お前は何処にもいやしなくて俺もここに居なかった。 作:黑米田んぼ
今から一年前、シャアとの激闘の果てに虹の彼方へと旅立ったかに思えたアムロは気づくとサイド6付近を機体と共に漂っていた。
これまで散々ニュータイプ絡みの超常現象に遭遇し起こした今となっては、命を掴めただけ幸運だと当時のアムロは思ったが、レーダーに捕らえた見た事の無いザクのようなMSにアムロは驚き。隠れてMSの通信を傍受したことでMSのパイロットたちは軍警察と呼ばれる部隊に所属しており、さもサイド6の防衛を任せているようであった。
気になったアムロは機体の空気と燃料。そして、シャアとの激闘によってボロボロになった愛機で戦うことも出来ないと判断し、サイド6の使われていない通気性ダクトを通って機体を隠しサイド6へと潜り込んだ。
そして、アムロは知った。現在の時代はアムロの知る宇宙世紀0093年から9年も過去であり、情報を得るために手持ちの問題なさそうな物を質屋に売りその日の夕飯代に消えた。食べていた屋台のテレビに映っていたジオンのあれこれと共に、ガンダムのパイロットがシャアだと知り食べていたラーメンを吹き出しそうになっていた。
そして、日銭を稼ぐためにアムロは難民街に潜り込み、違法難民の一員となりジャンク屋となり工事機械などを修理して日々を過ごしていた。
幸いにもこのコロニーにはクランバトルと呼ばれる違法MS賭博があったので、そのために戦闘デバイスを作ったりMSの整備を求める声は多かったのでアムロのジャンク屋は儲かった。
そして、この世界がシャアが自身の愛機であったRX-78-02ガンダムを強奪し、更にホワイトベースもといペガサス級一番艦ペガサスも鹵獲し、最終的に月に落下するソロモンを謎の発光現象ゼクノヴァによって防ぎジオンを勝利に導いた英雄になったことを知ったのだ。
色々と思う事があるが今のアムロには連邦の籍も無い。難民証明書も無い。ただの違法難民でしかないため何をすることも出来ないのでただ日々を過ごしていた。
そんなアムロの立場を変えたのはある日のことだ。昼食をしている最中、お得意先の戦闘デバイスを運んでいる運び屋の難民少女がガラの悪い男たちに絡まれていた。間に入ったのだが逆上した男たちを返り討ちにした結果、一人を病院送りにしたためにMSを操縦できる人間が居ないのでクランバトルに参加できなくなったので、代わりのパイロットを用意するかザクに乗れと言われて大人しくザクに乗った。
ザクは初めてで尚且つ武装をしていない丸腰のザクだったが、戦いの中で操縦のコツを掴んだことでザクになれたアムロは相手の二機のザクを拳で叩きのめして勝利に導いた。
それ以降アムロはジャンク屋をやりながらクランバトルの助っ人パイロットとして活躍するようになった。
「―――――遅くなったかねアムロ君?」
イズマコロニーの繁華街、時計の針は2時を向いているがそれなりの数の客が各々の時間を過ごしている喫茶店で遅めの昼食を食べていたアムロに話しかけて来た一人の男。
「いや、大して遅れていないよ。モスク・ハン博士」
そう言いアムロは食べていたナポリタンのフォークを置き口元を拭ってモスク・ハン博士と呼んだ人物に向き直る。
かつて、MAブラウ・ブロとの戦いでガンダムの動きがアムロについて来れなかったのを助けてくれた人間こそ目の前にいるモスク・ハンだった。
何の因果か自分がガンダムに乗らなかった世界でクランバトルの助っ人パイロットをやっていた縁で彼と知り合った。
自分がガンダムに乗らなかった世界線では彼が開発した技術であるマグネットコーティングが完成して居なかったようだった。自分の世界のマグネットコーティングを伝えるのは流石に自分の立場が悪くなると感じていたが、並行同位体とは言え彼が居なければ自分はきっと自分に追いつかないガンダム性能を扱いきれず、死んでしまった可能性があるし、パイロットになる事で得られるデータや技術者として研究を手伝いながらそれとなく伝えれば飯のタネにもなる。
話が合うこともあって自然と二人は仲良くなった。
「今回の戦いの戦闘データだ。そして今回の君の取り分だ。受け取ってくれ」
そう言いモスク・ハンはUSBと一枚の小切手をアムロに渡す。
「ああ……ふふっ、随分とくれるじゃないか。これなら中古のスペースグライダーじゃなくてヤシマ製の整備が出来る程の大型を新品で購入できるぐらいにはあるな。出禁にされたのも悪い事じゃないな」
小切手にはかなりの金額が記載されておりその金額にはこれまで修理のために使っていたクラバの賞金と機体を隠して宇宙に旅立つ用の宇宙船を買える程の大金が手に入った。
「こちらとしてもデータを大量に得られて助かっているよ…もっとも、君が二度とクランバトルに出られないというのがね」
そう言いモスク・ハンには寂しげな表情をする。
―――アムロは強かった…強すぎた。飛び道具を与えれば開始と同時に一機を8割の確率で撃破し、逃げ切れた者の中にはかなり高度なM.A.V戦術を駆使してきたはずなのにほぼ同時に撃破された事など何時もの事だ。
そうやって徐々にアムロを雇うことが出来たらこの試合は勝てるとクラン関係者は認識してしまった。
…それではダメなのだ。クランバトルとはサイド6の上層部が難民へのガス抜きと様々な組織に実戦を提供し、それによって胴元である上層部が大金を手に入れる仕組みだ。
なのにランキング上位ならいざ知らず、たかが一個人が此処までパワーバランスが在ってはいけない。アムロが参戦したら賭けが成立しない。だが、質の悪いことにアムロの隔絶された操縦テクニックは多くの人を魅了し、沢山のコメントには早くアムロの…ホワイトユニコーンの戦いを見たいというコメントが出た。
…そのため運営は逆にあえてアムロに膨大な掛け金を条件に過酷な戦いを強いた。具体的には一機で挑むこと、MSは兎も角飛び道具を禁止するが最初の条件だったので親しいモスク・ハンに頼み軽キャノンとハンマーを持ってきたのだがあっという間に禁止され、そのままビームサーベルを禁止された。
そして、3勝したので3機対1機を望まれたので3勝して二組のM.A.Vの4機対1機を挑まれ・・・・・・・・・・そうして数を増やしても、運営はアムロ・レイを異常なクラバで死亡させる目論見はご破算となった。
そして、前代未聞の12機の混成M.A.Vチーム対たった一機の武装を奪われた軽キャノンの戦いはホワイトユニコーンが3分も掛からず全滅させ勝ってしまい。運営は殿堂入りという名の出禁でアムロ・レイをクランバトルから追い出すことになってしまったのだ・・・・・
「…所でだ。アムロ君、ウチに来る気は無いかね?クランバトルは兎も角君がパイロットになるのは皆も喜ぶ。私としても君との技術の話をするのは好きなので来てくれると嬉しいのだがね」
飲んでいた紅茶を置きモスク・ハンはアムロにそう言う。
「…そうだな。俺もアンタの事は嫌いじゃないがちょっと行きたい所が幾つかあってな。それが終わって行く当てが無ければ考えても良いかな」
「…サイド7と地球だったね。大きなスペースグライダーを用意したいのは何かあるのかい?」
「…そんなに大した理由は無いさ。ただ、会ってみたい人達と捨てたい物があってな」
「…君のように過去を詮索されたくない難民など山のようにいる。君が何を隠しているのかは技術者としては気になるが…まぁ、止しておこう。…そう言えばいつ出発するのだ?」
「ああ、ちょっと。難民の子に機械の先生みたいな事をしていてな。それと戦闘用デバイスを卸している奴に品が良いからもう暫く待ってくれと言われてな。もう暫くサイド6に長居する予定だ」
「それは良かった。クランバトルをやれなくても君に任せれる仕事は多い。また仕事を頼むよアムロ君…済まない勘定を」
そう言いモスク・ハンは食べたものを片付け会計を済ませる。
「…さて、俺も行くか。今日中に戦闘データを元に新しい戦闘用のデバイスを作り上げないとな」
アムロもまた喫茶店から離れる。そんな中喫茶店のテレビにこのような映像と音がアムロの耳に響く。
『ニュースです。赤いガンダム捜索の令状によりこのサイド6にソドンが入港するとの事です。軍警察とサイド6政府は………』
「…ソドン、ホワイトベースが此処に来るのか…これもお前の望みなのかララァ」
次回から原作第一話どうなるか分かりませんが当分アムロは戦いませんマジで。