転生爺のいんちき帝王学   作:嶋野夕陽

418 / 418
全員合流

 ファンファの区画に差し掛かると、丁度出かける準備を終えたところだったようで、いつも通りの派手なお洒落をしたファンファが廊下に出てきていた。

 どたどたと大勢が一斉に現れたせいで、ファンファは驚いて二人の冒険者護衛、ドーンズとニクスの背中に隠れる。だが、先頭にいるのがグレイとクルムであることに気付くと、すぐに胸を張ってなんだかにこにこと笑いながら前に出てきた。

 

「あら、そんなに急いでどこに……」

 

 そこまで言ったところで背後から息切れしたセルルトとルミネまで現れて、ファンファはまた口を閉ざした。

 なんにしても平和なことである。

 どうやらセルルトの区画から先には、まだ偽兵士はやってきていないようだ。

 逆に考えると、未だに騎士団の元へ内乱の報告が届いていない可能性も高い。

 

「ファンファお姉様、王宮に集団の乱入者がいます。一度騎士団の訓練場まで行って状況を確認しますので、ついて来てください?」

「乱入者ぁ? 兵士たちは? 警備は?」

「捕まったか殺されたか、ではないかと。行きますよ」

 

 クルムがさらりと答えると、ファンファは顔を青くした。

 王位継承者争いでどう生き残るかに焦点を当てて生きてきたファンファには、内乱なんて想像の外のことである。

 

「だ、大丈夫なの?」

「大丈夫です。ファンファお姉様は私が守りますから。区画の皆を連れてついて来てください」

 

 そう言い残してクルムが走り出す。

 ファンファは目を丸くして一瞬固まったが、緩く笑って護衛二人の背中を叩く。

 

「ニクス、私を背に乗せてクルムを追いかけて。ドーンズは皆を連れてこの集団の背中を守って」

 

 二人の返事を聞いたファンファは、すぐにニクスの背中に乗って振り返りながら更に指示を出す。ファンファは自分が何ができて何ができないか、よく理解している。

 

「怪我もなし、もちろん死ぬのも駄目よ? 危なくなったらさっさと撤退。あなたたちにとって一番大事なことは、私を守りながら一緒に生きること。それじゃ、あとはよろしくね?」

「はっ!」

 

 ドーンズが区画の中へ消えていくと同時に、ニクスはクルムを追って走り出す。

 横並びのセルルトが酷く息を切らしているのを見て、申し訳ないような気分になったファンファは、少しだけ屈強な冒険者を一人貸してあげようかと思ったが、結局口には出さなかった。

 男のプライドについてはよく理解しているファンファである。

 

 クルムは自分の区画へたどり着くと、まず門番をしている兵士二人に声をかける。

 

「王宮に乱入者です、共に行動してください。中のウェスカとビアットにも声をかけてきます」

 

 歩きながら告げて区画内へ入ったクルムは、そのままウェスカとビアットが使っている部屋の扉をノックせずに、ばっと開け放つ。

 

「二人とも、王宮に乱入者です。一時避難しますので、すぐついて来てください」

「え? な、なんですって?」

 

 ビアットが動揺している間に、ウェスカはすぐさま立ち上がってクルムへと駆け寄った。

 

「ビアット、行きましょう」

「え、ええ? は、はい!」

 

 全然何も飲み込めていないけれど、とにかく直属の上司であるウェスカの言うことは絶対で生きているのがビアットである。クルムからの指令よりも、ウェスカからの言葉の方がビビッと来たのか、反射的に立ち上がってついてきた。

 勢力が小さいからこそ、まとめて避難するのも簡単だ。

 クルムはすぐに外へ出て、そのまま騎士団の訓練場へ向けて走りだす。

 

 ハップスまで回収したところで、ようやく折り返し地点だ。

 その間に偽兵士たちが何をしているかが気になって仕方がないクルムであるが、急いてバラバラに行動したって良いことはない。

 ハップスの区画までたどり着いたクルムは、入り口に立っている兵士に声をかける。

 

「ハップスお兄様は?」

「訓練場の方にお出かけされております」

「ありがとうございます。王宮に乱入者がいます。私は一度ハップスお兄様と合流して、今後の動きを決めます。皆さんも一度訓練場まで避難することを勧めます」

 

 対応した兵士が戸惑っている間にクルムは再び走りだす。

 説得している時間はもったいない。

 ついてきている面々を見れば、兵士も嫌でもクルムの言葉を理解することになるはずだ。

 

 クルムはそのまま騎士たちの訓練場まで駆け抜ける。

 ちょうど訓練場には非番の騎士たちが集まっており、その中にはハップスの姿もあった。

 騎士たちはやってきた集団に驚いて色めき立ったが、先頭にいるのがクルムであることで、辛うじて戦う姿勢はとらなかった。

 ハップスが前に出たところで、クルムはようやく足を止める。

 追いついてきたセルルトは、もはや息も絶え絶えだ。

 とてもじゃないが、この後一緒に行動することはできないだろう。

 

 ハップスはセルルトをじろりと見ながら、クルムに話しかける。

 

「どうした」

「内乱です。王宮に偽兵士が侵入しています。セルルトお兄様や、ルミネお姉様が狙われました。こちらへやってきていた兵士は撃退しましたが、おそらく王族全員を狙っての行動です。ケルンお兄様の区画まで確認しましたが、その先がどうなっているかはわかりません。ケルンお兄様本人は、ラウンド様の元へ出かけているようです」

 

 ひと息に情報を叩きこまれたハップスは、盛大に眉を顰めて、どう対応すべきなのかすぐに頭を巡らせ始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

芸術的で文化的な異世界生活を目指して(作者:生しょうゆ)(オリジナルファンタジー/日常)

異世界に転生したからといって冒険する必要はない。▼転生者ジョット・ブレイクはそう考える。別に自分は戦いたくもないし苦労したくもない。好きな時間に起きてオペラなり博物館なりを見に行く生活が理想である。その横にこの世で最も美しい少女を侍らせれば、そこは地上の楽園だろう。▼しかし現実は厳しいのだ。魔術の才能があったばかりに帝国学院に通わされるし、絵画や彫刻を手に入…


総合評価:27938/評価:8.97/連載:76話/更新日時:2026年06月19日(金) 22:06 小説情報

プリミティブ・プライメイツ ~暴君転生~(作者:翠碧緑)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

気が付くと、俺は人間と魔族が争うクソみたいな世界で、赤ん坊として捨てられていた。▼孤児院で育ち、飢えと貧困に耐える日々。▼そんな中、外見の特徴を理由に貴族に拾われる。▼どうやら俺の血には「特別な何か」が混じっているらしい。▼理不尽(暴力)。▼理不尽(陰謀)。▼そして、逃れられない理不尽(因果)。▼それでも、俺は生きることを諦めない。▼「そっちがそう来るなら、…


総合評価:6257/評価:9.17/連載:136話/更新日時:2026年06月28日(日) 20:09 小説情報

魔法や異能が存在しても、主人公になれるかどうかは別の話(作者:考える人)(オリジナルファンタジー/コメディ)

 中学三年の夏、ごくごく一般的な少年である渡谷(わたがや) 雪春(ゆきはる)は、怪しい男の勧誘を受け、まるでフィクションのような世界――魔法や異能が存在する世界へと飛び込むことになる。異能を学ぶ学園に入学した雪春が望むのは、もちろん漫画やラノベの主人公のような存在になること。夢にまで見た世界が実在していたことで、浮かれ切った雪春はそうなれると信じて疑わなかっ…


総合評価:35243/評価:9.05/連載:105話/更新日時:2026年07月05日(日) 18:02 小説情報

転生超越者は胸の穴を埋めたい(書籍版:転生程度で胸の穴は埋まらない)(作者:ニテーロン)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

2026/2/23「次にくるライトノベル大賞2025」文庫部門三位を獲得しました!▼2025/11/25「このライトノベルがすごい!2026」新作文庫部門第二位を獲得しました!▼電撃文庫様より1〜4巻発売中▼5巻、発売決定しました!▼2026/6コミカライズ連載開始しました。▼https://comic-walker.com/detail/KC_017970…


総合評価:41804/評価:9.33/連載:221話/更新日時:2026年07月03日(金) 18:04 小説情報

バスタード・ソードマン(作者:ジェームズ・リッチマン)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

それなりに強力なギフトを持って異世界に転生したものの、モングレルには大きな野望も志もなかった。▼やろうと思えば強い魔物も倒せるし、世界を揺るがす先進的な知識もなくはない。▼だが、そうして活躍することによって生まれる軋轢やトラブルを考えると、保身に走ってしまうのが彼の性格だった。▼ギルドで適当に働いて、適当に飲み食いして、時々思いつきで何かをする。▼これは中途…


総合評価:127753/評価:9.17/連載:429話/更新日時:2026年07月04日(土) 00:26 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>