転生爺のいんちき帝王学   作:嶋野夕陽

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暴力で解決しづらいこともある

 次々と教会を襲うグレイとホワイトであったが、その度薬物兵が出迎えてくれるため、それらが今回の事件に関与していたのが確定的になってくる。

 皆、先に捕まっていたものを、『裏切り者』だとか『くず』だとかののしるのだが、結局ほとんどは自分も仲良く別の場所へ案内をすることとなり、ついにはグレイの手にはロープが四本握られていた。

 ついには何もしゃべらなかったものも中にはいたのだが、そういったものはすっぱりと殺されて別の場所を探索することとなるだけだった。

 ちなみに捕まってペラペラと喋ったのは、教会関係者ばかりで、裏切らずに殺されたのは裏社会に属しているようなタイプの男だった。制裁を恐れてのことかもしれないが、アウトローたちの方が口が堅いのは皮肉なものである。

 捕まっている者たちからすれば、逆らえばちゃんと殺されるのだとわかり、ますます逆らい難くなったことだろう。

 

「そういえばお主、ジグについては調べたのか」

「ジグは真面目でよく働く男だ。ただ……、奴は教会の信徒でもある」

「なるほどのう……。だからこの件に関しては信用ならんと?」

「そうは言っていない」

「言っているじゃろ」

「言っていない」

「じゃあなんじゃ」

「気分が悪いだろうから、奴には知らせん。それだけだ」

 

 どうやらホワイトは、クルムたちが思っているよりもずっと、ジグのことを信用しているらしい。そして何より、ホワイトが気を遣うという能力を持ち合わせていたことに、クルムは驚いていた。

 

 巡りに巡ってやってきたのは、なんとクルムも誓いを立てたあの大聖堂であった。

 たくさんの教会関係者が修行をしている場で、本来ならば黒幕の特定は難しい状況だ。

 

 しかし今回は大丈夫。

 なんと既にげろってくれた司祭様を連れてきている。

 正直者だけれども、きっと死後は地獄に落ちることだろう。

 

「結局、色々と考えるより暴力が手っ取り早いというのは……、なんというか……」

 

 クルムが大聖堂を見上げて呟くと、グレイがにかっと笑う。

 たくさん暴れられているおかげか、随分と機嫌が良さそうだ。

 

「これしか解決法がないのだから仕方なかろう。お膳立てと後始末がお主の仕事じゃ」

 

 堂々と尻拭いをしろ宣言である。

 なるほど、もしかすると王というのは本来そういうものなのかもしれないと、クルムは遠い目をしながら考える。

 まるで我が家の様に遠慮なく教会関係者の敷地に踏み込んでいくグレイとホワイト。勝手知ったる案内人たちがいるので、足が止まることはない。

 

 そうして進んでいくと、何やら開けた広い庭のような場所にたどり着いた。

 絢爛な噴水があるその広場は、まるで王侯貴族が贅をつくした庭のようであった。

 大聖堂の奥に、こんな豪華な空間があるなんて、クルムも知らなかった事実である。

 

「金が有り余っているようじゃのう」

 

 グレイが文句を言いながらぴたりと足を止める。

 広場の奥には、何やら人影が見えた。

 

 ひときわ大きな体をしたものが三人ほど現れたかと思うと、それに続いてふらりふらりと、明らかに意識のない薬物兵たちが姿を現す。

 そしてその背後から、きらびやかな祭服を着た五十代くらいの男性が一人現れる。

 話に聞いていた通り、それはここ数年で代替わりした教皇であった。

 教皇にしてはまだまだ若く、そして聖職者とは思えぬほど目がぎらぎらとしている。

 

 そしてその腕には、ぼんやりとした目をした少女が一人、抱きかかえられていた。

 続いて足元にも子供たちがぞろぞろと現れ、その最後尾に一人の騎士と、ルミネ王女がついてきている。

 

「ほれ見ろ言わんこっちゃない馬鹿が」

 

 グレイが呆れた顔で言い放ったのは、その騎士が副団長であるジグであったからだ。

 ホワイトはむすっとした顔で反論もしない。

 ただふざけている場合ではない。

 姿を現したということは、相手も決着をつけるつもりでやってきている。

 

「悪党にはありがちな子供を人質にするというやつじゃな」

「……どうしますか」

「さて、どうしたもんかのう。全員ぶち殺すことは簡単じゃが……」

 

 流石に子供はまきこみたくないグレイである。

 何かほかに手段があるのならばなんとかしたいところだ。

 

「お主が派手に暴れたせいでこんな準備をされておるんじゃろうが、何か考えはあるんじゃろうな?」

「ない」

「なんじゃと?」

「ない」

「こやつ馬鹿か?」

 

 ホワイトは堂々と仁王立ちしたまま、難しい顔をして反論もしない。

 本当に腕っぷしだけで細かいことはあまり考えていないようである。

 グレイは一か八か魔法で教皇の頭だけを潰すことができないか考えてみるが、それはあまりにリスクが高い。

 教皇の反応速度が早ければ子供が犠牲になるし、ジグの実力を考えれば事前に察知して打ち払われる可能性が高い。

 かといって広範囲で魔法を遣えば子供が犠牲になり、襲い掛かってくるのに抵抗すればやはり子供が殺されるのであろう。

 考えているうちにグレイはだんだんとイライラしてくる。

 

「おい馬鹿、お主のところの副団長が邪魔じゃ。いなきゃ魔法で何とかしてやれるんじゃが、何とかならんのか」

「……ジグ! そんなところで何をしている!」

 

 ホワイトはしばし黙り込んだが、どうやら何ともならないらしく、ただ大声を張り上げ、ジグに問いかけるのであった。

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