転生爺のいんちき帝王学   作:嶋野夕陽

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騎士団長ホワイト

 グレイも協力して、その場にいる敵を全て片付けることはできたが、被害は大きかった。普段から連携をとる訓練をしているおかげか、死人はすくないようだ。それにしたって、意識を失っていたり、足に大きな怪我を負って、その場から動けなくなっている者も複数名いる。

 

「酷い有様じゃな」

「お恥ずかしい」

 

 グレイとしては別に騎士たちを責めるつもりではなく、死屍累々の状況について言っただけなのだが、どうやら勘違いされてしまったようだ。

 グレイに助けられたジグとしては、忸怩たる思いなのだろう。 

 真面目に戦って命を落としたものまで馬鹿にするつもりはないのだが、ここで言い訳するのもなんだかかっこ悪いと思ったグレイは、顎鬚を撫でながらため息を吐く。

 普段の行いが悪いので仕方のないことだ。

 

「他も急ぎ確認に行った方が良いじゃろうな」

「待ってください。この屋敷の主、シープ子爵はまだ帰宅されていないようです。それで捜索しに行こうとしたところで襲撃を受けまして……」

「探すにしても、他の騎士の方々と合流した方が良いかと」

「そうだな、この様子ではばらけていても良いことはない」

 

 ジグが状況を説明すると、クルム、ハップス両名から、先に各貴族邸を訪問することを提案される。

 まさか騎士団にまで襲い掛かってくるとは思ってもいなかった、というのがジグの正直な思いだ。本格的に敵対する者には何でも襲い掛かる方針なのか。

 明日以降は本格的な捜査を開始する必要がありそうである。

 

「……では、先に他の方の安否確認とします」

 

 この時点で帰宅していないということは、シープ子爵は既にどこかで命を落としていると考えるべきだろう。元々逃亡開始から、クルムが報告を受け、それから出動しているのだ。

 帰っていない方がおかしい。

 

 ジグは倒れている者たちを起こし、怪我をしている者には肩を貸しながら移動を開始する。こうなってしまうと騎士たちは足手まといでしかないが、公的な治安維持機関が味方にいるというだけで、できることの幅は広がるし、正当性も高まる。

 

 更に三件の貴族邸をまわり、騎士たちを回収しながらそのすべての家の当主の無事を確認。それを終えた頃にはバッハ侯爵家の手の者から、シープ子爵の死亡が報告されていた。

 

 他の貴族邸の前に残って居た騎士にも伝令を出して合流。

 遺体をそれぞれ回収し、連れ立って王宮へ戻った頃には、すっかり夜も更けてしまっていた。

 

 ほとんど皆が疲れ切っていたが、それでも主要なメンバーは集められて今晩の件についての話し合いが始まる。

 クルム、グレイ、モーリスにフルートに加え、バッハ侯爵家の報告者であるハチ。

 それから、副団長のジグと、ハップスに、帰りを待っていた騎士団長のホワイト。

 

 そしてこの場が治癒室であることもあって、なぜか偉そうにスペルティアも混ざっている。騎士数人と、ジグの怪我を治してくれたので、騎士たちは誰も文句を言えなくなっている。

 

 ホワイトは金髪を少し長く伸ばした偉丈夫であり、なんとなくキラキラとした浮世離れした雰囲気のある男だ。実力は高いと噂だが、グレイはその顔を見た瞬間になんとなく舌打ちをしたくなった。

 特に理由はないがなんか相性が悪そうだなと思ったからだ。

 ホワイトよりはまだジグの方がたたき上げ感があって、グレイの中での評価は高い。もしかするとさっきちょっと一緒に戦ったからかもしれないが。

 案外ちょろい爺である。

 

 ジグから現場の報告を受けたホワイトは、眉間にしわを寄せてこぶしを握った。

 

「まさか騎士にまで襲い掛かってくるとは……」

 

 全員で出ては王宮の警護が疎かになると、ホワイトはこちらに残っていたのだ。

 騎士団は基本的にジグかホワイトのどちらかが、必ず王宮に詰める形で活動をしているので、これは仕方のないことだ。

 

「しかし……、グレイ殿、と言ったか? 話を聞く限り、あなたは前々から今回の襲撃者のような輩のことを知っていたとみえる。なぜ報告していただけなかったのだろうか。知っていればもう少し早く対処できたかもしれない。早く捜査を始め、対処もできたかもしれない」

「団長、それは……」

 

 命を救われたジグが止めようとしたところで、既にカチンと来ていたグレイが言い返す。

 

「ほうほう、自分たちの調査不足を、言う事欠いて儂のせいか。ところで……、スカベラとかいうのが自由に外で活動して、儂の命を狙ってきておるんじゃが、ありゃあお主らからの刺客か? ん? それとも騎士団というのは、捕まえればそれで満足で、逃げ出そうが知ったことではないと? いやはや、街に悪者が溢れるわけじゃ。信用ならんくて、とてもじゃないが頼る気にならんわ」

「スカベラに関しても、報告をしていただければ、護衛をつけることもできた」

「護衛!? 儂に護衛をつけてくれるのか! そりゃあ助かる、何者かに襲われて護衛についた奴が死んでも責任は取れんがな。どうも儂には敵が多いようでなぁ」

 

 グレイは口角を上げて笑いながらホワイトを睨みつけた。

 グレイが歯を見せて笑う時、そのほとんどは威嚇のためだ。

 

「……団長、グレイ殿は協力者です。諸々の話は一度横に置いて、今回の話をさせていただけませんか?」

「先生も、個人的な感情はともかく、今は話を進めさせてください」

 

 そろそろホワイトが完全に敵として認定されかけたところで、ジグとクルムが仲裁に入った。

 

「そうするか」

 

 ホワイトはグレイに散々恫喝されながらも平気な顔をしていたが、一先ずジグの言葉に従うことにしたらしい。

 グレイを相手にして態度を変えない人物も珍しい。

 

 グレイも気にくわないという態度を、表情とフンと吐き出した鼻息で示しながらも、腕を組んだまま黙り込んだ。

 いきなり不穏な雰囲気であるが、話し合いはまだまだ始まったばかりである。。

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