付けられた。

 

分かるか?

本来なら『生』の本質である【進行】とは正反対だったからこそ、打ち消して『生』に染め上げられたんだよ。

それが、どうだ。【終わり】だった『死』が、【始まり】になっちまった。

これじゃ、あべこべだ。

 

 

『生』があるからこその、『死』。

 

【進行】するからこその、【終わり】。

 

 

それが、逆転しちまったんだよ。

 

 

『死』があったからこその、『生』。

 

【始まり】があるからこそ、【進行】する。

 

 

そこに、終わりなんてない。

ただただ、ひたすらに【進行】し続けて、【終わり】を消しちまった。

 

実質的な、不老不死さ。まあ、流石に体が消し飛べば死んだんだが。

あ?じゃあなんで生きてんのかって?

 

おいおいこの短時間で忘れるとか、もしかしてお前、若いのに認知症か?

俺のチート能力は【蘇生変換】、回数制限ありとはいえ、まだ2回は残ってたんだぞ?身体が消し飛ばされてもまだもう1回、残機は残ってんだなぁこれが。

ま、この話は後でするとしよう。何せまだ俺の体に起きた変化を全部話せてねぇわけだからな。

 

で、どこまで……ああそうだ。『死』が変わっちまったところからだな。

 

まあというわけで、だ。

 

俺はたしかに死んで、だが、『死』が変わっちまったせいで、色々と変なことになったわけだな。

 

死んだ直後に既死者(アンデッド)になったが、なにぶん俺の身体の中だけとはいえ【始まり】っつう本質の属性が溢れてしまったわけだな。

つまり、『生』がない状態なのが、極めて不自然だっつう状態だ。

この矛盾、どう解消するかって言うと、まあ、アレだ。

 

あるだろ?『生』に満ちてはいるが、同時に『死』が少なからず入り込んで、しかも塗り潰せない程度には弱っている。そんな存在が。産まれた直後の、俺の近くに。

 

そう、出産直後で息も絶え絶えだった、母親さ。

 

吸っちまった(・・・・・・)んだよ。あ、母乳じゃねえぞ?そこんとこ間違えんなよ、恥ずかしい。

吸ったのは、『生』だ。

 

丁度赤ん坊に半分持ってかれて。

丁度俺の『死』と同量で。

 

都合よく、そんな感じにちょうど良かったからさ。

俺のチート様は、喜び勇んで俺の『死』の土台の上に『生』を載せちまったのさ。

 

イメージとしては、0になって黒く染ったHPバーの端から、新しく緑のHPバーが伸びるような感じだ。

という訳で、新生俺は生まれた直後、母親殺しの罪業を背負っちまったわけさ。




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