そっから先は簡単さ、俺はもう、あの世界という規格じゃ殺せない存在になっちまった。
俺に起こった変化として最も重要なのは、万能クソエネルギーを使い放題になっちまった、っつう点だ。
何せ、本当に
あ、これは体に残った生存本能が勝手にやってる事だから止められねぇぞ?こればっかしは俺のチートにも関わった部分だからどうにもならん。
だからふと無心になった俺が、「帰りたい」なんて馬鹿なことを考えんのも時間の問題だった、って話だ。
幸い、なんでも出来るエネルギーはあったからな。
問題は量だが、それもなんやかんやで解決した。
要は、容量と蛇口の問題だ。
俺という器に入れられる限界ってのがあって、そっから出力出来る量にはさらに制限がかかるってだけの話なんだよ。
だけど、あるじゃねえか。器も蛇口も同じ大きさで、ご丁寧に直前にこれまた莫大量のエネルギーを貯蓄していて、しかも極大のモンが、な。
過程は省くとして、俺は世界と融合した。
ま、つまるところ、三千大千世界の内の1つ分のエネルギーがあれば同エネルギー量の世界間移動なんざ屁でもねえって訳よ。
だから俺が帰ってこれたわけだし、そしてだからこそ、
なあ、浸透圧って、知ってるか?
ま、さすがに知ってるわな。
濃度の濃い方から薄い方に物質が移動する、アレだ。エントロピーの方が近いかもしれんが、まあ、そういうニュアンスのアレだ。
元々この世界には、俺という存在1つ分の魂が、あの異世界……つうか俺自身になるんだが、まぁそれは置いといて、軽くなってるわけだな、これが。薄くなってる、とも言える。
だから、俺一人分の
で、俺ってばさっきも言ったように、あくまで『俺』という意識総体だからな、例え半人分の魂でもしっかり『俺』、なんだよ。
だからこその、この状況。
だからこその、
運が悪かった、そうとしか言えねぇな。
逆に
お前らとしても異世界の存在証明が出来てラッキーだったろ?多分お前らも死ねばワンチャンあるかもしれねぇから、参考にしておいてくれよな!
あ、寧ろ転生したいヤツいる?後数日くらいでこの世界が『俺』として統合されるから、そっからなら自由に転生させる権利くらいはやるけど。
でも帰ってくんのは残念ながら諦めてくれ、流石に
ん?俺?これからどうすんのかって?
決まってるじゃん、まずこの世界での未練、美味しい食いもんやら娯楽やらで遊び尽くすって訳よ。
世界には【
そっから先はまだ決まってないが……うむむ。
まあ、新たな娯楽を求めて
……あ、そう?転生する?おっけー、ならあと……10日待ってくれや。そんくらいで統合完了するから。
さっきも言った通り、異世界っつってもどこか選んでそこに転生って訳には行かないんだが。
え、言ってない?めんごめんご、忘れてたや。
じゃあ今言ったからノーカンってことで。で、三千大千世界、詰まり少なくとも千の千乗の千乗は世界があるってわけだから、何も俺と同じクソ異世界に絶対転生するって訳でもないし、なんだったら転生チートで神様にでもなれんじゃね?知らんけど。
ま、少なくとも『俺』を殺そうだなんて、実行しねぇほうがいいがな。
いや何、何がダメって、そうだなぁ……例えば、ワールドエンド系の攻撃を俺が食らうとするだろ?で、運良く俺の万能クソエネルギーの外壁を突破して殺すのに成功したとするべ?俺はもう【蘇生変換】を持ってねぇ訳だから、その時点で
ほら、俺ってば散り散りになっても『俺』としてあり続けるわけで。
仮に死んで世界という枠組みごと散り散りになったとしても、その時点で多分『俺』は他の世界で『俺』として活動するぞ?それも、何垓という世界で。
その時、果たして『俺』は「俺」なのかもわからねぇし、最悪個々の世界が勝手に『俺』になって増殖する結果になるだけだからな。
結局、現状維持が賢い選択なのさ。
■
ある日、突然にして世界は暗雲に包まれた。
それと同時に、9割9分9厘以上の人類が所謂ゾンビと化し、同族を増やし、それ以上に喰らおうとして襲いかかる地獄が現出した。
自然、生き残りだった俺たちは1箇所に集まり、どうにかこうにか生活を続けていたわけなんだが。
ある日、目が覚めると俺の仲間以外にも見覚えの無い奴らが一緒くたに集められた、気が狂うほどに白い部屋で目を覚ました。
直ぐさま俺たちは……いや、俺たち以外の奴らも警戒して固まっていた。
何を警戒するのかってのは、この状況じゃなく、元より他の人間共に対してだ。
噛み付かれればそこから爆発的に増えてきやがるゾンビ共、そんな奴に成りたくないからこそ、俺たちは仲間以外信用しねぇし、それは他の奴らも同様だった。
仲良しこよしが通じる時代なんざ、最早夢のまた夢ってやつだな。
そしてしばらくだった頃、あの、形容詞し難く、極めて生命への冒涜を感じさせ、何よりも気色の悪いモノが現れた。
そしてそいつは軽薄な態度で語る。
この事態は俺が引き起こした、と。
そしてそいつが最早、俺らの手の届く存在では無いことを、極めて丁寧にご教授下さった。クソが。
そしてそいつはある選択肢を提示した。
転生するか否か、つう馬鹿げた選択だ。
勿論、誰もが考えたような復讐なんっつぅ手段はより状況を悪化させるだけだっつぅのも言ってたが、あくまでそれはそいつの想像に過ぎないってのも分かる。
しかも、ご丁寧に手段は提示されてんだ。これに乗らねえなんて選択肢はねぇ……!
要は、欠片ひとつ残らず消滅させりゃあいいんだろう?
なら、掛けてみんのもいいだろう。
こいつは望郷がウンタラカンタラ言ってはいるが、もう俺たちには恨み以外の感情が残っちゃいねぇんだよ。俺たちの帰るべき場所はもう無くなった。
なら、せめてもの弔いだ。コイツを完全に抹消して、囚われこいつに侵された親類友人隣人を、救う。
別に俺じゃなくても構わない。こいつを殺してくれるんなら、な。
だからこそ俺らは、満場一致で転生という手段に賭けたんだ。
待ってろよ、クソ野郎。
例え永遠に等い年月が経とうとも、必ずお前を、殺してみせる……!
はい、終わりです。
ラストの彼は、果たして成功したのかしてないのか。それは想像にお任せします。
ただひとつ言えることは、人の精神が、果たして何年持つのか、ということですね