転生帰還者の、愉しい語り   作:苦悩

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─破─

まあ、あとはご想像の通りだな。

 

手加減間違って子供を殺しちまった父親と、子供を産んで死んだ母親。

 

しかも気味の悪いことに、血反吐を撒き散らして、胸も陥没した赤ん坊はその状態で平然と生きてやがんだ。

 

あぁ、俺、生まれたのは異世界の農村ってのは言ってたか?

農家ってのは言ってたが、農村生まれってのは言ってねぇよな、確か。

 

で、異世界の農村って聞いてどんなイメージ湧く?

そうだな、排他主義で似非カルト信仰、そんなイメージだよな。

 

大正解、まさにそんな村に生まれた俺は、そりゃあ扱いの酷いこと酷いこと。

 

悪魔の子だ悪魔だ化け物だ魔物だ、その他エトセトラエトセトラ。散々な言われようだったな。

間違っちゃいねぇけど。てか、ニアミスばっかで既死者(アンデッド)が出なかったのが寧ろ面白いわけだが。

 

殴る蹴るは当たり前として。

俺ってば、1歩も家代わりのボロ小屋から出たことない箱入り息子なんよ。

当然の様に首輪足枷手枷が鎖で繋がれてて、都合のいい時に殴ってストレス解消まじ楽しい、なサンドバッグ。

飯は隙間から入り込んでくる虫やら鳥やら自分の糞やら。あ、勿論ナマモノだゾ。

 

そんな生活して補充された『生』は減らないのかって?

安心しろ。寧ろ殴る蹴るされる度に『死』が増えて、その『死』と同量の『生』が増えてくから収支は黒字だ。

もちろん、『生』の補給源は殴ってくる奴な。馬っ鹿だよねぇ、自分から遠回りに自殺に来るとか。

 

それが……何年だろうなぁ……少なくとも10年はそんな感じだったろうね。

割と体格よく身体は成長して、親父の野郎も白髪が目立つようなってきてたから。

 

あん?既死者(アンデッド)が成長するのが変、だ?

おいおい忘れたのか?あの世界は極論『生』を補給するための三大欲求だぞ?

日々『生』を吸収して、それを溜め込めるんだから成長くらいするだろ。

尤も、村の誰よりも体格が良くなったからあいつらも漸く何か変だってのには気づいたっぽいけどな。

 

まあ、気づいたところで長年のストレス解消手段を使わないって考えるのはまた別問題だがな。

村長が自粛宣言出したらしいが、少なくとも俺は知らなかったわけだし。

体感人数少なくなった、かなぁっ……て感じの割に、前より効率よくなってんじゃねえかなって思ったくらいだし。

 

まあそんなこと続けてればどっかしらボロは出るよなって話で。

ある日、突然だったなぁ。

見ない顔の男女半々4人組が入ってきてさ。

持ってた剣で鎖を断ち切ったんよ。

 

粗製とはいえ鉄だぜ?それを同じ鉄で、しかも一呼吸でスパンって切り落としたんだぜ?

ひえぇ、ってなったわ。なんなら少しチビったわ。

 

助けが来たとか、ぶっちゃけ年甲斐もなく?性懲りも無く?まあ、思っちゃった訳だけどもさ。異世界、やっぱクソだったんだわ。

あれよあれよと連れ出され、向かうは王都、その中心。

新調した黒い首輪に、くっそ重い手枷足枷で煌びやかに彩りながら馬車で動かずまる1週間の旅路だったよ。

 

笑っちゃうよな。下手に希望なんか抱いちゃうと、その分落とされた時の絶望が半端ないのって。

連れてかれたのは、なんちゃらほにゃらら研究所ってとこ。文字は読めなかったけど、言葉はわかるから大体何の目的で連れ出されたかも分かっちゃうのよね。

 

ま、有り体にいえば不老不死の研究をしてて、俺ちゃんてば棚ぼた的に転がってきたサンプルだったってオチね。

どうやって探り当てたのかってのは置いといて、それで大正解を引いたんだから運いいよなぁあいつら。

 

もうそっからはさ。ただひたすらにモルモットの日々ってやつよ。異世界のモルモットは猫サイズだったけど。

俺っていう不老不死のモデルがあって、その仕組みを解明すんのがあいつらの仕事。てか死なないからって脳に電極的なのぶっ刺してあばばばクチュクチュあっあっあっ、てやられたわけなんだが。

割とマッドな分類だったから、えげつない程『死』と『生』が入り込んだわけで。

機材を介して『死』が入り込んで来るから、世界の方から吸っちゃったわけよ。あ、これ無意識に、だぞ?

 

サンドバッグだった頃は人から吸ってればまず良かったんだがなぁ……足りない分を世界から吸うって、それってつまり世界を荒廃させてるのとイコールなんよ。

結果何が起こったかといえば、まあ、凄かったぞ?

まず最初は俺の触れている物質からだな、日に日に拘束具が脆くなってって、それがどんどん壁、床ってな具合に侵食してくんよ。

無機物にも『生』の属性はあるんだが、そんなの極小量だからな、直ぐに建物全体の『生』は尽きたんだよ。あ?それ以外の属性だ?そんなの『土』やら『鉄』やら『結』やら『硬』やら、まあ、そんな感じだ。

でだ。こっからがヤベェんだよ。

 

突然だが、生物は死ぬその瞬間まで『生』を蓄えているもんなんだよ。死ぬと蓄えていた『生』が一気に放出されて『死』で満たされるわけだ。

 

さてここで単純な疑問なんだが、その『生』、ぶちまけられた後一体どこに行くと思う(・・・・・・・・)

その行く先ってのがな、世界、なんだよ。

あ?堂々巡りだ?いや、これが単純に正解なんよ。

正確に言えば、世界ってのは語弊がある。まず、適当なスポンジをイメージしてみてくれ、それが世界の構造だ。

このスポンジの繊維のある部分、これが俺らが普通に生きてて、認識できて、理解のできる部分になる。で、穴の空いた部分が所謂真空的な物なんだよ。ま、イメージでしかないがな。

そしてこの真空的な部分、ここが重要なとこでな。ここは所謂辻褄合わせ、例えば光速度不変の法則を成立させるためのエネルギー、って言えばわかりやすいか?そういうのが詰まってるんだよ。

 

で、俺が世界から吸ったっつぅのは所謂ココ(・・)からでな、極論的にナンデモありなエネルギーだったんだよ。

 

当然、世界という枠に収まったいち生物(既死者)程度の存在でそんなエネルギーを器に収められるわけがねぇ。

ふっつーに爆散したわ。思わず草生やしたな、あん時。

 

あ?爆散したなら死んどけよってか。中々に小粋なジョークかますじゃん?

 

忘れてんのか?俺には転生チート(・・・・・)があるんだぞ?

 

転生、それも異世界からの、だ。

当然その能力も、あの世界基準のもんじゃねぇ。というか規格が違うんだよ、転生チートっつう(もん)は。

あー、なんっつうかな、丸い穴に星型の物を通すような?感覚としてはそんなもんだ。

 

とどのつまり、俺は爆散して死んでも【蘇生変換】は発動しやがって、今度はそんな万能エネルギー的なサムシングが体を満たしたんだよ、クソッタレ。

あ、ちなみに爆散すれば死ぬっつーのはここでの体験談な?もう死なねぇけど。

 

で、そんな万能クソエネルギーで出来た体になった俺だが。

まず初めにやった事っていえば安易な復讐だな。

 

もうめんどくさくて俺の受けた行為をそのまま関係者全員に跳ね返るように、こう、パチコーンってやったわけさぁ。そしたら、国が幾つも滅びた。残ってたのは金もねぇ発展途上とすら言えねぇ様な部族の集まりだな。笑える。

 

は?ってなるわな。うん、俺もそうだった。

 

どうやら俺の細胞って摂取すると若返りする上不老長寿になるようでなぁ……。みんなこぞって食ったり飲んだりしてやがったんだよ。オェ。

 

で、流石にキツ過ぎて狂っちゃったんよ、俺ってば。

何がきつかったって、村で唯一心配そう(・・)にしてくれてた幼馴染みが1番苦しんで死んでたことよな、うん。

思えば年齢の割に若……幼くて、そのくせ頭脳明晰な天才なきらいがあったからなぁ……。なんかの偶然か、俺が寝てる間にでも喰ってた(・・・・)んじゃね?知らんけど。

 

とーぜん、ストレスがやばすぎて発狂死。

直ぐさま【蘇生変換】が発動して最後の復活を遂げた訳だが……最後の1回ってのが何より重要だったみたいでな、一線を画してた。

 

まず、俺はストレスを感じなくなった。感情の起伏がそれなりにしか出来ないようになった副作用とでも言えばいいのか……分かりやすく言えば、お兄様だな。あ?知らない?オタクなら「劣等生」くらい履修しとけや。てかこの知識が参考になった感じか?今更ながらだけど。ま、いいや。

 

つぎに、俺は体が幾ら分裂しようが、そこに自分の意識を持たせることができるようになった。まあ、要は「俺」という意識が、『俺』という意識総体になった感じだな。当然、俺の体って万能クソエネルギーなわけで。

極論、どんな形でも良い訳だな、だからこその意識主体の変化と呼べるのかどうかは分からないが。

 

で、最後に、俺は『俺にする』、というある種の権能を得たわけだ。

ほら、俺の細胞を喰ってれば不老長寿になるくらい俺ってば「俺」の優先度が高いわけで?それを拡張して変換した結果が、そういう(・・・・)ことなんだろうさ。

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